貞操逆転世界で俺はチョロ可愛いをしてるらしい   作:黒鉄48号

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 やたらUAとお気に入りの伸びが凄いなと思っていたら、なんと総合日刊27位だったようです。
 お陰様で40000UA、500お気に入り突破しました! ありがとうございます!


第九話 上がって落ちて

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、三上。試しに飛んで見せろ」

 

 

 4月も下旬、遅咲きの桜の花びらがちょうど全部なくなった頃。俺たちは今日もこうして織斑先生の授業を受けていた。

 

 

「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開(オープン)まで1秒とかからないぞ」

「分かりました──っと、これでよし」

 

 

 せかされながらも無事に機体を呼び出せた。少し遅れてハイパーセンサーが起動し、視界がぐんと広がりながら解像度が高まる。

 

 

「あら、手慣れてますわね勇さん」

「……無駄口を叩くな。さっさと飛べ」

「し、失礼しました!」

 

 

 慌てて急上昇したセシリアさんを追いかけるように俺も空へと意識を向ける。

 ふわりと宙に浮いたと思った次の瞬間、メイルシュトロームの大型ブースターが点火し圧倒的な推力で機体を持ちあげる。

 しかし勢いが強すぎて彼女を通り過ぎてしまったのでどうにか速度を落とし、出力をゆっくりと絞りながら同じ高さへ合わせた。

 

 

「はー、全くこいつはじゃじゃ馬で困るな」

「操縦が乱暴なんだよ、勇。もっと慎重に動かした方がいいだろ」

 

 

 ワンテンポ遅れて昇ってきた一夏があきれ顔で言ってくる。

 そもそも最近まで飛ぶのがへたっぴだったのはどこのどいつだ、と言いたくなるがどうにか飲み込む。

 

 

「……にしても、カッコイイ機体だなぁそれ。まるでアニメの主人公機じゃねえか」

「そうか? あんまりそういうの見ないから分かんないけど」

 

 

 彼の纏うIS──『白式』は名前通りの純白な機体だ。

 背部には翼状の大型ブースターが備わっており、最大出力ではセシリアさんのブルー・ティアーズすら上回るらしい。

 

 

 そしてもう1つの特徴が一次移行(ファースト・シフト)で変化したマニピュレータ──《レーザークロー》だ。

 他のISと比べて1回りぐらい大きくなったそれには電磁波で高熱を生み出す機能が備わっており、単体で強力な武器になりうるというかなり珍しい代物である。

 

 

「これで換装装備(パッケージ)に未対応だってのが変なんだよなー」

「そうですわね。わざわざ互換性を排する必要性を感じませんわ」

「……なんか馬鹿にしてないかお前ら?」

「「いや全然」」

 

 

 むしろ基礎スペックでいえば現行の機体全てを上回っているのだから、明確な弱点がいくつかあるのは御の字だ。

 …………あと、もう1つ特徴的な能力があるのだがそれは置いておこう。

 

 

「無駄口を叩くなと言ったはずだ! オルコット、今度は急下降と完全停止をやってみせろ。目標は地上から10㎝だ」

「了解です。ではお二方、お先に」

 

 

 そう言い残すとセシリアさんはすぐさま地上に向かった。ぐんぐん小さくなったと思えば、一瞬でそれが止まる。相変わらず見事な腕前である。

 それに続いて一夏も降りていき、彼女ほどスムーズではないにせよこちらも見事に成功。ついに俺の番だ。

 

「……よし!」

 

 

 最初の急上昇でコツはなんとなく覚えた。くるっと真下を向いて一気に飛ばす。

 ジェットコースターよりも早く流れる景色に感心しながら、地面との距離を測り──

 

「っ、やべ!?」

「──まずい、総員退避!」

 

 

 織斑先生がみんなを移動させた次の瞬間、轟音とともに俺は地面へとめりこんでしまった。一応シールドでGや衝撃から守られたものの、恥ずかしすぎて顔が熱い。

 

 

「馬鹿者、誰が地上に激突しろといった。降下時は重力加速度を考慮することを忘れたか」

「……すみません」

 

 

 どうにか姿勢を戻して地面から離れる。保護機能のおかげで体は綺麗なままだが、ISの方は土埃が大量についてしまった。

 コアが前の機体(リヴァイヴ)のデータを覚えているお陰でささっと動かせるようになったはいいものの、こうして変なミスが出るのはやはり考え物だ。

 後で洗うのが面倒だなぁと考えていると、一夏とセシリアさんがこちらにすっ飛んでくる。

 

 

「大丈夫か勇!?」

「お怪我はありませんか!?」

「あ、えっと、特に……」

 

 

 2人してあちこちベタベタ触ってくるせいで身動きが取れない。

 時たま際どい位置に伸びてくる彼女の手を一夏が叩き落とし、その度にじわじわと殺意が高まっていくのを感じる。

 そしてレーザークローが発熱し始めた瞬間、パンパンという音で動きが止まった。

 

 

「その辺にしておけ織斑、オルコット。それと三上、念のため後で保健室に行け。シールドも万能ではない」

「わ、分かりました!」

 

 

 場を上手いこと納めた織斑先生は一瞬だけ自慢げな顔をしたが、すぐに普段のクールな表情に戻って授業を再開する。

 

「次に武装の展開だ。まず織斑がやってみせろ」

「はい」

「では、はじめろ」

 

 

 一夏は一旦周囲を確認してから腕を伸ばし、先端に光の粒子を集めていく。そして1秒と経たずに巨大な剣が握られていた。

 

 

「ふむ……及第点といったところか。0.5秒を目指せ」

「分かりました」

 

 

 傍から見てもだいぶ上出来に思えたが、彼女としてはもっと上を目指してもらいたいようだ。まあ、気持ちは分からなくもない。

 世界最強(ブリュンヒルデ)たる自分の(一夏)は代表候補生に打ち勝っている。すなわち、才能は十二分に持っているのだ。それをもっと引き出したいのだろう。

 とはいえ流石は教師、きちんと線引きはできているようですぐに次へと移った。

 

 

「オルコット、武装を展開しろ」

「はい」

 

 

 セシリアさんはすぐさま左手を肩の高さまで上げると、そのまま真横に腕を突き出し──

 

 

(っべ!?)

 

 

 反射的にブースターを全開にして横へ移動する。

 幸いそちら側に生徒はいなかったが、出力をミスったのでこのままではもう1つクレーターが生まれてしまう。

 武装の展開は間に合わない……となれば、手段は1つ。俺はISの五指を思いっきり地面に突き立て、ギャギャギャという耳障りな音を立てながらどうにか止まった。

 

 

「み、三上さん? 一体何を──」

「……オルコット、そのポーズはやめろ。横に向かって銃身を展開して誰を撃つ気だ」

「…………あ」

 

 

 彼女は間抜けな声を上げる。そう、クソデカライフルの銃口が俺の方を向いていたのだ。

 さっきのわちゃわちゃで殺気に対する感度が上がってたこともあるが、ああやって武器等を向けられると反射的に動いてしまうのは直すべき癖だろう。

 

 

「まあいい、次は近接兵装だ」

「え゛っ。あ、はっ、はいっ!」

 

 

 セシリアさんは一瞬形容し難い表情になり、すぐさま手を前に伸ばした。

 ──しかし、光は空中をくるくるとさまようばかりで一向に像を結ばない。そのせいで周囲も訝しみつつある。

 

 

「くっ、この……」

「まだか?」

「も、もうすぐです! ──ああっ、もう! 《インターセプター》!」

 

 

 彼女はやけくそ気味に武器名を叫び、ようやく光が集って大きめのナイフを生み出した。

 だが、これは教科書の頭に書いてあった初心者向けのやり方のはずだ。まさかそれをセシリアさんが使う羽目になるとは。

 

 

「……何秒かかっている。実戦じゃ相手は待ってくれないぞ?」

「ほ、本番では近接の間合いに入らせません!」

「ほう。確かこの前の試合では2回とも近接を食らっていたようだが?」

「あっ、あれは、その……」

 

 

 ごにょごにょとまごついて歯切れの悪い対応。彼女は俺と一夏へ助けを求めるような視線を送ってくるが、流石に今回は分が悪い。

 ……それに、あの終わり方を『近接』と織斑先生が評してくれたのだ。だから今はそっちの味方である。

 

 

「っと、時間が押しているな。最後に三上、武装を展開してみせろ」

「はい!」

 

 

 せめて最後にいい所を見せなければと思い気合を入れる。

 まずは狙撃銃《スカイルーラー》を呼び出し(コール)、誰もいない方向に向けて射撃のフリ。

 すぐさま収納(クローズ)して今度は近接ブレード《ブレッド・スライサー》を展開、ゲームで見かけたナイフの動きをちょっと真似る。

 そして最後に新たな切り札を──

 

 

「時間が来たので今回の授業はここまでとする。三上、グラウンドを片付けておけよ」

「……ワカリマシタ」

 

 

 よりにもよって見せ場直前でこれとは。タイミングの悪さに辟易しながら俺はクレーターへと向かう。

 何人かの女子が「手伝ってあげようか」と聞いてきたが全て断った。自分のケジメは自分で付けなきゃ意味がないのだ。

 

 


 

 

「一体何をやってるんですか?」

「ごめんなさい……」

 

 

 放課後。メンテナンスのために整備室を訪れた俺は床に正座しながら説教を受けていた。

 眼前には虚先輩がおり、額に青筋を立てながらこちらを睨んでいる。

 

 

「地面への墜落は、まあいいでしょう。初心者であればよくあるミスです」

「……」

「──で・す・が! なんですかこのマニピュレータの損耗は!? どうして地面に突き刺したんですか!!」

「あー、えっと、そのー」

 

 

 とてもじゃないが「攻撃の意図を誤認しました」、なんて言える雰囲気ではない。そんなことをのたまえば朝日が拝めない気すらしてきた。

 

 

「いいですか! マニピュレータは精密機械! 決して乱雑に扱わない! 復唱ッ!!」

「決してマニピュレータは乱雑に扱わない!」

「……はあ。今回はここまでにしておきます。もし次も同じことをしたら、自分でISのオーバーホールと組み立てをやらせますからね」

 

 

 それは一周回ってご褒美なのでは、と一瞬思ったが胸の内にしまっておこう。わざわざ2度も怒らせる必要はないのだ。

 

 

 さて、こうやってメンテ待ちをしているとどうにも暇になる。

 時たま整備の人たちと雑談をしようと試みるが、その度に虚先輩が釘を刺しにくるので始めようがない。

 ならば鬼月先輩にオカルト話をねだろうかと考えたが、彼女は彼女で訓練機の最終チェックとやらで大忙しのようだ。

 

 

 そんなわけで俺は整備室を後にしたが、これといってやることはない。

 下手に歩き回ると女子につかまって色々と面倒なことになるのが目に見えているし、ハマっているFPSもちょうど中弛みの時期である。

 

 

 ISが無いとこんなに暇を持て余すことになるとは、なんて思いながらひとまず食堂へ向かう。

 日替わりのメニュー表と早めに夕飯を食べている少女らを眺めながら、今夜の献立を組み立てるのが最近の些細な楽しみなのだ。

 そうやってああでもない、こうでもないと色々思案していると不意に1つの料理が視界に飛び込んできた。中国伝統のパイナップル入りの酢豚である。

 

 

「……そういや、元気かな()()()

 

 

 思い出したのは一夏や弾と同時期に出来た親友──それも数少ない女性だ。

 あのメンバーの中だと飛びっきりに愉快なやつで、お調子者というかムードメーカーというか。

 この世界の女性らしく時たまセクハラじみた行為をしてきて、一夏をピキピキさせていたのをつい昨日のように思い出せる。

 

 

 ──何か重大なことを忘れている気がするが、今はそこまで必要ないだろう。

 献立のメインを決定した俺は、再び考え込むのだった。

 

 


 

 

「あ゛~、やーっと着いた!」

 

 

 夜。IS学園の正面ゲート前にボストンバッグをもった少女が立っていた。

 4月の暖かい夜風にツインテールをなびかせながら、彼女は大きく背筋を伸ばす。

 

 

「えーっと、受付ってどこにあるんだっけ」

 

 

 取り出しやすい角度の胸ポケットから一切れの紙を取り出してじーっと見つめる。くしゃくしゃになったそれは、少女の大雑把で快活な性格を非常によく表していた。

 

 

「本校舎1階総合事務受付……って、それがどこだってのよ」

 

 

 彼女は紙を握り潰しながら歩き出す。こういう時は大体歩けば事態は好転するのだ。

 良く言えば実践主義、悪く言えば考えなしである。

 

 

「ったく、1人ぐらい出迎えよこしなさいよ……これでも代表候補生よあたし」

 

 

 誰に聞かせるわけでもなく少女は愚痴をこぼした。もともと鋭角的な目をさらに吊り上げながらどんどん進んでいく。

 しかし運の悪いことに現時刻は8時過ぎ。大半の生徒は大浴場か食堂におり、外には誰一人いない時間だった。

 

 

(いっそのこと空飛んで探そうかしら)

 

 

 彼女は桃色のブレスレットを眺め、すぐさまその考えを脳内から追い出す。

 転入手続きを終えていないので外交問題待ったなしだから──ではなく、ここで教鞭を取っているらしいあの女(ブリュンヒルデ)を警戒してのことであった。

 

 

(並大抵のイビリやしごきにゃ耐えてきたけど、あの人の拳は流石に無理ね)

 

 

 彼女の弟にちょっかいを出してぶん殴られた時のことを思い出して背筋が凍る。

 あの時は追加で両親にも怒られており、もう二度と経験したくない出来事の1つだ。

 

 

 嫌な記憶を追い払うために少女は嬉しかったことを思い出す。

 偉ぶっていた先輩たちを逆に叩きのめしたこと、それを切っ掛けにして教官とワンツーマンで訓練をさせてもらったこと。

 ……そしてなにより、専用機をもらったのとほぼ同時に男性操縦者が発見されたことだ。

 

 

「こっちで色々やってから会うつもりだったけど、手間が省けたわ♪」

 

 

 少女は誰もいないことをいいことに、およそ人には見せられないような汚い笑顔を浮かべる。

 ──ああ、(三上勇)と再会したらどうしようか。

 まず挨拶代わりのハグは絶対にするとして、次は頭に顔を埋めたい。きっと干したてのヌイグルミみたいな匂いがするはずだ。

 そしたらバレないように服の隙間から手を突っ込んでお腹を撫でよう。試合映像からして筋肉と脂肪のバランスが絶妙で、スベスベかつ程よい硬さがあるに違いない。

 あとはそうだ、こちらが堪能してばかりでは仕方がない。IS訓練の傍らしっかり『女』も磨いてきたのだからそれを味あわせてやろう。

 あいつはチョロいから胸を押し付けりゃイチコロだ。そんでもって最後は────

 

 

「……えー、(ファン)鈴音(リンイン)さん?」

「──あ゛っ」

 

 

 どうやら妄想しているうちに目的地へとたどり着いていたらしい。

 少女はあまりの恥ずかしさに顔から火が出そうだったが、幸いにも事務員には彼女の痴態を忘れられる度量があった。

 

 

「と、とりあえず手続きを。まずはこの書類に──」

 

 

 そこからはトントン拍子に話が進み、10分と経たずにそれは終わった。

 少女──鈴音は相変わらず赤面していたが少しは落ち着いたようだ。彼女は事務員に聞いてみる。

 

 

「ところで。三上勇ってどんな感じですか?」

「三上くん? すごく良い子よね。ほぼ毎日アリーナを使ってるわ」

「あー……そっちじゃなくて、人付き合いとか」

 

 

 鈴音がそう伝えると事務員は若干訝しむが、すぐさま質問に答えた。

 

 

「うーんと、誰にでも分け隔てなく接してくれるというか……女性に対する恐怖ってのが無い感じかしら」

「なるほどー」

 

 

 どうやら昔と変わらない性格のままであるようだ。これでもし女子と距離を保つようになっていたらショック死していたかもしれない。

 そうやって安堵するのもつかの間、鈴音の優秀()な脳みそは1つのアイデアを生み出した。

 

 

「じゃあ最後に。2組のクラス代表ってもう決まってますか?」

「勿論決まってるわ」

「名前は?」

「え? えっと……聞いてどうするの?」

 

 少女の要領を得ない言葉に事務員は戸惑ったように聞き返す。

 

 

「お願いしようと思うんです。代表あたしに譲って、って──」

 

 

 にっこりとした笑顔には、捕食者を思わせる眼光が宿っていた。




 (短めだけど)許して……許して……

 感想、評価が来たら心がピョンピョンします。

ムフフなif、読みたいですか?

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