問題だらけで草ァ!! 外伝 -Eternity in a moment- <通常版> 作:白鷺 葵
1.書き手はACⅥ勉強中のにわか。
2.あまり深く考えないで書いているため、世界観のすり合わせがふわっとしている。
3.ハーメルンに掲載している拙作『問題だらけで草ァ!!』シリーズ×スパロボシリーズ(00参戦作品のみ)×ACⅥのクロスオーバー。
4.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
5.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
6.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
7.『問題だらけで草ァ!!』はZシリーズ、OE、UX、BX、Vを下地にして混ぜたような架空の世界線となっている
8.オリキャラ多数。
9.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
10.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
11.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
12.原作および登場人物のキャラクター崩壊。
13.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替え
14.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味している
15.『トロフィーを獲得しました 【夜明けの鐘と花吹雪】』のネタバレに該当する情報が記載されている(重要)
16.『トロフィーを獲得しました 【夜明けの鐘と花吹雪】』のネタバレに該当する情報が記載されている(重要)
17.『トロフィーを獲得しました 【夜明けの鐘と花吹雪】』のネタバレに該当する情報が記載されている(重要)
このような作品でよろしければ、どうかよろしくお願いします。
虚憶:大惨事エキシビジョン
「V.Ⅳ……いいや、ラスティ。――俺は、お前を殺さなくてはならない……!」
「いや待って待って待って!? 落ち着いてください! 目的おかしくなってますよ!?」
拮抗した状況に一石を投じたのは、この場に乱入してきた2機のACだった。
片や、621にとっては親同然の存在たる“
片や、621とその友人・エアの友人であり、G5イグアスのパートナー・コーデリア。搭乗機体はヘッドブリンガーを
後者のカラーリングは淡い紫を基調としつつ、差し色やデカールに鉄紺色とシグナルレッドが使われている。前者はイグアスの機体――或いは彼の瞳の色、後者はコーデリアの波形の色が由来なのだろう。機体の印象もあって、『カラードレスを身に纏っている花嫁』に見えなくもない。
観客席にいたG4ヴォルタが腹を抱えて爆笑し、G6は女性の名を叫ぶなり顔を覆って「あの子に結婚はまだ早い」と発狂していた。G6は以前『故郷に弟妹がいる』と零していたことから類推するに、件の女性名は妹の名前なのだろう。コーデリアの機体に、未来の妹の姿と重ね合わせたのだろうか。
621が分析できたのは此処までだった。憎悪や憤怒を孕んだウォルターの声が響き渡った直後、HAL826がラスティ/スティールヘイズ・オルトゥス目掛けて突っ込んできたからだ。武装の打ち/撃ち合いを始めた2人の間に割り込むようにして、621はブースターを噴かして飛び込んでいく。
「ウォルター!」
「ろ、621……っ!?」
まさか621が割り込んでくるとは思わなかったのだろう。ウォルター/HAL826はほんの一瞬、怯むような所作を見せた。
その隙に、ウォルター/HAL826に押されていた――或いは、猛攻を捌きながら喰らいつこうと試みていたラスティ/オルトゥスが体勢を立て直す。
「大丈夫?」
「ああ、問題ない。……キミがいるからな」
モニター越しにラスティが笑う。どこか嬉しそうに、幸せそうに――けれども不敵に、夜明けの空と同じ色の瞳をぎらつかせていた。
先程の打ち/撃ち合いを行っていたときは酷く――不自然な程に――気負ったような気配があったが、621とその愛機が
そんな2人と2機を目の当たりにしたウォルター/HAL826は、通信越しに息を飲んだ。だが、次の瞬間、再び憎悪や憤怒じみた圧を発する。それはラスティ/オルトゥスに向けられたものだった。対して、621にはどこか悲痛な――もしくは縋りつくような圧が滲み出ている。
「……621。お前に――……お前に結婚は、まだ早い……!!」
「ウォルターくん、キミは……」
「ぶわーっはっはっは! ワシら以上に往生際が悪いな!!」
「何が“
「彼も、あんな顔であんなことを言えるようになったのか……」
血涙を滲ませるような調子で絞り出されたウォルター渾身の叫びに、旧い友人たちが何とも言え無さそうな顔をした。
尚、彼らの後継者に当たる面々の殆どが男性のため、恐らく、彼らは本当の意味でウォルターの気持ちを理解できるわけではないのだろう。
地球連邦軍総司令は呆れ、流派東方不敗の名を冠したマスターアジアは“灰被り”の女傑と共に爆笑し、可変型戦艦の艦長は苦笑しつつも優しく目を細める。
彼らの友愛がウォルターに向けられている光景をもう少し見ていたかったのだが、ここは戦場。上に“催し物”という3文字が付いていようと油断は厳禁だ。周囲の様子も気になるが、まずは目の前の相手に集中しなければ。
621とその愛機は、ラスティ/オルトゥスへと視線を向ける。ラスティ/オルトゥスも小さく頷き返し、ウォルター/HAL826へと向き直った。彼の親心を真正面に受け止めた上で、621は高く飛ぶ。飛んで見せる。――最愛のひとと一緒に。
オルトゥスに寄り添うこの機体は、その未来を思い描き、そんな明日へ思いを馳せながらアセンを組んだのだ。機体の色やデカールにも拘った。例えウォルターが相手であろうと、負けるわけにはいかない。
「随分と面白いことになっているな」
「あ゛ァン!? 高みの見物と洒落込んでんじゃねーぞ、赤い彗星!」
「今の私はクワトロ・バジーナだ。それ以上でも以下でもない」
「油断大敵ですよイグアス! ――レッドガンの流儀、『泣きを見せたらもう一発』!」
「危ねぇ!!」
コーデリア/メリノエから繰り出された一撃をスレスレで回避したイグアス/ヘッドブリンガーは、即座にミサイルで反撃した。コーデリア/メリノエは回避することを選び、2人は事実上の仕切り直しになる。
混迷する友軍の様子を見ていたシャア・アズナブル――否、この“催し物”にはクワトロ・バジーナ名義で登録・参戦していた“金髪グラサンノースリーブ野郎(イグアス談)”/百式は、こんな状態でも悠然と構えていた。
――だが、その余裕は、更なる乱入者の存在によって吹き飛ばされることとなる。
その機体の趣向を一言で表すなら、“花嫁”という単語が相応しい。彼女の愛機たるキュベレイと同じ配色――ピンクと紫系列で纏められたその機体からは、得体の知れぬプレッシャーを感じる。
脳の大半を焼かれた621に彼女の心の機敏は分からないが、彼女がシャア/クワトロに対して並々ならぬ愛憎を抱いていることは薄っすらと察していた。プレッシャーの源は、恐らくソレ由来だろう。
だが、“花嫁”を模した趣向が凝らされた機体は彼女だけではない。続々と、似たようなコンセプトと思しきMSがこの場に降り立つ。彼女たちの矛先は、先程まで暢気に構えていたクワトロに集中していた。
「世界が自分を中心にして動くと思うなよ。私を含み、どれだけの女が貴様に泣かされてきたか」
「大佐の嘘つき! 戦いが終わったら、ナナイもララァも忘れるって言ったじゃない!」
「ふふふ。……大佐、たまには痛い思いでも如何ですか?」
花嫁の趣向が施された機体は、クワトロ/百式に照準を合わせている。彼は無言であるが、恐らく冷や汗をかいていることだろう。
その代わりと言っては何だが、先程までキレ散らかしていたイグアスはクワトロ/百式を指さして笑っていた。
621の僚友であるアムロとカミーユも、イグアスと似たような調子で大爆笑。621の対戦相手チームにいたジュドーとバナージは遠い目をしていた。
そんな中、一番最初に啖呵を切った張本人/花嫁たちのチームを率いる長――ハマーン・カーンが、堂々と宣言する。
「年貢の納め時だぞ、シャア」
「冗談ではない!!」
ハートをまき散らしながら先陣を切るハマーン!
脱兎のごとく逃げ惑うシャア/クワトロ!
続々と飛び出していくシャア/クワトロ被害者の会に属する女性たち!
「ははははははっ! シャア、なんて情けない奴!」
「ざまあ無いな! それはそれとして大尉。誰と結婚するにしても、式には呼んでくださいね!」
「「うわぁ……」」
それを見て爆笑するアムロとカミーユ!
凄く面倒くさそうな顔をして呆れるジュドー!
眉間の皴を深くしてドン引きするバナージ!
どこからどう見ても地獄絵図以外の何物でもない光景を指さして、ウォルター/HAL826は言い放った。
「あれを見ろ、621。意図や作為の有無を問わず異性を狂わせてきた最低野郎――“女の敵”が辿る、妥当な末路だ」
***
「盛大に親子喧嘩をしてきたようだな」
「あれは親子喧嘩と言えるものかな……?」
621たちが参加していた“催し物”のプログラムがひと段落ついた後の控室で、刹那に声をかけられた。621は小首を傾げながら考え込む。
621にとってのウォルターは『廃棄処分寸前だった旧式の強化人間だった自分を引き取ってくれた恩人』であり、『父親のように慕う存在』でもある。血縁的な繋がりはなくとも、大切な人だ。
ウォルター側は『自分は父親として不適格だ』と言って頑なに
だが、今回の“催し物”で『乱入者』として降り立ったウォルターは、自身の愛機/HAL826を駆ってラスティ/オルトゥスに襲い掛かった。文字通りに大暴れした。
621の『父親的な存在』であることを頑なに否定し続けた彼は、あの戦いでは“誰がどう見ても満場一致で『父親』だと認める”姿だった。特に、ラスティ/オルトゥスに対して狂ったように集中砲火する有様は、ウォルターの旧知の友――フリット、東方不敗、カーラ、ジェフリーらも酷く驚き、納得していたという。
父と娘の関係として“娘の彼氏を認めない”という話題があるが、あのときのウォルターの姿は
『俺は認めない……! 絶対に認めないからな……!』
『気持ちは分かるけど落ち着きなさいな。私もじきに姑になるし、貴方は舅になるのは決定事項なんだから』
『621、621ィィィィ……!!』
東方不敗に俵担ぎされて運ばれていく中、ウォルターはじたばたと抵抗しながら621へ手を伸ばしていた。
そんな彼を見上げつつ、――こちらもウォルターの旧友の1人――プロスペラが苦笑交じりに揶揄っていたのが印象的である。
尚、東方不敗とカーラは相変わらず爆笑していたし、フリットとジェフリーは顔を見合わせため息をついていたが。閑話休題。
「俺には、
どこか遠い場所に視線を向けて、刹那は零す。
621は刹那・F・セイエイについてのことをよく知らない。彼女と一緒にいることの多い面々の共通点や、彼女自身や彼女の関係者がポツポツと零した内容の範囲しか把握していなかった。
“幼少期にテロリスト集団から洗脳され、自らの手で故郷を壊し、両親を手にかけ、友人たちを死に追いやった”、“ガンダムに救われたことで、戦争根絶を夢見るようになった”程度。
本人は『自業自得』とは言うが、刹那は
「それでも、ふと思うんだ。“もしも両親が生きていて、俺が
「刹那……」
「お前がラスティと並び立ったときのハンドラー・ウォルターのように暴走するのか、シンダー・カーラや東方不敗のように腹を抱えて笑うのか、フリット・アスノやプロスペラ・マーキュリーのように呆れるのか、ジェフリー・ワイルダーのように過去へ思いを馳せるのか、クーゴ・ハガネのように諫める側に回るのか……」
顎に手を当てて考え込んだ刹那であったが、結局その答えを出すことは出来なかったのだろう。どこか寂しそうに、悲しそうに目を伏せる。「想像もつかないな」と零した彼女の声が震えているように感じたのは、きっと気のせいではない。621は何かを言おうと口を開いたが、結局何も言えなかった。
621には過去はないため、過去の自分に関わっていた人々――両親、友人、知人の一切合切――が今どこで何をしているかも分からない。一時は在庫として
対して、621の伴侶/ラスティの過去はハッキリしている。少年時代に家族を亡くし、予てから師事していた解放の帥叔・フラットウェルに育てられた。その後は密偵として企業勢力に与し、目的のために己の手を汚しながら暗躍している。彼が本来の居場所に戻れたのはつい最近のことで、一部の同胞とは蟠りやしこりが残ったままだった。
個人的な見解であるが、『ラスティの家族関係は複雑な方だ』と621は思っている。
幼少期から“家族のため、故郷のため、『ルビコンに夜明けを拓く』と語る
誰に何を言われようと、同胞の命を摘み取ろうと、企業関係者を陥れようと、621に銃口を向けても、徹頭徹尾真っすぐ『ルビコンに夜明けを拓く』という理想と正義、或いは信念と意志を貫き続けた。――それはとても、尊いものだと思う。
「……刹那の気持ち、何となくだけど、分かる気がする」
「621?」
「私も、『ラスティの家族や、私の先輩――“
621が
「みんなはどんな顔をするんだろう。ウォルターのように暴れるのかな。カーラや東方不敗のように笑うのかな。フリット総司令やプロスペラ社長のように呆れるのかな。ジェフリー艦長のように過去を懐かしむのかな。クーゴ少佐のように諫めるのかな。……全然想像つかないや」
「……そうだな」
621は想像の翼を羽ばたかせたが、それは何処にも辿り着かないまま消えてしまった。
その事実を噛み締める621に寄り添うようにして、刹那は静かに目を閉じる。
今この瞬間は、『失われた未来に思いを馳せることを許してほしい』と思ったのだ。
◆◆◆
“『クロスアライズ』を題材にした大河ドラマを、『クロスアライズ』当人たちで撮影することになった”――字面だけで“スタッガー状態にパイルバンカーを撃ち込んだ”ような威力がある。それを快諾する我が部隊も大分アレだが、内情は大分複雑だ。何せ、これは盛大なプロパガンダ映画だから。
621はウォルター経由でこの依頼を引き受けていたし、ルビコンでの戦乱に関わった現地民や現地に居合わせた人々も参加している。“あの戦いでルビコン解放戦線に与して戦った面々”や“企業の命令に反してクロスアライズに与した結果、責任を取らされて首を切られた元企業所属のAC乗り”たちが、諸々の事情――主な理由は出演料目当て――で参加していた。
「あはははは! この脚本クソだわ!! ――そうだ、俺が書いたんだった。死のう」
「うわー! 誰か脚本家を止めろー!」
撮影現場は和気藹々としているけれど、気を抜けば即座に撮影クルーが発狂するから大変だ。今もこうして、プロパガンダ用の演出に耐えられなくなった脚本家が“突如真顔になり、窓から身投げを図ろう”としている。
その数時間前は、撮影担当者が“トイレに閉じこもって、酸性洗剤とアルカリ洗剤を混ぜる”という科学実験を行おうとしていた。更にその前は、小道具担当が“撮影用の倉庫に閉じこもって練炭を焚く”という遊びを試みていた。
撮影班は『クロスアライズ』の熱狂的ファンで、『この映画に関われることを誇りに思う』と語っていた。だが、意気揚々と引き受けた仕事の内情が“各政府や団体にとって都合のいいプロパガンダ映画を作れ”というものだったことを思い知らされたらしい。
仕事を全うしようとする姿勢はプロであるが、個人の主観的に色々なものが“解釈違い”だったのだろう。そのギャップに耐え切れなかった結果があの挙動である。
撮影クルーの手配を行った人材派遣企業・悪の組織
最終的には『全編通して視聴した後に『死にたい』って思う出来栄えなら、プロパガンダ作品としては完璧』と死んだ魚みたいな目で語っていたので、撮影クルーの奇行はまだまだ続くのだろう。
「おじさまと刹那の結婚式シーンを入れろー!」
「そうだそうだー!」
「現実では問題山積みで実質お預け状態なんだから、創作物内くらい式を挙げさせろー!」
「じゃないとステラたち、撮影協力しないからー!」
問題は撮影クルーだけではない。脚本の方針に納得がいかない『クロスアライズ』関係者が盛大にボイコットをすることもあるためだ。
今だって、元エクステンデット――所謂、遺伝子操作を受けていない人間を素体にして調整された強化人間の類で、機体を動かす生体パーツの側面が強い――のステラ・ルーシェ、アウル・ニーダ、スティング・オークレーが撮影をボイコットしている。彼女らの愛機は搭乗者の意思を忠実に再現しており、撮影セットの一部を盛大に破壊していた。
そんな3人に対し、必死の説得を行うのはシン・アスカが駆るインパルスとグラハム・エーカー/此度の役名はミスター・ブシドーが駆るスサノオであった。この2名は諸々の事情から元エクステンデットの面々と関りがある。特に後者は、一時は上司と部下の関係であり、後にグラハムの計らいで生体パーツの扱いから解放されていた。そういう経緯も、3人の行動に影響したのであろう。
「あれ大丈夫?」
「どうにかなるだろ、編集で」
「音声は後付けすればいいからね」
「そっかー。じゃあ盛大にやっても大丈夫だな!」
大きなトラブルが発生しているにも関わらず、撮影班はとても楽しそうにカメラを回している。
地球圏の番組でもあったのだが、ドラマのNGシーンや撮影裏話で何か作るのだろうか。
プロパガンダ的に、今のやり取りは全カットされそうな気がするのだが。
「流石デストロイガンダム。適当に放り込むだけでド派手な戦闘シーンが取れるぞ」
「元々『市街地に放り込むだけで簡単、且つ、お手軽に被害が出せる』と言われた兵器だからな。実際、市街地に投入された際に挙げた戦果……いや、戦禍か。やばかったもんな」
カメラの背後でそんな会話をしているのは、つい数時間前に“撮影用の倉庫に閉じこもって練炭を焚く”という遊びに興じていた小道具担当と、“ロープの端を輪っかに結んで、そこへ首をかけてぶら下がる”という遊びに興じようとした大道具担当だ。
相変わらずエクステンデットの3人は大暴れしていたし、インパルスやマスラオが必死になって説得をしていたし、事態の重さを察した面々――主に今撮影しているシーンに登場予定だった者たち――が説得、及び鎮圧に参加していた。
特に、エクシアを駆って繰り出した刹那やはやぶさで駆け付けたクーゴは、口や態度では「しょうがない」と言っていても、どことなく
現状を一言で言い表すなら『大怪獣総進撃』や『天下分け目の大決戦』という有様だ。予定にないトラブルだと言うのに、状況に飲み込まれた撮影班はいつの間にか目をキラキラさせながらカメラを回している。出番待ちの人々もやんややんやと歓声を上げながら現場の行く末を見守っていた。
その後ろでは、悪の組織の次期
621の記憶が正しければ、彼が指示出した企業はブライダル関係や貸衣装を扱う社名だったように思う。
「関係費用は僕のポケットマネーでどうにかする。使いどころが無くて桁が増えるだけだったから丁度いいさ」
彼はその言葉で、手続き関係をゴリ押しした。金の力は偉大である。621も独立傭兵――依頼を受ける立場故、金の大事さはよく知っていた。
手続きを終えた次期総帥は満面の笑みを浮かべて振り返る。『大怪獣総進撃』、或いは『天下分け目の大決戦』を繰り広げる面々に向かって、メガホンを片手に叫んだ。
「そこのみんな! いい知らせがある! ――たった今、キミたちの要求は、僕のスポンサー権限で通されることが決まったよ!!」
***
刹那が選んだ衣装は、露出が少ない中東風のドレスだった。デザインはシンプルであるが、ヴェールやスカート部分には控えめながらも繊細な刺繍が施されている。
『それでいいのか? 他にも衣装は沢山用意されているようだが……』
『ああ、これでいい。……いや、これがいいんだ。――母が着ていた婚礼衣装と、似ていたから』
ドレスを選んだ理由をグラハムに語る刹那の横顔は、どこか照れ臭そうに――それ以上に、寂しそうに見えたのは、621の思い過ごしなどではないのだろう。
そんな恋人の姿を見て何を思ったのか、621には分からない。彼は静かに微笑んで相槌を打った後、『キミによく似合っている』と頷いていた。
2人の結婚式シーンをどうするかで色々と揉めたが、最終的には実際に演技する側である刹那とグラハムの意向を汲み、シンプルなものへと落ち着いた。
『ステラ、フラワーガールやりたい!』
『じゃあオレも!』
『俺はリングボーイで!』
『あ、待ってください! 私だってフラワーガールやリングガールやりたいですぅ!!』
『じゃあ、私が刹那の母親代理に座ります!』
『えっ……!? そ、それじゃあ、ニールがイデアの夫ってことに……!?』
『ち、違……そんなつもりじゃ……』
『隊長の親族席どうします?』
『副隊長殿でいいんじゃない?』
『どうして??? どうして俺でいいと思った???』
式を進行するに当たって、誰に何を割り振るかという話題でも大分揉めていたが、長くなりそうなので割愛するとしよう。閑話休題。
『クロスアライズ』の面々は事実上のエキストラ参加であるが、祭りが好きな面々が多いため、本物の結婚式と大差ない盛り上がりっぷりだ。
「ブレイバーン、歌います。YOASOBI、『祝福』」
「訴訟」
「ああもしもし? 弁護士さんですか?」
撮影中でも羽目を外すのが『クロスアライズ』の恒例行事。頼んでもいないのに余興を始める者だって沢山いる。声を上げたブレイバーンもその1人だ。
彼は自分の手で編集したと思しきミュージックビデオの映像を背後に投影し、満面の笑顔でマイクを構えた。そんなブレイバーンに対し、エリクトが笑顔で中指を立てる。目が一切笑っていないあたり、相当お怒りであることは明らかであった。
目が笑っていない小姑が言い放つか否かのタイミングで、株式会社ガンダムの社長・ミオリネが弾かれたように動き出す。父デリングの面影を色濃く滲ませた横顔からは、怨敵であるブレイバーンへの徹底抗戦が見て取れた。プロスペラも同じ構えを取る。姑と嫁の共闘が始まろうとしていた。
それは見事に反映されたらしい。直後、成り行き(???)でブレイバーンの監視役(???)にされているイサミの元に、彼の上司から苦情の電話が入る。
「アオ3尉、ガンダムから苦情が来ているぞ! どういうことだ!?」
「じぶんにはわかんないです」
中々のパワーワードが飛んできた。頭を抱えて呟くイサミのメンタルが心配になる。
だが、そんなやり取りを交わした直後にはもう、既に事態は悪い方へと転がっていたらしい。
「アオ3尉、株式会社ガンダムから『ブレイバーンを訴訟する』という通達が来たぞ! どういうことだ!?」
「なにもわからないです」
上司に対する受け答えもままならない。そろそろメンタル関連の治療を受けなければ、パイロットとしてやっていけなくなりそうだ。
だが、中指を立てて不気味に笑うエリクトが、裁判の準備を粛々と進めていくミオリネが、そんな2人を圧のある笑みを浮かべて静観するプロスペラが、許してくれる気配はない。
勿論、『クロスアライズ』に組み込まれる“刹那とグラハムの結婚式シーン”の撮影も止まらなかった。撮影クルーはこのやり取りすら組み込むつもりのようだった。
トラブルに見舞われても、新郎は気にすることなく朗らかに笑っている。対して、新婦は眼前で発生する騒動や新郎の様子を見てため息をついた。けれど、最終的には――苦笑交じりではあるけれど――柔らかく微笑むあたり、無礼講もまんざらではないのだろう。
621は生物学上女性である。紆余曲折の末、強化人間になった際に焼け落ちてしまった機能――主に情緒面――を取り戻しつつあった。その影響か、撮影とはいえ“周囲から祝われる新郎新婦”の姿に惹かれてならない。
(――綺麗)
事実上の招待客兼エキストラに対して積極的に対応するグラハムに、仲の良い面々からの声援や祝福に対して控えめに微笑むことで応える刹那。
立場も性格も正反対だというのに、世界情勢によっては殺し合った経験だってあっただろうに、2人は最後まで手を離さなかった。仲間たちも、そんな2人を祝福している。
<いいなぁ>
<――そうですね>
621が心の中で呟いた/頭で思うだけに留めたソレを拾い上げたエアが、二つ返事で返答する。
<人間の婚姻、及び結婚式関係についてはアーカイブで把握していた程度ですが、実際に見ると迫力が違いますね。荘厳さも、煌びやかさも……>
<私も、覚えている限りでは、誰かの結婚式を見たのは初めてだ>
<私は肉体を持たない生命体故、婚姻や結婚式の必要性に関して理解が及んでいるとは言い難いです。ですが……演技とはいえ、とても綺麗だと思いました。“女性の夢や憧れ”の象徴になった理由が分かったような気がします>
<……そうだね。私もそう思う>
少し前の621であったら、結婚式の光景を見ても無関心で無感動のままだったろう。けれど、621は今に至るまで、沢山の人々と出会った。友人や戦友も沢山出来たし、心を通わせた“好きな人”だっている。
確認するように視線を動かせば、621の左隣で花嫁と花婿を見つめる“好きな人”――ラスティの横顔があった。右隣では、静かな面持ちで花嫁と花婿のやり取りを眺めるウォルター。どちらも621にとって大切な人たちだ。
<いつか、レイヴンも、ラスティの隣で、ああいったドレスを着て、傍に立つのでしょうか……>
<エア?>
<――少し、羨ましいです。……私もいつか貴女のように、誰かを愛し愛されて、ああやってみんなから祝福して貰う日が来るのでしょうか>
――エアはそれきり、結婚式のシーン撮影が終わるまで沈黙を保っていた。
◆
「――俺は■■■・■■■■。キミの存在に、心奪われた男ッス!」