猟犬はハンドラーの夢見るか   作:tomokon

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駆け引き

『ローガン、アルダが……!』

『ッ、逃げやがったか! ガキ、追うのは』

『……今は、無理……こいつら、アルダがいなくなっても退こうとしない……!』

 

 飛んできたミサイルを避けつつ、レーナは言う。ガトリングとライフルを乱射しつつ、ローガンは舌打ちを漏らした。

 

『チ……仕方ねえ、まずはこいつらを片付けるぞ!』

『了解……!』

 

 猟犬二人はMT部隊への対処を続行。着実にMTの撃破を重ね、数分後、敵MT部隊は全滅していた。

 

『さて……一応、一息はついたが』

『……戦闘は、まだ始まったばかり』

 

 敵部隊の全滅を確認した二人は、空を見る。視線の先には今もなお降下する部隊が数多くいる。また、地上でも降下できた部隊が迎撃に出たアーキバス部隊と戦闘を始めていた。

 

『対空砲火もまだ激しい。多少でも黙らせねえと、味方がどんどん減っちまう』

『となると、当面は』

『対空陣地を潰しつつ、味方部隊と合流。そんで集結地点まで連れていく――ってトコだな』

 

 ローガンはコンソールを操作。ディスプレイに周囲の地図が浮かび、事前に示し合わされていた集結地点が表示された。

 レーナも同様の画面をディスプレイに表示し、ローガンの言葉に頷く。

 

『ハンドラーが言っていた作戦も、集結地点に着いてからって話だった。そして集まる戦力は、多ければ多いほど良い』

『そういうこった。……それじゃあ』

 

 『サンドストーム』をローガンは進ませる。それを追うように『シルベルヴィント』も歩き始め、

 

『行くぞ!』

『了解』

 

 同時にブースターを点火。対空陣地に向かい、二機は突撃した。

 ――高く昇っていた日は、徐々に傾きつつあった。

 

 

 *********************

 

 

 鈍い音が、格納庫に響く。年かさの小柄な男、アルダ・バートレイが殴り飛ばされた音。

 倒れ込んだアルダは、上半身を起こしつつ、殴った相手、バラージ要塞の指揮官を見る。

 

「……なぜ自分は、殴られたのでしょうか」

「なぜ殴られたか、だと?」

 

 大柄な体格をした指揮官はずかずかとアルダに歩み寄り、胸倉をつかんで引き起こす。その顔には、はっきりとした怒りが浮かんでいた。

 

「貴様が味方を見捨てて、逃げてきたからだろうが!!」

 

 拳が飛び、アルダは再び吹き飛ばされる。顔には二つの青あざが浮かび、痛々しい。しかし二度殴られてなお、アルダの顔は平静なままだった。

 指揮官はそんなアルダに若干の困惑を覚えつつ、指揮官は言う。

 

「敵前逃亡は重罪だ! それが分からない貴様ではないだろう! なんなら、いますぐ殺してやってもいいんだぞ!」

 

 指揮官が手を挙げる。彼の周りにいる複数の護衛が動き、小銃の銃口をアルダに向けた。

 

「もちろんそれは承知しています。しかし俺は、ただ逃げたわけではありません」

 

 ゆらりと、アルダは立ち上がった。

 

「あの場で戦い続けても無駄死にするだけであり、次の機会を待つべきだと思ったこと――これが理由の一つ。二つ目に、注意すべき敵がいることを伝えなければと思ったのです」

「注意すべき、敵?」

「ええ。……ハンドラーの猟犬、その内の二匹が敵に付いています」

「な……あの猟犬が、二匹!?」

 

 指揮官の顔色が変わる。アルダはその様子を薄く笑い、続けた。

 

「ええ。連中の戦力は単体でMT数十機にも及ぶ――そう言われているのは、指揮官もご存じでしょう? それが事実であるのも、実際に交戦した俺が保証します」

「……!」

「こういった情報は、伝達が早ければ早いほど良い。戦闘データもとってありますので、確認されればよいでしょう。そして、理由の三つ目」

 

 ゆっくりとアルダは指揮官に近づき、

 

()()()()()()()()()()使()()()()

 

 そう、言った。

 

「自画自賛のようでなんですが、俺はそれなりに使えます。恐らく猟犬一匹程度は働けるでしょう。あとは僚機のACなりMT部隊を用意してもらえば、あの二機を抑えて見せます」

「……ず、ずいぶん自信があるようだが……その割に一度、逃げかえって来ただろう!?」

「確かにそうです。しかし戦闘ログを見てもらえばわかると思いますが、一対一で戦った際はあと少しの所まで追い詰めたのも事実。もちろん逃げたのも事実ですが、そちらの事実も見ていただきたい」

「ぐ、く……!」

 

 言葉に詰まる指揮官。アルダはその前に来て続けた。

 

「どうします、指揮官どの。先ほど貴方が言った通り、俺を殺すのもいいでしょう。しかしここは生かしておいた方が、貴方としても得をすると思いますが?」

「き、さま……!!」

 

 薄笑いを浮かべて言うアルダに、指揮官は顔を赤黒くしながら唸る。

 緊迫の時間が流れる。指揮官の護衛たちも顔を強張らせたまま事態の推移を見守っていたが、不意に指揮官が肩を落とした。

 

「……いいだろう……貴様の意見、取り入れてやる。確かに貴様の力は、今後必要になるだろうしな」

「聞き入れていただき、光栄ですよ。指揮官どの」

「ッ、わざとらしい言い方はやめろ、この臆病者が!」

「臆病者で結構。それで得をすることもまあまあありますのでね。……ああ、それと」

 

 指揮官から離れたアルダは、思い出したように言う。

 

「俺のAC『ヘルファイア』ですが、結構やられてしまいましてね。整備班に言って直しておいて下さい。あのままで出撃しても大して働けないでしょうし、無駄死にするだけですから」

「それぐらい分かっている!! というか、ここで言うことでもないだろうが!!」

「失敬。余計な心配でしたな」

 

 ククククククク――――――

 陰鬱に笑いながら、アルダは歩いていく。指揮官はその背中を憎々しげに睨みつけていた。

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