諏訪大戦にでんせつポケモンが参戦するそうです   作:タニコウ

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また短い。


妖怪の山騒動編
でんせつ、山に行く


 

「え!?シキちゃんはまだ帰ってないのですか!?」

「そうみたいです……さっき、私となっちゃんで明日遊ぶ約束をしに行ったのですが、まだ帰ってきてないみたいで……」

「まだって……もう日が暮れますよ!?奥さんは夕方には帰ってくるって言ってたのに……」

 

 ボクは、ボクと諏訪子様が暮らすお社に先ほど駆け込んできたフユちゃんとお話をしています。お話の内容はフユちゃんのお友達で、今日のボクの悩みの種ことシキちゃんについてです。因みに、諏訪子様は興味がないのか裏庭でミシャグジ様と組手中で、珠にどころか頻繁にお社が壊れないか心配になるほどの揺れが来ます。ほら、今も来ました。

 話が逸れましたね、シキちゃんについてのお話でした。シキちゃんについてなのですが、あの畑の修復が終わった後にシキちゃんのお家へ向かいました。しかし、シキちゃんのお母さんから返ってきたのは、夕方には帰ってくると言う一言と拒絶を示す扉を閉める音だけでした。その時に、諏訪子様に離れた位置でバッチリ見られてしまったので、完全に臍を曲げてしまい今は既に関心すらもないみたいです。

 

「やっぱり、フユちゃんも心配ですよね」

「はい……なっちゃんも心配してましたし……」

「そうですよね、幾ら夕方には帰ると言っても、流石にこの時間まで帰ってこないのはおかしいです」

 

 そして、現在の時間は大体18時前くらい。つまり、お日さまが沈みかけの時間です。既にここから見える限りでも、山によって半分ほど隠れています。 夕方なんてもう少しで終わって夜が来てしまいます。夜は妖怪の時間です。流石に、そんな時間になっても返ってこないのはおかしいです。そんな時でした。

 

「颯季」

「あれ?諏訪子様、どうしたんですか?」

 

 ひょっこりと、入り口の脇から顔だけを出して諏訪子様がボクに話し掛けてきました。多分、要件だけ伝えてすぐに戻るためなのでしょう。そして、ボクはその言葉を聞いて身体が即座に動きました。

 

「早速、要件だけ伝えるけど、ちょっと前に結界から一人出ていった反応があったよ」

「それって、シキちゃんのお母さんですか!?」

「……まーね」

「すみません、諏訪子様。留守番お願いします」

 

 ボクは諏訪子様の返事を待たずに立ち上がり、入り口を飛び出そうとしたのですが、横を通り過ぎようとしたところで諏訪子様に腕を掴まれました。

 

「すみません、急がないといけないので」

「別に止めはしないよ。ただ――」

「ただ?」

「3日。3日後の夜明け前までに見つけて帰ってきて。それ以上は何の準備もしていない奴が山では生き残れない」

 

 成る程、諏訪子様はどうやらシキちゃん達を見捨てるという考えでは無かったようです。その一緒に行けないのが悔しそうな顔で分かります。シキちゃんの家族がこの村で諏訪子様とボクを除いた唯一の妖怪に対抗出来る戦力です。つまり、シキちゃんの家族が全員いない上にボクと諏訪子様まで出てしまったらこの村を守る人はいません。

 一応、ミシャグジ様がいますが、ミシャグジ様は村からも畏れられる存在です。ボク達がいない間に何かが起こる可能性も否定出来ない。だから、諏訪子様は村に何があっても良いように残る。ということですね。

 

「村をお願いします」

「ん、任せて」

「いってきます、フユちゃんをお家へ送っといて下さいね!」

「気をつけて」

 

 ボクは諏訪子様からの見送りを受けながら全速力で村から飛び出しました。まだ、シキちゃんの臭いが道に残っているのを確認してから全速力で跡を追います。

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 10分ほど走ると、ボクが諏訪子様と出会った山に入りました。そして、山の中は既に日の光を失い闇に包まれています。ボクはそのまま、シキちゃんの臭いを辿って闇の中を走り続けていると、ドロドロとしたヘドロのようなものを纏ったケモノのような妖怪が出てきました。妖怪は、ボクを視認すると同時にヘドロのようなものが滴っている爪を振り下ろしてきました。先に手を出したのはそっちですからね。手加減はしませんよ。

 

「邪魔、ですよ!」

 

――『フレアドライブ』

――特性発動『いしあたま』

 

 ボクは身体から炎を噴き出させ、それを身に纏い駆け出し、炎が尾を引きながら追随してきます。そして、妖怪の爪を躱して炎と共に突進すると同時に、ギガインパクトの時とは違い大きな爆発を引き起こして、身に纏った炎がボクの身体を直接焼いてきます。本来であれば、相手に大きなダメージを与えるのと同時にボクも決して少なくないダメージを負ってしまいます。

 そこで輝くのが、今発動した特性『いしあたま』です。これも、ボクが転生で得た特性の1つですね。一応、ボクのリージョンフォームであるヒスイの姿の隠れ特性ではあるのですけど、ボクには関係のない話です。

 この『いしあたま』があることによって、本当なら受ける筈だった反動ダメージをゼロに出来るのです。なぜ、石頭だからといって、ボクの身体を焼く炎のダメージをゼロに出来るのかはさっぱり分かりませんが、そういうものだと人間だった頃の知識が言っているのでボクは気にしないことにしています。

 

 呻き声を上げながら力尽きた妖怪を一瞥して、ボクは焦げ臭くなってしまった周囲の臭いから、時間が経って薄れてしまったシキちゃんの臭いを微かに感じ取りました。そう言えば、シキちゃんの臭いもシキちゃんのお父さんの臭いも感じるのに、シキちゃんのお母さんの臭いが感じられませんね、夜ですから妖怪対策に臭い消しでも使っているのでしょうか?

 

「あ、ここで曲がってますね」

 

 ボクは、緩やかにですが曲がっている臭いの元を辿って、山の中を珠に現れる妖怪を『フレアドライブ』でこんがり焼きながら進みました。そのまま進んでいれば気付く筈だった、弾幕が放つ無数の光にボクが気付くことはありませんでした。これがボクがこの世界に来て初めての後悔した出来事でした。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁっ……余りにも、多すぎるっ」

 

 腕や、額などから夥しい量の血液を流しながら、シキの母親は後ろに向けて無数の弾幕を放つ。それが、背後にいた無数の妖怪の群れの先頭に当たり、何体かの妖怪が弾けるようにして絶命した。だが、すぐにその死体を足場にして群れた妖怪が襲い掛かってくる。

 

「くっ……こんなことになるのなら、あの時素直に助けを求めるべきだったのでしょうか?」

 

 シキの母親の脳裏に過るのは、自分たちの村に降臨した神と、それに付き従う世話焼きな神獣だった。今回、夫達がいなくなったことを伝えていたのなら、神獣のことを偶に性的な目で見ている神獣第一の神はともかく、あの、例え自分が突き放したことを言っても心配してくるような世話焼きな神獣だったのなら助けてくれたのだろうか?

 いや、間違いなくあの神獣だったら助けてくれたのだろう。でも――

 

「今更、後悔したところで遅すぎですね、グッ……!かはっ…!」

 

 目の前の妖怪達から意識を逸らしたのが、致命的な隙となった。地を駆ける狼のような妖怪が、目の前の妖怪を足場にして大きく跳躍し、大きな口を開けてシキの母親の目の前に現れた。まさに刹那の出来事だったそれに反応出来る筈が無く、右肩に思いっきり噛みつかれ、人外の膂力で肩を付け根から持っていかれた。自身の利き手を失い、絶体絶命の危機に陥ったシキの母親はそれでも、足を止めず、得物を失い威力が格段に落ちた弾幕で悪足搔きを続ける。

 だが、既に未来は確定したようなもの。せいぜい、数分呼吸する時間が伸びるだけ。それでも、彼女は動きを止めることはしない。

 

「シキ……あなた……」

 

 目の前に、鳥のような妖怪が、猫のような妖怪が、無数の妖怪が迫って来た。我先に喰らわんとばかりに、鋭利な歯が生え揃った口を覗かせる。ここまでか、と左目を鋭い爪が走り、右足を喰い千切られながらシキの母親は目を閉じて死を受け入れようとしたその時、

 

――ドカン

 

 遠くの方で聞こえた大きな音と目を眩ませるほどの業火が山を覆った。妖怪達はその脅威的なまでの暴力の気配に怯え逃げ、片足を失い地に伏せるしかないシキの母親はその炎に、ある者の存在を思い出す。

 

 どこまでも純粋で、鬱陶しい程に優しく、神のように民を見守るのではなく、その隣に寄り添い共に歩くかのような在り方を持った稀有な神獣(人外)。本来であれば、神と人間は相互不可侵な存在だった。神は、本能として、他者に向けてその身に宿る神力を余すことなく見せ威圧する。そして、人間はそんな神を畏れ、信仰という力を神に捧げることで恩恵を授かる。ただ、それだけの関係の筈なのだ。

 神が、孤独で孤高なのは当たり前のこと。それが、当然のことなのだ。なのに、あの神獣が来てからは大きく流れが変わった。神は自身の本能について知り、あろうことかそれを抑える方法を見つけた。民は、そんな神の新しい一面を見つけ、畏れるだけではダメであると考え始めている。

 

「私は、恐れていたの、でしょうね……変化を……」

 

 神と人間が互いに支えあう社会。間違いなく少し前までの関係よりも格段によくなるだろう。だが、彼女はその未来が不明であるが故に恐れたのだ。不知火颯希という存在が村を変え、自分が知るものから大きく外れ、予測不可能な未来が訪れ、対応できず破滅するのがどうしよもなく恐かったのだ。だから、突き放した。助けを求めるべきだったのに、それを不確定な未来への恐れが許さなかった。

 

「ごめんな、さい、シキ、あなた。……わたしの、せい、で……死なせてしまう」

 

 ここで諦めらめられたのなら、どれほど楽なのだろうか。それでも、諦められないのが、人間なのだ。過ちをおかしてしまったが故に、贖罪の機会を求めてしまう。だからこそ、自分が虐げようとした存在にも助けを求めてしまう。

 

「おねがい、します。……どうか、娘だけでも、ゴホッ……シキだけ、でも、ゴホッ、たすけてください……神獣さま」

 

 自分が吐いた言葉に反吐を吐きそうになりながらも、口にせざるを得なかった。どこまでも自分勝手で、わがままな願い、自分の選択の結果に訪れたこの最悪な状況を全て他者に委ねることしか出来ない自分の無力さに反吐が出そうになった。

 咳と共に、自身の熱が失われていく感覚を、死へと向かう冷たさを味わいながらも、遠くにいるであろう神獣の放つ確かな優しい炎の熱を感じた。

 

「シ、キ……ごめん、ね……わた、しは、さきに……」

 

 自分はどうしようもなく、最低な母親なのだろう。来るかも分からない未来に怯え、娘と夫を助ける機会を潰した。それでも、娘の無事を願ってしまうのだ。自分は死に、娘には辛い思いをさせるかもしれない。でも、娘には生きていて欲しいのだ。どうか、娘を助けてください、と。祈りを捧げる。

 シキの母親には視界の半分を占める鮮血の赤を意識する余裕は既になく、娘への懺悔と娘のために動く神獣へと信仰(身勝手な希望)を託し、目を閉じた。

 

 

 

 

 

 動きを止めた獲物を逃す筈は無く、定期的に響いていた爆発音が聞こえなくなると同時に、無数の妖怪達が待ち侘びたとばかりに出てくる。我先にと動き出した彼らは、高速で動く何かに弾き飛ばされたり、潰されたりして数分と掛からずに何者かによって殲滅された。

 

「シュロロロロ」

 

 神は彼女へと救いを与えることはしないのだ。まだ、生命の灯火は消えていない。

 





ママには地獄を見て貰います(鋼の意志)


次回 でんせつ、伝説と遭遇する~天狗編~
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