貞操逆転世界で俺はチョロ可愛いをしてるらしい   作:黒鉄48号

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 お 待 た せ 。
 大学の課題やらバイトの繫忙期やらで執筆がだいぶ遅れました。


第八話 一喜一憂の日

 翌日、朝のSHR。教室内は普段以上にざわついており、女子の目線はより一層俺たち2人に注がれている。

 そんな中、空気を落ち着かせることを諦めた山田先生は吹っ切れたように口を開いた。

 

 

「ではっ! 1年1組代表は────()()()()()()()()()()()()()です!」

「「「いええーい!!」」」

 

 

 黄色い声を一斉に張り上げて騒ぐクラスメイトたち。特に織斑先生と箒さんは言葉にしていないが自慢げにしており、よほど嬉しいことが伺える。

 

 

 ……そう、なんと俺の親友はあのセシリア・オルコット(インチキビーム使い)に勝ちやがったのだ。そりゃまあ内心ワンチャンあるとは思っていたし、あんなことを言ったから勝利を願ってはいた。

 だが、よもや辛勝ではなく『圧勝』するとは思ってもいなかったわけである。

 

 

「よかったなー、一夏。これでクラスの人気者だなー」

「……拗ねてるのか、勇?」

「す、拗ねてねーし!」

 

 

 生暖かい微笑みから顔を背けて頬を膨らませる。本当になんなんだこいつは。

 光線は刀で打ち消すわ、ビットはレーザークローで乱切りにするわ、しまいにゃ騙し討ちのミサイルを弾頭だけ切り飛ばして無力化する始末! 

 全く、学園専用機組の最弱スレスレをさまよっていた原作の猪武者(主人公)はどこえやら…………ま、嬉しいのは確かだが。

 

 

「ああ、それと──」

 

 

 沸き立つ空気の中、織斑先生はふと何かを思い出したように呟いた。

 彼女がそういう反応をする時は大体ろくなことにならないので反射的に身構えてしまう。そして案の定、先生から飛び出してきた言葉はとんでもないものだった。

 

 

「三上、お前に専用コアが与えられることになった」

「へっ?」

 

 

 せんよう、センヨウ……専用!? 予想をはるかに超えてきたそれに対して俺がフリーズしていると、一拍遅れて教室全体から黄色い声が放たれた。

 

 

「……えーと、その。本気ですか織斑先生?」

「何故私に聞く? 決定したのはIS委員会だ。2年近いキャリアの代表候補生(オルコット)に対して、一ヶ月もISと関わっていないお前があそこまでの大立ち回りをやってのけた。それが評価されたまでだ」

 

 彼女はさも当然のように言い放つが、やはり受け入れ難い内容である。そもそも俺は負けたのに、報酬を渡されるというのは何かが間違っているような気がしてならないのだ。

 そうやってずっともじもじしていると、織斑先生はため息をついてからこっちにかつかつと近づいてきた。そして今まで見たこともない柔和な表情で覗き込んでくる。

 

「気持ちは分からなくもないぞ、三上。成果を出せば何かを押し付けられる。私がそうだったからな」

「…………」

「だがな、お前は私と違って剣を振ること以外も出来るようになる。織斑との対照実験という名目で、定期的に異なる機体を操縦させるとのことだ」

「──本当ですか?」

 

 俺の中の好奇心がむくりと起き上がる。

 ISそれ自体の数・種類というのはコアと比較して意外と多い。資料集の中にずらーっと並んでいたそいつらを眺めてはワクワクしたものだ。

 そんなものを、1つだけじゃなくいくつも動かせるという。興奮しないわけが果たしてあるのか?

 

 

「……分かりました、謹んでお受けいたします。それで、コアはいつ渡されるんですか?」

「おっと、忘れていたな。ちょっと手を出せ」

 

 

 彼女は俺の手を軽く握ってひっくり返すと、そこにビー玉のようなものを置いた。

 ピンポン玉よりも小さなそれを電灯にかざしてみれば、内側に虹色の複雑な構造が見て取れる。

 

 

「おお……!」

「それがお前のコア(相棒)だ。普通のコアと違い、機体を乗り換えても前の機体のデータを上書きせず保持し続けるよう設計されている。大事にしてやれ」

 

 

 先生はそこまで言うと表情を引き締め、無慈悲にも授業の開始を告げた。

 今までのやり取りをじーっと見守っていたクラスメイトが大慌てで準備する中、俺はISコアをついつい見てしまう。

 

 

(これが、俺の──)

 

 

 …………そのすぐ後に、織斑先生の出席簿(威力控えめ)が振り下ろされたのは言うまでもないだろう。

 

 


 

 

「うへへ……」

 

 

 放課後。ISの初期化と最適化を行う為に訓練を休んだ俺は、人通りの少ないベンチで大きめのミサンガ──待機形態を眺めていた。全体的に灰色のそれには緑色や青色が織り交ぜられており、仕様書曰く新しい機体を使う度にデータが蓄積されることで色数が増えていく仕組みらしい。

 …………しかし、まさか専用コアとはな。座学やアリーナを使う時のマニュアルで『量産機では毎回初期化を行う』と聞かされていたので、この実験内容は少し奇妙だ。

 ま、恐らく俺とこいつ(相棒)が委員会視点で特別ってことなんだろうな!

 

 

「ここにいましたか、三上さん」

「ふえっ?」

 

 

 ちょっとした優越感に浸っているのも束の間、声をかけられて方を見るとオルコットさんが立っていた。

 訓練終わりなのかタオルを首にかけており、ついでに匂いからして汗を誤魔化す為に香水を強く使ったようだ。

 

 

「専用機、おめでとうございます。既に搭乗はしましたか?」

「えっと、一応。まさか最適化のあるなしでああも使い勝手が変わるとは……」

「ええ、そうですわね。わたくしがブルー・ティアーズを拝領した時も、前まで乗っていた『メイルシュトローム』より動かしやすくて驚きましたもの」

「なるほどー」

 

 

 経験者の話というのはやはり為になる。

 何せ、奇しくもさっき俺に渡された機体も彼女の言うメイルシュトローム──イギリスが誇る第二世代量産機なのだ。

 射撃と機動性に重きを置いたこのISの特徴は、何と言っても頭部ヘッドギアに設けられたレンズターレット型の拡張センサーだろう。

 ハイパーセンサー単体でも様々な機能を持っているとはいえ、特定の機能に特化した物には流石に劣るらしい。なのでこんな大層な物がデフォルトで付いているのだ。

 

 

「にしても、独特ですねメイルシュトロームは。何度も壁へ突っ込みそうになっちゃって……」

「確かに、運動性能はあまり高くありませんわね。そもそも移動しながらの射撃をあまり想定していない機体ですし」

「あ、やっぱり? だとしてもここ(アリーナ)じゃ芋砂できませんしね……」

「イモスナ……とは?」

 

 

 どうやら意味が通じていないらしい。ゲームとかやってりゃ嫌でも聞くと思うのだが。

 ──いや待て。オルコットさんは代表候補生であり、そしてなにより努力家だ。そんな彼女がゲーム(娯楽)に現を抜かすだろうか?

 

「オルコットさん、ISの訓練をしてない時って何やってました?」

「はい? そうですね……」

 

 

 彼女は少し考え込むと、凄まじい速度で喋り始めた。

 

 

「まず最初に雑誌などへのメディア出演。その次にオルコットグループの新商品の確認、企画の立案。それ以外ですと家の掃除や両親の────」

「ちょっ、ストップストップ!」

 

 

 俺は慌ててそれを中断する。まさかここまで色々と予定を詰め込んでいるとは思わなかった。

 にしても、こんな状態じゃゲーム用語とかまったく知らないのも当然なわけだ。ともすればクラスメイトとの会話にも支障をきたすかもしれない。

 

 

「オルコットさん、折角ですし場所を移して話しませんか?」

「ええ、よろしくてよ。どこに行きますか?」

 

 

 とりあえず彼女の部屋へ──と思ったが、ついこの間織斑先生に『女の部屋に入るな』と釘を刺されたばかりなのを思い出した。

 流石にそれを破ると後が怖いし、なんなら一夏がまた怒りかねないだろう。となると…………

 

「そうですね、俺の部屋とかどうですか? 一応人には見せられる程度にゃ綺麗ですし」

「──へっ? よ、良いのですか!?」

 

 

 何故かオルコットさんは驚いた表情を浮かべる。友人の部屋に入るなんてそう大層なことじゃないだろうに。

 

 

「嫌ですか?」

「い、いいえ! そんなこと! 全く! まっったくありませんわ!!」

「お、おう……」

 

 

 なんかすげえ興奮してるなぁと思いながら、俺は彼女を部屋まで案内する。

 道中で何度か女子に絡まれて行先を聞かれたが、その度にオルコットさんがはぐらかしていた。

 

 

「いらっしゃ~い」

「お、おじゃまします……」

 

 

 借りてきた猫のようになってしまったオルコットさんを適当に座らせ、適当なお菓子を見繕う。ついでにペットボトルの紅茶を紙コップとちょっとお高いカップに注ぎ彼女の元へと持っていく。

 

「つまらないものですが」

「ありがとうございます──にしても、いい部屋ですわね」

「ですかね?」

 

 

 噂に聞くオルコットさんの部屋と比べたら特に内装を弄っているわけではないのだが。

 精々タワー型充電器とお菓子用の収納ボックス、あとは1世代前のゲーム機とゲーミングヘッドセット(アンプ付き)ぐらいだ。

 

 

「ええ、とても清潔で整っていますもの。実を言えば、少なからず散らかっていると想像していましたので」

「あ、あはは……」

 

 

 ──言えない、大半は一夏が掃除しているだなんて口が裂けても言えない。そりゃまあちょっと手伝ったりはしたが、物の配置はほぼあいつ主導だったのだ。

 

 

「ま、まあ部屋の話は置いといて。さっきの続きでもしませんか?」

「ええ、よろしくお願いします」

「んじゃ、まずは────」

 

 

 どうにか話題を切り替えた俺は思いつくままにオルコットさんと話す。

 ゲーム由来のスラングや、食堂の料理、山田先生と織斑先生の授業の違い。あとはIS操縦のアレコレだとか。

 そんなこんなで2Lのペットボトルを1本空にした頃、ふと浮かんだ疑問をそのまま口にした。

 

 

「オルコットさんは、なんでIS操縦者になったんですか? そのまま家を継いでもよかったのに」

「…………」

 

 

 茶菓子を運ぶ彼女の手が止まる。何か地雷を踏んでしまったのかと焦っていると、彼女はこちらにゆっくりと顔を向けた。

 

 

「わたくしの両親は、既にこの世を去っていますの」

「……え?」

「3年前にヨーロッパで起きた国際鉄道の横転事故。それに2人は巻き込まれました」

 

 

 その事故のことはすぐに思い出すことが出来た。100人越えの死傷者が生じた大規模な物であり、つい先日も特番が放送されていたのだ。

 言葉を失っている俺を他所に、オルコットさんは喋り続ける。

 

 

「そして両親の莫大な遺産が残り、後釜を狙う金の亡者共が集まってきました。わたくしは彼らからそれを──お母様とお父様が作り上げた『全て』を守るためにあらゆる手を尽くしましたわ」

「…………」

「IS操縦者になったのは、適性テストで偶然A+が出たから。そして、代表候補生になることで国から援助を受けることが出来たから。あくまで手段の1つに過ぎない──全くもって、不純な動機です」

 

 

 彼女は自嘲気味に微笑んだ。その眼には深い悲しみが広がっており、どれだけ両親を愛していたかがありありと伝わってくる。

 そうして語り終えたオルコットさんは最後の紅茶を一息に飲み干すと、そのまま席を立った。

 

 

「つまらない話でしたわね。失礼しました」

「あ、ちょっ!?」

 

 

 足早に部屋を出ようとする彼女を慌てて追いかけ、ドアノブに手をかける直前でどうにか引き留める。

 オルコットさんは振り向こうとせず、しかし手を振りほどこうともしない。

 

「……何ですか」

「つまらなくなんかないですよ! 大事な物を守るために頑張るなんて、素晴らしいことじゃないですか」

「ですが──」

「それに、ISだけじゃなくて会社の経営や雑誌出演、他にも色々……普通なら、1つか2つが精一杯ですよ」

 

 

 ──ついでに言えば、俺ではそのどれも出来ないだろう。

 だから彼女のような努力家が好きだし、そんな人間が自身を卑下するのが堪らなく嫌いなのだ。

 

 

「だから、誇っていいんですよ。『自分はこんなにも頑張ってるんだ』って」

「……ありがとうございます、三上さん」

 

 

 こちらに振り向いたオルコットさんは涙ぐんでいたが、同時に笑顔も浮かべていた。

 どうやら上手くいったようで、思わず胸をなでおろす。

 

「でしたら三上さん、少しお願いしたいことがあるのですが」

「ん、なんです?」

「……セシリアと、呼んでもらえませんか?」

 

 

 そう口にした彼女は妙にもじもじしていた。

 そんなに恥ずかしがる理由は気になるが、特に問題ない要求なので受け入れても大丈夫だろう。

 

 

「分かりました、セシリアさん」

「っ……ありがとうございます!」

「あっ、ついでに俺のこと『勇』って呼んでくれます? お互い平等な方がいいですし」

「へぇっ!?」

 

 

 彼女は縦ロールを跳ね上げるほどに驚いたが、しばらくすると「……勇、さん」と言ってくれた。

 うむ、やっぱり学生同士なら名前で呼び合う方がしっくりくるな。

 

 

「んー、なんかこれだけだと物足りないな。他にしてもらいたいこととかありますか?」

「え、えっと────あ、頭を、撫でてもらえたら……」

 

 

 セシリアさんは顔を赤くしながらしゃがんできた。

 ──こういうのって高身長のイケメンがやるべきでは、なんて思いながら目一杯腕を伸ばす。

 しっかりと手入れしたであろう髪の毛はとてもサラサラで、俺の凄まじいくせっ毛とは大違いだ。

 

 

「…………」

「あの、セシリアさん?」

「そのまま続けてください」

「アッハイ」

 

 

 ぐいぐいと頭を押し付けながら彼女は続きを要求してきた。

 ここまできたらちょっと乱雑な方がいいだろう。俺は両手でわしゃわしゃと犬を可愛がるように髪をかき乱す。

 

 

「はああぁぁ~~」

(傍から見たらそういうプレイだよなもはや)

 

 

 恍惚としているセシリアさんとは裏腹にちょっと冷めてきて、どうやってこれを止めるべきかと考え始めた矢先であった。

 部屋のドアから電子音が鳴り、そのまま開いて────

 

 

「……なにやってんだ」

「お、織斑さん!?」

「あ、いや、そのぉ……」

 

 

 こちらを見つめる一夏は感情が抜け落ちたような顔付きだった。

 さもありなん、自室に帰ったら同居人が女を連れ込んで妙なことをしているのだ。逆の立場なら俺も同じような表情になるだろう。

 

 

「こ、これは同意の上です! そうですよね勇さん!?」

「そ、そうだな! だから問題は──」

「────()()()?」

 

 

 セシリアさんの言葉を聞いた彼の機嫌がますます悪化する。もはや視線だけで人を殺せそうなレベルだ。

 とはいえ暴力沙汰は絶対に避けなければならない。後ろに逃げようとする衝動を抑え込み、一夏と彼女の間に立つ。

 

 

「俺から頼んだんだ、『勇って呼んでくれ』ってさ」

「…………そうか。変なことはしてないよな?」

「勿論! 精々お茶会した程度だ」

「……なら、大丈夫か」

 

 

 一夏の纏っていた殺気がすーっと消え去った。右手の腕輪(待機形態)に触れてた辺り、対応をミスったら絶対やばかったなこれ。

 安心して一息つくと、髪型を直し終わったセシリアさんが入れ替わるように彼へと話しかける。

 

 

「ところで織斑さん、まだ夕食の時間には早いようですが。何かご用件が?」

「ああ、そうだった。寮の食堂を貸し切って俺のクラス代表就任を記念したパーティーをやるらしい」

(主役を呼びに行かせるのか……)

 

 

 クラスメイトの人使いの荒さにちょっとだけ引きながらも、俺たちは彼の案内でパーティー会場へと向かうのだった。

 

 


 

 

「というわけでっ! 織斑くんクラス代表決定おめでとう!」

「「おめでと~!!」」

 

 パンパンとそこかしこでクラッカーが乱射される。うーむ、こういった音はどうにも苦手だ。

 それを紛らわすために周囲を見渡してみる。一組のメンバーは勿論のこと、ちらほらと他所のクラスの少女たちも混ざっていた。

 

 

「いやー、これでクラス対抗戦も大盛り上がりだね」

「ほんとほんと」

「三上くんの可愛さは最高だけど、織斑くんの筋肉も眼福物だよね」

「ほんとほんと」

 

 

 ──今の会話を一夏の真横でやってのける辺り、女子の下世話っぷりは相変わらず酷いものである。

 他の場所でも各々が飲み物を持参してくっちゃべっているが、その大半は一夏と俺の()()が好みかという話題だった。

 

 

「に、人気者だな、一夏」

「……本当にそう思うか?」

「ゔっ……」

 

 

 恐らく彼を心配して声をかけたであろう箒さんに対して、一夏はぶっきらぼうに接する。

 そこはせめて仮初でもいいから笑顔でいてやれよお前。久しぶりの出番なのにガックリしてるぞ彼女。

 

 

「……酷いものですわね、勇さん」

「女三人寄れば姦しい、なんて言いますからね。まだマシな気はしますが」

 

 

 入試で絡んできた奴らの大半は素行的な問題でもあったのか、大半が落第したのでここにはいないのだ。

 もしあいつらがいたら5割増しぐらいで悪化していたに違いない。

 

 

「はいはーい、新聞部でーす。話題の新入生、織斑一夏君とついでに三上勇君にインタビューをしにきました~!」

 

 

 そんな中、大きめのカメラを持った少女が用件を名乗りながらやってきた。胸元には黄色のリボンを身に着けており、どうやら2年生のようだ。

 

 

「あ、私は(まゆずみ)(かおる)()。よろしくね。新聞部の副部長やってまーす」

「ど、どうも」

 

 

 差し出された名刺を反射的に受け取って名前を見る。テストの時に苦労しそうな画数の多さだ。

 そんなどうでもいいことを考えている間に、彼女は一夏へとボイスレコーダーを近づけていた。

 

 

「ではずばり織斑君! クラス代表になった感想を、どうぞ!」

「……戦わないといけないのが面倒ですね」

「え゛っ。も、もっとポジティブな感想ない? みんなの期待に応えます、とか!」

 

 

 どうにかいい発言を引き出そうとする黛さんだが、肝心の一夏がいまいち乗り気じゃないようだ。

 最終的には「適当に捏造するか」と呟いて離れた。それでいいのか新聞部。

 

 

「それじゃあ代わりに三上君! 代表候補生と戦った感想は!!」

「え……っと、そうですね。リヴァイヴはそれなりに動かせたんですけど、やっぱりセシリアさんが一枚上手でしたね。まさかあんな切り札を隠しもっていたなんて」

「ちなみにですけど、どうやってレーザーを避けてたんですか?」

「……普通に来る方向予測しただけですよ? 直進するから弾丸よりは分かりやすいですし」

「…………うーん、不採用!」

 

 

 彼女はそう言うとそそくさと離れ、今度はセシリアさんの方へコメントを取りに行った。全く、失礼な先輩である。

 そして相も変わらずくだらない話ばかりの周囲に辟易していると、不意にぽつんと立っている一夏の姿が目に入った。

 彼は右手で閉じて開いてを繰り返しており、かなりのストレスを感じていることが見て取れる。

 

 

「──一夏、屋上行こうぜ」

「えっ、勇!?」

 

 

 俺は彼の手を引っ張りながら「ちょっと席外します!」と言い残して食堂を去った。

 そのままの勢いでやってきた屋上には誰もおらず、夜空は雲が月光で輝いている。

 

 

「さてと。大丈夫か?」

「……ありがとよ、勇。正直辛かった」

 

 

 ベンチに座って大きなため息をつく一夏。案の定かなり危ない状態だったらしい。

 そもそも女子大勢の中に男子2人のみというのが凄まじいストレスを生む環境なのだ。そこに追い打ちを食らえばこうもなる。

 

 

「にしても、たった1ヶ月なのに色々あったよな」

「ああ、だな……大体お前が原因だけど」

「それは言わないお約束だぞ」

 

 

 彼の隣に座って話始める。中学生の時はバイト終わりによくこうやってくっちゃべったものだ。

 

 

「そういや、お前の専用機ってどうよ? 強いのか?」

「あー、『白式(びゃくしき)』か。一芸特化の産廃スレスレだな。武器はブレードだけだし、ロックオンシステムすら無いんだぜ」

「へーそりゃ──待ってロックオンできないのアレ!?」

 

 

 思わず腰を抜かしそうになる。ISは亜音速に近い速度で動き、言わずもがな肉眼でその動きを補足するのは至難の技だ。

 なので基本はロックオンシステムに頼ることとなり、俺のレーザー相殺もこれの応用である。

 それをこの男は全部肉眼で対処したというのだ。いくら見えてるからって人力で光弾を認識して叩き斬るのは流石におかしい。

 

 

「いやー……やっぱり織斑先生(ブリュンヒルデ)の弟だな。そりゃ山田先生にも勝てるわな」

「あ、その件なんだが──実は入試の時、あの人がテンパって壁に激突してな。そのまま気絶して判定勝ちって流れで、な?」

「よくそれでセシリアさんにマウント取れたなお前」

 

 

 全く、面の皮が分厚いのかそうじゃないのか……3年近い付き合いだが、まだまだ分からないことばかりだ。

 そしてふと頭上を見上げた時。雲が流されて快晴になっており、そんな夜空をいくつかの白い筋が横切った。

 

 

「まさか、流れ星!?」

「そういやテレビでそろそろ流星群の季節とか言ってたな」

「マジか!」

 

 

 俺は即座に「かっこいいと言われたい!」と何度も繰り返す。沢山やれば1回ぐらいは流れ星が消える前に言いきれるはずだ。

 横の一夏も空を眺めてぶつぶつ呟いているがよく聞こえない小ささである。

 

 

「い、一夏! こんな所にいたのか!」

「探しましたわよ勇さん!」

 

 

 願い事を言っているうちに待ちきれなくなった女子がぞろぞろとやってきて、彼女らも願い事を口走り始めたのだった。

 

 

 

 

「そういや、結局一夏はどんな願い事したんだ?」

「んー、秘密」

「おい、なんだよそれ!」

「────勇とずっと一緒にいたい、なんて言えないもんな」




 色んな機体が出てくるので、お楽しみに!

 感想・評価が来たら執筆速度が跳ね上がります。

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