諏訪大戦にでんせつポケモンが参戦するそうです   作:タニコウ

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天狗さんはこんがり焼けました。ワンパンです。



でんせつ、鬼の元へ向かう

 

 ――民を失った心優しき陸の王の怒りは止まることを知らない。

 

 

――『ブレイズキック』

 

 邪魔です。

 

――『炎のパンチ』

 

 目障りです。

 

――『火炎車』

 

 退きなさい。

 

――『仇討ち』

 

 散りなさい。

 

「邪魔をっ、するなぁっ!!」

 

――『八つ当たり』

 

 目指す先に立つ全てのモノが邪魔。失せろ、消えろ、燃え尽きろ。

 

 

 

 

 ――怒り狂う陸の王の進撃は止まれない。

 

 

 

 ――――――――――――

 

 

 

「急いで、水と布、酒を持ってきて!」

 

 諏訪子が治める村は火事場であるかのように騒がしかった。その原因は、先程ミシャグジ様が連れて来た瀕死な状態のシキの母親だった。シキの母親は右手足を失い、左目からは血が流れ続けている、まさに死に体の様子だった。

 諏訪子は、ざわざわと五月蠅い村人に指示を出して、自身の神力を使って出血を抑えようとする。幸いなことに、颯希によって捧げられた莫大な神力があったため、すぐに血は止まった。

 

「諏訪子様、水、持ってきたべ!」

「諏訪子様、お母さんから布とお酒を貰ってきました……」

「ありがとう、2人とも、そこに置いておいて!」

 

 いち早く行動に移していたのは、昼間に諏訪子と颯希が回復させた畑の持ち主である若者と、シキを心配する少女――フユだった。諏訪子は、2人に礼を言って、お世辞にも綺麗とは言えないそれを手にもって神力を使った。布に付着した土埃や汚れ、水の中に混じっている石や砂利、酒に沈殿している酒粕やもろみなどを、「坤」を創造する程度の能力で全て取り除く。

 諏訪子は、布を水に浸して傷口を拭っていく。粗方の汚れを落としたら、酒を微量垂らした布で傷口の消毒を行う。消毒を終えたら、布を細く切って包帯のようにして傷口が見えないように巻いていく。

 

「一先ずはこれで終わり、後は様子を見て、かな」

 

 その諏訪子の呟きに、遠巻きに見ていた村人たちは安堵の溜め息を漏らしてから、シキの母親を村で唯一の高床式のお社で寝かせるために若者が担ぎ上げて運びに向かった。それを横目で見ながら、諏訪子は適切な処置の方法を教えてくれていた颯希に感謝の念を抱いていた。

 

(みんなが危うく、人間の糞尿でやるところだったからね。颯希に聞いてなかったら、私も止めることしなかっただろうし……)

 

 そんなことを考えながら、その未来を想像して諏訪子は背筋や額から冷や汗を垂らす。

 

 

 ――ドカン!

 ――ドカン!!

 

 

 時偶聞こえる爆破音と爆炎に村人たちは其方を見やる。

 

「あれを颯季ちゃんがねー。強いんだねぇ」

「だべなぁ、颯季ちゃんが洩矢神と共においら達を守ってくれるんだ、絶対ぇに安全だべや!」

「違ぇねぇ!」

「「「あっはっは!」」」

 

 そんな村人たちの声を聞きながら、諏訪子は思考を回す。

 

(幾ら颯季がお人好しだって分かってるからって、そこまで呑気になる?しかも、たったの一週間で?いや、ないよね。畏れられてた私だからこそ分かる。多分、颯季の妖力には、味方(信者)を威圧する効果はない。何なら、落ち着かせる効果まであるかもしれない。何処までも味方に優しい心と、敵には容赦しない野生を持った颯季らしい妖力だね。まー、流石にあの炎はびっくりするけど……)

 

 ここまで聞こえてくる爆発音はあの炎から出ている音か?否、あれは颯季が妖怪を殴った殴打の音だ。じゃあ、あの爆発は何か?あれは爆発などではなく、ただの何かを燃やすだけの炎。では、何故一瞬で消えるのか?

 

(一瞬で消えるのは、差し詰め燃やせるモノが無くなったから。ってところかな?)

 

 そう、颯季の炎は文字通り全てを燃やしていた。木を、地面を、岩を、そして、炎が燃え続ける酸素すらも。燃焼速度が早すぎて、酸素の供給が無くなったが故に消えたのだ。

 そんな状況で、もはや不殺もクソもないが、そこは颯季の僅かに残った優秀な理性さんが火加減を完璧に調整したのだ。表面がこんがりウェルダンに。だが、中身はピンピンなレアに。という、神掛かった見事な仕上がりをしたことで、生命力が強い妖怪は生き残ったのだ。一生もののトラウマと共に。きっと、彼らは火を見る度に今回のことを思い出すのだろう。

 

「まー、自業自得ってことで、私達に喧嘩売ったのを後悔してね?」

 

 

 大地を創る神は、まるで彼女の神獣が負けるとは微塵も思っていない不敵な笑みを浮かべて燃え盛る山を見た。

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

「はっ!ボクは、しょうきにもどりました!」

 

 危うく、怒りに呑まれ掛けてしまいました。あれから、どれくらい経ったのでしょうか?目の前には、かなり威圧感を感じる屋敷が建ってます。ボクは、そのまま回れ右をします。

 

「うわー、これはやり過ぎちゃいましたね」

 

 後ろを振り向いたボクの視界に映るのは、それは散々なまでに破壊され尽くした妖怪の山でした。そこだけ禿げてしまった荒れ地のように何も無く、ボクが通ってきた道にぼこぼことしたクレーターが沢山出来ていました。まさに、地獄絵図といった様相にボクの口からは乾いた笑い声が出ていました。

 本当に、このチー特性さんはじゃじゃ馬ですよね。まぁ、ボクがまだ炎獣王などという、大層な肩書きに似合わない未熟な身なのだということでしょう。ですが、理性さんの頑張りのお陰で今は何とか身体の制御権を取り戻せました。

 さらっと、暴走中のボクの記憶を見ましたけど、どうやら殺してはいないみたいですね。ふぅ、面倒ごとに発展しなさそうでよかったです。妖怪の山は社会形成がされてるので、殺してしまったら、後始末とか賠償とかありそうで怠いですからね。諏訪子様に迷惑は掛けられません。

 

「過ぎたことは仕方ありません。早く、シキちゃんを迎えに行きましょうか」

 

 ボクは、目の前の屋敷に向き直ります。中からは、シキちゃんの臭いと微かに香るお酒の臭いと、たくさんのヒトの臭いがしました。ボクは、炎獣王としての妖力(威圧感)を余すことなく放ちながら、壁を突き破ってダイナミックエントリーします。

 それと同時に、ボクの目の前に突き出された拳が目に入ります。

 

――『火炎の護り』

 

 拳がボクの顔面に突き刺さる寸前、ボクの全身から炎が猛り放たれ、目の前の拳をその持ち主ごとこんがりと焼きました。

 

「ぐあああ!」

 

 全身に燃え広がった炎を消火するために、のたうち回るものを見ます。やはり、目につくのは大きな二本のツノでしょうか?

 

「鬼、ですね」

 

 最強とも言われた生物である鬼をこうやって生で見て思ったことが、そこまで強くないのでは?という感想でした。まぁ、ボクがチートさんのお陰で魔改造されているせいで、人間視点から神獣視点に変わってるからなだけなんですけど。それに、本番はここからです。

 ボクは、シキちゃんの臭いがする方向に駆け出します。木の床を踏み抜かないように、軽い足取りを意識しながら。とは言え、全速力で走るのは忘れずに駆け抜けます。そして――

 

――バン!

「シキちゃん!無事ですか!?」

 

 シキちゃんの臭いが一番強く出ていた襖を勢いよく開けてボクは中に入ります。そこには、

 

「颯季さん!」

 

 手と足に石で出来た枷を嵌められた日本人にしては珍しい、白い髪と涙がうっすらと浮かんだ青の瞳を持った美少女さんのシキちゃん。そして、

 

「よくもまぁ、私達の縄張りで暴れてくれたわね」

 

 桃色のロングヘアーに、赤い瞳を持った二本の長いツノを生やした鬼。さっきまでの天狗や鬼なんかとは桁違いな威圧感(オーラ)を放っている彼女の名前は――茨木華扇さん。山の四天王の1人で、茨木童子として有名になる鬼です。

 

「ひっくっ……あーっ、別に私たちが何かやるわけじゃないんだけどなー」

 

 華扇さんとは反対に、泥酔しているからかびっくりする程に威圧感(オーラ)が出ていないのがこの鬼。長い茶髪を先端で1つに纏めて、頭にはリボンと小柄な体格に反して長く伸びた捻れたツノ。酔っ払っているというのに、その深紅の瞳は強い意志を持ってボクを見つめています。見た目は少女だと言うのに、右手に持った無限の酒が入った瓢箪が様になる。そんな鬼の名前は――伊吹萃香さん。この方も山の四天王の一人にして、後に酒呑童子と呼ばれる鬼です。

 

「ま、そういうわけで正直私らはどうでもいいんだが、下に示し付ける為にも落とし前を付けて貰おうかね?」

 

 そう言って、先ほどの二人よりも明確な戦意を叩き付けてきた鬼。ボクのくすんだ色とは違う長い綺麗な金髪を無造作に伸ばし、赤い瞳はこれからの戦闘を予期して愉しげに細められ、その天を突く赤い一本角が光を反射して輝いたように見えます。華扇さんに見劣りしない威圧感をこれでもかと放出する鬼の名前は――星熊勇儀さん。この方も例に漏れず、山の四天王にして、星熊童子と呼ばれることになる鬼です。

 

 勇儀さんは、()()()()()()()()()()立ち上がり、萃香さんは瓢箪の中身を飲みながらゆっくりと立ち上がります。そして、華扇さんは、はぁーっと長い溜め息を吐きながら立ち上がってファイティングポーズを取ります。

 こ、これはマズイですよ。流石のボクでも山の四天王三人相手は無理ゲーが過ぎます!な、何とか話を逸らさないと!

 

「あの、山の四天王なのに、三人なんですか?あと一人は?」

「「…………」」

「んあ?……ああ、その、何だ?」

 

 ボクのやけっぱちな質問に部屋全体が凍り付き、勇儀さんは何故か気まずそうに頬を掻きながらこう言いました。

 

「私らが酒呑んで暴れ放題したら呆れられて山を下りちまった」

「…………そう、ですか」

 

 ちょっと!まさかそんな下らない理由だとは思わないじゃないですか!思わず、気が抜けちゃったせいで原作の彼女達と重ねちゃったじゃないですか!?ど、どうしましょう!勇儀さん達から『炎獣王の覇気』の効果が抜けちゃいましたよ!既に、勝てるかすら怪しいのに負け確定みたいになっちゃいましたよ!!

 

「ほーう、身体が軽くなったな。勝負は正々堂々とってか?気に入った!萃香、華扇。悪いけど、今日は私に譲ってくれ!」

「私は別に構わないわ」

「おう!いいぞー。でも、次は私とやってくれよ!」

 

 あれ?流れ変わりました?

 

「うっし、待たせたな。ここは、礼儀に倣って名乗らせて貰おうか。私は星熊勇儀。ここの山の主の一人だ」

 

 そう言って構えを取った勇儀さんはボクに視線を向けてきます。あ、これはボクもいうやつですね。

 

「ボクは、不知火颯希です。山の麓の洩矢諏訪子様が治める村の神獣です。シキちゃんを返して貰いますよ」

 

 名乗りを上げたボクは、拳を構えて右足を引き、いつでも駆けだせるように準備をします。そして、

 

「いざ!」

「参ります!」

 

 

――『怪力乱神』

――『インファイト』

 

 

 同時に、地面を蹴り上げて瞬時に接敵し、刹那の内に数十を超える拳を打ち合います。ここに、ボク1人での伝説への挑戦が始まりました。

 

 





山の四天王の最後の一人は果たして出てくるのでしょうか?それとも、僕が知らないだけで既に出てるんですかね?

次回から、戦闘シーンだけが何話か続きます。丁度いいところで切れるのか、僕の腕が問われるところですね。頑張ります。


次回 でんせつ、伝説と対峙する~星熊勇儀編~
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