問題だらけで草ァ!! 外伝 -Eternity in a moment- <通常版>   作:白鷺 葵

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【諸注意】
 1.この作品は『大丈夫だ、問題しかないから』シリーズのリメイク版です。
 2.『ガンダム00』を原作に、アニメ版『地球へ...』、及び『スーパーロボット大戦』や『Gジェネレーション』シリーズ等の要素とクロスオーバーしています。
 3.主人公含め、オリキャラが多数登場します。
 4.キャラ改変や原作崩壊、原作死亡キャラの生存要素があります。
 5.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 6.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 7.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 8.基本はギャグとラブコメ色強めですが、時々シリアスになります。
 9.読了後に如何なる負の感情を抱かれても、書き手にはどうすることもできません。

 10.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替えになります。
 11.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味しています。
 12.良くも悪くも飯テロ要素があります。注意してください。

 13.本編のネタバレを彷彿とさせるであろう表現が多々含まれています。ご注意ください。

 14.この小説は2023年の10月時点で明らかになっている情報をベースにして執筆しているため、後の公式作品で発表・開示された情報とは矛盾が発生する可能性があります。

 15.本編の重大なネタバレに関連する要素が含まれています(重要)
 16.本編の重大なネタバレに関連する要素が含まれています(重要)
 17.本編の重大なネタバレに関連する要素が含まれています(重要)


上記が大丈夫の方は、本編をお楽しみください。




焼野原広し、リターンズ/X-Ω ※

 

『グランドマザー『テラ』の生体端末、及び【無垢なる者】たちの停止を確認』

 

『今までの観測データから“人類、及びそれから派生した新人類種には『存在する価値は無し』”と判断』

 

『よって、プログラムはフェイズ4へ移行。人類、及びそれから派生した新人類種の殲滅を開始』

 

 

『――第1段階として、地球に対し、メギドシステムの全エネルギー照射を開始する』

 

 

 メギドシステムの群れ――その銃口が、地球に向けられる。

 仲間たちは必死になってそれを止めようとするが、間に合わない。

 

 

『――どけェェェェ、若造どもォォォォォ!!』

 

 

 そこへ別動隊として動き回っていた者たちが特攻し、幾つかの兵器が沈黙した。

 

 だが、そのうちの1つが止まらない。

 止めようにも邪魔されて、誰もそこまで届かない。

 今度こその万事休す。

 

 

「――ふざけんじゃねぇぇぇぇッ!」

 

 

 怒髪天を衝くとはこのことか。飛び出していったのは、黒幕に見切りをつけて逃げようとしていたアルケー/アリー・アル・サーシェス。奴は迷うことなくUターンを決めて兵器へ突っ込み、武装をフルに使って破壊の限りを尽くす。

 

 

「地球がダメになっちまったら、戦争できる場所が減っちまうじゃねえか!!」

 

 

 奴は戦争が大好きだった。今までも、『戦争がしたい』という理由で様々なテロを引き起こし、無辜の人々を傷つけてきたのだ。黒幕たちに加担したのもその理由だった。

 サーシェスに洗脳されてテロリストとなった過去を持つ刹那、サーシェスが作ったテロリスト組織によって家族を奪われた上に傷つけられたロックオンとストラトス兄弟が被害者筆頭である。

 この場にいるH.I.A.W.Dの面々は、サーシェスの言動――自分たちではカバーできなかったメギドを破壊しに行った姿を目の当たりにし、呆けていた。

 

 だが、最後のメギドを破壊せんとするアルケーの元へ数多のMD――センチュリオ・コンスラーレ及びインペラトールの群れが殺到する。MDたちにとってサーシェスは、H.I.A.W.Dの面々よりも優先度が高いらしい。みんなそちらへ突っ込んでいった。

 サーシェス/アルケーはMD共々メギドシステムを破壊していくが、圧倒的な数の暴力に晒されて追い込まれていく。それでもサーシェスは止まらない。自分が大好きな戦争を行うための舞台――青い星を守るために死力を尽くしている。

 

 そして――ついに、奴の執念がメギドの息の根を止めた。あふれたエネルギーがコンスラーレ及びインペラトールの群れを飲み込み、焼き払っていく。

 

 

「ははは……はははははッ! ――これでもっと、戦争ができる……ッ!」

 

 

 満身創痍のサーシェスが、狂気的な笑みを浮かべていた。すべての武装を失った死に体のアルケーはもう動けない。

 

 

「戦争だァ……! 戦争だぁぁぁッ! はは、あはははははははは――!!」

 

 

 ――そうしてそのまま、奴の機体はエネルギーの光にかき消された。

 

 光が晴れた先には何も残っていなかった。妙な余韻を残した沈黙が続く。

 ややあって、真っ先に口を開いたのはロックオン。

 

 

「『戦争を続けるためなら、世界すらも救ってみせる』ってか……!?」

 

「“自分(テメェ)が死んで戦争が終わる”ことよりも、“自分(テメェ)の望む戦争が起きるであろう場所を守る”ことの方が大事だってことかよ……!」

 

「……アリー・アル・サーシェスならやりかねないな。自分の望む戦争を引き起こすためなら、ある程度の振る舞いを心得ている男だ」

 

 

 兄がドン引きしたように、弟も渋い顔をしながら漂うデブリを見つめる。サーシェスのことをよく知っていたらしい刹那もまた、過去に思いを馳せるように視線を下ろした。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 H.I.A.W.Dの活躍で、人類は宇宙の危機から脱することができた。上位生命体オルブロとその関係者を撃破したり、危機が去った世界で燻る人間同士の争いを仲裁したりと大忙し。

 H.I.A.W.Dという部隊そのものは既に解散しており、所属していた各機関はそれぞれの道を選んでいる。地球連邦軍では、ロンド・ベルが中心になって立て直しに奔走中だ。

 

 地球連邦軍を私物化していた連中の実働部隊――それが、嘗て地球連邦軍で幅を利かせていた“独立治安維持部隊”である。奴らの悪評は未だに残っているため、新体制の地球連邦軍に向けられる眼差しは厳しい。失ってしまった信頼を取り戻すには、地道に成果を上げるのが1番だ。

 

 

「もうすぐ作戦の時間だ。ロンド・ベル隊各機、作戦は分かっているな?」

 

「勿論ですよ! テロリストが占拠している資源衛星の奪還と人質の解放! ケーンでも覚えられるぐらい簡単な任務だぜ!」

 

「そうそう! 俺でも覚えられるぐらい――……! おい、タップ! てめえ、それはどういう意味だ!?」

 

 

 今回派遣されたロンド・ベル隊の指揮官として任命されたのはグラハムだ。彼の問いかけに対してタップが任務内容を復唱し、それを聞いたケーンが通信越しに突っかかる。

 ドラグナー隊の面々の様子からして、ケーンとタップのやり取りは“いつものこと”らしい。雰囲気が緩む気配を感じ取る。成程、この部隊は隊長と副隊長のやり取りが清涼剤になっているタイプか。

 部隊の在り方に対して口を出す主義はないし、緊張を解きほぐすのは大事だ。ただ、リラックスしすぎるというのも問題である。最高のパフォーマンスには、適度な緊張感も必要不可欠なのだ。

 

 勿論、グラハム・エーカー少佐(御年アラサー)はそれを目ざとく察知したようで、和気藹々しているドラグナー隊に注意を促していた。

 

 

「リラックスするのはいいが、油断はするな。敵は追い詰められている状態だ。何をしでかすか分からん」

 

「りょーかいであります! 少佐殿!」

 

(……刹那とガンダムが絡んでなきゃ、文句なしに『立派な隊長』なんだけどなァ)

 

 

 今までの出来事――様々な意味で阿鼻叫喚図だった――を思い出し、クーゴはひっそり苦笑する。グラハムと刹那のお付き合いは順調――あくまでも、グラハム側の自己申告――とのことだ。

 脱線した思考回路を自分で修正しつつ、状況確認に耳を傾ける。トロワ曰く、『人質救助に向かったドルバック隊と連絡が取れないまま』らしい。何やら不穏な気配が漂っている。

 通信機能能力が高い機体であっても、ジャミングが酷くて交信できなくなっていた。“潜入先の資源惑星で何が起きているのか分からない”という状況だが、作戦開始までの時間は迫っている。

 

 例えドルバック隊との交信が復活しなかったとしても、任務は開始される手はずになっていた。そのことについては、ドルバック隊には任務開始前に伝えてある。

 資源惑星奪還を担当する部隊に出来ることは、友軍と人質の無事を祈りつつ、自分の任務を果たすことくらいだ。

 

 

「ソルブレイヴズ隊、何か《視聴き》できたか?」

 

「いーや。今のところは、何も」

 

「クーゴは?」

 

「いいや。何も《視えない》し《聴こえない》な。資源惑星に近づけば、何か《分かる》かもしれない」

 

 

 グラハムの問いに対して、隊を代表したジョシュアが答える。いつの間にやら出世していた彼の地位は、ハワードやダリルを上回っていた。独立治安維持部隊アロウズの終末期に良識派と合流し、アロウズの終焉に手を貸したという功績が評価されたためであろう。それはハワードやダリルも同じことだが、最終的には全員グラハムの部下としてソルブレイヴズ隊に集っていた。

 クーゴに問いかけてきたグラハムの様子からして、グラハムもクーゴ同様“何も《視聴き》できなかった”のだろう。彼もミュウの力を有しているとはいえ、平時ではギリギリ平均値レベルだ。一定の条件を満たすことで、初めて本来の力――ミュウの中でも最高/最強格の力をフルパワーで行使できるようになる。前大戦が終結する直前に“目覚めた”ときのアレコレは、今でも忘れられない。

 そんな会話をしているうちに、作戦開始時間を迎えたようだった。グラハムの音頭に従い、各々が動き出す。自分たちの動きに呼応するかのように、テロリストたちも部隊を展開し始めた。若者で構成されているドラグナー部隊――特に隊長であるケーン――だが、ギガノス戦役を戦い抜いた実力者だ。彼は見事な剣裁きを披露し、テロリストどもを叩きのめす。

 

 

「見事な剣技だ、准尉! 流石はギガノス戦役の英雄と呼ばれるだけのことはある!」

 

「へへ、なんのなんの! こんなの朝飯前ってね!」

 

「頼もしい限りだ! 私も負けてられん!」

 

「あ、こら!」

 

 

 嫌な予感――主に気苦労関連――を察知したクーゴが呼び止めるが、もう遅い。ケーンと意気投合、或いは触発されたグラハムが、彼と並んで突っ込んでいく。ああなったらもう止められない。

 タップのため息とぼやきが《聴こえて》きた。クーゴも同じようにため息をつく。ドラグナー部隊と共同で任務を行う度にこんな感じの光景が広がるのだ。ため息や愚痴を零したくもなる。

 

 クーゴはブレイヴの武装を展開する。ミュウとしての力を行使すれば、鮮やかな()()()が舞い上がった。他の機体もクーゴの意図を察したらしい。

 

 いつもの調子でミハタテンサイを掲げれば、光が爆ぜる。一瞬の浮遊感と共に、世界が一気に変貌した。先程までは“目視で確認するのがやっと”だった隊長機がはっきり視認できる。

 突然の乱入者を目の当たりにし、あちこちから隊長機を狙っていたテロリストたちの動きが止まった。それを、置いてけぼりにされた面々で掃討していく。

 クーゴも展開した武装を利用する形でテロリストの機体を薙ぎ払う。すると、クーゴの武装を目印にしたグラハムのブレイヴがスタンドマニューバで戻ってくるのが見えた。

 

 

「部下を置いて突撃するんじゃないよ、このおばか!」

 

「やはりな! キミなら来てくれると信じてたぞ!」

 

「お前の無茶を止められないんだから、フォロー(こう)するしかないんじゃないか! 次やったらお前の分だけ弁当ナシだからな!!」

 

「それは理不尽すぎやしないか!?」

 

 

 軽口を叩きながらテロリストを掃討する。ついでに、ミュウの力を使って周囲の状況を確認する。《聴こえる》のはテロリスト側の思考だけで、資源惑星にいるであろう人質の思考はさっぱりだ。

 

 

<――おかしい>

 

<何か《視聴き》したのか?>

 

()()()()()()()()()()

 

 

 資源惑星との距離は、任務開始時より随分と近づいている。普段ならば充分中の様子を《視た》り、《聲》を《聴き取れる》範囲なのに、何も《視えない》し《聴こえてこない》。

 襲い掛かって来たテロリストを武装で薙ぎ払いながら、クーゴは更に意識を集中させてみた。相変わらず《視えない》し《聴こえない》ままだ。

 クーゴたちのようなミュウが人質救出任務を行う際、人質や生存者の感情を《聲》として《聴こえてくる》ものなのだ。死への恐怖、生への渇望、襲撃者への憤り――それらが無いというのは異常事態である。

 

 コックピットに持ち込んでいた懐中時計に視線を向ければ、現在時刻がお目見えだ。時間的に、先行していたドルバック隊が人質を救出していてもおかしくはない。

 だというのに、相変わらず人質の感情を拾い上げることはできなかった。勿論、自分たちが助かったことへの安堵や喜び等も察知できない。……何だか、嫌な予感がする。

 

 ドラグナー隊の誰かが『人質の救助を確認次第、一転攻勢に出よう』と言っているのが聞こえたように思ったのと、ひと際悪意と狂気に塗れた存在の気配を察知したのはほぼ同時。

 

 

<戦争だァ……! 戦争だぁぁぁッ! はは、あははははははははッ!!>

 

 

 高らかに笑う男の声と、戦乱によって広がる一面の焼け野原。男の声にも、そいつが抱いているであろうヴィジョンにも覚えがある。

 しかもそいつは、以前の戦乱のアレコレで行方不明になっていた輩だ。いや、どこからどう見ても()()は死亡確定の光景だったはず。

 

 

「焼野原広し……?」

 

 

 前大戦であの場に居合わせたクーゴは、思わずアリー・アル・サーシェス関連のワードを口走る。あの戦いが終結して以降は一切口に出すことのないそれに誰かが反応するより先に、テロリスト部隊に新手が降臨する。

 

 機体はガンダムタイプ、機体のカラーリングは赤と臙脂色――前大戦でメギドに特攻し、破壊した際のエネルギーに飲み込まれて消滅したと思しき機体、アルケーガンダム。それを視認した途端、またヴィジョンが流れ込んでくる。

 資源惑星に踏み込んだテロリストたちが一番最初に行ったことは、人質たちを皆殺しにすることだった。人質の殲滅を確認したテロリストどもは、連邦へ救助要請を出す。奴らを指揮していたのがアルケーを駆るサーシェスだった。

 テロリストどもは奴の指示を受けて動き回っていた。断片的に《聴き取れた》のは、『“独立治安維持部隊”の再現』、『“独立治安維持部隊”は嘗て、テロリストごと人質を惨殺したことがある』。――此度のテロの目的はただ1つ。“新しい戦争を始めるための準備”だった。

 

 ドルバック部隊に関する情報が無いのが余計に嫌な想像を掻き立てられるが、戦慄している暇はない。

 クーゴは即座に“同胞”としての力を行使し、ロンド・ベル部隊全体に現状を報告する。

 

 

<各機体のパイロットに通達! これは罠だ! 資源惑星を占拠する過程で、奴らは真っ先に人質を全員殺害している! それを確認してから、資源衛星の爆破準備と連邦への救助要請を行った模様!>

 

「なんだって!?」

 

「オイオイ!? いきなりネタ晴らしかよ!? ショーのワクワク感が台無しじゃねえか!」

 

「――ハガネ少佐の言う通りだ! みんな、急いでここから離れろ! 資源衛星の爆発まで時間がねえ!」

 

 

 クーゴの《聲》はこの場全体に響き渡ったようだ。サーシェスには伝えた覚えはないが、何かを察知したことで“クーゴがサーシェスの作戦を見抜いた”と気づいたのだろう。不満そうに声を上げた。

 そのタイミングで飛び出してきたのは、人質救出任務に就いてから今の今まで音信不通だったドルバック隊の面々である。真人はクーゴの通達を補強するように声を張り上げた。

 

 慌てるロンド・ベル部隊を見ていたサーシェスが鼻で笑う。

 

 

「もうおせーよ」

 

「――ッ!」

 

 

 クーゴは即座にミハタテンサイを展開――旗を掲げた。イデアのガンダムのような防御力とまではいかないが、“資源惑星の爆発の威力を削ぐ”くらいのことなら出来るだろう。

 凄まじい衝撃に歯噛みしつつも、ありったけの“力”を防御機構へ回す。仲間たちの気配は未だ健在であることに安堵しつつ、クーゴは状況を確認する。

 

 

「アイツら……本当に資源衛星を爆破しやがったのか……!」

 

 

 ケーンはサーシェスを睨みつける。彼の言葉通り、資源惑星は跡形もなく消滅してしまっていた。

 

 合流したドルバック隊は資源衛星に潜入した際に見聞きした情報をこちらに伝えてくれた。クーゴがサーシェスを始めとしたテロリストたちの思考回路から又聞きした通りの光景――テロリストによって人質は既に全滅しており、資源衛星を爆発させるための準備も終わっていた――という。

 「ロンド・ベル隊の面々にこの情報を伝えなければと思ったが、ジャミングが酷かったのと、脱出に手間取ってしまって伝えるのが遅れてしまった」、「奴らは最初から人質を解放するつもりなどなかった」――ドルバック隊に所属しているルイとピエールは、悔しそうな様子でそう締め括る。

 

 

「あーあ、ひでえ奴らだぜ。まさか俺たちを殺すために、資源衛星ごと爆破するとはなァ」

 

<貴様……! 地球連邦軍に罪を被せて『アロウズの所業を再現する』ことで、新たな戦乱を呼ぶつもりか!>

 

「ぐあああああああ! クッソうるせぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 そんな自分たちを見ていたサーシェスは、楽しそうに笑いながら嘯く。

 だが、間髪入れず怒髪天になったグラハムの《聲》がこの場一帯に響き渡った。

 頭に直接衝撃を叩き込まれたようなものらしく、サーシェスが不快感を露わにして怒鳴り返す。

 

 味方判定であるはずのクーゴでさえ、反射で肩を竦める程の《聲》及び音量なのだ。怒りの矛先であるサーシェスにはどれ程の威力で叩きつけられたものだったか。あまり考えたくなかった。

 クーゴの思考回路が脱線している間にも、2人――グラハムがサーシェスに対して一方的に《聲》を大音量で叩きつけ、サーシェスがそれにキレ散らかしている――の怒鳴り合いは続く。

 

 

「テメェ、クルジスのガキの恋人(オトコ)だな!? 毎度毎度喧しい野郎だ! “あの女”に()()()()()頃も、クルジスのガキ(アイツ)が絡むとすぐに牙を剝くとこだけは変わってねぇ!」

 

<そう言う貴様は、()()()と何も変わらんのだな……! このテロを起こすために、幾つの人生を捻じ曲げた!? 無辜の人々を使い潰したのだ!? この悪鬼外道が!!>

 

「だからいちいちうるっっせえんだよ! 普通に喋れねーのか!? ――ったく……!!」

 

 

 あらかたネタバレされたサーシェスは非常に不服そうにしていたが、奴は飄々とした態度でこちらに向き直る。

 他のテロリストたちが撤退していくのを横目に、アルケー/サーシェスの一派が再び武装を展開した。

 

 

「俺たちの仕事はとっくに終わってるが、折角だからな。少し遊んでやるぜ!」

 

「テメエ、よくも――」

 

「――准尉、迂闊に深追いするな」

 

 

 普段の突撃癖を発揮してサーシェスに突っ込もうとしたケーンは、グラハムの言葉に動きを止めた。思念波では激しい怒りを露わにしていたはずなのに、実際に口から出た奴の声は普段より一段と低い。どこまでも冷徹な響きを宿している。実際に《視えた》グラハムの表情もまた、文字通りの真顔であった。

 そんなグラハムの様子に気づいたのか、サーシェスは愉快そうに目を細める。「みょうちきりんな仮面をつけていた頃のお前よりも楽しめそうだ」――サーシェスが笑みを深くすれば、反比例するが如く、グラハムの表情は、より一層鋭く研ぎ澄まされていく。怒りが一周回った結果の産物だろう。

 

 

「さあ、始めようじゃねえか! とっておきの戦争ってヤツをよォ!!」

 

「この世界に貴様のような輩の居場所はない。――大人しく、地獄へお帰り頂こうか」

 

 

 襲い掛かって来たサーシェス/アルケーを、ロンド・ベル隊の実質的な引率役をしているグラハム/ブレイヴが迎え撃つ。

 ブレイヴの気迫に気圧されていた他の面々も、サーシェスへの怒りを原動力にするかのように武装を展開した。

 

 

 

*

 

 

 

 文字通り、切った張ったの大立ち回りが繰り広げられる。

 

 ロンド・ベル部隊を迎え撃っていたサーシェス一派のMSの大半は、ロンド・ベル隊によってきっちり撃破されていた。残るは一派を率いる総大将のサーシェスだけである。

 サーシェスを相手取っているのは、奴の極悪非道なやり口に怒りを燃やしていたドラグナー隊のケーン・ワカバと事実上の引率役であるグラハム・エーカー。3人は互角の戦いを繰り広げていた。

 文字通りの一進一退。雑魚を片付けたクーゴたちが2人に合流しようとしたタイミングで、サーシェス/アルケーは攻撃の手を止めた。<戦争が楽しい(要約)>と嬉々散らかしてた男の感情が一気に凪いでいく。

 

 

「――まあ、この辺が頃合いだな」

 

 

 冷静に、冷淡に、サーシェスは自身の役割と依頼内容を反芻する。

 奴が()()()()反応をするときは、新しい戦争を楽しむための必要経費。

 

 

()()の花火は上った。後は大将が盛り上げてくれるのを待つばかりかね」

 

「祭りだって!? テメェ、これ以上何するつもりだ!?」

 

<成程。悪戯に戦禍を広げるつもりか!!>

 

「だからうるせえんだよお前! キンキン響きやがる……! これ以上、説教なんて聞いてられないな」

 

 

 噛みつくように吠えたケーン/ドラグナーと凄まじい圧をまき散らすグラハム/ブレイヴを無視するようにして、サーシェス/アルケーはこの場から離脱を図る。

 戦争の為なら引き際も心得ている男は、1番近くにいたケーン/ドラグナーとグラハム/ブレイヴを簡単に振り切って去ってしまった。

 

 

「くそっ! 逃げるんじゃない、卑怯者!!」

 

「――深追いは禁物だ。アレは、只者ではない」

 

 

 尚もサーシェス/アルケーに喰らいつこうとしたケーン/ドラグナーを制したのは、“この場にいる人間の中で誰よりも『サーシェスを追いかけたい』と思っている”はずのグラハム/ブレイヴだ。

 サーシェスへケーン以上の怒りを抱き、ケーン以上の咆哮を上げていた《聲》に対し、今こうしてケーンを呼び止めた声は何処までも低く平坦だ。そのギャップを至近距離から浴びたケーンは生唾を飲み干し、指示に従う。

 

 今のグラハム・エーカーは、引率役としてケーンたちの命を預かる身。グラハム個人の感情――今すぐサーシェスを追いかけて奴を討ち取りたい――を、部隊の引率役としての判断で押さえつけているのだ。

 

 彼がサーシェス/アルケーを追跡しなかったのは、蒼海の手駒として“飼われていた”頃に奴らの実力を見せつけられてきたこともあるのだろう。

 クーゴもまた、H.I.A.W.Dに所属する前の段階から、サーシェスと何度か相対峙したことがあった。故に、奴が単なる戦闘狂ではないことは把握済みだ。

 今のままサーシェスを追跡したとて、そこに罠が仕掛けられている可能性も無きにしも非ず。テロリストとの戦いで消耗している所を嵌められたらどうなるか。

 

 

「アレは、我々が思っている以上に狡猾な男だ。何か罠を仕掛けているやもしれん。今のまま追跡するのは危険だ」

 

「……了解です、少佐殿」

<――誰よりも『あの野郎を追いかけたい』と思ってる少佐殿(アンタ)がそう言うんなら、従うしかないじゃないか>

 

 

 グラハムの様子に思うところがあったのか、ケーンは特に反抗も暴走もすることなく頷いた。他の面々も――勿論、言いたいことや思うところは沢山あるが――引率役の判断に従って撤退準備を始めた。

 

 人質救出任務は失敗し、資源惑星の爆破を許してしまった。しかも、奴らによって“地球連邦軍は、テロリストの捕縛のために人質を見捨て、資源惑星を爆破した”という汚名まで着せられている。

 文字通りの泣きっ面に蜂であり、完全敗北と言えるだろう。最悪のパターンを考えなかったわけではないが、今回の件は考え得る限りの中でも文句なしの最悪だった。

 

 

(……悪い意味で、忙しくなりそうだ)

 

 

 脳裏によぎったのは、オフ会の約束をしていた相手――イデアのこと。サーシェス一派に出し抜かれてしまったのはこちらの責任だが、そのツケは彼女たちにも回って来るだろう。

 オフ会も延期にしなければならないのは勿論のこと、それ以上に、サーシェス一派が活発化した場合、彼女の所属する組織であるソレスタルビーイングも出ずっぱりになる。

 戦争根絶の理想を掲げる団体が、平和を壊そうとする連中の動きを見過ごすはずがない。地球連邦軍とは違う方向から黒幕を詰めにかかるはずだ。――短い間でも、共に戦ったから理解している。している、のだが。

 

 

「……ライバルとして失格だな、これ」

 

「……情けない限りだ」

 

 

 独り言のつもりだった。そこに返事が返って来るとは思っていなかったので、クーゴは思わず目を見張る。応えたのは、険しい面持ちのグラハムだ。

 ソレスタルビーイングに所属しているガンダムマイスター――刹那を愛しているが故に、彼女の好敵手に相応しくありたいと願っているが故に、今回の醜態に憤っているのだろう。

 

 しかし、起きてしまったことは無かったことにはできない。自分たちに出来ることは、ミスを挽回するために戦い続けることだけだった。

 

 

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