諏訪大戦にでんせつポケモンが参戦するそうです   作:タニコウ

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今回の内容で、神楽についてお勉強してたら時間が掛かっちまいました。しかも、お勉強内容を全然活かしてないというポンコツ。まぁ、時代設定的には颯季達が伝統を作る側ですから気にしないことにします。

それと、『洩矢諏訪子』『史実改変』タグを追加しました。今まで、諏訪子様のタグを付けていないことに気付いてなかった……。



でんせつ、月光の下にて舞い踊る ~御霊眠りて民草護る、諏訪の國~

 

 あの羞恥の塊みたいな1日から一週間が経ちました。無事に身体が動くようになったボクとシキちゃんは、シキちゃんのお父さんが入れられた棺と共に、無事に諏訪子様の待つ村へと帰ってくることが出来ました。そして、ボクは今現在――

 

「あの、諏訪子様。離してくれませんか?」

「いーやーだー!」

 

 諏訪子様のお膝の上に抱き抱えられています。諏訪子様に何があったのかは知りませんが、流石に長過ぎます。大体、朝の8時くらいに帰ってきてから、日が昇りきって少し経ったお昼過ぎです。少なくとも4時間はこのままだったんです。長いです、長すぎます。

 

「わ、わうー……シキちゃん、助けてくれませんか?」

「そうしたいのは山々なのですが……」

「うぅーっ!シキは一週間颯希を独占したでしょ!」

 

 何か、我が儘な子どもみたいに足をじたばたさせて、そんなことを言う諏訪子様。というか、暴れられるとお尻が痛いんですけど……。しかも、ボクが逃げられないようにしっかりと腕の力は抜いてませんし……。何なら、強くなってるまでありますね。

 

「わたしには無理みたいですね」

「そうみたいですね……諏訪子様、子どもじゃないんですから、もう少し節度を――」

「私、まだ一歳なんだけど?」

「持っ……て………………」

 

 そうでした、諏訪子様が降臨なされてから、一年ちょっとしか経ってないんでした。そして、ボクもこの世界的には半月ちょっとしか生きていないんでしたね。

 まぁ、個人的にはまだウインディとしての人生二周目気分ですけど。邪神に負けて死にましたとか、ボクのプライドが許しません。いつか、ぼっこぼこのギッタンギッタンにして喰って、ボクの炎にしてやりますよ!

 

「わっふん!諏訪子様、ボク頑張りますからね!」

「颯季さん?」

「えーっと?うん、頑張ってね……?」

 

 頑張りますよ!むふん!…………まぁ、アルセウスが何処にいるのかはさっぱり分かりませんがね。そもそも、この世界にいない可能性の方が高いでしょうし。

 

「そう言えば、颯季は準備出来てるの?」

 

 準備と言えば、今夜やるシキちゃんのお父さんのお葬式ですよね。それでしたら、問題ないです。勇儀さん達に頼んでいた物も出来てますし、体調も万全ですね。強いて言えば、炎の量が勇儀さんと戦う前の一割程度しかないくらいですね。

 

「はい、儀式を行う分は回復してますよ」

「ん、ならよろしー」

 

 ボクの答えにそう返した諏訪子様は、ボクの頭を撫でてきます。勿論、耳の付け根(敏感なところ)は触らないようにしてくれてます。もう、前みたいな痴態を晒したくないですからね。

 どうして、シキちゃんもなのですが皆さん揃ってボクの頭を撫でるのでしょうか?確かに、ボクは自分の顔がかなりのほっそりとした清楚系美少女である自覚がありますけど……それは飽くまで令和基準での話であって、過去ならむしろ逆でふくよかな女性の方が良いみたいな話を聞いたことがあります。

 確か、平安の話でしたっけ?それなら、この推定弥生時代でも、また別の基準があるんですかね?

 

 まぁ、気持ち良ければボクはそれでいいです。

 

「ぐるるぅー♪」

「あ、ちょっと、寄りかかられると触りづらいんだけど」

 

 ボクは、ごろごろと喉を鳴らして身体の力を抜き、諏訪子様に身を預けます。ボクの頭が諏訪子様の肩に乗っかってるせいで、諏訪子様はボクの頭を撫でられないみたいですね。

 それでしたら……。ボクは諏訪子様の腕の中で動いて後ろを向きます。そして、

 

「よいしょっと。これでどうですか?諏訪子様?」

「え、ちょっ、さ、颯季っ!?」

「わふー?撫でてくれないのですか?諏訪子様?」

 

 後ろ向きになったことで、ボクの目の前に来る諏訪子様の顔を覗き込みます。あれ?ちょっと、諏訪子様の顔が赤いですね。何かあったんですかね?

 

「な、何かって……」

「あ、あの、颯季さんがご自分の姿を見れば分かるかと思います」

「ボクの姿ですか?」

 

 ボクの格好のどこがおかしいのでしょうか?まず、服は何時もの巫女服ですね。勇儀さんとの闘いで破損したのですが、村に帰ってきた時には既に新しい物が仕立てられていました。お仕事が早いですよね。

 服装には何ら問題ないですよね?じゃあ、何なのでしょうか?思考に耽っていたボクは無意識のうちに、諏訪子様の首に回した腕と腰の辺りに回していた足に力を込めます。

 

「あ、あわわっ……」

「諏訪子様、羨ましいっ……」

 

 それにしても、諏訪子様がボクのことを撫でてくれませんね。むー。こうなったら、少し恥ずかしいですけど、アピールでもしてみましょうかね。

 というわけでボクは、諏訪子様の首の辺りに顔を埋めて頭をぐりぐりと押し付けます。なでてくださいよー!

 

「わ、分かったから!」

「わうー♪」

 

 ボクの後頭部辺りに諏訪子様の小さな、けれども温かくて柔らかい手の感触を捉えました。ボクは、その感触と共にやってくる安心感に身を委ね、再び徐々に力を抜いていきます。

 力が抜けたボクは、諏訪子様の肩に顎を乗せる形になってだらんとなります。そうなると必然、ボクの優れた嗅覚が諏訪子様の匂いを嗅ぎとります。

 

「すんすん、諏訪子様のいい匂いがします」

「ふぇっ?~~~~っ!?」

 

 あれ?何か、諏訪子様の鼓動が早くなりました?ボクと諏訪子様は今スゴい密着してますから、分かっちゃうんですよね。いや、それにしても。

 

「やっぱり、諏訪子様ってかわいいですよね」

 

 流石はボクの神様(最推し)です。強くて頼りになって、優しくてかわいい。しかも、決める時は凄くかっこいいんです。まさに、非の打ち所がない、というやつですね。

 

「あーうー」

 

 そんなことを考えてると、諏訪子様が呻き声を上げるのと同時にぽふんっと音が上がりました。それと同時に諏訪子様のボクを撫でる手が止まりました。何かあったのでしょうか?そう思って、ボクが諏訪子様の方を見ます。

 

「ぷしゅー……」

「わうー!?諏訪子様!大丈夫ですか!?」

 

 諏訪子様は、頭から湯気を出して顔を耳まで真っ赤にし、目がよくマンガとかで見るぐるぐるおめめになってました。何があったのかは分かりませんが、流石にこのまま放置していたら大変なことになるのは分かりきってます。急いで介抱しないといけませんね。

 

 

「わうー……大丈夫ですか?諏訪子様?」

「うん…大丈夫…」

 

 幸いなことに、ボクが離れて介抱に回ったらすぐに元の諏訪子様に戻りました。わふー、何か体調が悪いとかではなくて良かったですね。

 

「それにしても、颯季は誘ってんの?」

「誘うって……何をですか?」

「うーん、何でもないよ。……無自覚か」

「わう?」

 

 諏訪子様がボクにジト目を向けながら小さな声で無自覚って言いましたが、ボクの高性能ウインディ耳はその言葉をバッチリと捉えました。無自覚って、やっぱりボクが何かしちゃったのでしょうか?

 

「いや、大丈夫。颯季は何もしてないから。ほんとに」

「そうなんですね。分かりました、何処か体調が悪いとかありましたら何時でも仰ってくださいね」

「はーい」

 

 諏訪子様が何ともないというのなら、ボクが心配するのはお門違いです。ですから、ボクはそのことを頭の中からキレイさっぱり消して、夜に向けて最後の準備をすることにします。

 

 

 

「わたしのこと、完全に忘れて二人の世界作ってたよなー」

 

 

「ちょっと、妬けちゃいますね」

 

 

 

 

 

 ――――――――

 

 

 

 

 

 すっかり日も落ちて、夜の帳が下りたことによって辺りが闇に包まれた、諏訪子様とボクが暮らすお社の前。そこには、シキちゃんのお父さんが入れられた棺とそれを乗せる祭壇。祭壇の両脇には火が灯っていない篝火が立っている。お社を正面にして祭壇の前にはお酒が入った水瓶や、諏訪子様の神力で用意された菊と百合の花束と残り数ミリほどの蝋燭が風前の灯火を揺らしながら置かれています。

 そして、お供え物は今も参列している、この村に住む人の手によって数を増やしています。ボクと諏訪子様はその様子をお社の中から見ていました。

 

「やっぱり、ここの村って結構人多いですよね」

「そうだね。私と颯季(神と神獣)がいるからね。これは凄く大きな利点だと思うよ。妖怪に襲われて壊滅する可能性が極端に下がって、安全性が増すからね」

「そうですね」

「私達は村の人から信仰と言う形で力を貰っている。だから、私達には彼らを護る義務がある」

「はい……」

 

 村の様子を見守りながら諏訪子様はしみじみと言いました。まるで、自分に言い聞かせるかのように。

 

「私は、この村の神であると同時に主でもあるからさ。皆の前ではどんなことがあっても、笑っていられる王でいたかった」

「諏訪子様……」

 

 諏訪子様が、今はまだ目玉が付いてない市女笠を目元まで深々と被りながら放ったその言葉は、何処か震えているように感じました。

 

「こうして、実際に護るべき民が死んだんだって、現実を突きつけられると……」

「…………」

 

 諏訪子様は、身体を震わせながら言いました。唇は噛み締められ、手も握り締められて血が出るのではないかと思うほど、力が込められていました。

 

「やっぱり、悔しいな……」

 

 ポタリ。諏訪子様の手の甲に雫が滴り落ちました。驚いたボクが、諏訪子様の方へと寄ろうとしますが、諏訪子様は左手で目元を拭いながら、右手を立ててボクの動きを止めました。

 

「私は大丈夫だから。ほら、颯季。そろそろ出番だよ」

 

 諏訪子様が、ボクへと向けてた手をお社の前に作られた祭壇へと向けました。そこには、既に捧げ物をする人の姿は無く、祭壇の前で暗闇の中ボクが来るのを待っているみたいでした。ここには、シキちゃんだけでなく、フユちゃん達子どもも参列しています。ですから、早く終わらせないと子ども達の健康に悪いですね。

 

「分かりました。では、いってきますね」

「うん、頑張って」

「はい、諏訪子様も最後バッチリお願いします」

 

 ボクは、傍に置いておいた天狗さんが作ってくれた神楽鈴を手に取り、お社の外へと踏み出しました。

 

 

 

 

 

 お社の外に出たボクは、右手に持った神楽鈴を軽く振ります。シャランと、鈴の音が辺りに響き渡って暗闇に溶けていくのと同時に、祭壇の両脇に置かれた篝火に『鬼火』で火を点けました。

 

 この神楽鈴にはボクの神力が込められている。らしいです。諏訪子様が言ってました。

 

 左脇腹の辺りに持ってきた右手を、ゆっくりと右肩の先まで持っていき、シャランともう一度、腕を振って神楽鈴を鳴らします。ボッと音を立てて村の人達の視界を確保させる為に用意されていた篝火の1つに火が灯ります。

 

 ボクには神力というものが未だに良く分かりませんが、どうやらこの神楽鈴はボクの炎を遠隔で生成させたり制御出来るようなのです。

 

 伸ばしている右腕をそのまま、目の前まで動かします。この時、シャラシャラと鈴を連続させて鳴らします。鈴の音が1つ鳴り響く度に、1つずつ篝火に火が灯っていき、全ての篝火に火が点いたのとボクが鈴を鳴らす動きが止まったのは同時でした。

 先ほどまでとは打って変わって視界が明かりで照らされたお社前。そこでボクは、目の前に来た神楽鈴を両手で握り直して胸元まで持っていき、深々と二度礼をします。

 

 さて、ボクに神力の使い方なんざさっぱり分かりませんが、この通り神楽鈴の使い方だけはなんとなく分かってます。ですので、1つ舞を奉納するとしましょう。

 

――『炎の舞』

 

 ボクが意識を切り替えると、木の棒に無数の銅鈴が取り付けられただけの無骨な神楽鈴から二つの炎がまるでリボンのように伸びてきました。

 ボクがゆっくりと舞い始めると、鈴が鳴る度に少しずつ炎の長さが伸びていきます。最初は静かに進めていき、鈴を鳴らす回数も少なめに。お葬式に相応しい厳かな雰囲気を意識します。

 

 生物の人生は一度きり。輪廻転生なんてあり得ない。ここ、諏訪ではそういう認識です。仏教がまだ入ってきてませんからね。何なら、日本神道すら成り立っていません。神話の時代ですからね。では、死した魂は一体どの道を辿るのでしょうか?それ(神話)を今からボクと諏訪子様で創るわけです。

 

 ゆっくりと舞っていたボクは徐々にテンポを上げていき、鈴を鳴らす回数も増やしていきます。今までは摺り足で動いていた足も軽くステップを踏んでいます。イメージとしてはヒ○カミ神楽ですね。

 そんなボクの足元からは一本の炎がボクの周りを回りながら立ち上っていきます。その数はボクのスピードに合わせて、頂点から思いっきり振り下ろした神楽鈴の音と同じだけ増えていきます。

 

 古来、日本神道では死した魂は現世に残り、子孫を守る為に家や森林などに住み着き、子孫と共に歩み、見守り続けると言われています。これから、ボクと諏訪子様が行うのはそのお手伝いです。

 

 シャンシャンシャンと鈴を激しく打ち鳴らし、炎の渦を纏いながら激しく舞います。十本にまで及んだ炎の螺旋はやがて収束し1つの大火となり、ボクが地面スレスレまで振り下ろした一番大きな音で、立ち上った炎の先端から祭壇に突っ込んでいき炎の勢いとは裏腹に優しく静かに棺を祭壇ごと燃やしていきます。

 ゆっくりと棺を焼き尽くし、そのままじんわりとシキちゃんのお父さんのご遺体を焼いていきます。そして、舞いを続けながら燃やし尽くすまで待つこと五分ほどで、ご遺体は遺骨へと変わりました。それを見たボクは、二度柏手を打ちます。すると、天まで昇るほど燃え盛っていた炎は、忽然とその姿を消しました。

 

「皆様、祝詞を奏上下さいませ」

 

 ここでボクは初めて村の人達へと視線を向けました。そこには、皆さんが祈りを捧げるかのように跪き、口々に自分の言葉で祝詞を口にしていました。

 

 祝詞――それは神と対話する為に用いる言葉。それ即ち――信仰。ボクと諏訪子様が企んでいることは、この信仰を使うことです。

 

 村の人が祝詞を唱え終える。それと同時に、祭壇があった場所には1つの人魂がふわりと浮かび上がった。

 

「いずれ、諏訪を守る御霊の卵よ。我らが神の御元へどうぞ」

 

 ボクは、シャンシャン。と鈴を二度鳴らします。鈴の音に反応して、祭壇があった場所から二本の炎が、まるで道を作るように人魂を真ん中に置いて、お社まで細く伸びていきます。

 人魂――シキちゃんのお父さんの魂は炎の道を辿りながら、諏訪子様が待つお社までふよふよと飛んでいきます。それをボクは魂へと礼をして見送りました。

 

 死した魂は家の守り神となる。これは、家という小さな小さな土地に住み着く土着の神とも取れますよね?つまり、土着神の頂点である諏訪子様にとっては。

 

「今まで私を信仰してくれてありがとう、○○。これからは、こっち側でよろしく頼むよ」

 

 シキちゃんのお父さんの魂を手で包み、神力を注ぎ込みながら語り掛ける諏訪子様。神力を込められた魂は微かな輝きを放ち始めました。

 

「土着神の頂点たる私、洩矢諏訪子の眷属となってこの地を守るんだ」

 

 諏訪子様は、手で包んだ魂をゆっくりと神棚の方へと持っていきます。

 

「まずは、キミの居場所でシキを見守りながらゆっくりと力を蓄えるんだ。何時か、この村が……いや、この國に危機が訪れた時、家族を、キミの子孫を守る為に戦うんだ。よろしく頼むよ」

 

 諏訪子様は、魂を神棚の中へと納め、その扉を閉めてこう言いました。

 

「お疲れ様、目覚めた時にまた会おう」 

 

 『火導(ほのしるべ)神楽舞』。史実とは違う道を辿ることになる諏訪の土着信仰の原点にして、いずれ、諏訪の象徴となるお祭りの初まりです。

 





今回、シキちゃんのお父さんをメインにしたのに一切の深掘りをしなかったのには、一応の理由があります。僕達からすればただの名前もないモブでも、颯季と諏訪子様からすれば大事な護るべき対象であるかけがえのない存在です。その、僕達と颯季達との差を明確にするためにわざとやりました。颯季がいることでの諏訪子様におきた原作との乖離点にもなるかな?とも思いました。ここの諏訪子様は信者思いの良い神様にする予定です。

さて、この章はこれで終わりです。

次話から新章『最後の一年神主』編になります。お楽しみに。

次回 でんせつ、製鉄する
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