猟犬はハンドラーの夢見るか   作:tomokon

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加速する戦況

『おいガキ、そっちは今何機倒した!?』

『知らない……40くらいまでは数えてたけど、もう数える気もなくなった』

『ッ、クソ! メナム最後の拠点つっても、戦力集めすぎだろ、何機いるってんだ!?』

『ローガン、うるさい……! 口を動かすより手を動かして!』

 

 騒ぎながらも二人はACを操作。敵MTを駆逐していく。しかしいくら倒そうと次から次へとMTは押し寄せて来た。

 ――現在二人は、遊撃手として戦場を駆け回っていた。

 対空陣地を潰し回った後、降下部隊の集結を助けた二人は集結地点で補給を受ける。しかし補給を受けて間もなく、未だ集結地点へ行くことができずにいる部隊の救援を命じられることとなったのだ。

 そして二人が命令を受けたのと時を同じくし、アーキバス側も本格的に迎撃戦に移行。部隊を増員し、集結できず孤立しているベイラム部隊の排除にかかり始めた。

 二人は遊撃手としてそれらの相手をしているのだが――

 

『くそ、また来やがった!』

 

 ――ローガンがぼやいた通り、その物量が多すぎる。

 既に百近いMTを撃破していながら、それでも増援は途切れない。しかも増援がされているのは二人がいる場所だけではなく、

 

『ッ、ローガン、また救援信号……!』

 

 他の孤立した部隊にも差し向けられているというのだ。リーナは沈痛な面持ちで言った後、更に続ける。

 

『しかも今度は、ACが襲ってるみたい……』

『ACだと!? まさかあいつが――』

『違う、あいつじゃない。確認されたのは軽量二脚機で、今まで確認されてなかった機体みたい。今検索をかけてる――出た!』

 

 機体名、『バレットストーム』。パイロットは独立傭兵のルーザ・バレット。メナムアリーナのランクは10位――

 

『これは――まずい』

 

 青ざめた顔で、リーナは言う。

 

『アルダと同じくらいの戦力の傭兵が、機動力を活かして孤立した部隊を襲い続けるなら――被害が更に大きくなる!』

『チッ、連中金積んでそんなヤツを引き込みやがったか! ……仕方ねえ』

 

 数瞬迷った素振りを見せたローガンだったが、意を決したように言う。

 

『ガキ、お前はそいつの相手をしろ! 落とす所まではいかなくても、妨害するだけでかなり被害は抑えられるはずだ!』

『わ、分かった。でもローガンは?』

『俺はこのまま遊撃手として動く。……できれば俺もそいつをさっさと落としちまいてえが、俺の機体じゃ追いつけねえだろう。今の時点じゃ、ガキ、お前に頼るしかねえ』

『……』

『分かったらさっさと行きやがれ! 言っとくが今度は救援には行けねえからな? 油断してやられたりすんじゃねえぞ!』

『分かってる。もうあんなヘマはしない……!』

 

 意気込むリーナ。『シルベルヴィント』がアサルトブーストを展開し、飛んでいった。

 

「……さて……こっちはこっちで、気張らねえとな」

 

 一人残ったローガンは気合いを入れ直し、操縦桿を握り直す。『シルベルヴィント』がいなくなったのを好機とみたのか、今まで戦っていたMT部隊が勢いを増して攻撃を仕掛けてきた。

 

 ローガンは『サンドストーム』を操作。ガトリングとライフルで迎撃しつつ、六連装プラズマミサイルと十連装ミサイルで多数の敵を一斉に攻撃。その猛攻に、敵MTは次から次へと落ちていく。しかし

 

「ッ、クソ! ここまで落とされてるのに、なんで怯まねえんだよ!?」

 

 そう。アーキバスMT部隊は、多くの犠牲を出して尚怯まないのだ。それどころか元々の数の多さを活かした反撃までしてくる。

 浴びせられる弾幕に、『サンドストーム』の装甲が少しずつ削られていく。異常なまでの戦意と激しい弾幕に辟易するローガンは、このままここで戦い続けるべきか迷う。

 

「ここにいた味方部隊は既に退いた。ならここで俺が退いても問題はねえだろうが――」

 

 問題となるのは、その次だ。遊撃手としては他の部隊の救援に向かうべきなのだろうが、『サンドストーム』は重量級ACだ。機動力は低く、単機で救援に回っても手遅れになる可能性が高い。

 リーナと共働することでその欠点を補っていたのだが、それもできないとなれば――

 

「……ここで粘って、敵を削るってのも有りか」

 

 そう呟く。

 ハンドラーが言っていた作戦。そのためにはできる限りの注意を外に引きつけておく必要があった。それに、敵の数を削っておけば作戦自体もやりやすくなる。

 問題は、ローガンの消耗が激しくなること、もし敵ACがこちらに来た場合、撃墜されるリスクが高くなることなどが考えられるが――

 

「そこら辺は――逐時戦況を確認して敵の動きを捉えるようにするしかねえか」

 

 若干の不安を感じつつローガンは言い、その数を増しつつあるMT部隊を眼前に捉えながら、唇を舐めるのだった。

 戦闘が、続く。

 既にガトリングの弾が切れ、ライフルの弾も撃ち切った。背負う二基のミサイルランチャーにも残弾はない。それでも『サンドストーム』は、拳と脚で戦い続けていた。

 

「ハァ……ハァ……いい加減に、しろってんだ……!」

 

 つかみかかってくる敵MT。それをクイックブーストでかわしざま、逆に拳の二連撃を叩き込む。爆発するMT。続けてマシンガンを掃射してくる別のMTに、アサルトブーストで接近。蹴り飛ばした。

 『サンドストーム』には全身に弾痕や爆発痕が刻まれており、満身創痍といった様相だ。搭乗するローガンも、息も絶え絶えといった様子である。

 

「いい加減に、諦めろつってんだクソどもが!!」

 

 しかし口では悪態をつきつつ、ローガンは機体を動かして敵を倒し続ける。その戦いぶりに恐怖を覚えたのか、あれだけ戦意に満ちていたMT部隊も動きに鈍さが見られるようになっていた。

 それに気づいたローガンは、ここからの行動に迷う。『サンドストーム』は限界間近であり、最善手は撤退である。しかし敵はまだ20機以上もおり、その上高機動装備を施したMTもいるのだ。

 

「背中を見せて追いつかれたんじゃ、笑い話にもならねえ……!」

 

 苦々しく言う。一応状況が悪くなる前に、本隊に向けて援軍を出すよう要請はしておいた。しかし現状、敵の本隊も動いていない以上うかつな動きはできないだろう。

 また、各地の孤立した部隊の救援も完了しておらず、しかも、暴れまわる『バレットストーム』の対応にも手を焼いているという。これでは猶更、迂闊に部隊を動かすこともできないはずだ。

 

 結局、こいつらを倒しきるのが唯一の生き残る道か――ローガンがそう思った、その時だった。

 敵MT部隊の動きが、一瞬止まる。そして幾ばくかの後で、突然MT部隊が退き始めたのだ。

 

「な、なんだあ? いきなり退いた? ……ん? 通信……しかも、傍受されかねねえ広域のヤツだと?」

 

かかってきた通信に出るローガン。幾つかのやりとりの後で彼は、会心の笑みを浮かべた。

 

「そうか……やっと、やっと動きやがったか!」

 

 歓喜のまま、叫ぶ。先の通信で通信相手は、ローガンにこう伝えていた。

 ――敵の本隊が動き出した、と。

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