「随分と派手にやられたわね、颯季」
ボクのよく知る姿とは掛け離れた、頭から生えた二本の長く伸びた角と、腰まで伸びた長い桃色の髪を携えた美しい女性の鬼。諏訪子様ほどではないですが、ボクの前世での推しと呼べる人が今ボクの隣にいます。
「えーっと……まぁ、ボクの状態が状態ですし……」
そして、ボクの身体には一ヶ月ぶりに大きな穴が空いています。何があったのかと言うと、勇儀さんともう一度闘ったからですね。結果は、言うまでもなくボクのボロ負けです。
ビジネスパートナー的関係になったことで、妖怪の山の方達を敵として見れなくなってしまい、チー特性である『炎獣王の覇気』さんが発動しなかったんです。と言うことはですよ。当然ながら、チー特性も発動させて、妖怪の山に住む数百人の力一割を重ね合わせて漸く対等に渡り合えた勇儀さんとの闘いが成立する筈もなく、それは見事なまでに瞬殺されましたよ。
情けないまでにワンパンでしたよ、ワンパン。まぁ、最初から全力全開の四天王奥義をぶちかましてきた勇儀さんも悪いです。何でこっちが様子見の『インファイト』なのに、初手ゴリゴリの必殺技を使ってくるんですかね!完全に出し抜かれましたよ!ですが――
「次はこうはいきませんからね!ふんす!」
ボクは鼻から炎混じりの息を吐き出して、気合いをいれます。ボクはこれからもっともっと強くならないといけません!
諏訪子様もそうですが、勇儀さんにミシャグジ様、そして、今ボクの自然治癒にしか任せざるを得ない傷口に包帯を巻いて下さっている華扇さん、もう一人の山の四天王である萃香さんなどなど、ボクよりも強い存在が身近に沢山いらっしゃいます。そして、この世界特有の力……神力や霊力、妖力、魔力などのことですね。今のボクは、それが一切使えません。でも、ボクは神力と妖力が使えて、しかも量が滅茶苦茶多いらしいです。つまり、
のびしろですねぇ!(けーすけ並感)
注、因みにけーすけさんは実在する人物ではありません。決して、サッカー選手なんかではありません。これ大事です。
「ね、ねぇ……颯季?」
そんなバカみたいなことを考えていたら、華扇さんが何処かそわそわした感じで話し掛けてきました。ボクのスーパー敏感第六感スキンさんはウインディ耳と尻尾に、華扇さんの視線が向いていると告げています。
あぁ、なるほど。そう言えば、華扇さんって動物とお話出来るとかなんとかで、結構動物好きなイメージがあるんでしたね。実際、東方二次創作ではかなりの作品で華扇さんが動物好きで書かれてた気がしますし。
あれ?動物とお話出来るのは覚妖怪だけで、華扇さんは出来ないんでしたっけ?あれ?なんか、さとりさんはともかくこいしさんは動物とお話できなかったような?何ででしたっけ?わうー?……すみません、流石に15年もの間ウインディ生活を続けていたせいで、そこら辺があやふやになってますね。まぁ、15年経った今でも名前と大体の容姿を思い出せるだけ良しとしておきましょう。
えーっと、何の話でしたっけ?……そうでした、華扇さんに動物好き疑惑が上がっているってお話でしたね。でも、今の華扇さんって仙人である茨華仙ではない、鬼の茨木童子ですよね?鬼が動物好きってイメージがあんまり湧かないんですけど、どうなんでしょうか?まぁ、試してみれば分かりますよね。
ボクは、耳をパタパタと揺らし、尻尾をゆるーく振ってみます。そしたら、華扇さんの目がねこじゃらしを前にした子猫のようにあっちへこっちへ……かわいい。……じゃなくて、なるほど。
「撫でます?華扇さんでしたらいいですよ?」
ボクは、隣り合って座って華扇さんの膝の上に尻尾を乗せます。まぁ、今になって考えてみれば、仙人として過ごしていた時に妖怪絶許な主人公である霊夢さんにも鬼であることに気付かれてませんでしたね。
そして、霊夢さんが見た目だけでヒトを判断するような人ではないと思います。きっと、原作時の華扇さんと今の鬼である華扇さんでは見た目だけでなく、その身に纏うオーラも違ったのでしょう。周りを全て威圧する圧倒的強者のものから、慈しみを持った仙人のものへと。
「え、いいの?」
「はい、是非」
まぁ、何を言いたいのかと言うと、今までの華扇さんは動物達と戯れたくても、鬼としての気配のせいで離れてしまったのでしょう。
恐る恐ると言った様子で、ボクの尻尾に白魚のような指を伸ばしてくる華扇さん。最初は、ちょんっ。と軽く突っつくようにして触れてきました。
「本当にいいのね?」
「えっと、はい」
「じゃ、じゃあ、いくわよ」
ボクは、犬みたいな知性が欠片ほどしかないあん畜生共と一緒くたに扱われ、愛玩動物みたいに可愛がられるのは何がなんでもお断りです。
ですが、畜生共に嫌われてしまう華扇さんのアニマルセラピー目的であれば、多少は犬扱いも目を瞑ることにします。まぁ、華扇さんがボクをそこらの犬っころ共と同等に扱うなんてこともないでしょうし。
「んっ……」
そんなことを考えていると、ぞわぞわっとした感覚がボクの背筋に流れ、思わず声が漏れてしまいました。慌てて、華扇さんの手があるボクの尻尾に目線を移すと、そこにはただボクの尻尾を毛並みに沿わせて指を這わせているだけでした。
う、嘘ですよね?こ、この感じ、諏訪子様とまではいかないですけど、軽くシキちゃんを超えている?ボクの感覚的に華扇さんとシキちゃんのグルーミングでの感度は同じくらいだと思っていたのですが……。
「颯季、もしかして痛かった?やめる?」
ボクの予想を超える気持ちよさのあまり、身体が強張ってしまったのでしょう。華扇さんがボクの顔を覗き込みながら心配してくれます。
「大丈夫です!」
なぜかって?
「そう、じゃあ続けるわね」
ボク、慣れっこなので、こういうのには強くなったんですから!諏訪子様でもない限りは大丈夫です!
「きゅぅうん、きゅーん、かしぇんしゃーん」
今回も、勝てませんでした。華扇さんのテクニシャンぶりには即墜ち二コマを決めざるを得ないですね。ボクはだらしなく華扇さんの膝にうつ伏せになって、腰に手を回して必死に快楽に耐えています。ですが――
「ふふっ、颯季はここが好きなのね?はい、とーんとん」
「んっ……あっ…ふぁっ…んっ…」
華扇さんの指がボクの尻尾の付け根をとんとんとリズムよく刺激を与えてきます。本当にそこはダメなんです。ボクの
ボクは流石にこのままだとあの時の醜態を晒してしまうと考えて、このままここで一時の快楽に身を委ねたいという欲望を火炎放射で燃やして、華扇さんの手から離れます。
「あっ……」
むっ……ちょっと悲しそうにご自身の手を見つめている華扇さんを見るのはかなり心に来ますが、ボクがここに来た理由は華扇さんに撫でられることでも、勇儀さんにぼこぼこにされることでもありません。
「華扇さん、そろそろ本題に入りましょう」
「名残惜しいけれど、そうしましょうか。それじゃあ――」
今回、ボクがここに訪れた理由は、以前ボクが知らないところで決まった、ボク達の
つまるところ、今日は外交目的で来たわけですね。外交相手とあんなことをしていいのか。と言う疑問については無視させて頂きます。
「――貴女達が考える
「分かりました」
ボクの夢はいつか言ったことのある通り、人間と妖怪の共存です。その理想を叶える為の第一歩がこの会合であり、大きなチャンスです。何せ、神話の時代であり、なおかつ鬼の四天王が未だ妖怪の山にいるこの時期が最大にして最後の機会なのです。
来年のことをいえば鬼が笑う。なんて諺がありますが、それが何十年、何百年先のことになったらどうなるんでしょうかね?まさに抱腹絶倒って感じになるのでしょうか?ボク、気になります。
まぁ、今から答えが分かるんですけど。
今度こそ次回 でんせつ、伝説と対話する~茨木華扇編~