問題だらけで草ァ!! 外伝 -Eternity in a moment- <通常版>   作:白鷺 葵

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【諸注意】
 1.この作品は『大丈夫だ、問題しかないから』シリーズのリメイク版です。
 2.『ガンダム00』を原作に、アニメ版『地球へ...』、及び『スーパーロボット大戦』や『Gジェネレーション』シリーズ等の要素とクロスオーバーしています。
 3.主人公含め、オリキャラが多数登場します。
 4.キャラ改変や原作崩壊、原作死亡キャラの生存要素があります。
 5.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 6.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 7.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 8.基本はギャグとラブコメ色強めですが、時々シリアスになります。
 9.読了後に如何なる負の感情を抱かれても、書き手にはどうすることもできません。

 10.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替えになります。
 11.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味しています。
 12.良くも悪くも飯テロ要素があります。注意してください。

 13.本編のネタバレを彷彿とさせるであろう表現が多々含まれています。ご注意ください。

 14.この小説は2023年の10月時点で明らかになっている情報をベースにして執筆しているため、後の公式作品で発表・開示された情報とは矛盾が発生する可能性があります。

上記が大丈夫の方は、本編をお楽しみください。



人の心の光/Z

 

 巨大な隕石の上で、様々な機体が戦いを繰り広げている。隕石を落とそうと画策するフル・フロンタルと、奴を止めるために暗躍していたシャア・アズナブルのぶつかり合いだ。

 

 自分たちが所属しているZ-BLUEは双方に振り回されたものの、シャアとフロンタルの真意を知ったことで、元祖側と共闘するに至った。隕石落としに関わっていた関係者の一部も、元祖側へ味方する。

 どちらも同じジオン――赤い彗星の名を背負っている団体/人間のはずなのに、選んだ答えは正反対。フロンタルは永遠に繰り返される停滞を、シャアは未来へ進むための革新を選んだ。

 

 

「風神の次に、雷神と日輪の使いが続く! クーゴ!」

 

「了解、グラハム!」

 

 

 ゼクス/トールギスに続き、クーゴとグラハム/2機のブレイヴが攻撃を仕掛ける。2人が乗っているのはつい最近ロールアウトされたばかりの試験機であるが、隕石の周辺で戦う数多のロボットたちに劣るようなモノだとは言わせない。機体性能の壁にぶち当たって頭を抱えるような時期はとうに過ぎ去っていた。

 グラハムの駆るブレイヴ――ミッドナイトブルーの指揮官機は、相変わらず無茶苦茶な機動力と変形を見せてくれる。スタンドマニューバを駆使して飛び回るという芸当は、技の生みの親であるグラハム以外だと一握りくらいしか出来ない代物だ。最も、グラハム率いるソルブレイヴズ隊隊員(たち)の必須技能であったが。閑話休題。

 クーゴもまたグラハムに続き、隊長の討ち漏らしを掃討した。敵機撃墜とパイロットの脱出を見届けたのと、突撃し続けていたグラハムがこちらへ舞い戻って来たのはほぼ同時。視線を向ければ、フロンタルの傘下についたザクがグラハムを追撃しようとしているところだった。相棒の意図を察したクーゴは、即座に援護及び迎撃行動へと移った。

 

 

「グラハム少佐、クーゴ少佐! 援護します!」

 

 

 動いたのはクーゴだけではない。ゼクスもクーゴとグラハムに援護してくれた。自分たちの攻撃を喰らった機体は爆散する。寸でのところでパイロットは脱出したようだ。

 

 破界事変と再世戦争の縁から秘密組織プリベンダーに所属することになったクーゴだが、最近は専ら『機体の無力化』や『討ち漏らしの掃討、及びトドメ役』を担うことが多かった。理由は単純明快、『グラハムとゼクスが前線での切り込み隊長を買って出るため』だ。

 グラハムとセクスは、破界事変から再世戦争を共に駆け抜けた戦友同士である。クーゴがゼクスと共闘したのは破界事変のときで、再世戦争のときは敵対していた。その経験故に、彼の実力はよく知っている。特に敵対していた再世戦争のときは、人間としての瀬戸際に立たされた相棒を助けてくれた恩もあった。

 

 互いに礼を述べあった後、ゼクスは別の新手と対峙する。グラハムもいつも通りの突撃っぷりを披露したため、クーゴは即座にフォローに回った。

 敵兵を的確に無力化、或いは撃破していくグラハムであるが、相手も引く気は無いらしい。捨て身覚悟でグラハムへと突っ込んでくる。

 

 

「っ、グラハム下がれ!」

 

 

 両者に割り込むような形で、クーゴは愛機を駆った。右手に小太刀、左手に太刀の二刀流――剣道における逆二刀の構えのまま突撃し、小太刀で相手量産機のサーベルを受け止める。敵機体のコックピットの位置は把握済みなので、敢えて関係のない場所を狙った。

 攻撃を切り払い、即座に突きに転じる。手ごたえを感じて離れれば、敵機が爆発した。際どかったが、パイロットは無事に脱出できたらしい。それを確認したクーゴはすぐさま指揮官機に視線を戻す。彼の機体に傷は無い。

 

 

「感謝するぞ、クーゴ!」

 

「そっちが無事でよかった」

 

<――革新者(イノベイター)として覚醒したキミならば、人類はより良き方向へ進まなくてはならないことも理解できよう>

 

<それは誰かが強要することではない!>

 

 

 2人がほっと一息ついたときに《聴こえた》のは、フル・フロンタルの《聲》。奴が対峙していたのは、同じ部隊に所属する刹那・F・セイエイだ。

 赤の他人が愛しの君を掻っ攫おうとしている気配を察知したのか、グラハムとその愛機が弾かれたように首を動かす。視線の先では、奴と刹那が問答を繰り広げていた。

 

 

<それでは人類が持たないのだよ。私が見た未来では>

 

<それを変えるためにするべきことは戦争ではないはずだ! 未来を放棄したお前に、この世界を好きにはさせない!>

 

 

 フロンタルの決意は固く、彼女でもそれを解くには至らなかったらしい。きっとそれはフロンタル側にも言えることだろう。

 奴はイノベイターとして目覚めた刹那だからこそ、彼女のことを「自分のやり方の正当性を理解できる人間のはずだ」と考えていた。

 だが、先の言葉通り、2人は決裂。対話による未来を選んだ刹那/ダブルオークアンタと、フル・フロンタル/ナイチンゲール――否、人の意志を集める空っぽな器に徹した紛い物がぶつかり合う。

 

 その死角から、刹那/クアンタを狙うザクの姿が見えた。グラハムが目を剥くが、丁度そのタイミングで、彼女を狙っていた機体が何者かの突撃を喰らって弾き飛ばされる。

 クアンタを守る様に現れたのは、革新者の相棒として共に戦場を駆けた/何度も戦場で相対峙した好敵手にして理解者――或いは“同胞”と呼ぶべき女性(ひと)――イデアだ。

 

 あからさまにグラハムはほっと息を吐く。彼の気持ちが分かるような気がして、クーゴも同じように息を吐いた。

 

 

「戦況は?」

 

「相変わらず混戦状態だな」

 

 

 グラハムの問いに答えたタイミングで、刹那/クアンタがシャア/ササビーと入れ替わる。酷く似通った赤い機体/“赤い彗星”同士が向き合った。彼らの会話が《聴こえて》くる。

 

 

<結局、こうなったか>

 

 

 重々しく口を開いたのはシャアの方だった。纏うプレッシャーも、抱えてきた想いも、並大抵のものではない。

 対して、次に口を開いたフロンタルは、どこか飄々とした――がらんどうな調子で返答する。

 

 

<並行世界間の同一人物は、基本的に『同じ世界に存在しない』そうですよ>

 

<だから、私とお前は『“赤い彗星”の座を賭けて戦う』と言うのかね?>

 

<『似た者同士は反発し合う』ということですよ>

 

<不快だな。お前のような男と同じにされるのは>

 

 

 己の感情をそのまま吐き出したシャアは、キッと眦をつり上げた。味方とはいえ、寒気を感じてしまう程のプレッシャーが放たれる。

 

 

<お前の出自の目星はついている……! だが、それとこの戦いは無関係だ! トレーズもゼロも手段はそれぞれだったが、共通しているのは『世界の未来を信じての戦い』だった!>

 

<それは私も変わりませんよ>

 

<違うな、フル・フロンタル。お前は未来など求めていない!>

 

<――だから?>

 

 

 フロンタルが苛立たし気に元祖の方を睨んだ。先程まで軽々しい響きだった男の声に、ジワリと感情が滲み出る。

 他人の感情を詰め込むための器に徹して生きてきた男が見せた、生々しい感情。思わず零れてしまったのか、或いはそれを零した本人すら無自覚なものだったのか。

 それを目の当たりにしたシャアは、意地悪く――けれどどこか安堵したような調子でヤツを挑発した。

 

 

<ようやく生の感情を見せたな>

 

<そうまでして私を怒らせたいか、シャア・アズナブル!>

 

<フル・フロンタル! 人間を導く者は、人間でなくてはならない! お前のような存在に世界は渡せない! 私と共に、時空修復の人柱になって貰うぞ!>

 

 

 片や、世界を救うため、一時的に自分たちの敵になった壮年の男――シャア・アズナブル。

 片や、壮年の男に()()()()ために生み出され、巨大隕石を落とそうとする仮面の男――フル・フロンタル。

 

 2つの赤がぶつかり合い、ビームサーベル同士が火花を散らした。両者共に機体性能・パイロットとしての技能はほぼ互角。勝利を掴めるか否かは、パイロット自身の想いや覚悟にかかっている。

 これはクーゴの個人的な意見だが、想いや覚悟はシャアの方が上だ。破界事変や再世戦争、或いは友軍たちや当人が語っていた“それ以前の戦い”で、人の想いに触れてきたためである。

 心の中に虚無を抱えるフロンタルに、人の想いに触れて数多の奇跡を見てきたシャアが負けるはずがない。敵として、或いは仲間として、共に戦ってきたからこそ知っている。

 

 フロンタルはシャアに対して感情を露わにしており、知らず知らずのうちに、自分自身の振り回されている様子だった。そのためか、動きや言動に精彩を欠いてきている。勿論、それを見逃す程、元祖赤い彗星は甘くは無い。

 

 そうして、勝敗は決した。

 

 負けたのは、フロンタルが駆る機体――ナイチンゲール。どこからどう見ても満身創痍なのだが、奴は諦めるつもりはないらしい。

 ふらふらとした軌跡を描きながら、奴の機体は隕石の中心へ飛んでいく。シャア/ササビーもまた、奴を追いかけて隕石の中心へ向かった。

 ササビーがナイチンゲールに掴みかかる。フロンタル/ナイチンゲールは振りほどこうと藻掻くが、シャア/ササビーによって抑え込まれてしまった。

 

 

「このままお前は、私と時空修復をやってもらう!」

 

「私が同意すると思うか、シャア? 私は人類の未来に対する覚悟がある。――そう、この生命を投げ出すだけの」

 

 

 フル・フロンタルが駆る機体の動きがおかしい。それに気づいた刹那とヒイロが息を飲む。

 

 

「奴はまさか……!」

 

「自爆する気か!」

 

「ダメ! 特異点が揃わないと、時空修復ができない!!」

 

「そうまでして、この地球(ほし)を滅ぼしたいってのか……!!」

 

 

 それを聞いて声を上げたのは、刹那を援護するような形で戦場を飛び回っていたイデアだった。クーゴも思わず眉間に皴を寄せる。

 フロンタルがかたるモノは覚悟ではない。そんな高尚なものなんかじゃない。がらんどうだった器から滲みだしたのは、酷くねばついた感情だ。

 

 

「なんという執念だ……!」

 

 

 ねばついた感情の答えを言語化したのはグラハムだった。彼は苦々しい表情で赤い機体を睨む。再世戦争時代の頃の黒歴史を思い返していたのも、彼の表情が陰った要因なのかもしれない。

 

 周囲には『若気の至り』と弁明していたけれど、それで誤魔化し切れたとは思っていないだろう。勿論、グラハム本人もそれに気づいている。『互いの事情に協力し合うけれど、相手の事情に土足で踏み込む真似はしない』というスタンスがZ-BLUEに浸透しているが故に、誰もそれを掘り返そうとしないだけだ。

 でも、違う。グラハムが抱いていた感情(モノ)は、フロンタルのような狂気的なものではない。滅びに向かって邁進するためだけの、空っぽでがらんどうなものではないのだ。支離滅裂な愚行の奥には、何処までも一途で真っ直ぐな――それ以上に切実な、愛と祈りがあった。

 

 クーゴはそれを口に出そうとしたが、迫ってきた気配によって中断された。

 のっぴきならない状況であるにも関わらず、更に事態を混迷させるような輩が姿を現したためだ。

 

 

「何だよ、シャア・アズナブル。特異点が2人だってのに気づいていたのか」

 

 

 野次馬根性丸出しの調子でちょっかいをかけてきたのは、自分たちと敵対する異星人の総大将――ガドライト・メオンサム。奴は地球人――その中でもとりわけシャアのことを侮っていたらしく、愉快そうに手を叩く。

 ガドライトの見立てでは、シャアの計画は失敗すると予測していたという。「決行したとしても中途半端に終わると思っていた」と語った異星人は、飄々とした調子で――それでも目は一切笑っていなかった――こちらを挑発する。

 Z-BLUEが特異点のことに気づいたのは、ガドライトがヒビキにちょっとしたヒントを与えたためだ。シャアがZ-BLUEを敵に回すような真似をしたのは、ガドライトから情報を開示されたから。奴はこちらに対して「感謝してほしい」などと言うが、それが皮肉であることは予想がつく。

 

 勿論、この場にいる誰1人として、ガドライトに感謝する者はいない。

 全員が厳しい眼差しで奴を睨んだ。一同を代表し、シャアが唸る様に吐き捨てる。

 

 

「ガドライト・メオンサム……! 貴様に感謝することなど、何1つ無い!」

 

「あ、そう……。――だったら、こういうのはどうだ?」

 

 

 ガドライトは一瞬真顔になったが、すぐに笑った。次の瞬間、隕石が恐ろしい勢いで加速し始める。しかも最悪なことに、阻止限界点の突破寸前。これが落ちたら、時空修復どころか地球が滅亡してしまう!!

 

 

「出てくる度に余計なことばかり……!」

 

「……自傷行為の是非は棚上げしとくけど、今は罵倒の方にしてくれよ?」

 

「こんなときまで手厳しくしなくとも良いじゃないか!」

 

「こんなときだからだよ、このおばか!」

 

 

 クーゴの指摘に何の意味が込められていたのかを、グラハムはきちんと《理解(わか)って》いたようだ。むっとした様子でこちらを睨む。後でフォローを入れておかなくては。いや、そもそも後があればの話だが――なんて考えている間にも、隕石と時空修復を取り巻く状況は悪化していった。

 時空修復を行う準備は未だに出来ていないし、隕石は加速を続けている。このペースだと、時の牢獄を破壊するよりも先に地球へ落下するだろう。フロンタルは時空修復を行うつもりはない。どう考えても八方塞がりだ。

 

 

「全ては無駄なのだよ、Z-BLUE。大人しく隕石を見送るがいい」

 

 

 フロンタルが得意げに笑う気配がした。しかし、奴の言葉に「はい分かりました」と答えるような人間などZ-BLUEにはいない。

 

 

「それでもっ! 俺は……俺たちはっ!!」

 

「ブライト!」

 

「……すまんが、みんなの生命をくれ……!」

 

 

 バナージとアムロが叫ぶ。仲間たちもみんな、モニター越しに顔を見合わせ頷き合うのが《視えた》。クーゴもまた、グラハムやプリペンダー・ウィンドらと顔を見合わせ頷き合う。

 それを目の当たりにしたブライトが、重苦しさを滲ませながら指示を出した。真っ先に返事をして飛び出したのはカミーユだ。Z-BLUEの面々も頷いて、即座に隕石の下部へと終結する。

 

 自分たちのすることなんて、とっくに決まっていた。

 

 

「ガドライト・メオンサム! 私もZ-BLUEも……そして、人類もお前の思い通りにはならない!」

 

「お、おい。まさか……」

 

「そのまさかだ!」

 

「――たかが石っころ1つ、ガンダムで押し出してやる!」

 

 

 珍しく狼狽するガドライトに対し、ヒビキとアムロが言い切る。彼らの返答とZ-BLUEの行動に対して混乱したのか、それとも呆れていたのか――ガドライトの真意には触れられない。けれど、ガドライトは何もしなかった。食い入るようにして、大特異点となった隕石の運命を見つめる。

 

 

「無駄だ、Z-BLUE。大特異点は落ちるよ」

 

「そんなの、やってみなけりゃわからないだろ!」

 

 

 「運命は変わらない」と嘲るフロンタルに対して反論したのは、運命(ディスティニー)の名を冠するガンダムを駆るシン・アスカだ。彼の言葉を皮切りに、Z-BLUEは隕石を押し返す。文字通り、魂を燃やし尽くす勢いで。

 摩擦を受けた隕石と自分たちの機体が赤く発光する。Z-BLUEの仲間たちは誰1人として諦めてなどいない。伊達に、多元歴の地球に攻め込んできた侵略者を撃退してきたわけではないのだ。

 

 しかし、待てど暮らせど時空修復が始まる気配はない。しびれを切らしたアムロがシャアに訊ねるが、まだ準備が進まないようだ。

 

 準備ができない原因は、他でもないフロンタルである。奴はこの状況に置かれても尚、「時空修復に手を貸すつもりは一切ない」という持論を曲げなかった。このまま放置すれば自分諸共命を落とすと理解していても、奴にとっては他人事でしかない。何故なら――フル・フロンタルは、自分自身の生死に対し、一切感心がなかったためだ。

 多くの面々からその精神性を糾弾されたフロンタルだが、その精神性故に、彼や彼女らの言葉に心を動かされることはない。奴は自身の意見や見解を曲げることなく、「隕石さえ落ちれば、世界は正しい方向に進む」とまで言い切った。「そうすることで、自分自身の役目も終わる」とさえ。

 

 

「フル・フロンタル!」

 

「!? これは――シャアの意識が流れてくる!?」

 

「互いにサイコ・フレームを搭載した機体に乗っていたのが幸いしたな!」

 

 

 涼しい顔をしていたフロンタルであったが、勝利への確信とその余裕は崩された。シャアが双方の機体に搭載されていたサイコフレームを共振させ始めたためだ。

 

 

「私の意識を抑え込むつもりか! そうして、お前の望む世界に時空を修復するのか!?」

 

「私とお前は、人々の意志を集める器に過ぎない! 未来を決めるのは、この世界に生きる全ての人だ!」

 

 

 シャア・アズナブルの言葉は、フル・フロンタルが生み出された理由そのもの。だけれども、シャアの出した答えは、フロンタルが出した答えとは真逆だった。

 『人の意志を集める器たれ』と望まれて生まれたフロンタルは、人々の意志を集める器――人類の総代として、「自分が世界を管理し、人々を導かなくてはならない」と考えた。

 『人の意志を集める器たれ』と願われていたシャアは、人々の意志を集める器――人々が持つ平和への祈りを体現する存在の1人として、困難に立ち向かう戦士たちの仲間として戦うことを選んだ。

 

 

「聞こえるかい? ミスター赤い彗星」

 

「トライア博士……!」

 

「博士、準備は!?」

 

「OKだ。何とか間に合ったよ」

 

 

 そう言って微笑むトライア博士は、シャアから色々と協力を打診されていたらしい。Z-BLUE陣営に所属しつつも、Z-BLUEを裏切った(ように振る舞った)彼の計画を成就させるため、裏で手を回していたと言うのだ。

 

 

「こちらアスラン・ザラだ。ソレスタルビーイングと悪の組織から提供されたGNドライヴ、及びESP-Psyon搭載型のGNドライヴにより、GN粒子の拡散とサイオン波の出力強化は完了した」

 

「これで各コロニーの間はGN粒子とサイオン波で繋がったも同然だよ!」

 

 

 アスランやルナマリアたちは、嘗てZ-BLUEの前身組織に所属していた者たちである。今回の戦いには同行していなかったけれど、別動隊として飛び回っていたようだ。

 デスティニーに乗っていたシンがぱっと表情を輝かせる。彼の上官、或いは先輩に当たる軍人も、「後はお前たちに任せる」と言って激励してくれた。人類の未来を託してくれたのだ。

 他にも、地上では別の軍部が協力してくれたらしい。あちらもGN粒子の散布、及びサイオン波の出力強化は完了していると言う。所属部隊も組織も何もかもを超越して揃えられた切り札が大盤振る舞いされていた。

 

 

「全ての人の意志を、GN粒子とサイオン波で繋ぐのか!?」

 

「無茶だ……! 幾らGN粒子とて限界がある!」

 

 

 驚愕するストラトス、所属組織上GN粒子の詳細に詳しかったティエリアが、思わずといった調子で苦言を呈した。次の瞬間、トライア博士の通信に割り込みが入る。

 

 

「サイオン波だって万能じゃないよ。でも、未来を望むヒトの意志は――ヒトの心を繋ぐ手段(もの)は、それだけじゃあないはずでしょ?」

 

「グラン・マ……!」

 

「1人や1つじゃ、限界なんてたかが知れている。だからみんなでやるんじゃないか」

「ティエリアー! 頑張ってー!」

「こっちも頑張るから、そっちも頑張ってよね! 僕らの妹分の結婚式がかかってるんだから!!」

「や、やめてください! 恥ずかしいから!!」

「いいじゃん。さっきから『ライルと結婚式挙げられますように』って思念波垂れ流しなんだし」

「そういう問題じゃないんですよ!!」

 

「隕石を押し返しに行くには間に合わなかった分、手助けさせてください!」

「チームトレミー、頑張って!」

「こんな形でしか力になれなくて済まない。だが、我々も出来る限りのことはさせて貰おう!」

「あっずるい! 俺も混ぜてくれよぉ!?」

 

 

 得意げに微笑んだのは、民間企業・悪の組織の女総帥(しゃちょう)・ベルフトゥーロ。Z-BLUE及び私設部隊ソレスタルビーイングに所属しているクーゴの好敵手たるイデア――及び、ミュウにとっての指導者だ。

 彼女の後ろから激励を飛ばしてくるのは、悪の組織に所属する幹部たちだった。ティエリアの同胞に当たる面々と、派遣社員でありソレスタルビーイング公認の2ndチーム。

 

 

「隊長! 副隊長! 頑張ってください!」

「そちらで直接手助けができないことが無念ですが、我々も全力を尽くします!」

「副隊長ー! 戦いがひと段落したら鍋パーティーするって約束ー! 俺、楽しみに待ってますからー!」

「アンタたちならこの程度、すぐに片付けられるでしょ? サクッと終わらせて、さっさと帰って来てくださいね」

 

「みんな……!」

 

 

 次に画面に映し出されたのは、自分たちと別行動をとっていた部下たちだ。Z-BLUEに合流することを選んだクーゴとグラハムの背を押してくれた戦友たち。彼らの中心で手を振るのは、クーゴとグラハムにとっての年上の親友――ビリー・カタギリだ。

 

 

「2人とも、絶対無事に帰って来てよ!」

 

「っ……! ――ああ……、ああ! 当然だ、我が友!」

 

 

 一瞬感極まったように息を詰まらせたグラハムだが、すぐに不敵な笑みを浮かべて頷き返した。

 

 

「敢えて言わせてもらおう! 『必ず帰還する』と!!」

 

 

 そう宣言した彼は、隕石へと向き直った。

 クーゴもそれに倣い、隕石へ向き直る。

 

 

「弟夫婦の結婚式を賭けられちゃ、ますます引くわけにはいかないな……! ヤンチャな義妹の願いを叶えてやるのも義兄さんの務めだ!」

 

「それでやる気になるのはどうかと思うなァ!」

 

 

 ロックオンに対しストラトスがツッコミを入れた。双子の兄弟漫才は通常運転のようだ。話していることは場違いだけれども、そんな馬鹿話が出来る世の中を平和と呼ぶ。――それこそが、Z-BLUEが守ろうとしているものだった。

 「ヒトの心を繋ぐ手段(もの)は1つではない」と語ったベルフトゥーロの言葉を肯定したトライア博士が微笑む。彼女はGN粒子やサイオン波だけでなく、他の手段も用いたようだ。数多の世界が多元的に結びついたからこそできる、異世界同士の技術交流。その真髄が示される。

 フォールドクォーツを用いて作られたGN粒子の中継ステーション、AGがため込んでいたZチップ――超高純度のDECによって生み出された精神波の領域、先の大戦で火星に残されていたZONEを用いた増幅アンプとスピーカー……文字通り、この世界の人類が持ちうる限りの手札が切られていた。

 

 集めた意志は、大特異点である隕石へと送られる。

 ここからが正念場だ。隕石を押し戻しながら、クーゴは仲間たちを見回す。

 

 

「刹那!」

 

「わかっている! クアンタムバーストを使う!」

 

 

 アムロに名前を呼ばれた刹那が、間髪入れずクアンタの力を解放した。緑の粒子が吹き上がり、人々の意識をつなぐ空間が広がる。

 

 

「アルト、フォールドウェーブシステムを作動させろ! バナージ、カミーユ、俺についてこい!」

 

 

 アムロの指示を受けたアルトがシステムを起動し、カミーユが先陣を切ってアムロの元へと向かおうとする。

 だが、名前を呼ばれた2人の機体は体勢の制御に不安があるらしく、バナージが躊躇いを見せた。

 

 そのとき、アクエリオンを駆っていたアマタとガンバスターを駆っていたノリコが声をあげる。

 

 

「バナージ、EVOLの腕に捕まれ! 無限拳でユニコーンを支える!」

 

「カミーユくんはガンバスターに捕まって!」

 

 

 それを皮切りに、他の仲間たちも次々と動き出した。文字通りの総力戦。

 

 

「EVAのA.T.フィールドで壁を作ります! その間なら移動できるはずです!」

「ラムダ・ドライバも作動させる!」

「ヒビキくん!」「分かっています! ジェニオンのD・フォルトも全開で行きます!」

「蜃気楼のドルイドシステムで状況を分析し、最適なルートを算出する!」

「ゼロ、データを俺にも回せ。お前の計算とゼロシステムの予測を組み合わせれば、更に精度が上がるはずだ」

 

「みんな!」

 

「見てください! ネオ・ジオンのモビルスーツも隕石を支えようとしています!」

 

 

 ぱっと表情を輝かせたカミーユの傍にいたバナージが驚きの声をあげた。先程まで敵対していた量産型モビルスーツが、隕石を押し返そうとするZ-BLUEを手助けしに来たのだ。未来を諦めなかったZ-BLUEに感化されたのだろう。

 

 

「しかし、彼らの機体では、これ以上は……」

 

「地球が駄目になるか、ならないかなんだ!」

 

「やってみる価値はありますぜ!」

 

「お前たち……」

 

 

 しかし、援軍に加わった面々の様子を見てアムロが表情を曇らせた。そんなアムロに対して、ネオ・ジオンのパイロットたちは力強く笑い返す。

 呆気にとられたような声を漏らしたシャアへも、同じように笑い返していた。

 

 

「『自分のやってきたことを棚に上げて』って言うのはナシですぜ、総帥」

 

「今なら俺たちも、総帥のやろうとしたことが分かります! だから……!」

 

「……すまん」

 

「――謝るくらいなら、最初から、こんなやり方をしなけりゃいいんですよ!」

 

 

 シャアの謝罪にクーゴが既視感を抱いたとき、割り込むように響いた声があった。シャアへ喝を飛ばしたのは若々しい青年士官・ギュネイで、彼の言い分(ド正論)も既視感がある。

 

 脳裏に浮かんだのは、再世戦争の頃に迷走していた相棒の姿。事実上の孤立無援状態で戦い続けていた仮面の男が、必死になって抗っていたときのことだ。精神的に追い込まれていた彼にとって『それしか選択肢が無かった』のは事実だが、それはそれとして当時の頃を『若気の至り』や『黒歴史』として認識している。

 クーゴや刹那たちの奔走によって相棒は“還ってこれた”。その当初も、時間が経過した今も、彼は当時のことを申し訳なさそうに謝ることがある。その度に、彼の関係者がこぞって口にする言い分(ド正論)とほぼ同じだった。クーゴがそれに思い当たるのと、ギュネイと同年代の面々が表情を輝かせて彼の名前を呼んだのはほぼ同時。

 

 

「お前も来てくれたのか!」

 

「当然だ! 総帥の無茶を止めるのは俺の役目だからな!」

 

「……そうだったな」

 

 

 ギュネイは誇りと自負を持って堂々と言い切った。

 力強く微笑み返す副官の姿に感極まったのか、シャアの声が震えている。

 深い感動と感謝の念を感じたのは、きっと気のせいではないのだろう。

 

 

「…………ふ」

 

「こんな状況で何笑ってるんだ」

 

「大したことではないよ。――シャア・アズナブルも、私と同じ果報者だと思っただけさ」

 

 

 柔らかな微笑を浮かべたグラハムの言葉に、思わずクーゴは面食らった。何か言い返そうとして口を開くが、結局言葉は出てこない。グラハムは上機嫌に笑うと、再び隕石へ向き直る。

 

 敵も味方も関係ない。永遠の停滞よりも、無限の未来を選んだ人々による総力戦。見ていると胸が熱くなる。クーゴはコックピットを仰いだ。隕石の表面が視界を占めていたが、視界の切れ目からわずかに宇宙が見える。自分の背中には地球があるのだと考えると、負けていられない。

 人々の心が大特異点へと集まっていく。このチャンスを逃すまいとするかのように、アムロがカミーユとバナージに呼びかけた。2人は頷き、サイコ・ウェーブでシャアをフォローする。次の瞬間、大特異点である隕石の周囲に緑の光が漂い始めた。光に触れたとき、たくさんの声が耳を打つ。頑張れ、負けるな、未来を、明日を――聞いているだけで力がみなぎってきた。

 

 

「感じる……。これが、全ての人たちの意志か……」

 

「不思議だ……。こんな状況なのに恐怖は感じない。むしろ温かくて、安心を感じるとは……」

 

「だが、この温かさを持った人間が感情を制御しきれず、自滅の道を歩んでいる……! ならば、より良き世界に導く指導者が必要になる!」

 

 

 感嘆の息を漏らすアムロとシャアを横目に、フロンタルは尚も抵抗する。しかし。

 

 

「わかってるよ! だから、世界に人の心の光を見せなけりゃならないんだろ!」

 

 

 アムロが語気を強めて叫ぶ。より一層、緑色の光が眩く輝いた気がした。

 

 

「感じろ。これが人の心の光……未来を望む力だ!」

 

「ぐっ!!」

 

「ララァ! 私を……世界を導いてくれっ!!」

 

 

 シャアの叫びに呼応するように、彼の機体が白い光に包まれる。

 まるで、機体の背中に白鳥の羽が生えたかのようだ。

 

 

『――世界を』

 

 

 誰かが微笑む気配がしたと思った瞬間、この場は緑色の光に飲み込まれた。

 

 

 

 

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