猟犬はハンドラーの夢見るか   作:tomokon

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『シルベルヴィント』

『ぐうううう――――!!』

『……ッ!!』

 

 自由落下する二機。そのコクピット内で、リーナとローガンは歯を食いしばりつつGに耐える。

 眼下で何かが光った。咄嗟に二人はクイックブーストを作動。間一髪、機体の横を対空砲火が通り抜けていった。しかしそれだけで終わるわけもない。次から次へと砲火が上がり、その度にクイックブーストを使って避ける。

 だが

 

『ッ、エネルギー切れ……!』

『こっちもだ!』

 

 終に、その時が来た。

 地上まであと僅かという所まで既に来ている。しかし砲火は更に激しくなっていた。通常のブーストでは、もはや避けきれない……!

 

『く、そがあ!』

 

 罵り声を上げてローガンは機体を操作。リーナ機を守るように、前に出た。

 

『ローガン……!?』

『黙ってろ! あと、今はそこから絶対に動くんじゃねえ!!』

 

 砲弾が当たる。当たり続ける。

 ローガン機は装甲の厚さで殆どを弾くも、しかし何度も当たり続ければ無視できないダメージになる。段々と装甲が剥がれ、損傷が激しくなっていき――

 刹那。

 ようやく、砲火が途切れた。

 

『ッ……!』

 

 ブーストを吹かし、二機が着地する。だがローガン機は、着地するや膝を折った。

 

『ローガン……!』

『……大丈夫だ。ACSに過負荷がかかっただけで、機体はまだ戦える。だが……チッ、ACSが回復するまで動けそうにねえ』

『……』

『なんだ、辛気くせえ顔しやがって。さっき言った通り、ACSが回復すりゃあ十分戦える。テメエに心配されるまでもねえよ。……とはいえ』

 

 警告音が二機のコクピットに鳴る。数十に上る敵機が接近しつつあると、COMが告げた。

 

『どうやら、ここはテメエに任せるしかねえらしい』

『……分かってる』

 

 レーナは自機を、敵の居る方角へ向けた。

 

『ローガンは、システムが回復するまでゆっくりしてて。……借りは……返すから』

 

 そう言って、アサルトブーストを起動。高速で飛び立った。

 Gで揺れるコクピットの中で、レーナは空に目を遣る。そこにはベイラムの降下部隊が未だ多くおり、対空砲火で数を減らしながらも着実に地上へ降り立ちつつあった。そしてそれらに対応すべく、要塞側も部隊を動かすだろう。

 そう――レーナの眼前に迫る、MT(マッスルトレーサー)部隊のように。

 

「スゥー……ふッ……!」

 

 アサルトブーストを解除。深呼吸し、彼女は自身のAC(アーマード・コア)、『シルベルヴィント』を宙に躍らせた。

 

【挿絵表示】

 

 軽量逆関節機である『シルベルヴィント』は、身軽さと立体機動が売りだ。逆関節ACの特徴である高いジャンプ力。それで敵の頭上を取り、アサルトライフルとミサイルを発射。敵MTを数機同時に撃破する。

 当然敵も黙ってやられなどしない。数で押すべく、手持ちの火器を一斉に発射。弾幕が『シルベルヴィント』に迫る。しかしリーナは焦らない。軽量故の速さとクイックブースト、更にそこにジャンプを挟むことで変幻自在な動きを実現。上下左右に動き回って、弾幕を躱していく。

 一機、また一機と落ちていく敵MT。一方『シルベルヴィント』は一度も被弾をせず、無傷のままだ。次第に展開は一方的となり、このままMT部隊は全滅するかと思われた。

 

「!」

 

 警告音。『シルベルヴィント』に回避行動を取らせ、直後、三本のレーザーが先ほどまでいた場所を通り抜けた。

 

『その機体、そして動き……お前、ハンドラーの猟犬か』

 

 コクピットに、渋みと殺気を孕んだ男の声が流れる。

 

『丁度良い……そろそろ、一つ上に行きたかった所だ』

 

 ギャリギャリというクロラの音が、戦場に響く。

 

『お前を殺して、それを叶えるとしよう』

 

 そして。

 アサルトブーストを吹かし、タンク型ACが、戦場に突っ込んできた。

 

 

 *********************

 

 

 全身を赤く塗り、炎を象った模様を付けたタンク型ACが迫る。

 

「COM、あのACの情報!」

『了解。……検索完了』

 

 AC名、『ヘルファイア』。駆るのは、アルダ・バートレイ――『火炎輪(ファイアクロラ)』で呼ばれる、メナムでも名うての傭兵。

 

「アリーナランクと機体構成!」

『メナムアリーナのランクは、7位。速射型リニアライフルとバズーカ、二基の三連装レーザーキャノンで固めた、超重量ACです』

 

【挿絵表示】

 

『……ッ!』

 

 緊張でレーナの顔が強ばる。厄介な相手と当たった――そんな考えが頭を過り、首を振って振り払う。そんなことを考えている場合ではないからだ。

 

『火力勝負では相手になりません。機動力でこちらのレンジを確保しつつ、着実に攻撃を当てていく戦法を推奨します』

「言われなくても……!」

 

 あくまで冷静なCOMに語気荒く言い返して気持ちを切り替え、レーナは『ヘルファイア』と対峙した。

 挨拶とばかりに、リニアライフルが火を噴く。磁力で加速された銃弾が飛来。『シルベルヴィント』は持ち前の機動力で躱すも、全ては躱しきれない。少しずつ『シルベルヴィント』の装甲を削っていく。

 しかしその一方、『シルベルヴィント』も負けてはいなかった。上下左右に動き回ってバズーカと三連装レーザーキャノンの間合いには入らず、ミサイルとアサルトライフルで攻撃。着実に『ヘルファイア』の装甲を削いでいた。

 

 現在のダメージレースは、『シルベルヴィント』が有利。しかしレーナの顔は強ばったままで、『ヘルファイア』の一挙手一投足を見逃すまいと彼女の目は見開かれている。

 

「ッ、しまった!」

 

 と、そこで『シルベルヴィント』のエネルギーが尽きた。

 ジェネレーターが唸りを上げる。エネルギーの急速充填が始まるも、完了には僅かに時間が必要だ。そして、それを見逃すアルダではない。

 『ヘルファイア』が一瞬動きを止めた。同時に、コアの背部構造が展開し、ブースターから巨大な炎が噴き上がる。

 アサルトブースト。超重量ACであるはずの『ヘルファイア』が一気に加速し、リニアライフルを撃ちながら『シルベルヴィント』に肉薄する。更に、背中の三連装レーザーキャノンもエネルギーを充填し始めた。

 『ヘルファイア』がバズーカを構える。『シルベルヴィント』の急速充填が完了する。

 バズーカとブースターが、火を噴いた。

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