本日二話目、書き上がったので、あともう一話上げます。今、筆がノリノリすぎて手から離れないので、もしかしたらもう一話あげられるかも?
因みに、今の颯希はチー特性で妖怪の山から奪い取ったステータスでバフもりもりです。バフがないと颯希が高確率で負けます。まぁ、特性がアホほどある颯希はそう簡単には負けません。が、不利であることには変わりませんね。
「やっぱり凄いです……」
山の四天王と呼ばれる最強格の鬼と互角以上に渡り合い、果てには壁の先までその鬼を飛ばした颯季さんを見て、わたし――シキは、思わず声を漏らしてしまいました。
わたしは、村の守りの要となることを願われて産まれてきました。わたしの家系は昔から村を悪しき妖怪から守ることが出来る、霊力と呼ばれる力を持った人が沢山いました。そして、霊力を持つ人は村の中ではわたし達の家だけでした。ですから、わたしの家は村の中でも力のある家でした。
力があるということは、それなりの特権がありました。農作業をやらなくても良かったり、お家が広かったりと色々な特権がありました。勿論、特権を貰えるだけの働きも必要でした。それは単純明快なことで、妖怪から村を守ることです。そして、この家に霊力を持って産まれたわたしもそれは例外ではありませんでした。それも、お母さんやお父さんと比べて霊力が遥かに多く持って生まれたのですから、わたしの人生は決定したも同然でした。
物心付いたころから毎日、日が暮れるまで家の近くにある広場で鍛練をさせられました。流石に、戦いの場に出されることはありませんでしたが、早くとも半年後、遅くとも来年には必要になっていました。
ですが、その必要が無くなったのです。その理由は、言うまでもなく洩矢神――諏訪子様が降臨されたこと。そして、諏訪子様の神獣である颯季さんが来てくれたことです。
もし仮に、諏訪子様か颯季さんのどちらかが来られなければ、今回みたいに外で何かがあった時の控えとして村を守ることになります。まあ、それは今も変わらないことですが……今回はわたしとお父さんがいなくなってしまったので、村は大騒ぎだったのではないでしょうか?
今、諏訪子様がここにいらっしゃらないのもそういった防衛的観点からの理由でしょう。村の皆さんに迷惑を掛けてしまって、本当に申し訳なく思っています。諏訪子様と颯季さんがいなかったらと思うと、村は今頃どうなっていたのかを考えるだけでゾッとします。
別に、わたしは戦いが好きな訳でも、今の特権階級に拘りもありません。何なら、この地位を手放せば戦わなくて良いのなら戦いたくない。というのが本音です。だって、怖いですし。妖怪とはいえ、生き物を殺す勇気が今のわたしにあるのか分かりません。いざ、戦ったら殺せなくてわたしが殺されるなんて嫌です。
ですから、颯希さんと諏訪子様が来てくださって、心の底から感謝しています。もう、戦いにいかなくていい。ということはありませんが、機会が減るのは確かなのですから。
「ねぇ、アナタ」
「は、はい……」
そんなことを考えていると、桃色の髪をした鬼に話し掛けられました。
「あの神獣、不知火颯季と言ったかしら?彼女が何時生まれたのか知ってる?」
「いつ……確か、一週間前だって、諏訪子様が言ってた気がします」
「一週間前!?あれで!?嘘でしょ……?」
嘘じゃないんですよね。本来、人間以外のヒトは生きた時間に比例して強くなります。ですが、颯季さんは例外とも言える方でした。最初から完成されている戦闘技術に、自身の特質を完全に理解した炎の御業。
そんな颯季さんですが、幾つか欠点があります。1つは、空を飛べないことです。普通なら、ヒトは生まれつき、わたしみたいな霊力や道力を授かった人間は多少鍛練すれば空を飛べるようになります。すぐには出来なくても、せいぜい数秒間は宙に浮くことは誰にでも出来ます。もし、下手な方だったとしても、あらぬ方向へと凄い勢いで飛んでいくだけです。
ですが、颯季さんは一秒たりとも浮くことが出来なかったのです。諏訪子様は、颯季さんが空を飛べないという制約を付けられた代わりに、高い身体能力を持って生まれたのではないか。と、仰ってました。
2つ目は、桃色の鬼が言ってくれました。
「それにあの神獣、真面に妖力で肉体の強化が出来ていないじゃない?」
「は、はい」
「あり得ない。とまでは言わないけど、勇儀相手にあそこまで闘えるのが、俄かに信じがたいわ」
そう、颯季さんはまだ妖力の扱いが不得手なのです。とは言え、天性の戦闘勘を持っているのか、戦闘時には無意識のうちに操って肉体の強化をしていますが、その扱いは拙く雑です。そして、炎には妖力も神力も宿っていません。つまり、妖力を使っていないということは、今も颯季さんが使っている炎が、わたし達が使うような霊力を用いた弾幕とも天狗が妖力を使って風を起こすのとは違った完全な身体能力によるものだと言うことです。
要するに、颯季さんの炎にはまだ妖力や神力を注ぎ込んで昇華させる余地がある、と言うことです。それに、肉体強化の効率を上げれば、それだけ身体能力も持久力も上がります。
「末恐ろしい奴が現れたわね」
そう言いながら、鬼はわたしの手足に嵌められていた石製の枷を外しました。いきなりのことで、驚いて鬼の方を見てしまいました。
「さっきも言ったけど、正直私達にとってアナタが山の境を犯そうが大して興味ないのよ。下に示すためこうして拘束させて貰ったけど、勇儀がああして戦ってる以上、あの神獣も来たことだしアナタも逃げないでしょ」
ゴトンと音を立てて落ちた石の枷、それと同時に先程まで感じていた圧迫感から解放されました。じんわりと鈍い痛みを誤魔化すように手を擦っていると、壁の向こうまで飛ばされていた怖い鬼のヒトが出てきました。
「ほら、今から荒れるわ。アナタは私の後ろにいなさい。一応、守ってあげるわ」
「あ、ありがとうございます……」
そこまで悪いヒトじゃないのかな?なんて思いながら鬼の後ろに回ったわたしは、いつの間にか蒼い炎を纏った颯希さんを見ます。颯希さんは、鬼と拳を突き合わせて、わたしの目では捉えきれない、ぶつかった後の音でなんとか理解できた何十発もの拳撃の合間のことでした。ほんの一瞬、刹那の間だけわたしの方を向き、目が合いました。そして、
「大丈夫です、必ずボクが勝ちます。ですから、絶対に2人で村へ帰りましょう」
颯希さんは口の動きだけでわたしに告げた言葉と、何時も村の皆に向けている優しく、見た人を安心させる明るい笑顔を、今だけはわたしにだけ向けて鬼との闘いに戻っていきました。先程までの闘いより、苛烈になった応酬、わたしはそこへ身を投じる颯希さんに見入ります。
「……頑張って下さい。颯希さんっ」
とくん。と、高鳴る胸の鼓動。その意味を知るのはもう少し後のことでした。
少し前に書きましたが、シキちゃんママには地獄を見て貰います。つまり?
今回、颯希の弱点を公開しました。颯希は、東方世界にいる癖して空の1つも飛べません。走った方が速いではなく、絶対に飛べません。颯希のキャラクターコンセプトは、地上戦最強です。ただし、相手に飛ばれて、弾幕撃たれまくったら一方的に負けます。
勇儀さんは、こういうのに気付いても絶対に地上戦してくれる。そういう信頼があります。その上で、激戦を繰り広げられる力もあると言う、このシチュエーションにおいて完璧なお方です。ありがたや。
次回 でんせつ、勢い増す闘いに奮闘す
颯季視点に戻ります。20時頃投稿予定