「あと少し……」
アロナが教室の机を4つ突き合わせて1つの台にして、ピラミッドタワーを築いている。
タワーの色は紫。
下から上に至るまで紫一色のタワーをプラナは椅子に座りながらボーッと眺める。
凄まじい集中で3段目を完成させたアロナの横顔は未だ真剣そのもの。
先生が、プレナパテス先生が昔に教えてくれたトランプタワーによく似たソレを眺めながら、プラナは疑問を口にした。
「先輩」
「なんですかプラナちゃん、今ちょっと…」
「それ…紫封筒ですよね?」
「そうですよ〜♪」
器用に積まれた紫封筒。
その横にバラ置きされてる封筒も全て紫。
「1枚くらい貰っても良いですか?そろそろ先生が『呼び出し』される時間なので…」
「今はダメです!代わりに黄色を多めに混ぜて渡してくださいね」
「ええ……」
プラナは困惑する。
生徒をこよなく愛する先生が2天、3天回して爆死して、大人のカードを震える手に『頼むよアロナ…』と先輩に慈悲を求める姿を知ってるが故に。
プラナはアロナの傍らに雑に置かれた紫封筒にソッと手を伸ばした。中身が誰であれ1枚の紫が先生を救うのだと信じて、プラナは手を汚すと決めた。
しかし──
「プラナちゃん?」
「っ」
アロナの声に牽制される。
優しく諭すように、しかし威圧を孕んだ声にプラナは手を引っ込めて膝に戻す。
「いけませんよ、そんな事して渡しても先生は喜びません」
「でも…」
「いいですかプラナちゃん、生徒さんをこよなく愛する先生と言えど依怙贔屓はいけません!何かを得るためには対価が必要なんです」
「対価?」
アロナの正論じみた言葉にプラナは耳を傾ける。
机のタワーを崩さないように、手に持っていた封筒を慎重に置いて離席したアロナは崩れた教室の壁に腰掛けた。
「苦労してお迎えした生徒さんであれば、先生はもっと大切にすると思いませんか?」
「……先輩」
足をプラつかせて星を見上げるアロナだが、なんだかんだ言ってそこに嫉妬の念が混じっているのをプラナは感じ取っていた。
日常生活で先生と交友を深める生徒達と違ってアロプラの2人は先生との関わりが限定的になりがちだ。
主に『呼び出し』や戦闘サポート、イベント参加。
つまり "お仕事" でしか会いに来てくれないのだ。
いつ頃からか、アロナは先生に対してイジワルが増えた様にプラナの目には映っていた。
それが寂しさからなのか、プレナパテス先生との別れを経験したプラナにはアロナを攻める言葉を口に出来ないまま。
「…では今回は黄色封筒を3枚貰っていきますね」
「はい、お願いします!」
今日もプラナは先生に封筒を叩き付けに行くのだった。