問題だらけで草ァ!! 外伝 -Eternity in a moment- <通常版>   作:白鷺 葵

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【諸注意】
 1.この作品は『大丈夫だ、問題しかないから』シリーズのリメイク版です。
 2.『ガンダム00』を原作に、アニメ版『地球へ...』、及び『スーパーロボット大戦』や『Gジェネレーション』シリーズ等の要素とクロスオーバーしています。
 3.主人公含め、オリキャラが多数登場します。
 4.キャラ改変や原作崩壊、原作死亡キャラの生存要素があります。
 5.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 6.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 7.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 8.基本はギャグとラブコメ色強めですが、時々シリアスになります。
 9.読了後に如何なる負の感情を抱かれても、書き手にはどうすることもできません。

 10.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替えになります。
 11.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味しています。
 12.良くも悪くも飯テロ要素があります。注意してください。

 13.この小説は2023年の10月時点で明らかになっている情報をベースにして執筆しているため、後の公式作品で発表・開示された情報とは矛盾が発生する可能性があります。

 14.この小説はIf設定の世界線となっており、本編との設定――特に、刃金姉弟の関係を中心に――が大きく変化しています(重要)
 15.この小説はIf設定の世界線となっており、本編との設定――特に、刃金姉弟の関係を中心に――が大きく変化しています(重要)
 16.この小説はIf設定の世界線となっており、本編との設定――特に、刃金姉弟の関係を中心に――が大きく変化しています(重要)

 17.オリキャラ×版権キャラ、或いは版権キャラ×オリキャラのガールズラブ要素があります(重要)
 18.オリキャラ×版権キャラ、或いは版権キャラ×オリキャラのガールズラブ要素があります(重要)
 19.オリキャラ×版権キャラ、或いは版権キャラ×オリキャラのガールズラブ要素があります(重要)

 20.IF世界による設定の変更により、敵陣営に大幅な変動が発生しております(重要)
 21.IF世界による設定の変更により、敵陣営に大幅な変動が発生しております(重要)
 22.IF世界による設定の変更により、敵陣営に大幅な変動が発生しております(重要)

 23.敵キャラ関係の元ネタはこちら<https://syosetu.org/novel/335686/>。並行世界の平行存在という意味では繋がっています。興味がありましたらどうぞ。

上記が大丈夫の方は、本編をお楽しみください。



IF:あおちゃん@それからのこと ※

 

 『赤子はこの世の穢れや罪とは無縁の、無垢な存在である』と言う人間がいる。

 『人は生まれ落ちたその瞬間から、数多の罪を背負う存在である』と言う人間がいる。

 

 双方の言い分は全くもって正反対だけれど、多分、どちらの言い分も正しいのだ。

 

 自身が最善手だと信じて打った行動が後に自分の首を絞めることがあり得るように、自分にとっては有益な結果を得た行動が誰かの不利益に直結していることもある。

 どこかで誰かが笑っているとき、どこかで誰かが鳴いていることだって日常茶飯事。世界は限られたリソースで成り立っているから、幸福には悲劇で帳尻合わせを行う。

 誰かの起こした行動のツケを支払うのが、行動を起こした本人だとは限らない。該当者がそれを把握・知覚しているか否か問わず、他者の幸福のツケを支払う羽目になってる人間はいるのだろう。

 

 

()()()()のせいだ……!』

 

 

 憎悪と怨嗟をまき散らしながら、彼は非難する。――『刃金空護と刃金蒼海が14歳の誕生日に■■■■(しゅくふく)()()()()()()』ことで発生した不利益の帳尻合わせを。

 

 

()()()()テラズ・ナンバー1(てんしさま)成人検査(しゅくふく)を大人しく受けてさえいれば……!』

 

 

 憎悪と怨嗟をまき散らしながら、彼は糾弾する。――『刃金空護と刃金蒼海が14歳の誕生日に成人検査(しゅくふく)()()()()()()』ことで発生した数多の業や罪過を。

 

 

()()()()()が、あんな風に()()()()こともなかったんだ――!!』

 

 

 憎悪と怨嗟をまき散らしながら、彼は弾劾する。――『刃金空護と刃金蒼海が14歳の誕生日に成人検査を()()()()()()』ことで発生した犠牲を。

 

 

『返してくれ』

 

『私の息子と娘を――(あかがね)天翔(あまと)(あかがね)千晶(ちあき)を、返してくれ』

 

『あの子たちは、本当は、どこにでもいる、()()()()()()だったんだぞ!』

 

 

 当時の刃金姉弟はまだ14歳。世間的には未成年であるし、庇護されるべき子どもという扱いだ。当人の思考回路だって、『自分のちょっとした行動が大事故に繋がる』未来を考え、想像する力も()()()()()()()()。もっと言うなら、大人になった今でもそれに思い当たらないことだって幾らでもある。

 “『自分と片割れの誕生日を自分たち(セルフ)で祝う』ために、周りの人間の目を盗んで飛び出した”――言葉にすれば、たったそれだけのこと。14歳の少年少女にとっては“ちょっとした大冒険”であり“若気の至り”でしかなかった。大人になった今では『ちょっとした笑い話』であり『良い思い出』。

 

 だけど、世界――否、グランドマザー『テラ』にとって、『刃金蒼海と空護が成人検査を受けなかった』という事態(ようそ)はあまりにも大きかった。“急遽()()()()()をしなければならない”程に。

 結果、グランドマザー『テラ』は“刃金の双子と同等の適性を有する候補者”を一族から見繕うことにした。そこで選ばれたのが、傍系の親戚である(あかがね)家の双子――天翔(あまと)千晶(ちあき)

 彼と彼女の父親である晶真(ショウマ)は、“何かしらの理由”で――どんなルートだったかはついぞ不明のままだったが――“息子と娘が悍ましいナニカに作り替えられた”ことを()()()()()()()()()()()

 

 

『責任を取るべきは、()()()()べきは、刃金蒼海と刃金空護(こいつら2人)なんだ!』

 

 

 そのために、銅家は完全に崩壊してしまったのだろう。その責任を、ショウマはクーゴと蒼海、ひいては2人を取り巻く人々や世界に取らせようとした。

 アマトとチアキが有する『駒』の1つに成り下がり、各方面に多大な被害をまき散らし、『自分と同じ気持ちを味わって、自分と同じところに堕ちてくれ』と叫び続けた。

 

 

刃金蒼海と刃金空護(こいつら2人)に味方した奴らもみんな殺してやる! 奴らの大事なもの、全部根こそぎ奪いつくして、壊してやる!』

 

『そうして、思い知らせてやるんだ。――いいや、()()()()()()()()んだ』

 

『『刃金蒼海と刃金空護(こいつら2人)さえいなければ、こんな目に合うことは無かった』ってな!!』

 

 

 そのために、ショウマは立場――嘗ての上部組織だった地球連邦軍、所属組織にして僚友であるはずのアロウズ、その他アマトとチアキに対して喧嘩を売った連中――問わず粛清の刃を振るった。

 結果、クーゴと親しくしていたグラハムを始めとした友人知人が奴らの毒牙の対象に選ばれた。中には“自他、或いは関係者が命を奪われてしまった”者もいる。

 (あかがね)晶真(しょうま)/ショウマ・アカガネが戦争を振りまく理由は、“この悲劇を終わらせるため”に立ち上がったクーゴと蒼海とは見事に()()()であった。

 

 ……しかしながら。

 

 ショウマ・アカガネの憎悪と強い意志が無ければ、人類はグランドマザー『テラ』を打破できていたかも怪しい。

 彼の憤怒と憎悪が幾重にも張り巡らされ、あちこちへと巡った結果、クーゴたちはグランドマザー『テラ』の完全破壊/機能停止を達成できた。

 

 

『ざまあみろ! 自分(てめぇ)が身勝手を働いたツケは、自分(テメェ)の一生を懸けて払うんだな!!』

 

(――だとしても)

 

 

 未だこびりつくショウマの怨嗟に対し、クーゴは頭の中で首を振る。

 

 

(だとしても、俺は、銅家のために生贄になる選択を選べない。そんな未来を思い描くことも出来ないんだ)

 

「――犠牲者に、黙祷!」

 

 

 思いを馳せていたクーゴを現実へと引き戻したのは、連邦軍の代表者――地球連邦総司令官の号令だ。それに呼応し、クーゴは犠牲者たちへ祈りを捧げる。勿論、その中には、一家崩壊を迎えた銅家の人々も含まれていた。……最も、他の大多数からすれば、アカガネ家の人間は“グランドマザー『テラ』の命令を実行していた”という認識なのだろうけど。

 今日のこの時間帯は、“去年発生したソレスタルビーイングとスターダスト・トラベラー、及び反アロウズを掲げた元・アロウズと地球連邦軍VSアカガネ家及びグランドマザー『テラ』とアロウズによる最終決戦が行われた日”であり、“グランドマザー『テラ』による監視及び管理体制からの独立記念日(インディペンデンス・ディ)”とも呼べる日だ。

 あの戦いの傷跡は未だ色褪せていないし、あの戦いに至るまでの過程でも多くの人々が命を落としている。クーゴがちらりと視線を巡らせれば、先の大戦で生き残った面々の姿が視界に飛び込んで来た。グラハム、ビリー、アキラ、カティ、コーラサワー、セルゲイ、ハーキュリー、他多数。誰もが静かに目を閉じて、犠牲者たちへ黙祷している。

 

 いいや、黙祷を捧げているのは軍人だけではないのだろう。彼らの関係者、或いは被害者になってしまった無辜(いっぱん)の人々やその関係者も含まれている。

 確かにクーゴや蒼海の関係者が優先して嫌がらせを受けていた。それは事実だが、立場――軍人、反政府団体、民間人――関係なく、人類全体が負った傷は深い。

 

 あのときの戦い――否、仲間たちによる一致団結で“地球諸共人類滅亡”という地獄絵図を回避したけれど、そこに至るまでの過程で多くの犠牲者が出た。これからの人類や地球そのものにも暗い影を落とすのだろう。

 

 

(『“何が正しいのか”、“何が間違っているのか”なんて、終わってみなければ分からない』、『だから全力で生きるしかないし、生きようとする。それがヒトとしての営みなんだ』、だっけ)

 

 

 ソレスタルビーイングに居候していた頃、顔を会わせたパイロットの言葉が脳裏を過る。彼の姿は『Toward the Terra』に登場/S.D.体制時代に生まれ同胞のために命を散らしたソルジャー・ブルーと瓜二つだった。本人の物言いからして、恐らく彼の記憶を有しているのだろう。

 人類と地球は確かに未来を勝ち取ったけれど、全ての問題が片付いたとは限らない。戦乱の爪痕は深々と刻み付けられているのに、未だに戦争が終わらないのがその証拠だ。今日も何処かで銃声が鳴り響き、戦火の真ん中で命を賭ける人々がいる。

 

 

(……イデアたちは今、どこで何をしているんだろう)

 

 

 ふいに脳裏を過ったのは、戦争根絶を謳い戦う天上人たちの1人。

 “理想への憧れ”というコードネームを背負い戦うクーゴの同胞。

 或いは、クーゴにとっての“優雅に輝く最愛の星”。

 

 

(今日くらいは、過去の戦いで亡くしたものを悼み、想いを馳せる時間があればいいな)

 

 

 死者への鎮魂と哀悼を捧げる式典は、もう終盤。お偉いさんが未来に向けての想いを述べている。

 

 そういう話を聞いているからこそ、クーゴは嘗ての居候先に思いを馳せずにはいられない。あそこで出会った個性豊かな人々と過ごした動乱の日々を慈しまずにはいられない。あの頃は確かに激戦続きで気が抜けなかった。けれど、『楽しい』と思えた時間は確かに存在している。

 彼や彼女の立場は私設武装組織(テロリスト)相当で、正規軍人であるクーゴの立場とは相容れそうにないのは事実。一緒に行動するうちに彼や彼女たちの人となりに触れ、背中を預け合う程度には信頼し合った仲であっても、だ。

 だとしても、共に過ごした日々はかけがえのないものだと思っている。今後どんな立場で邂逅するかは分からないし、今までのアレコレやこれからの交流がどのような未来/結末に辿り着くかも分からない。

 

 

『ねえ、くーちゃん。今年の誕生日はさ、2人でどこかへ出かけようよ!』

 

 

 ――それでも、きっと、クーゴは言うのだろう。

 

 

『あと1分で13歳終わるね』

 

『よーし、カウントダウンしよう!』

 

 

 何度でも選び続けるのだろう。

 

 

『あおちゃん』

 

『くーちゃん』

 

『『14歳の誕生日、おめでとう!』』

 

 

 満天の星の元で迎える14歳の誕生日を選択するように。

 

 

『キミ、凄いなぁ!』

 

『見事な手際だったぞ!』

 

『いいえ。俺のしたことなんて、大したものでは――』

 

 

『どうかしたのか? 私の顔が、何か?』

 

 

 虚憶(きょおく)で出会った人々と出会うことを夢見たように。

 

 

『ところで、コラボ企画のお話をするんでしたよね? 夜鷹さん』

 

『貴女が、エトワールさん、ですか?』

 

『はい。オフでは初めましてですね』

 

 

 共有者(コーヴァレンター)――否、ミュウの力と歌によって繋がり、エトワール――イデアと邂逅したように。

 

 

(きっと俺は、何度生まれ変わっても、この選択肢を選ぶ)

 

 

 此度の戦いの犠牲者やその遺族がいてたら、きっと誰もが怒るだろう。嘗ては()()()()()()()()()()()()()()()(あかがね)晶真(しょうま)/行動を起こしたショウマ・アカガネがそうだったように。

 他の人々も怒りを口や態度に出さないだけで、本音はどうなのか分からない。ただ、本音を剥き出しにしても世界が回らず、本音を押し殺せば人間が壊れかねず、無情にも時間だけが過ぎ去っていく。絶えず変化し続ける世界でどう生きるかが課題となる。

 

 グランドマザー『テラ』やハガネ一族に関するアレコレの大半は重要な軍事機密――或いは裏の歴史として秘匿されることとなった。

 

 “一般人に対して全てを公表するのは問題が大きい”、“大混乱から大規模な治安悪化に繋がりかねない”等の判断からだろう。その影響か、良くも悪くも『クーゴや蒼海、刃金一族の扱いも事実上“なあなあ”になってしまっている』。公で大規模な裁きを降すことができなかったのだ。

 一般人の多くは“過去に滅んだ旧人類が生み出したロストテクノロジーのオーパーツが不慮の要因で再起動し、有史以前から地球と人類の管理体制を作り上げ管理していた。その最終段階として運用を推し進め出力・顕現した結果がアロウズである”と認識されていると聞く。

 あの最終決戦は“グランドマザー『テラ』による支配体制を見抜き、反旗を翻した人類による独立記念日である”と思われているようだ。軍部や政府の印象操作がどれ程働いたのかは未知数であるが、ある意味で()()()()()()()()。そして、それが人類史として語り継がれていくのだろう。

 

 

『俺に触るな!』

 

 

 脳裏を過ったのは、先の大戦での居候先。かの私設武装組織の中での最高戦力へと至った女性。

 

 嘗ての少女はグラハムの手を拒絶し、頑なに心を閉ざしたままだった。初対面からもうすぐ5年近い時間が経過しようとしているが、その5年は彼女を大きく変えたらしい。

 先日のオフ会で顔を会わせたとき、彼女はグラハムに対して穏やかな表情を発露することが増えた。人一倍寡黙な方であるのは変わらないけれど、時折淡い微笑を浮かべる機会も多くなったように思う。

 

 

『本当に、あんたは……。仕方がないな』

 

 

 少し照れ臭そうに苦笑するその頬は、ほんのりと赤らんでいた。普段はそっぽを向いたりぞんざいに塩対応している方が多いからか、余計に印象に残っている。

 “その度にグラハムも嬉しそうに反応する”というのも、刹那の表情変化が目に付く理由を担っているのかもしれないが。閑話休題。

 

 クーゴが思いを馳せている間に、慰霊と鎮魂の式典は終わりを迎えたらしい。お偉いさんの宣言と共に、人々はそれぞれの持ち場や業務へと戻っていく。中には片付け作業を始める者もいた。

 

 きっと来年も、そのまた次の年も、この式典は執り行われるのだろう。時間が流れて世代が変わっても、被害者やその遺族たちがこの世からいなくなってしまっても、いつかは形骸化してしまっても。

 歴史の1ページを彩るだけの記録に成り果てて、戦乱の傷跡や此度の戦乱に対する忌避感から『こんな行事はつまらない』と小言を言われる日が来たとしても、語り継ぐことを止めるわけにはいかない。

 それもまた、今を生きるクーゴたちに課せられた“戦い”の1つ。クーゴたちがやり/成し遂げなければならないことの1つだ。――何せ、“こんなことは自分たちで最後にしよう”と言った人間なので。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 刃金の本邸は今年で築およそ900年弱。伝統文化財に指定されているせいで、下手に取り壊すことが出来ない。

 

 家を飛び出したクーゴと蒼海の代わりに跡取りとして収まったのは、先の大戦で戦った刃金(はがね)天翔(あまと)刃金(はがね)千晶(ちあき)の双子である。以前から水面下で養子縁組の話が進んでおり、2人が縁切りしたのを契機に正式に養子縁組したことで姓が変わった。

 件の両名は先の大戦で戦死。管理者がいなくなって宙ぶらりんになったこの家を買い取ったのは、(ワン)商会――留美(リューミン)の元に嫁入りした蒼海だった。一族郎党が“グランドマザー『テラ』による洗脳調整から脱却していない”こともあり、蒼海の手腕でもどうにかゴリ押しできたという。

 最も、グランドマザー『テラ』が刃金一族に施した洗脳調整は長い時間をかけて行ったものだ。奴を破壊して支配から独立したとはいえ、即座に普通の人間として生きていくことは不可能だろう。奴の施した洗脳や調整が無意味なものになるまで、きっと何世代もの世代交代が必要となる。

 

 

「――まあ、そういうワケで、ウチの一族は暫く()()()()かなぁ」

 

 

 蒼海はそう言いながら、和菓子――長年御贔屓にしていた伝統ある和菓子店の上生菓子だ。季節をモチーフにした一口大の丸いねりきりで、外国人観光客からのウケもいい――をつまんで口に運ぶ。

 菓子の甘さを堪能しているように見えるが、憂いに満ちた瞳は現実問題に頭を抱えたそうにしているようでもあった。何せ、一族郎党には()()()()()()()()()()()()()が今でも色濃く残っている。

 

 しかも、()()()()()()()()()()()()()のおかげで今も平穏を保てていた。クーゴも、グラハムも、イデアも、刹那も、その恩恵を『受ける』側の人間である。……本当に、皮肉な話だ。

 

 

「『刃金の当主の座に収まった人間と、その人間の直系の言うことには基本的に従順であろうとする』、『代行者を介した支配が行き届くよう円滑な支援を行い、代行者からの命令を滞りなく実行するために世界中へ進出し、独自のネットワークを築くよう行動する』、でしたわね?」

 

「そうそう。あたしとくーちゃ――“夜鷹”が連名で()()()()()()()になったのと、グランドマザー『テラ』が完全に停止したのもあって()()()()()()()()もんね」

 

「俺やあおちゃ――“水天一碧”にとっては、文字通りの『過ぎた力』だもんな。俺たち2人の手に負えるようなもんじゃない」

 

 

 蒼海のとなりで草餅を食べていたのは、彼女の伴侶たる留美(リューミン)だ。彼女は(ワン)商会を束ねる主として君臨している女傑であり、ソレスタルビーイングのエージェントにして最大出資者(スポンサー)でもある。

 一時期はスパイ活動のためにアロウズにも出資していたが、最終的にはアロウズから貰えるものを貰ってとんずらしてきたそうだ。本人曰く『無事では済まなかったが、エージェントとしての仕事をこなすことに関しては問題ない』らしい。

 

 『アロウズ絡みのあれこれで一度は経営が傾いた(ワン)商会は、蒼海の持つ刃金一族のツテを使って持ち直した』と聞く。蒼海が持て余していた代行者としての権限を活用した結果の産物だ。

 最も、(ワン)商会の立て直しを図った程度で尽きてしまえる程に、グランドマザー『テラ』による一族郎党の洗脳調整や負の遺産は生易しくない。残念ながら、未だに有り余っている。

 こんな曰く付きの力は手放したくなるのが普通なのだが、手放したら手放したで碌でもないことになりそうなのは事実。悪意ある第3者が拾ってしまえば、グランドマザー『テラ』の再来に成りかねない。

 

 じゃあどうするのか。その答えを、2人は()()()()()出したわけだ。――今ここにいる全員を共犯者として巻き込むような形で。

 

 

()()()()()()()()()()()()()はドン引きしてましたよ。『刃金家当主の血判が押された書状』もさることながら、『血判の所持者に対しても従順である』なんて」

 

「それは語弊があるだろう、イデ――“エトワール”。正確に言えば、『書状に『この書状の持ち主の依頼には可能な限り応えるよう要請する』と記載され、当主たちの血判が押されている』ためなのだろうが」

 

「最終的には『有事の際には、地球連邦軍とソレスタルビーイング、或いは悪の組織が連携を取るための非公認窓口として利用される』ことになったのよね? それで、あたしたちがこうして顔を会わせてるワケだけど」

 

「――前々から思っていたのだが」

 

 

 女性3人――イデア、刹那、ベルフトゥーロの言葉を遮るように口を開いたのはグラハム・エーカー。

 まどろっこしいことは()()()()()()()()()気質の男だ。

 

 

「お互いを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のでは? と」

 

 

 「“便宜上”であることは熟知しているのだが」と付け加えた奴の表情は、どことなく不満そうだ。

 

 この男、何故か“この集まりでは刹那の名前を呼べない”ことに対して何か思うところがあるらしい。それが不満と言う感情で発露されているようだった。

 ソレスタルビーイングに所属する人間の大半がコードネームを名乗っている。時には、諜報活動用の使い捨て名義を名乗ることもあるらしい。

 クーゴも『イデアと刹那の名前は本名ではない』ことを把握しているし、前者に至っては本名を教えて貰った。対して、後者の本名については真逆である。

 

 

「こういうのを、日本ではタテマエと言うんだったか。……私個人としては、あまり好ましいやり取りではないかな」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()なんだ。どこで誰が聞き耳を立てているのか分からない」

 

「勿論、理解しているとも」

 

「この前も同じ話をしただろう、“エイダン”。蒸し返すな」

 

「うーん! 相変わらず塩対応だな、“セルマ”は」

 

 

 いつも通りの小気味よいやり取り。5年ほど前には日常を彩る光景の1つだった。今でもそれは変わらない。数多の変遷を得たことで、その価値は大きく跳ね上がっただけで。

 時間は一方に流れて過ぎ去っていくのみで、過去に遡ることは出来ない。前に進み続けると言うことは『絶えず動き続ける』と言うこと。世界も人も、当人の望む望まないに関わらず変わり続ける。

 変わっていくことは悪いことではないが、変わるばかりが正しいわけでもないのだ。刹那とグラハムが繰り広げる小気味良いやり取りを見ると“微笑ましい”と感じることが変わらないように。

 

 談笑しながらねりきりを食べ進める2人を横目に、クーゴは庭の方へと視線を向ける。

 

 生まれた頃から今の今まで、この家の間取りや家具のデザインも、庭の様子も変わっていない。今も昔もこれからも、きっと変わらず残り続けるのであろう。

 季節の花が咲き誇る庭を臨む縁側に集うのは、心許せる大切な人たちだ。嘗ての自分が《視た》虚憶(きょおく)――或いは、ミュウの能力である未来予知の一遍。

 

 

(ああ、そうか)

 

 

 すとん、と、納得する。

 

 

(俺は、この光景が見たかったんだ)

 

 

 少し視線を動かせば、刹那たちとの談笑に一区切りついたイデアと目が合う。

 彼女は何を思ったのかおもむろに立ち上がると、当たり前のようにクーゴの隣に腰かけた。

 手に持った皿には、彼女が食べるために持ってきたねりきりが沢山置かれている。

 

 

「私、()()()()から、貴方のことを《識って》たんですよ」

 

 

 唐突に、イデアはそう言った。

 

 何も知らない頃のクーゴであったら、彼女の言葉を素直に鵜呑みにしていただろう。イデアの言う『ずっと前』の時間換算は長くても2桁台だと思っていたのかもしれない。だが、ミュウは数百年単位の寿命を有する長命種。『Toward the Terra』に登場した長老――300年前後生きていたミュウにとっては、数百年前ですら瞬きの合間という意識になりがちだ。

 “『ミュウの殲滅』という名目で、自分たちが収容されていた惑星が、惑星破壊兵器によって滅亡した”というなかなかにショッキングな体験をしたとはいえ、当時の惨劇を『つい先日起こったこと』と認識していた長老たち。イデアの年齢も大体()()()()()(※ベルフトゥーロからの情報提供)らしいので、その感覚や体感時間に準ずるような単位の時間を指しているのであろう。

 

 

「“貴方が生まれるよりも、ずっとずっと前”から」

 

 

 何かに思いを馳せるようにして、イデアは瞼を閉じる。

 それらを丁寧に拾い上げ、優しく抱えて、こちらへ示すが如く。

 

 

「あの頃の私は、母を目の前で失って、その後を追うようにして亡くなった父を見送ったばっかりで……人生で言うなら、どん底って状態でした。母の事故の記憶を封じなければ、半狂乱で泣き叫んでしまうくらい弱ってたんです」

 

 

 イデアの思念波越しから《視えた》のは、焼け焦げたようなフィルムのような記憶。彼女が目の当たりにした地獄の断片。

 

 小さな宇宙艇の中で、多くの悲鳴が木霊する。辛うじて聞き取れた言葉は『浸食』、『汚染』、『人が飲み込まれた』程度。内部は焼け焦げたような黒/無機質に光る銀色で浸食されており、その向こう側で起こっている出来事が『イデアが消したいと願う程凄惨なモノである』ことが伝わって来た。

 断片的に《視えた》光景の中には、人間が焼け焦げた黒/無機質な銀色に飲み込まれているものもあった。現実(リアル)幻想(ファンタジー)問わず、パニックホラー系の作品における『人間が異形に捕食される』シーンが脳裏を過ったのは、きっと気のせいではないのだろう。

 計器やメーターが振り切れて、あちこちで爆発が起きる。その中に紛れるように響いたのは少女の絶叫。見れば、ペールグリーンの髪を首のあたりで切りそろえた少女が両目を抑えて悶え苦しんでいる。手で覆われた部分がどうなっているかは分からないが、頬を伝い落ちる赤から嫌な予感しかしない。

 

 逃げ惑っていた人々はついに追いつめられる。このまま全滅かと思われたが、次の瞬間、子どもたちの姿が艦内から掻き消えた。

 大人たちは自分の持てる力を使って、子どもたちを救う道を選んだのだ。自分たちに訪れる末路が、どんなものかを理解した上で。

 

 

(――遺言、みたいだ)

 

 

 否、実際に遺言だったのだろう。 画面の向こうから響くのは、次世代を担う者に託す、命がけのメッセージだ。

 己の命を削るようにして届いた言葉に、それを受け取った少年少女は涙を流す。

 

 目を抑えて泣きじゃくっていた少女も、母親から託されたものを受け止めたのだろう。見えぬ目で、画面の向う側を《視て》いた。

 それを確認した銀髪の女性は、安堵したように表情を緩めた。女性たちの故郷を思わせるような紅蓮の瞳は、静かに細められている。

 女性の視線の先には、愕然とした表情を浮かべる見知った女性――ベルフトゥーロの姿があった。彼女に向けて、女性は気楽な調子で微笑む。

 

 

『あとは任せたわ、ベル』

 

『っ、イニー!!』

 

 

 ベルフトゥーロは女性の名前を叫んだ。本名か愛称かは分からないけれど。

 焦燥感に満ちた彼女の顔を見た女性は、困ったように微笑む。

 

 

『酷い顔ね。ベルもアランも、他の皆も、顔面崩壊しているわよ』

 

『酷いことを言っているのはキミの方だろう! 『僕がしわくちゃになるまで面倒見て、最期はきちんと見送ってやる』って言っていたくせに!! ……は、話が違うじゃないかぁ……ッ!!』

 

 

 彼女に名を呼ばれた男性――アランは、顔をぐちゃぐちゃにしたまま声を荒げた。

 『嘘つき』と夫は妻を罵る。対して、妻は慈しみの眼差しで夫と娘を見つめていた。

 これから死ぬとは思えないほど、綺麗な笑みだった。

 

 紫電が爆ぜる。焼け焦げたような黒/無機質な銀色が蠢き、女性の体の半分が『飲まれた』。皮膚に裂傷が走り、突起と鮮血が飛び散る。彼女は痛みに呻き、それを見た夫と娘が悲鳴を上げた。

 激痛に身を苛まれているというのに、女性は微笑んだ。額に脂汗を浮かべ、口から血反吐を吐きながら、次世代を担う子どもたちに想いを託す。最期の命を、燃やしながら。

 

 

『お願いよ、“最愛の星(マリアネラ)”』

 

『“来るべき日”のために。どうか、希望を守り抜いて――!』

 

 

 女性はそう言って、目を細めた。

 

 

『アラン、マリアネラ、スヴェトラナ、ウィリアム、エドモン、マリレーヌ、ブラッツ。そして、私の親友……ベル、エルガン。……貴方たちに出会えてよかった。――愛しているわ』

 

 

 最後に、愛する/大切な人々への想いを残して。

 その映像は、断線した。

 

 そうして次に映し出されたのは――クーゴたちにとっては見覚えのある日本家屋。季節の花が咲く庭を臨む縁側は、今こうして自分たちが座っている先に広がるものと瓜二つだ。

 

 

「初めて私が《視た》虚憶(きょおく)は、『この場所で、貴方が私に寄り添ってくれた』光景(モノ)でした」

 

 

『おいしいごはんは、心と体を元気にしてくれるんだよ。お菓子も然りだ』

 

『無理に全部食べようとしなくていいよ。少しづつ、ゆっくりでいい。『しっかり噛み締めて食べる』ことを守って、元気になってくれたらそれでいいよ』

 

『――あいにく、俺は“優雅に輝く最愛の星(キミの表情)”が陰るのを、黙って見ていられる人間ではないんだ』

 

 

 季節の花を象ったねりきりを差し出したのは、青を基調にしたコーディネートで纏められた着物を身に纏う東洋人男性。丁度、今のクーゴと瓜二つだ。

 彼は口数少ないものの、的確に相槌を打ち、ただ静かに少女の心に寄り添っていた。穏やかで静かな時間が流れる。傷を悼み、向き合い、丁寧に弔うためのモノだった。

 

 

「――素敵な人だなって、思ったんです」

 

「――そっか」

 

 

 後ろの方から響く喧騒は遠い。いつもの面々のいつものやり取り。蒼海が立ち上がって玄関に向かう姿が視界の端を横切る。『後から合流する』と言ってた面々がやって来たのだろう。

 先程よりも人数が増えて賑やかになったはずなのに、やっぱり彼や彼女らの喧騒は遠いままだ。今はどうしてか、イデアと並んで庭を見ている時間を慈しんでいたいと思う。

 静かで穏やかな時間だった。これが薄氷の上で成り立つかりそめのものであっても、『ここで積み重ねていた時間があるからこそ、いつか本物の平和を掴みたい』と思う程に。

 

 




この世界線におけるネームド犠牲者名簿(暫定)
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・絹江
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