猟犬はハンドラーの夢見るか   作:tomokon

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咬み合う犬たち(上)

 数多の銃火が飛び交い、ブースターの爆音が絶え間なく響く戦場の一角。計11機ものACが参加する戦いは、まさに熾烈そのものといった様相を呈していた。

 

『じきにもう一匹の猟犬が来る! 数で負けていようと勢いで負けるな! 新生レッドガンの意地を見せろ!!』

『『『了解!!』』』

 

 隊長からの檄が飛び、奮起する新生レッドガン部隊。

 メランダー等のベイラム系列のパーツで構成された機体は、ガトリングやマシンガン、ライフルなどの実弾兵器で武装している。更に全機が背部にミサイルを装備しており、中距離から遠距離にかけて隙の無い弾幕を展開。敵部隊に圧力をかけていた。

 一方、アーキバス。メナム・ヴェスパー。

 

『各機散開。機動力を活かして圧力を躱しつつ、奴らを削る。うすのろのベイラム共に、身の程を弁えさせてやれ』

『『『了解』』』

 

 淡々とした口調で隊長が命令し、隊員も同じような口調で返す。

 軽量機や中量機で構成されたメナム・ヴェスパーは散開して弾幕を躱しつつ、レーザーライフルやプラズマミサイルで応戦。エネルギー防御に劣るベイラムACの装甲を確実に削っていた。

 

 企業直属のAC部隊なだけはあり、双方の練度は高い。隊員同士の連携もスムーズで、それぞれが自身の機体の特徴を活かして立ち回っている。

 しかしその戦いで大きな存在感を放っているのは、彼らではない。より激しく、より果断に動いて戦況を動かしているのは、傭兵達だ。

 

『ルーザ、何をチンタラやっている』

 

 『ヘルファイア』を駆るアルダはリニアライフルを乱射しつつ、ルーザに発破をかける。

 

『早く猟犬を押え込め。そうすれば、俺のレーザーキャノンを叩き込んで終わりにできる』

『気安く言うな! こいつ、ただ動きが速いだけじゃねえ。立ち回りが巧いせいで、なかなか押さえ込めねえんだよ!』

 

 ルーザが怒鳴り返し、『バレットストーム』がヘビーマシンガンとライフル、そして四連装ミサイルで一斉攻撃をかけた。だが『シルベルヴィント』に一気に距離を離され、躱されてしまう。

 

『クソ、チョコマカと……!』

 

 悪態を吐くルーザ。この流れを何度か繰り返していた彼は、焦りを募らせ始めていた。同時に、機動力では軽量二脚機の『バレットストーム』より、軽量逆関節機である『シルベルヴィント』が上だとルーザは痛感していた。

 そんな彼に、アルダは冷たく言う。

 

『泣き言を言うな。じきにもう一匹の猟犬もやってくる。数的有利を活かせるのは今しかない。お前がやらなければ、誰がやる?』

『アンタがやればいいだろうが、クソジジイ!』

『やっているさ。だが逃げを決め込んでいる軽量機に追いすがるには、俺の機体が不向きなのは分かるだろう。決定打を与えられるのはお前しかいないんだよ』

『ッ……!』

『分かったならさっさとやれ。俺も多少の援護はしてやる。撹乱の邪魔をされた借りも、今ここでまとめて返してやればいい』

『チ……分かった、分かったよ! やってやる!!』

 

 アルダの言葉に、幾度となく『シルベルヴィント』に撹乱の邪魔をされ、追加報酬を逃したことを思いだしたルーザは、苛立ちと共に戦意を漲らせた。

 『バレットストーム』がアサルトブーストを発動。距離を詰めつつ、先と同じように一斉射を仕掛ける。

 

『また、こりもせず同じ手を……』

 

 呆れたようにリーナは呟き、同じように距離を空けて避けようとする。だが直後、その顔が驚きで硬直する。

 『バレットストーム』が、アサルトブーストを解除しない。掴みかかる勢いで距離を詰めてきたのだ。

 

『この……!』

 

 とっさに全ての武器を発射。銃弾とミサイルが『バレットストーム』に突き刺さった。だが、『バレットストーム』はなおも前進してくる。

 危険を感じたリーナは更に距離を取るためにクイックブーストを吹かし、リーナのコクピットにアラートが響いた。

 

『くっ!?』

 

 衝撃。スタッガーするまではいかずとも、『シルベルヴィント』のACSにかなりの負荷がかかった。

 その理由――

 

『ニードルミサイル……!』

 

 クイックブーストを吹かした後の、再使用が可能となるまでの間。それを狙い、『バレットストーム』が撃ち込んできたのだと知れた。

 

 『バレットストーム』が、ここぞとばかりに攻撃を仕掛けてくる。今まではあくまで機動力を活かして中距離を維持する戦法を採っていたが、今は距離を詰めての蹴りも狙う戦い方に変わっていた。

 何としてもスタッガーを取るという意図を察したリーナは、猛攻を必死にしのぐ。だがそこではっとした。さっきまでリニアライフルを乱射していた『ヘルファイア』は、どこにいった――!?

 

『気付くのが遅かったな』

 

 にやりとした笑みを浮かべたアルダは、アサルトブーストを発動。()()()()()()()()『ヘルファイア』が、『シルベルヴィント』に突撃しつつリニアライフルを乱射する。

 二方向からの攻撃に、『シルベルヴィント』の装甲が削られていく。同時にACSへの負荷も限界間近になった。

 苛立ちと悔しさに唇をかんだリーナは、一度クイックブーストで距離を取る。そしてすぐに反転して、アサルトブーストを発動させた。

 

『逃さねえよ!』

 

 獰猛に笑い、追撃するルーザ。『バレットストーム』もアサルトブーストを発動して追いすがり、その背に再度ニードルミサイルを撃ち込もうと照準を合わせる。

 だが、そこに何かが飛んできた――ミサイルと、プラズマミサイル!

 

『うおおおおお!?』

 

 アサルトブーストを解除し、クイックブーストで避ける『バレットストーム』。

 同じようにアサルトブーストで追撃していた『ヘルファイア』もアサルトブーストを解除し、アルダは、苦い表情を浮かべた。

 

『……遅かったか』

 

 そう呟く。視線の先には避けたかった事態、猟犬たちが並び立つ姿があった。

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