お日さま照るお昼過ぎ。ボクとシキちゃんの二人は外で一緒にいました。ボクは、空に向かって口から炎を吐き出します。火炎放射です。
「こんな感じですか?」
「……えっと、全然力が籠ってないですね」
「わうー……」
華扇さんとのお話が終わって二週間が経ちました。この二週間の間、ボクはシキちゃんと一緒に特訓をしています。ボクは、妖力の扱い方をシキちゃんの霊力の扱い方から学び、シキちゃんはボクから近接格闘を学んでいます。
シキちゃんは戦うのが怖いと言っていましたが、シキちゃんのお母さんが意識不明の重体、お父さんは亡くなってしまい、現在の村でボクと諏訪子様、ミシャグジ様を除いて戦える人がシキちゃんしかいなくなってしまったんです。流石に、そんな状況で怖いから戦わないなんて言えるはずもなく、更には戦えるのが人外三人と言うのもかなり不味いとなって、シキちゃんの要望もあり、こうして一緒に鍛えてるわけですね。
「わふー、今日はここまでにしましょうか」
「そうですね、疲れちゃいました。汗も一杯かいちゃいましたし」
そろそろ梅雨に入るかな、と言った具合の季節で外はとても暖かい時期ですからね。シキちゃんは、額の汗を簡素な布で拭いて言いました。うーん、それにしてもこの時代の服は薄いですから、下着って概念もないですし、大分汗で気持ち悪いんでしょうね。ボクは、汗をかかない体質なので大丈夫ですが、流石にかわいそうです。……あ、そうだ。ボクはシキちゃんにチー特性の『炎熱操作』さんを発動させてぴっとりとくっついてシキちゃんの回りの温度を少しずつ下げていきます。
「どうですか~、これで少しは涼しくなったと思いますけど」
「あ、あわわ…………さ、颯季さん、な、なにを……」
ボクがくっつくと更に顔が紅くなってしまったシキちゃん。あれ、もしかしてボク操作間違えて暑くしちゃってましたかね?でしたら、もうちょっと温度を下げて、シキちゃんにも抱き付いちゃいましょうか。
「えいっ……どうですか?気持ちいいでしょう?」
「あわ、あばば……やわ、やわわわわっ……」
「大変なことになったわ、颯季…………は?」
「あ、諏訪子様。どうかなさったんですか?」
「……はっ、諏訪子様!」
あ、諏訪子様もいらっしゃいましたね。なんか、少し黒い雰囲気が出てる気がします。お腹でも痛いんですかね?あれ?シキちゃんもはっとしたように諏訪子様を見て……なんかバチバチしてます?
「いや、なんでもないよ。ね、シキ」
「はい」
そう言って笑い合う諏訪子様とシキちゃん。気のせいみたいですね。なんか、目が笑ってなかった気もしますけど、それも気のせいでしょう。お二人の仲が悪いなんてあり得ませんし。
「それより、颯季。あと、ついでにシキも。ちょっと社に来てくれる?」
「それって、さっき言ってた大変なこと、でしたか?」
「そう、シキの父親についてかな」
「お父さんのこと、ですか?」
ボクとシキちゃんは諏訪子様の言葉に、思わず互いに顔を見合わせます。そして、数秒間見つめ合った後、諏訪子様に付いてお社へ向かいました。
で、お社まで来たわけなのですが。ボクとシキちゃんの目の前には、一つの壺が置かれていて中にはシキちゃんのお父さんの遺骨が入っています。わうー?
「どこか変なところでもあるんですか?」
「颯季、本当に神獣?シキは分かるでしょ?」
「はい」
情けない神獣で申し訳ないです。えーっと、このシキちゃんのお父さんの遺骨はですね、本来であればシキちゃんのお宅で二月ほど管理する予定だったのですが、ほらシキちゃんって今は実質一人暮らしみたいな感じじゃないですか。
しかも、結界に閉じ込められたお母さんもいるわけですし、シキちゃんの精神衛生上問題があるわけですね。ですので、シキちゃんは今はフユちゃんのお家に寝泊まりをしているんです。
つまり、シキちゃんのお父さんの遺骨を管理することが出来ないんですよ。ですから、ボクと諏訪子の住むお社で管理しようってなったわけです。そう、神が住む神力溢れるお社に放置していたわけですね。何が起きたのかと言いますと。
「シキの父親の遺骨が聖骸化したわ」
こういうことです。これの何が悪いのかと言いますと。
「このまま普通の墓地に埋葬すると辺り一帯が神力に釣られた救いを求める怨霊やら何やらが溢れ返ることになる」
こうなるわけです。諏訪子様の説明だとかなり危ないことになるのは分かると思います。じゃあ、どうするのかと言うと、これもまた諏訪子様が教えてくれました。
「と言うわけで、颯季。聖墳墓――祠を造るよ」
聖骸と言うのは、簡単に言えば神力を宿した遺体ですね。呼んで字の如くってやつです。諏訪子様が仰っているのは、この聖骸を使って新しく祠――神社を造ろうと言ってるわけですね。
そんなことをしたら、諏訪子様に捧げられる筈の信仰が少なくなりそうなものですが、そこに関しては心配いらないみたいです。と言うのも、シキちゃんのお父さんの遺骨は諏訪子様とボクの神力に当てられて聖骸化したことで、ある意味ボクと諏訪子様の分霊に近い状態にあるそうです。
「つまり、私と颯季の子どもって訳だ」
「流石に無理があると思いますよ、諏訪子様」
いくらボクと諏訪子様の神力が混ざってるとは言え、子どもなんて……
「こ、こども……颯季さんと諏訪子様の……あ、あばば……」
「ほら、シキも私と颯季の子どもだって認めてるよ」
「ほら、じゃないですよ!下らないこと言ってないで、お仕事に行きますよ!」
ボクは、勢いで話をぶったぎって、ぶーぶーと抗議する諏訪子様の手を片手で引いて、骨壺をもう片方の手で抱えて外にでました。シキちゃんも、小声でぶつぶつ言いながらボク達の後を追っかけてきました。
「颯季」
「なんでしょうか?」
「おすわり!」
わう?今、諏訪子様はおすわりと?ボクに?まるで犬扱いじゃないですか。いくら諏訪子様でも赦せませんね。
「わん!(はい!)」
わ、わうー?な、何かウインディの姿になっておすわりしちゃいましたよ?な、なんで?
いつの間にかボクが持っていた骨壺を諏訪子様に奪われて、犬みたいに尻尾を振っているボク。何があったんですかね?
「シキ、乗るよ。颯季、伏せ」
「わん!」
「え?え?い、いいんですか?」
「ガウッ!(いいですよ!)」
一足早くに伏せたボクの背中に乗った諏訪子様が、シキちゃんを諏訪子様の後ろに乗せ、ご自身のお腹にシキちゃんの手を回させました。
「ワウッ?(どこまで行きますか?)」
ボクの言葉に諏訪子様はにししと笑いながら、ある一点を指しました。
「あそこ、私と颯季が出会ったあの場所だよ」
「ガウッ!ガウガーウッ!(分かりました!では、しゅっぱーつ!)」
諏訪子様の細い指の先にはボクが目覚め、諏訪子様と出会い、そしてミシャグジ様と戦った始まりの山でした。ボクは元気よく一鳴きしてから走り出しました。
ボクの掛け声に応じたように、ボクの上で拳を突き上げて声を上げました。
「しんこー!」
「お、おー!」
ボクは諏訪子様とシキちゃんがしっかりと掴まったのを確認してから、足を動かす回数を上げて加速していきました。
次回 でんせつ、墓穴を掘る
ぜんかいのよこく、ぼけつだとおもったひと、てぇあげて。
って、今回やりたかったんだけどなぁ。