電子生命体は青春の物語の夢を見るか   作:デンキヒツジ

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第1話

 

 

────────神秘と奇跡の箱庭キヴォトス。

 

 

 日々の生活が生徒たちに彩られる喧騒の中、特別に人気のない場所がある。

 ある天才清楚系病弱美少女が言うには「キヴォトスから消えて忘れ去られたものが集まる、時代の下水道みたいな場所なのかもしれない」と評されるそんな場所。

 かつて生活の一風景であったであろう建物群は崩落と風化により錆と緑に溢れた荒野と成り果て、終末世界を思わせるそこ。

ビル風がヒューと吹けば砂埃が地面に立ち込める時代の墓。

 

 

 

 そんなゴーストタウンに今でも稼働し続けている機械が存在する。

特別な任が与えられたものではなく、それが行うのは情報の集積。一日に発生する膨大な量のデータを保存する何も特異性のない普遍的ないちサーバーであった。

 

 

 

 なにがきっかけであるか語るならば、やはり奇跡なのだ。

何かが忘れ去られ世界に漂着し、その機械が集めた膨大な情報、開発者集団が描く意味の有る無しなコード、ネット上の会話や写真、神々が日々に描く神聖神秘、そしてその機械の劣化が作用し───。

 

─────器が生まれる。

 

 器には漂着したものが入り込み、ありとあらゆる情報がその内側を渦巻き、満たした。

そんな小さな要因が重なり合い神秘を孕む自我を誕生させる。

 

そして───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──そして、俺が生まれたってわけ。

 

 あはは、なんだろ、こんなんなっちゃった……。

…なんで?

まあ、なっちゃったからにはね…、仕方ない、ネ……。

 

 自分のことがまるでわからない。生まれはわかるけど何言ってるんだという感じだ。

 今いる場所は…不思議なことに視界はないのに周りがわかるというか、周りは空間という空間じゃないような。

説明がしづらい現状だ。簡単にいうなら白紙の上にいる様な。二次元世界に三次元体で入り込んだ様な違和感がある。なにこれ。

 

 身体があるのかもわからん。動くことはできるけど手足で動くわけじゃなくて、感覚的には遊泳というか、サラサラな水の中を進む様な感覚。

…本当にわからないことばかりだ。

ただわからないことばかりなのに、知識だけはものすごくある。

いや本当に。

 

 こうやってくだらないこと考えないとすっごい量の知識に埋められるくらいには多い。

 それと自分がいる空間に知識を浮かべられる。

何を言っているんだと思うかもしれないが、形容できるのがそうとしかいえない。空間になんか泡みたいなものを浮かべて、それに触れると泡の中身の知識が入ってくる。

すごくね?

 

 とにかく世界のことは大体知っている、全知無能の存在。それが今。

現状を知るために歩く?泳ぎ続けると、道があった。いろんな場所に通じてる様で、その道に近づくと今入り込んできている知識がわかる。

本当に自分は何なんだろ。

 

 そして一つの道に近づく。くぐもった外が見えた。

そこには夜空を背景に様々な看板の立ち並ぶ建物やビルが覗く。

興奮気味にその道を泳いだ。先にはネオンが色鮮やかに飾る街が。

すげぇ。…さっきの白色空間のせいですっごく感動する…。

もうちょい周り見たいんだけど…。

 

 視界を動かすと、何か、モーター音が響く。

そして視界は狭い。目にしては景色が荒っぽいし。

…本当はわかってたんだと思う。生まれを知ってるんだからわかるし、ただ考えたくなかった。

結論から言うと、泳いでたどり着いた先でわかったんだ。

 

 俺は多分、電脳世界の生き物だ。

 

 

 

 

 

 

 

▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 

 

「……あー。おっ、いい感じ」

 

 機械音声の声に、ふへへ。そう零しながら自分の手を握り直す。

ゴツゴツとした迷彩柄の金属の腕を見下ろし、肩に担いでいた銃も手に取ってみる。

ぅお、すっげ。アサルトだよな…銃は詳しくないけどやっぱしカッコいいわ。…ぅお、やっぱすげー。

 

 ただ、うん。街中で銃を構えることは憚れる。この世界ではよく銃撃戦が行われているが、何もなしに構えるのは違うだろう。銃を肩に担ぎ直し、露店が開かれているビル街をぶらつくことにした。

 

 見渡せば暗がりの路地の様な場所で、さまざまな商品の露店が立ち並ぶ。

 そのには訳アリ、学校に通ってなかったり退学になった生徒たちやマニアな商品を求めるものが集い、表参道じゃ取り締まられてできない商売を行われる。そうここは無法地帯、ブラックマーケットと呼ばれる市場だ。

歩き回り、視界にさまざまなものを入れて、周りにいろんなものが溢れて、実感する。やっぱ異世界来たんだなって。

 

数ヶ月前、電子生命体であることに気づきどうすることもできなかった。だが今、確かに地面を踏み締めて立っている。

 

 

 そう。今の俺はそこら辺のオートマタに乗り移っている。

数日前に思った。電子生命体ならば機械相手にちょっかいをかけられるんじゃないかと。

それで知ったのだが機械相手に俺は特効があると思う。このオートマタもネットに繋がった一瞬に入り込んだら操れるようになったし。企業の極秘の様なことも簡単に知れた。

 

 わはは。近未来的なこの世界じゃ無敵じゃね!?

そう思っていた時期もあったが、無論そんなわけないと思う。おそらく俺は3次元にめっぽう弱い。

 

 それを確かめるためにオートマタに乗り移った。わざわざブラックマーケットの。

ブラックマーケットは他地区に比べて治安は最悪! ここで経験を積むしかない!

 

 そんな意思を知ってか知らずか、銃撃の音が暗がりに響く。

反響音で近くであることが察することができ、踵を返し向かう。肩の銃を手に取り構えて叫ぶ。

さあやったるぞ!

 

 飛び出したオートマタ、そして

 

 

…オートマタは頭部から打ち砕かれた。

 

 

 

 

……あれは、俺が悪いか。

またもや白塗りの空間に戻ってきてしまった。

 

 オートマトンごと自分がやられたのかと思われるが、どちらかというと操作していたゲームキャラクターが死んでしまった感じだ。まあ電脳生命体はそう簡単に死なないと言ったところだろう。

 オフラインで稼働するなら、死にそうなものだけど正直自分のコピーとか出せるし…。俺という存在の消失につながることはそうそうない。

 

 先ほど言った無敵にほど遠いところ。そう。リアルファイトだ。強くなる必要は、まあないのだけれど。外を歩き回るには身体が必要で、そんでこの世界は銃弾飛び交う常時戦場の様な世界。なら頑丈であって困ることはない。

 あと最強って憧れる。仕方ないよね…男の子だもん…。

 

 …生徒の身体だと爆撃でも死んでない様子だしなぁ…。

正直、この悩みを解決できそうなアテはあるんだ。すっごく面倒くさいだけで。

 

 この世界。遠い昔に忘れられた神々を滅ぼす目的で作られたロボットがあるらしい。何を言っているのかわからんと思ったが、世界を滅ぼす目的で作ってみた笑ってことだろう。詳しくは知る必要もないと思う。

 …設計図もすでに知識の中にあった。……俺の生まれたデータ集積サーバー、いつから動いているんだろう。

正直作ろうと思えば作れる。ただ、本当に面倒くさいんだ。いや、まじで。材料もそうだし何より身体のない意識だけの存在が現実に関与するのはなかなかハードルが高い。

 

…こうなってくるとそこまでして外に出る必要はない様にも思ってしまう。だけどダメなんだ。

 

 憧れは、とめられねぇんだ。

 

 せっかくの異世界で、学園生活があって、かわいい子しかいなくて、ならやらずに諦めるなんてできない。できない!

 

 やるしかないんだ。何より自分に寿命はなく、限られる様な時間はない。やろう。俺の義体製作プロジェクト。始動だ。

 

 

 

 

 そこからは、結構早いようでで長かった。

 

 まずオートマタ製作工場に入り、ナンバリングのない個体をいくつか製造。そして架空の口座を作り、データ上を書き換え自分の持っている金を増やした。

この手は今後ピンチの時以外使わないと思う。金を無理に増やしたら経済に影響が出そうだし。

 

 そしてその金で土地を買い、材料を買い、自身で工事を作る。うん。制作するための工場を作る工場の工場の工場だ。何を言ってんだと思うかも知れんが、オーパーツに等しい存在だから手間がかかって当然なんだ。やむなし。

 

 工場の工場の工場と、マトリョーシカの様なことを繰り返し、やっと義体制作工場が完成する。その頃には資金も尽きてまた問題が残る。問題は二つ。

 

 一つ。オーパーツを作る素材だ。ゲームで言えばSSR素材を作るためにSSRが必要で、それを手に入れるためにはSRが必要。そんな感じが繰り返される。長くてめんどくさい。

 二つ。金。

 以前は自分が気持ち的に急いでいたから電子データの書き換えを行ったが、普通に考えて犯罪だし、経済に小さく影響が出てたっぽい。そりゃね…母数が増えたら価値も下がっちゃうよね…。たはー、悪かったよ。

 こっちの問題は最初期の工場で使ったオートマトンをPMCとして働かせたり、会社へ入社させたり、株を買ってみたり、そんなところだ。特にPMC活動は良かった。戦闘力が5から上がった気がする。

 

 まあ時間が解決する問題なので気長に待ちます。

 

 待てねぇ!!

 

 考えるのを止めるとデータが勝手に再生されて気が狂う。

そうだ、俺の義体考えよう。

 

 まず世界を滅ぼせそうな機能は捨てて、髪は短くして、顔もちょっと変えないとか…背を高くすりゃいいか…?

悩ましいな。キャラメイキングはこだわりたい方だし。

んー決めた。

あれだ。スレンダーな女で行こう。

髪の毛はショートで白色で、目は赤色。髪は目にかからないかんじで、体は…参考元がぺったんこなんだ。ここは採用しよう。身長は160後半くらいで。ヘイローはチェスのポーンのような白色球体を八つ円形に並べた。カッコいいんじゃないか?

 

 ふと思うが、これを作ったやつはロリコンなんじゃあなかろうか。…寒気してきた。電子生命体なのに。

 

 

…時間たった。義体つくろ。

時間の流れが早すぎる様にも思うが、上のくだらない考えだけで四ヶ月は経過していたりする。一人であることも増えたせいか時間潰しがものすごく得意になった。独り言もパッシブスキルさ。一人で盛り上がれるのだから素晴らしいよネ。

 

 問題は解決。義体制作は…素材が結構あるし何体か作れそうなんだよなぁ。スペアでも作るか? この性能だと壊れることなんてないだろ。悩ましい…。

 

 複数体…、俺は電子生命体、各地にいろんな学校があって…。オートマトンもいる近未来的な世界だし…。

 

 閃いたぜ。

 

 義体を各地にばら撒けばいいんだよ。そうしたらいろんなところに行けるし、いろんな人と関われる。各学園に何体か設置して、インターネットを介して自分が移動する。なんて画期的。自分がいない時は自動運転にすればヨシッ

 

 作る前にまた考える。

 

 同一人物が増殖したら気持ちが悪いので考えた。身体が変形すりゃいい。身長も伸び縮みができて、髪色も変化可能で、顔もそのまま変更できるように! 正直作成期間がバカ伸びたけど気にしない。参考元から取り除いた機能の分空いてるところに考えられる限りの便利機能を詰め込んだ。まだ数体しか作れていないが…。

 

 これからも工場と素材にエネルギー、それらを供給する義体が朽ちない限りは増え続けると思う。嬉しい限り。早速全ての個体を私たちのネットワークに入れる。そこを介することで義体の移動が可能になる。考えていた画期的アイデア実現完了だ。

 別人格との合流で起こる記憶の差異などリスクも考えたが…。以前にもオートマトンに使っていた人格と合流したが、特別苦痛もないのでこの方法は乱用するつもりだ。

 自分という存在の増殖に特に抵抗感もないし、合流に際しての消滅もとくに気にならない。というより増殖してもオリジナルとしてどこか他と違うらしい。都合が良くて助かる。

 

 

 

 早速、いろんなとこに行ってもらおう。学園に所属して楽しんでおいで。私も記憶を覗いたり乗り移ったらで楽しむから。

 

 あ。そうそう名前も考えたんだ。

今日から私たちは「長門」だ。人格移動したときに名前違うと慣れにくいし、苗字は自由にやってね。

 

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっちゃ!」

「はぁぁぁあああ!? 今の不可能でしょチートだチート!」

「にはは! 今の私は運が絶好調ですから!」

「そういうんを聞きたいわけじゃなくてさぁ!」

 

 スピーカーから嬉しそうな声が響き、マイクへ叫んだ声が部屋にこだまする。現在やっているゲームはHIT GIRLS 3Dのオンライン版。ゲームセンターにある格闘ゲームの一種である。現在ミレニアムへ漂着した私こと長門。部屋でオンラインゲーム堪能中だ。

 

「…クソ、だいたい確率による攻撃力変動とかクソでしょ。技術で負けるよりムカつく」

「にはは。もう一戦行っときますか? 負けちゃいますけど」

「ジョーダン。負かしてやるよ『白兎』」

「望むところです!『ユニーク』!」

 

 発言が色々ムカついたりするが、こういう口上になってくれるところが好き。試合前の名乗り合いとか名前の呼び合いとかかっこいいし。白兎は相手のゲーム名でユニークが私のだ。

 どうやら同じ学校らしく、話も合うことが多いので助かっている。リアルで会う気は…あんまりないかな。ゲーム友達はゲームで友達であるから友達になれていると、私は思う。リアルであって後悔とかしたくないし。

 考えにふけっていてもコントローラーをグリグリガチャガチャと動かす。電脳世界でコマンドを打った方が早いし反応できるが、それこそチートってもんだろう。

 

「あらよいさ!」

「あれ。運は嫌いなんじゃなかったんですかー?」

「自分に得のある運は大好きさ!」

 

 確率で回避をしながらコンボを叩き込む。攻めて攻められの攻防戦。ヒリつくこの感じ…正直ハマってる。

 これならわざわざ義体を作る必要もなかったのかも。ネットでこうやって遊び呆けた方が…。

 

「コ〜ユ〜キ〜!? え! なな、なんで…あ!」

 

 スピーカーから白兎と別の怒ったような声が聞こえる。何やら本名を知りそうだが私はあえて無視をしよう。油断した隙に倒させてもらうがな! 卑怯とは言うまいな!

 

「き、今日はここでさよならです!」

 

 焦ったような声で通話は終了、勝ち越しだな。そう呟いてヘッドフォンとマイクを外す。じつに楽しい時間だった。放課後1番の楽しみだった。終わってしまったけど。

いや、相手はまだいる。UZQueenなる相手に下剋上するのも…。

 

楽しげに休日を過ごす。ミレニアムに現在三体いる中の一体、長門であった。

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

 

「…さて。私が何を言いたいかわかりますか?」

 

 砂漠に囲まれた学校の一室。アビドス対策委員会総司令部。まあここしかないので本丸もなにもないけど。机には書類がさまざまに広げられていた。

 対策委員会書記のアヤネの問いには、わからない。そういうふうに首を傾げてみる。周りのメンバーも同じ様子だ。アヤネは笑顔のまま続ける。

 

「『残りの資金を宝くじに全ブッパ』を提案された方〜?」

「あ、それおじさんのだしたやつだ!」

「『作戦:マーケット占拠と人質の身代金交換』を提案された方?」

「ん。再現性は十分。あとはみんなでやれば完璧」

「『週末旅行に行きましょう☆』を提案された方?」

「みんな少しだけ余裕をもとうと思いまして〜♤」

 

 数秒、微笑んだままアヤネが硬直する。私でもわかる。多分怒ってる。…提案書はあと二つ残ってるんだよな。

 

「あれ…何か違いました〜?」

「…おじさんがみるに少し危ない雰囲気だね〜」

「先輩たち何やってんの! 対策委員会のこれからの方針を決めるための計画なのに、なんで宝くじとか人質とか旅行の提案を持ってきてるの! アヤネちゃんの眉間がすごいことになっちゃってるでしょ!」

 

 そうだそうだー、とセリカの言葉に同調しておく。先に言わせてもらうが、私は結構まともな提案を書いてきた。怒られる心配もないのである。

 

「『簡単にこなせる依頼:一週間分』を提案された方?」

「私だ。これくらいならこなせるだろうと思ってな。他と比べたらまともすぎるだろう。褒めていいぞ」

「おじさんが思うに長門ちゃんもこっち側だよ〜?」

「ん、悪くないけど移動時間と補給の時間が含まれていない。体力もそこまで続くようには思えない…かな」

 

 …そうだっけ。まあ最近だと移動できる義体も増えてきているし、少し常識がなかったか。後の反省点としよう。

 仕方ないかと腕を組む。横目でチラリとアヤネの方に目を向けると肩がプルプル震えていた。噴火寸前だ。…アンカーに期待するしかない。セリカだけど。

 

「長門ちゃんもまともな提案してよ! だいたい任務が全部ブラックマーケットからって怪しいから!」

「ツテがそこにしかないもので…」

「…黒見セリカさん。提案されたものはもう一つあります」

「え、なんで急に敬語!?」

 

 最後の提案用紙を手に持つアヤネ。なぜか微笑んでいるのに笑ってない。なんだろう。黒いオーラが滲み出ている気がする。

 

「『投資のお勉強会の紹介説明書』を持ってきた方?」

「わ、私だけど。で、でも説明のパンフレットだと確実な利益がって……」

「投資に確実はありませんよ…?」

「でも最近、新しいシステムができたみたいな話で…」

「……」

 

 以前から少し震えていた肩が、限界を迎えた。机を掴み、そのまま腕が上に振り上げられる。美しきかな。ちゃぶ台返しだ。

 

「いい加減にしてください!!」

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

「…暇ですねー。ねーソラ先輩」

「そ、そうですね長門さん」

 

 現在エンジェル24 サンクトゥムタワー直下店。利用者が連邦生徒会のメンバーしか訪れないので必然的に何もない時間が多い店舗。これほんとに収支は大丈夫なんだろうか。

 

「とはいえ、治安が絶妙に悪いですよね。生徒会が近いのによくやるよほんと」

「行政が基本で防衛施設がないから…って言われてるよね」

 

 噂をすればなんとやら。お店の外でも銃弾が飛び交い始めた。何が原因でそんなに喧嘩になるんだろう。銃弾だってタダではないだろうに。

 

「頭下げておいてください先輩」

「ひぁっ! お、おでこは触らないでください!」

 

 頭に手をおいてカウンターの下に隠れさせる。いくらキヴォトス人が頑丈だからと言っても流れ弾やガラス片とか飛んできたら怖いからね。それに先輩はまだ中学生だ。

頭に手を置くついでに撫でる。すごく髪の毛サラサラ…。

 

「…長門さんはなんでここのバイトを始めたんですか? 高校生なら、もうちょっと割りのいいバイトとか仕事があるって聞いたんですけど」

 

 カウンターの下から尋ねられる。ここにきた目的なんて特別なかったし、お金だっていざとなればどうにでもなる。私が来たいから来たというのがそうなのだが。ここは格好つけよう。

 

「…先輩と話をしてみたかったんです」

「あ、そうですか」

 

 すんませんでした。調子乗りました。バイトにもう来れないかもしれない。

 

「あ、あー。ソラ先輩はなんでここのバイトを?」

 

 秘技。話逸らし。

 

「えっと、まだまだ中学生ですから、お金を稼ぐのかここしかなくて…結構ブラックですけどね…」

「……同じバイト戦士として頑張りましょう。先輩」

 

 会話は一段落ついたところで騒ぎのある外に目を向ける。銃撃戦はとうに収まりがついていた。どうやら生徒会が動いたらしい。苦労をするよね。行政機関なのに。

 

「…あれ。生徒会長じゃないか?」

「え、どちらですか!?」

 

 カウンターから小さな頭が飛び出る。そのまま顎にクリーンヒットしふらついて倒れ込みそうになった。この先輩…っょぃ。

 

「わあ、初めてみました」

 

 目を輝かせながら視線を向ける先輩。ソラ先輩の中だと、生徒会長はアイドル的な存在だったりするんだろうか。自身の平穏を守ってくれる存在は…憧れや感謝はするか。

私も件の連邦生徒会長を一目見ようと目を向ける。

他生徒に声をかけて暴れていた生徒の連行をテキパキと指示していた。じっとみていたことに気づいたのか体を翻してそれで、目が合った。目があった気がする。

その後、ニコニコした様子でヒラヒラと手を振られた。

 

「…ソラ先輩知り合い?」

「いえ…初めてみました」

 

どうすれば良いかも分からずとりあえず手を振り返しておいた。

 




タイトルは有名なソレから頂戴しました。

天才清楚系病弱美少女の発言は公式Twitter世界観紹介から引用
長門は涼宮ハルヒの憂鬱に登場する長門有希からひっぱった

前半クソバカの独り言で終わった一話だけどあんまり喋らせたくない()
次回から頑張るよ多分。
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