シャーレのオフィス。
先生の事務机の一角、積まれた雑誌や書類、小説本の上で充電器に繋がれた
充電中を示す小さな青が静かに点滅する。
ヘイローの無い先生は普段タブレットを手放す事は無いが、どうやら4徹突破で限界だったのか、今は机に突っ伏して静かに寝息を立てている。
一方、真っ黒な画面の向こうでは2人の少女が
「プラナちゃん、用意は良いですか?」
「はい。ミレニアムの生徒さんの声をスタンバイ」
「合図したらですよ…」
先生が寝ていてもアロプラの2人は眠らない。
いや、先生が寝てるからこそ2人は起きているのだ。
静かだったオフィスに、足音が近づいてくる。
先生の寝息が足音に負けた時、扉が静かに開き一人の生徒が入ってきた。
入室した生徒は数秒立ち止まって、忍び足で先生に近づく。
猫のように静かに…。
それを人知れず感知したアロナが、エージェントの真似か壁に背を付けて片手を上げてプラナに『スタンバイ…』の合図を送る。
場の雰囲気に緊張感なんて微塵もなく、とても楽しそうだ。
「生徒さんのデータを照合。……ヒット、放課後スイーツ部の "杏山カズサ" さんです」
「やはり来ましたね、プラナちゃんやりますよ」
「はい先輩」
プラナがユウカの神名文字を持ってアロナの後ろにつく。
画面の向こうでは、カズサが他人の気配を探りながら先生に急接近していく。
いよいよパーソナルスペースを超えた。
「先生、お疲れ様…です」
顔を覗き込みながら、カズサは自然な流れで耳元で囁く。
なんて卑しい猫だろうか素晴らしい。
「寝てる…?よね」
生徒に話しかけられて先生が無視するなんてありえない、だからこそヘイローのない先生でも狸寝入りかガチ寝か分かるのだ。
ピコピコと猫耳が揺れる。
周りの音を探る、反吐が出そうな最終モーションだ。
「前に言ったよね?そんなんじゃいつか襲われちゃうよ…?って」
眠る先生の頬にカズサの唇が近づく。
マジでキスする5秒前。
その瞬間。
『今です!』
『えい』
プラナがユウカの神名文字を傘でカツンと小突き、
ヴゥーーーッ!!
ヴヴゥーーー!!
バイブモードで待機中だったタブレットが【着信】の文字を表示して揺れ動いた。
次いで『ユウカ』の名前が浮かぶ。
反射的に顔を上げたカズサが忌々しげにタブレット画面を睨む。
さすがは先生か、着信音で意識が戻ってきたようで「ぅぅ…」とタブレットに手を伸ばす。
着信は先生の覚醒を待つこと無く切れ、目の覚めた先生が遅まきながらカズサの来訪を知るのだ。
「あれ、おはようカズサ」
「うん…おはよ。センセ」
▪
『やりましたねプラナちゃん!』
『成功しました』
アロナはニコニコと楽しそうに。
プラナはほんの少しだけ口角が上がっていた。
『先生の事は私たちがお守りするのです!』
『おーーー』
イタズラっぽく楽しそうなやり取り。
アロプラの2人ぽっちの戦争。
今日も2人は人知れず先生を守るのだ