活動報告にも投稿してあるので詳しくは書きませんが
プライベートが慌ただしくて遅くなりました……
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16話以降のIFストーリーのR18版はイチャラブとヤンデレを分割して投稿する予定です!
(そのため、次の投稿は時間がかかりますが………)
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(8,898文字)
第14話 魔法使いの夜・後日談1青子・有珠END
12月31日・15時55分・久遠寺邸
あの激闘から六日経過した。あれから三咲町の結界を貼り直したり、協会にこれまでの経緯を報告したり、草十郎の使い魔認定に奔走する忙しい日々であった。
大晦日の朝から大掃除を始め、洋館の庭の掃除だけで午前中を費やす。洋館内の掃除は先ほど終了して三人ともお疲れムード。
居間で一服するため、
草十郎が紅茶の準備をしていると──────
「草十郎。今から正月の食べ物を買って来てくれない?」
居間のソファーで寛いでいる青子が急に要望してきた。草十郎も朝から窓拭きや庭の手入れで疲れていた。有珠は普段通りに古本を読みふけり、傍観者に徹する。
「今から買い出しに行くのか?
前に忙しいから
お節料理は作らないって言ってなかったか?」
「前はお金がなかったから諦めただけ。
でも姉貴のルーンの情報を売ったら、
協会から臨時収入があったのよ。
お節料理も既製品なら手間は掛からないでしょ?
だからほら、ちゃっちゃと準備する」
青子は寝そべってたまま、手を振り続ける。如何やら、青子は買い出しに行くつもりはないらしい。草十郎は困り眉でふたりを見つめる。しかし、正式に使い魔認定が降りた時から彼女たちの命令は絶対遵守である。
因みに契約とは別に青子の首輪は今も装着しており、有珠から貰った左眼の魔道具は橙子との戦いで破損した。そのため、今は小型の青猫の鈴のピアスを左耳に装着している。
青子は”ピアスは学校で問題になるからやめろ”と文句を言っていたのだが、魔術で認識阻害を施されているので魔力がない人には見えないから問題ないと押し通された。
「──── 有珠も一緒に行くか?」
「…………静稀君がどうしてもって言うなら」
「ああ、ごめん有珠。
結界について質問あるからそっちはパスして」
一瞬、しかめっ面になるがすぐに無表情に戻す有珠。長髪の少年は椅子から立ち上がり、部屋に戻って白いコートに着替える。階段を降りると居間から彼女たちが何やら話し込んでいる。
草十郎は気にせずに居間に入ると会話は終わっていた。ソファーに座っていた青子がスカートのポケットから茶封筒を取り戻す。
「コレがお金だから適当に買ってきて。
あ、でも全額は使わないでよ。
ついでに『ショコラジュエリー』でケーキ買ってきてね」
「…………俺の勘違いじゃなかったら、
そのお菓子屋さんは隣町だった気がするんだが───」
「そうよ。だから急いで行った方がいいわね」
青子の中では確定事項なのか、取り付く島もない。ため息をつき、寒空の買い出しに行く覚悟を決める。青子からお金を受け取り封筒の中には五枚以上のお札が入っている。茶封筒を懐のポケットにしまい、居間の扉の前に立つ。
「それじゃあ、行ってくる。
有珠も欲しいものはないか?」
「…………私は大丈夫よ。静稀君も気を付けて」
草十郎が洋館から出発して五分は経過した。
ふたりの少女たちは本題に入るべく、腰を据えるために紅茶を入れ直す。黒衣の少女は睨むように青子を見つめる。青子も引くことは出来ないと決心を固めて目の前にあるティーカップを飲み干す。
「────、それで青子。
静稀君について話があるって
何のことかしら?」
「流石にそこまで露骨にしなくてもいいんじゃない?」
互いに牽制を入れて間合いを確かめる。
「────、単刀直入に訊くけど、
有珠は草十郎のこと、どう思っているの?」
始まりのゴングはなく、青子からの先制攻撃。
「…………別に。ただの使い魔よ」
「その割には視線が草十郎を追いかけているけど、
本当に何があったのよ。この数日で」
ティーカップの中を覗き込み、視線を逸らす有珠。
青子も分かりきった事を確認するのは止めて本題に突入する。
「あの夜の出来事を知っているなら分かっていると思うけど、
私は草十郎の事が好きなの。
だから、有珠には応援して欲しいんだけど…………」
「──────」
有珠の眉間はより険しいものになっていく。分かりきっていた事だがここまで露骨に態度に出せば、疑念は確信に変わる。青子は両足を組みなおし、手を額に当てながら姿勢を正す。
「そうは問屋が卸さないか…………」
「────、別に。
青子が静稀君を好きになるのは自由でしょ?
でも、あくまでも”
…………静稀君の気持ちまでは約束出来ないわ」
鼻で嗤うような態度。
勝者の余裕とでも言いたげな口調からは、どこか青子を馬鹿にする様子でもある。その瞬間、青子も一つの仮説に至る。
しかし、その指摘は自らの意思で地雷を踏み込む暴挙。本来なら回避するか、副会長辺りに地雷除去もとい、自爆特攻させる。けれど、ここで引いては前に進めない。霧の番犬が出てこない事を祈りつつ、そっと口を開けた。
「…………えっと、有珠?
もしかして草十郎から『好き』って言われた?」
眼を見開くがすぐに冷静さを取り戻す。
「──────、 そうだけど。それが何か?
青子には悪いけど───────
彼は私の物になりたいと望んでいる。
駒鳥のように役には立たないそうだけど。
…………そこは借りもあるから、
特例として許可してあげるわ」
いつもより饒舌な彼女に苦笑する。久遠寺有珠は魔女である。そして彼女は所有物に並々ならぬ独占欲を持つ。この場で草十郎を”私の物”と言う台詞だけで有珠の中では一生逃がさないと同義である。
しかし、青子には分かっている。過去の自分と同様に大きな勘違いをしている事。青子は息を整えて、地獄の釜の蓋が開く。
「あ、有珠…………
草十郎は貴女と付き合いたくて
好きって言っているわけじゃないのよ?」
夜の鐘が鳴り、空気が軋む。
気が付いたら有珠の手元から鈴猫は落とされて、地面から鐘の音がする。あの夜の誓いを、雪原の告白を虚偽だと言われて黙っていられる程、魔女の堪忍袋は広くない。
元より口より手が先に出る性格の黒衣の少女。魔女は躊躇いもなく、童話の怪物を再臨させようと右腕を前に突き出す。
「…………貴女との生活は楽しかったわ。
静稀君には青子は何処かに旅に出たと説明するから
安心して逝きなさい」
「ちょ……ちょっと待った!
説明する暇もなく先に叩くって!
中世の魔女狩りでも、もう少しお淑やかよ!」
「それが遺言でいいかしら?」
「だから、ちょっと待ちなさいよ!
あの馬鹿から告白されたのは私もなんだってばー!」
振り下ろす腕を止める。
聞き間違いか、青子の口から草十郎に告白されたと幻聴が聴こえる。しかし、それは幻ではなく現実であることを証明するために青子は話を続ける。
「私が草十郎に好きって言われたのは初対面の帰り道。
屋敷の鉄門前で青子が綺麗だとか言われたのよ。
その後の遊園地の時も目の前で好きって言われたわ」
「──────、 噓よ」
有珠にとって告白とは未知の領域。
童話の怪物より縁遠い魔境の至宝。目の前の宝石がガラクタのように感じて、足元の感覚が無くなる。目の奥は疑念が渦巻き、漆黒の瞳はより濃くなる。けれど、残酷な世界はより詳らかになる。
「それどころか、アイツ。
喫茶店の客にも言いまくっているわよ?」
信じられないと眼を見開く。
青子としては挨拶や関係良好のツールとして好意を示すのは別に珍しいことではない。しかし、黒衣の少女にとっては驚きの連発であった。
「まあ、アイツのはやり過ぎだと思うけどね。
でも、わかったでしょ?
有珠へ言った好きも挨拶みたいなものなのよ」
「────────」
実のところ、あの夜の告白は草十郎のとっても特別な好意である。けれど、世間知らずであり、恋愛弱者である黒衣の少女。その事実に気が付くことは至難の業。有珠は力なく腕を垂らし、夜の時間も終了する。
「私の場合は目の前でアイツに指摘されたから
もっとひどい状況だったけどね」
「でも、私は彼の事が好きなの」
項垂れる有珠とは対照的に瞳に力を宿す青子。
何も諦めないと決めたあの日から自分に噓を付くことを止めた。だが、彼の黒衣の少女への気持ちも気が付いていた。きっと、彼はこの生活を守るためにあれだけの無茶したのだと理解している。だから────
「有珠は諦めるの────?」
彼女の心に燃料を注ぐ。
「私は諦めるつもりはないし
このまま友人関係で終わるつもりはないわ。
────、 有珠はどうなの?」
「──────」
「友達のままでも良いの?」
「私は──────」
夜の魔女の執着心は甘いモノではない。
一度は沈んだ心に新たな光が灯る。
「…………私も、
私も静稀君のことが好き」
「────、 そう。
有珠も決めたのね…………
なら、私から提案があるんだけど。
────、 有珠。私と同盟組まない?」
ここまでは確認。元より彼女が草十郎を諦めると思っていなかった青子はここまでは規定通りと思っていた。しかし、この先が本題であり、未知の領域。この返答次第では屋敷に来て半年頃に発生した霧の虐殺が再演される。
「…………同盟?」
「そう、同盟よ。正確には戦略的同盟かな?
アイツのことを取り合いになっても良いんだけど、
あの馬鹿…………かなりの唐変木でしょ!?
あの夜にキスしたはずなのに
ぜんっーぜん! こっちの気持ちに気がつかないし!」
一方、買い出しのために駅のホームで電車を待つ長髪の少年は、突然くしゃみをする。
「…………それは…………」
「あのキスを挨拶とか契約の主の儀式としか思っていないのよ? このままだと老人になってもこの関係は変わらんないわ。私はそんなの勘弁だし有珠だって嫌でしょ?」
黙って話を聞き入る魔女。
テーブルのティーカップに手をかけて、喉を潤す。
「
このまま、一人で行動しても変わらないなら、ふたりで協力してアイツを落とすのよ。有珠が草十郎にアプローチする時は私はサポート役に立ち回る。逆に私の時は有珠がサポートするって感じね」
「──────!」
型破りな発想に驚愕する恋愛弱者。
実のところ、穴だらけの作戦なのだが黒衣の少女には天啓に等しい。前屈み程ではないが確実に興味津々の有珠。
「他にも同時にアイツにアピールするのもありだし、
三人でデートとかもありよ!」
「────!?」
「アイツが誰を選ぶかは、恨みっこなし。
それまではお互いに協力した方が効率的でしょ?」
右手を差し出す青子。
差し出された手を掴むべきか悩む黒衣の少女。しかし、恋の天秤の傾きを見逃す程、魔法使いは甘くない。
「今ならアイツのバイト先の
プレミアムチケットをあげるわよ」
「!!!?」
喫茶店『黎明』のプレミアムチケット。今は販売中止となった特別な商品券。このチケットを使用すると指名したキャストとお茶会ができる(チェキ撮影付き)。
本来、過激なサービスが終了した際にこのサービスも終了したのだが、既にチケットは販売していたため、現在にチケットを所有しているお客様のみ使用可能な隠れサービスとして存在している。
草十郎とのお茶会は毎日のように開催される。しかし、執事服の彼と一時間もお茶会をしたことはなかった。草十郎のバイト先は知っていたのだが、それでも黒衣の少女は喫茶店に足を運んだことはない。
けれど、喫茶店の情報は駒鳥で集めていたため、そのチケットの価値を知っている。彼女にはそのチケットが三大プロイに等しい宝石に見えた。
「────、 条件は…………」
「まず、週末の夜に会議を設けること。
次に攻める順番は交互にすること。
最後に駒鳥の情報を共有することよ」
「…………」
青子の一番の狙いは駒鳥の情報である。
有珠に邪魔されることより、情報収集能力戦でかなり遅れている青子には有珠との情報共有は何よりも必要不可欠である。恋愛に対して及び腰な黒衣の少女。けれど、何かのきっかけに行動的になった時に青子は圧倒的に不利になる。そのため早めに手を打つ必要があった。
夜の魔女は手を口に当てて熟考する。
冷静に条件を考慮すると有珠にとって得は少ないと考えられる。何よりも具体的な協力方法が未定なのに駒鳥の情報を共有することが価値として釣り合うのか疑問である。
しかし、このまま草十郎と一緒にいても結ばれないことは青子のキスで証明済み。初めから有珠に残された選択肢は一つしかないことを整理する。
「…………もう一枚チケットをくれるならいいわ」
「げぇ、やっぱり気が付いてたか……
まあ、初期投資としては仕方ないか」
青子の右手を掴む有珠。
ふたりの恋する乙女たちは同盟を協定し、
そのまま第一回草十郎攻略会議を開催する。
最終的にはふたりの少女と同時に結ばれるのだが、
それはまだ誰も知らない未来の物語。
12月31日・16時30分・社木商店街
門松や正月模様で彩り、賑わう街並み。
子供たちは道際の雪を集めて雪玉を投げ合う。恋人たちは手を繋ぎ、これからの未来に期待して明るい足取りで買い出しする。街全体が賑わう中、一際に大きな少年は一人、道の隅を歩いていた。
疲れていた少年は傍若無人な魔法使いの命令を遂行すべく、隣町の商店街まで足を運んでいる。つい先日まではクリスマスのイルミネーションやケーキの宣伝ばかりであったのに、今では一転して和を以て貴しとなすと言わんばかりに正月一色になっている。都会の豹変ぶりは凄いと再認識する。
青子が注文したケーキ屋はバイト先のお客様に紅茶と共に注文されたことがあるので場所は把握している。道沿いから少し外れた小道の奥にこじんまりと出店している。
しかし、立地の悪さに反して女性客が絶えない隠れ人気店でもある。店内の入り口にケーキやお菓子が鎮座しており、その奥にはお茶会が開けるテーブルが広がっている。
内装は喫茶店『黎明』と少し似ているのだが、何よりも奥のスペースは壁一面がガラス張りになっている。お菓子作りの様子がうかがえるポイントが女性から高評価らしい。
今回はケーキを購入して直ぐに帰宅しなくてはならないのだが、今度は青子たちと一緒に店内でお茶会を開くのも悪くないと考えるお人好し。
”店まで十分ほどか”と考えていると街灯の真下に設置してある公衆電話が鳴り響いた。音先を確認すると電話ボックスの中には誰もいない。
しかし、確実に公衆電話が鳴り響いている。草十郎は無視して店を目指す。けれど、草十郎が通り過ぎ去ると、とたんに音が止んだ。
気にせずに歩道を歩く。その先にまた、公衆電話が見えた。少し嫌な予感がしたのだが、公衆電話に近づいていくとまた呼び出し音が鳴り響いた。偶然にして目の前で鳴る公衆電話に疑問を覚える。
けれど、今は一刻も早く屋敷に帰りたい少年。朝から外掃除ばかりで指先もかじかむのが常態化して早く屋敷の椅子に腰を降ろしたい。電話ボックスでこだます音を無視して先を急いだ。
だが、二度あることは三度ある。
ケーキ屋『ショコラジュエリー』まであと少しの所で、また公衆電話が設置されていた。なぜ、こうも間近に電話ボックスが設置されているのかと憤慨するのだが、諦めて先に進む。やはり、というか、当然のように公衆電話から音が鳴り響いた。
流石に偶然でないことを確証する。
このまま無視してケーキを購入するか悩む。しかし、この謎を放置して来年まで疑問を残したまま年を越したくはない。仕方ないと小さなため息を漏らして電話ボックスの中に入る。
電話ボックスの中は呼び出し音でこだましており、早く受話器を取れとせがまれているような強迫感がある。まだ買い出しは何もしていない手ぶらの少年は受話器を取り、耳に当てた。
「えーっと、もしもし?
俺に何かご用でしょうか?」
「…………、ふむ。
電話越しなら接触しても大丈夫みたいね」
電話相手は声だけで凛とした風貌が想像できるほど、美しい声である。公衆電話のノイズ音が入っており、普通なら相手の事も分からない。しかし、一週間ほど前に姉妹で殺し合った人物の事を忘れるはずもなかった。
「もしかして、橙子さんですか?」
「そうよ、お久しぶりね。草十郎くん」
軽い口調で返事をする人形師。
草十郎はより深いため息をついて、手の甲を額に当てる。
「…………あの……橙子さん。
確か、あの時に決着はついたと認識しているのですが」
「いやね。私が一度限りで諦めると思っているの?」
電話先の彼女がいやらしい笑みを浮かべている様子が容易に想像できる草十郎。やはり、似た者姉妹だなと思いながら会話を続けようとする。けれど、先に彼女から話し始めた。
「うっそ、冗談よ。
もしかして本気で信じちゃった?
流石に手札が切れた状態で再戦するほど、
馬鹿じゃあないわよ」
「…………」
その言い分だと準備が終えたらまた攻め込むと聴こえるのだが、ここは無視する。自ら虎の尾を踏むほど、度胸も突っ込む精神力もない。草十郎は雑談はそこそこに本題を切り出す。
「それで何の用ですか? 俺も青子から橙子さんとは接触しないように言われているんですけど」
「あら、熱々で羨ましいことで。
真面目な話、貴方には学校に残っているベオに伝言を残して欲しいのよ。あの子、まだ廃校にいるでしょ? 本当なら私が学校に電話するべきなんだけど、青子が魔弾を見境なく掃射するから設置した受話器も破壊されてて連絡が取れないの」
「ベオ? ベオってあの金髪の少年ですか?」
「そう、あの人狼の子供。
契約不履行だから放置してもいいんだけど、
元、主としては責任感もあるしね。
山に戻るかだけでも確認したいのよ」
青子と同様に責任感が強いこの魔術師のことが、どうにも嫌いになれない少年は生返事を返す。正直、もう一度あの人狼に会うのは勘弁して欲しいのだが、どうにも美人の頼みには弱い。
「…………はあ。で、俺はどうすればいいですか?」
「お、聞いてくれるの?
やっぱり草十郎くんは優しいわね」
どこか軽い返事をする人形師。
「とりあえず、直接会う必要はないわ。
そこの電話帳の中に手紙が挟まっているから
それを旧校舎の正面口にでも置いといて」
「一応、青子には確認はとるのでダメでも恨まないでくださいよ。他の電話ボックスも手紙は回収した方が良いですか?」
橙子の依頼を了承して、確認する。
「あーあ、それなら大丈夫。
草十郎くんにしか認識出来ないように仕込んであるから
草十郎くんはそこの一枚の封筒を運んで」
長身の少年は公衆電話の隣に設置してある分厚い電話帳を持ち上げると隙間から白い封筒が落ちてきた。床から拾いあげて少し厚みのある封筒を胸元にしまい込む。
「要件は以上ですか?」
「そうね。今回はそれだけよ」
まるで次回もありそうな言葉に震える草十郎。
「じゃあ、またね。草十郎くん。
青子たちのことが嫌になったらすぐ連絡してね。
電話番号は久遠寺邸の電話棚に隠してあるから」
「────── そうですか、橙子さん。
今度はこちらから質問をしてもいいですか?」
話を打ち切ろうとした魔術師を引き留める。そのことが意外だったのか電話の向こうで驚いていることが伝わる。
「へえー、珍しいわね。
草十郎くんから質問とはね。
…………まあ、今回の報酬もまだ渡していないし、
頭金代わりに答えてあげましょう。
それで少年は何が聴きたいのかな?」
「別に手紙を運ぶだけなので報酬はいりませんよ。
でも、これだけは訊きたいと思っていて────」
「橙子さんは、まだ青子を許せませんか?」
短い沈黙が続く。
何処にいるのか、今は何をしているのか、何を企んでいるのか。そのような質問を予想していた橙子には意外な質問。橙子自身もまだ整理出来ていない気持ちに、この少年は清算する機会をくれた。
「────、 どうでしょうね……
正直……私にも分からない……かな…………
蒼崎の魔法を観測することはできたけど、
どうしても私が魔法使いになる光景が浮かばないの。
もし魔法使いになれてもその先がない事に気が付いた。
それでも良いって思っていたんだけど────」
言葉が詰まる橙子。
草十郎として青子と仲良くして欲しいだけだった。けれど、橙子にとって懺悔や禊の場に変わっていた。
「昔は仙人のようにこの世から逸脱した人物を目指していたの。でも、今の私の心は重過ぎる。鎖が結ばれたこの体では空にはいけない事に気が付いたわ。だから、青子のことはまだ分からない……
だけど──────」
橙子の中でひとつの決心を決める。
「世界を見に行こうと思うの。
これから旅をして自分の目標を探したいの。
今までとは違う目標を探しに────」
「────、 そうですか。
分かりました。困った時は連絡ください。
俺に出来ることは限られているけど、力になります」
「…………草十郎くん。
私に殺されたことを忘れてない?」
橙子は困ったように返事をするが少年として思い違いだ。
「何を言っているんですか?
俺が死んだのは自殺したからで橙子さんの責任ではないですよ。もしそうだとしても俺も橙子さんを殺そうとしたからお相子です」
「──────、はあ…………」
電話の向こうから深いため息が聞こえる。
「君と話していると調子が狂うわ…………
でも、ありがとうございます。これで前に進めそう」
「よく分からないですけど、
橙子さんが元気になって良かったです」
「別に体調は全快なんだけどね…………
うん、じゃあ。これで本当にお別れね。
草十郎くんも困ったら私を頼っていいから。またね」
「はい、またどこかで」
受話器からピーっと終了のお知らせが告げられる。きっと彼女も悩み続けていた。今まで誰にも頼らず抱え込む人形師は初めて他人の手によって前進する。
世界にとってはたわいもない出来事。しかし、この彼女の世界には大きな変化があったことを誰も気がつかない。
少年は電話ボックスから出てケーキ屋に向かう。ショーケースに並べられた奇麗なケーキの数々。その中から
店から出るとケーキ屋の路地裏に進み、アスファルトの上にハンカチを敷き、ケーキが一つだけ入っている紙箱を布の上に置いた。
少年は踵を返し、商店街の大通りに戻る。数分後、そこにあった紙箱を翠緑色のコートを着た魔術師によって回収される。中には小さなメッセージカードが同梱されており、中を確認した魔術師はクスッと微笑む。
しかし────
その言葉は二人だけの秘密である。
ご覧いただき、感謝いたします。
初投稿の素人なので誤字や不備があると思いますが何卒宜しくお願い致します。
感想、お気に入り登録、評価は凄くモチベーションが上がるので
気軽にしていただけると嬉しいです!
感想はひと言『面白かった』だけでも有頂天です!
(感想は時間が掛かっても返信するのでよろしくお願いいたします)
幻聖様、ソーシロー様、トシアキ0414様、よっちゃんイカ様、1鍵様、こはや様、
誤字・脱字報告ありがとうございます。大変助かりました。
(誤字、脱字、誤植など、いっぱいあったので修正作業は大変だったと思います。
皆様のお陰でとても良くなりました。本当にありがとうございます)
評価10ありがとうございます。とても嬉しいです!
恋する乙女同盟結成と蒼崎橙子の小さな失恋回でした(再発の可能性大ですが(笑))
次回投稿は5月25日(土曜日)の18時40分に投稿しますので
宜しくお願い致します。
ちょっと、おまけ劇場。
橙子さんはこれから過去を精算しにイングランドに向かいます。そこで大事件が発生します。しかし、それは本編とは無関係なので割愛させて頂きます。
橙子さんにとって失恋は人生の転換期となる重要なイベントです。今までは変人に恋する事が多く、特に詠梨神父の初恋は最悪な形で終えたので唯我独尊の監禁系・冠位魔術師が爆誕しました。
今回の失恋は彼女の人生を好転させるものとなり、原作より他者を思いやる人物になります。ほんわかメガネ橙子さんの成分が増加します。
(草十郎に何かあったら、今まで以上の悪鬼羅刹になりますが……)
後、少しで9評価が100を越える!スゴく嬉しいです!
次回は第一章の恋物語の締めとなります。
次回も読んで頂けると幸いです!
ではではー!また明日!