ストックが切れるまで毎日投稿します。
18時40分に投稿するので宜しくお願い致します。
お気に入り登録、高評価、感想ありがとうございます。
モチベーションが爆増しております!
ストックはまだありますが明日の第7話を投稿して
一旦は毎日投稿はお休みを考えております。
理由としては
1つ目がFGOの草十郎が思いの外、強かったので作品をドボン、上方修正。
2つ目が投稿する前のチェックが予想以上に時間がかかって本編を書けていないこと。
(これは完全に私の落ち度でした……
修正、誤字チェックしながら本編もかけると思っていた……爪が甘すぎる……)
第8話以降は5月7日(火)から毎日投稿する予定です!
明日は投稿します!
沢山の投票とアンケートありがとうございます!
原作「まほよ」 に決定です!
けど、第8話以降は5月7日(火)………
絶対に迷子になる人が出てきそうで怖いです………
ランキングから作品が消えて検索大変そう………
タグのFateでも検索できます!
(今回の有珠の宝具………
あの時の人格がどう見ても有珠じゃない………
そうなると………アレは………)
(補足で書くと魔女は人ではなく、妖精に近い存在。子孫とは転生に近い概念。
けど、有珠は人と魔女のハーフなのです。マイ女神は死んでます…コレって………)
(8,867文字 )
12月5日・12時15分・久遠寺邸
久遠寺有珠は魔女である。
埃だらけの客室に緑色のカーテンは閉めており、隙間から太陽光が少し漏れる薄暗い部屋に人影がふたつ。
ひとりはベッドに横たわり、熟睡している長身ポニーテールの少年。ベッドの大きさがあっていないのか、足先がはみ出ている。
しかし、同居人は直す気はない。もうひとりの少女は彼を見つめる。今までは青子が見張っていたので少年の傷を治す事以外では近づく事を許さなかった。けれど、少年の守護者は三咲高校にいるため、この部屋には居ない。
初めての二人きりの時間が経過する。
青子の間違いを正すために血の通わぬ人形のような少女はこの部屋にやってきた。
短刀を右手に握りこみ、彼の首筋に突き立てようと首に巻かれた包帯を取り外す。ここで刺殺したら、血の後処理が大変だが少女は気にしない。魔術の生贄をさばくように命を刈り取るだけ。
しかし、黒衣の少女は動けずにいた。少年の事を可哀想と思ったワケではない。図体のわりに幼い顔立ちの少年の首筋は黒く紐で絞められたアザがあった。
傷は古く、少年は傷を隠したくて常に包帯を装着していたのだろう。その傷は彼女の手を止めるには十分だった。
沈黙が流れ、外の木々のざわめきだけが部屋に響く。
有珠は短刀を鞘に納める。刀をサイドテーブルに置き、窓に近づきカーテンを開け、陽の光が少年を覚ますのを待つ。
ここは有珠の城、少年が何をしても逃げることはできない。ならば、首筋の傷について聞き出してから殺しても問題ない、と少女は考える。しかし、魔女として有り得ない判断。
それは久遠寺有珠の無意識の罪悪感、眠る少年が起きるまで魔に魅入られた少女は目を閉じ、暫しの休息をとる。
…………そうして、五分もせずに少年は目覚める。
目を開いた見知らぬ部屋に困惑の表情を浮かべる。
そして、意識がハッキリすると傍らに誰か座っていることに気が付き、顔だけを傾けて周囲を確認する。そこには飾り気のない単色の黒衣の少女が目を閉じて座していた。
少女は座ったままピクリともせずに動かない。陽の光が照らす白い肌の少女は呼吸することすら忘れる程、美しいと思った。
静希草十郎は蒼崎青子を美しいと思っている。
彼女の華やかさは、生命に満ちた太華の蕾。例え、咲き朽ちる瞬間も美しく色鮮やかに魅せるだろう。
けれど、座る彼女は正反対の気質、幸福な完結した世界を決して朽ちることのない永劫の彫像。決して触れることすら許されない神秘の領域。この世ならざる生命のあり方に息を吞んだ。
「──── 起きた」
「…………え?」
少年は心臓が止まりそうになる。
声の主を認識するまで数秒かかり、少女は眠ってはいなかった。
華奢な輪郭からは幼く見える反面、落ち着いた表情が年上のようにも見える。セミロングの黒髪の少女と見つめ合う。
けれど、視線を外すことは決してない。純朴な少年はこの光景を目に焼き付けたかった。遊園地での思い出は恐ろしいものだったけど、あの時から少女の事を魅力的と思ってたに違いない。
「…………その、今更なんだけど、
ここはどこで君は誰なのか教えてくれないか?」
「………………」
質問の返答はない。
やはり、空気を壊すべきではなかったと、後悔する草十郎。けれど、彼女の瞳からは不快感を感じない。少女は片腕を掲げて少年の前に突き出す。
「包帯、あなたのでしょう」
か細いようで芯のある歌声。
黒衣の少女の指先に白い布が絡みついてる。草十郎はすぐに何処に巻かれていた包帯か理解した。
少女の指から布が零れ落ち、草十郎は素早く拾い上げて首筋を隠すように巻き付ける。
「青子、そのことを知っているの?」
「──────── 知らない、と思う」
少年も無言で返事しようかと思ったが
状況からして介護してくれたのはこの少女だと思い、恩人に噓は言いたくなかった。
しゅるしゅる、と首の包帯を巻き終える。この話題は勘弁したいのだがソレを黒衣の天使は許さない。
「その傷、どうしたの」
「…………つまらない話だよ。
ただ、母親から貰ったモノだ」
少女は聞かなければよかった、と後悔する。
家族に虐待されていた事にショックを受けたというワケではない。首の傷が誰に傷つけられようと彼女には関係のないこと。本当は傷の深さやその重症で何故生き残れたのか、生物学的な知的好奇心もあった。
しかし、少年の表情が痛々しく、子猫が見捨てられた母猫に慈しみ縋るような表情。怒りや悲しみ、恨みがましい態度であれば氷の彼女は無視できた。
けれど、そこには深い愛情を感じる。すぐにでも殺そうと思っていたがその瞬間だけ憐れみの感情で満ちた。
「──── 久遠寺有珠。ここは私の屋敷よ」
返答への報酬ではないが答える気もなかった質問に答える。
「そうか、ありがとう。久遠寺さん」
「苗字で呼ばれるのは好きじゃないの」
「じゃあ、有珠。君がここまで運んで来てくれたのか?」
少女は返事なんかしなければ良かったと、後悔し口を閉じる。
あの夜に殺されそうになったことを忘れているのか。少年は明るい口調で会話を進める。これ以上、お喋りをする気がない、と態度で示すように目を閉じ沈黙が広がる。
ドタバタと廊下から走る足音が聞こえる。
それは誰のものか、この屋敷について知らない草十郎ですらありありと予想でき────
「有珠っ! 約束!!」
乱暴にドアを開けて登場する蒼崎青子。
彼女は制服姿でマフラーすら外さずに乱れた呼吸のまま、不機嫌なようで怒鳴り込んできた。有珠は僅かに眉をひそめ、…………はあ、といった具合に息をこぼす。
「早かったわね。学校はいいの?」
「その台詞、そのままお返しするわ!」
ため息と共に草十郎の安否を確認してホッとする彼女。
「いい!勝ったのは私たち!
逃げ切れば見逃してあげるって言ったのは
有珠なんだから言動には責任を持ちないさい。
兎に角、コイツの処遇はちゃんと目が覚めてから本人の意思を確認するって約束したわよね」
「…………青子。学校はどうしたの?
まだ、正午になったばかりで授業もあるでしょう」
「いつも私より早出で登校する有珠が遅出だったことを思い出したのよ。学校には急用って伝えて早退してきたわ」
そうして青子と有珠は睨みあう。
一分間ほどの緊張感が走るがすぐに霧散して、何事もなかったかの空気となる。第三者の少年には分からないがきっと日常的に睨み合っているのだろう。有珠は歩き出し、扉へと向かう。緊張の大本であったセミロングの少女は立ち去った。
「顔色もいいし、足のヒビも治っている。
…………これならもう安心かな」
「青子。近い、ちょっと離れてくれ」
布団の上から足を撫でて状態を確認する青子に気恥ずかしさを覚えて、注意する。
「アンタ、相当な無茶してたんじゃない?
ここで有珠が体の状態を確認したら全身ヒビだらけで驚いたわよ。
特に右足が酷かったって聞いたけど……よくその状態で走れたわね」
「足の怪我はジェットコースターから降りた時だったかな。
だから、逃走には問題なかったんだ。……それにしては痛みがないんだが」
先程まで有珠が座っていた椅子に腰をかける青子。
「その点は有珠に感謝しなさい。
私じゃ他人の怪我とか治せないし、丸二日寝込んでたわ。けど、今は完治したのよ」
「二日って…………?」
「学校なら欠席届を出したから心配しないで。
どうかした? そんな遠い目をしちゃって」
「…………いや、何でもない」
半同棲している律架に何の断りも入れずに二日間も無断外泊をしたことに恐怖心が芽生える草十郎。
けれど、恩人に文句を言うのはお門違いなので飲み込む。もう一度周囲を確認すると、洋風な部屋でフカフカのベットに寝ていた。
「それにしてもよく有珠に殺されなかったわね」
「殺すって彼女が?」
「まだ寝ぼけてるのね。
彼女、短剣持ってたわよ。草十郎が相当有珠好みの対応してなきゃ刺されてたはず。まあ、穏便にここで過ごしたいなら彼女には気をつけなさい」
「…………すまない、聞き間違いならいいんだけど、ここで過ごすって言ったか?」
「貴方、本格的に寝ぼけてるのね。
いい、草十郎。貴方は私と契約したのよ? 『対価は貴方自身、報酬は貴方の命』ってコレ確定事項だから?今さらクーリングオフは効かないわよ」
「クーリングオフが何か分からないが、
……もしかして、ミラーハウスのことか!?
あの時だけじゃなくて!」
足の掛け布団を引き剝がし身を乗り出す。
あの時は青子を助けたくて約束したが、まさか今後も青子のモノとして行動するとは思ってもいなかった。
草十郎は横暴だと言わんばかりの様子。青子も草十郎が勘違いで約束したことを分かっていた。けれど、釣り上げた鯛を放流するほど恋に邁進する少女は甘くはない。
「静希くん? 分かってる? 貴方の立場。
自分の使い魔にするからアンタの怪我を治したのよ?
そうじゃなかったら今すぐ処刑してるわ」
「…………使い魔?」
「そう。それとも奴隷って言った方がいい?」
「………………」
余りにも傍若無人の態度に言葉が出ない。
しかし、納得する部分もあった。山でも野生の山羊を育てる対価として山羊の母乳を拝借していた。そしてミルクが出なくなった山羊は屠畜され肉となる。
利用価値があるからこそ育てて、価値が無くなれば殺される。狩人視点では利用価値があるから生かしているだけ、という理由に納得してしまった。
「──── つまり、俺はここに閉じ込めるって事か?
それは…………少し困る」
拒否権がない以上、納得するしかないのだが、
学校やバイト先、半同棲人などお世話になった人たちに何も言わずこの世から消えるのは忍びなかった。
”青子が認めてくれるなら手紙を書かせてくれないか?”と提案するがため息をつきながら草十郎を見つめる。
「大丈夫よ。そこまで貴方を縛るつもりはないし。
今まで通り学校もバイトも行っていいわ。
貴方の処遇はこの家に住みこみの保護や監視ってとこ。けど、思い上がらないで、アンタの地位は最下位の更に下、番犬以下の存在でアンタは私に所有されているのよ。さ、これで自分の立場、理解した?」
「言いたいことは山ほどあるけど、うん。
確かにそんな約束だった。それは認めるしかない。
畏まりました。お嬢様?」
「ちょ……それは禁止したでしょう!」
少しの意趣返しをして微笑む草十郎。
青子は赤面しながらボソッボソッと文句を言いながら背を向ける。喫茶店での『お嬢様』は青子によって禁句指定されたのだが、満更でもない青子は一度咳き込み落ち着かせる。
草十郎もこれ以上怒らせるのは賢くないと他人事のように頷く。青子は颯爽とドアまで歩き、その後ろ姿に頬がほころぶ草十郎。
「まあ、そういう事だから。
アンタの方は問題ないわね」
「そうだな。うん、青子らしい」
互いの顔は、見ずに了承するふたり。
青子に呼ばれ続く草十郎は扉を潜ると廊下窓から枯れ始めた枝葉が見える。自分が二階の部屋にいたことを知り一階ロビーまで歩く青子について行く。
ロビーには四つの部屋があり、西の扉は館の左翼、北には暖炉が薪を燃やしてロビーを温めている。階段したは浴場に繋がる道があり、青子は右に進み居間や台所を説明する。居間に入ると黒衣の少女が座っていた。
「お待たせ、有珠」
「…………」
先に居間で待っていた有珠は古本を片手にソファーに腰掛けている。
セミロングの彼女は髪を撫でて、ポケットに入っていた硝子の小瓶を取り出す。薄暗い青い色をした小瓶は宝石のような高級品であることが伺える。水晶にも見える溝が刻まれた小瓶にどこか見覚えを覚える草十郎。
青子も見覚えがあるらしく一歩引き始め、ソファーに座る少女はか細い魔笛のような声で呼びかける
”静稀君”
囁きかけると草十郎の世界が一変する。
彼の周囲は足場まで全面曇り硝子になる。立っているのかも分からない現状に閉塞感を覚えて出口はないかと観察する。すると、曇りの向こう側に有珠と青子の姿を捉える。けれど、その姿は巨人のように大きく見えた。
「ちょっと、有珠! これはやり過ぎじゃない!」
「一度、立場を分からせるにはコレでも優しい方よ」
抗議をあげた青子だったが同意する。
有珠なら問答無用で呪いや攻撃してもおかしくないのに、小瓶に閉じ込めるのは彼女にしては優しすぎる。青子が来るまでに草十郎とどんな会話をしたのか気になるが────
「もう十分でしょう。出してあげて」
「…………まだよ、静稀君。
コレでも穏便だと思う…………?」
黒衣の少女は語りかける。
小瓶の中の住人と会話ができるのか、青子には聞こえない声で草十郎と会話する有珠。また二人だけで話し合う。
青子の虫の居所が悪くなるが下手に動くと草十郎ごと瓶が割れてそうなので傍観者に徹する。
”自分にとって町も洋館も変わらない”
”どちらも危ない事には変わらないんだよ”
”今まで生活してた山はここに比べて何もない場所だった。山に無かったモノ、都会のルールは今まで自分を否定するようで怖かった”
”初めて使った電気は便利よりも恐ろしかったよ。”
”極端な話、町で息をするだけでも不安になるんだ俺は。けど、ここには俺を気遣ってくれる人がいる"
”物騒な理由だけどそれは贅沢な事だと思うんだ。だから、洋館も町で生活するのも変わらない”
…………黒衣の少女の瞳がわずかに曇る。
筋の通った話に納得するしかなかった。この洋館を恐れるだけの理由がない。外との違いは味方がいるかだけ。
その節が正しければ久遠寺有珠へのご機嫌稼ぎではなく、蒼崎青子に頼ろうとしたワケでもなく。
心からここがいいと告げたのだ。
屋敷を侮辱するでもなく、褒め称えるわけでもないその台詞が有珠の心に響いた。
「──── 私が言える事でもないけど、
物好きよね、静稀君」
有珠は小瓶に手を伸ばして、ため息と共に彼の名前を呼んだ。
蓋が外れ、壁際に少年が寄りかかる。
「……有珠も青子も似た者同士ってことは理解した」
「はあ? 私なんて可愛いもんでしょ?」
「……人命を脅かす、という点なら青子の方がよっぽど酷いと思うけど」
ともあれ、洋館での生活を承認した。
魔女と魔法使いが住む館では何が起きても可笑しくないことを理解した。
その後、何故彼女たちが草十郎を殺そうとしたか青子は語る。魔術とは隠されてないと力が薄れてしまう。これは個人の話ではなく、全体の話である。
けれど、公表することを魔術協会が許さない。
これを破った者は魔術世界には居られず、罰を裁く執行者がやって来る。
故に魔術を知った一般人を野放しにすると彼女たちの命が危ないのだ。例え魔術協会の一員でなくても彼らは罰しにくる。
魔術とは万能であるが再現は可能である。
それは草十郎にも理解できた。山で火をつけるのには速くても一分はかかる。だが、ここではボタン一つで火が手に入る。
草十郎にとって都会の生活は過程を飛ばした奇跡に見えるが魔術も同じである。
しかし、青子の魔法は結果が奇跡なのだが話が脱線したのでまとめると『魔術とは過程の奇跡』で『魔法とは結果の奇跡』と説明を受ける。
この館は魔術師にとって工房であり、心臓である。
魔術を扱うには修練や準備が必要でここは有珠と青子にとってのアジト。
生命線でもあるこの館は要塞と化し、敵を寄せ付けない。更に洋館の中も数多の罠を配置しているので不用心に歩き回らないようにと忠告を受ける草十郎。
次に何故ミラーハウスで人形に襲われたのか説明を始める。
魔術師にとって多くの弟子や堅牢な工房が最も重要、ではない。魔術の実施、実験に不可欠なのは霊脈が巡っている土地である。
そしてこの土地の管理人は青子と有珠であり、ふたりの許可がなければこの土地の霊脈を使用不能。そのためあの自動人形はこの土地を狙っている他の魔術師。現在進行形で襲われているのだ。
ここでふたりの意見が分けた。
合理主義である青子は魔力の持たない草十郎は襲われることはないと考える。
けれど、襲撃者まで効率的とは思っていない有珠は草十郎を小瓶に入れたままにしたかった。
最後にこれが一番の問題なのだが――――
有珠との勝負に勝ったから見逃されている。
けれど、青子の要望は『草十郎を使い魔』にすることで到底許せるはずがなかった。
有珠は殺さない代わりに五感を奪って彫像にする。
または小瓶の中で一生涯生きてもらう。
一番の譲歩案でも『草十郎の記憶を消すこと』だった。
けれど、ふたりの少女は忘却の魔術は使えず習得するのも三ヶ月は必要とした。どちらにせよ草十郎を見張る必要があり、折衷案として期限付きの屋敷への滞在。
陰鬱なため息をついて、立ち上がる有珠。
音もなく扉前まで立つ。黒衣の少女は扉に手をかけて薄暗い廊下の前で立ち止まった。パリッ、とテーブルにあった小瓶が無残にも粉々に砕け散った。
「最後に言いたいことがあるわ。
────まだ、認めてないから」
冷たい表情で草十郎と青子に向けて捨て台詞を吐き、
洋館の主は自室のある西館に帰った。ソファーにもたれながらため息をつく青子。
彼女にとってもリスクがある選択に”我ながら馬鹿だな”と思いながら後悔はない。草十郎は不審げな視線を迎えたまま黒衣の少女を見送り、今も積極的ではないにしろ命を狙われることを理解する。
「一応、お疲れ様。
第一条件は突破したと思っていいわ」
「うん……それはどう意味なんだ?」
「草十郎が小瓶に中にいる時に粉砕されてたかもってことよ。
有珠ならやりかねないしね」
「それは…………危なかったな」
「──── あの子ね、魔術の隠蔽とか魔術協会や襲撃者はそこまで興味ないのよ。
単にね、ここに住んで欲しくないだけなのよ。
それだけでアンタを殺したがっている」
青子の視線は真剣そのものだ。
噓も誇張もなく、事実を伝える。
「あのね。いい? 同居案を通すだけでも限界ギリギリだったのよ。
これから学校もあるし、ずっと守ることは出来ないわ。あの子の堪忍袋が切れるとしたら五日が限界。
その間にあの子にアンタを認められないと約束を反故にして殺しにくるわよ。有珠」
「…………青子。君、無茶を言っている自覚あるか?」
「うっさい! そんなの分かっているわよ!」
青子はソファーから立ち上がる。
「とりあえず………
この後、館の説明してあげるからついてきなさい」
「それは助かる。
罠だらけと聞いてから一番気になっていたんだ」
屋敷を案内をする際に門限の話になり、午後十時までとなり、了承する草十郎。
彼の部屋となる屋根裏部屋を紹介された時は戸惑うが屋根に窓が設置されており、そこから見える夜空を気にいる。思っていた反応と違いガッカリする意地悪な生徒会長は部屋までの案内を終え自室に帰る。
11月11日・22時00分・路地裏
これは静希草十郎と周瀬律架の出逢いの物語。
篠突く雨が古びた傘を壊さんばかりに降りしきる。
夜半のライトは誰もいない町を晒し、夜闇を引き立たせる。
仕事の疲れから迅速に帰路につくべく、普段では選ぶ余地のないはずの薄暗い裏通りを通る。
この選択は運命が齎した必然なのか、飲食店のゴミ箱を避けつつ歩を進めると、一段と巨大な影が倒れていた。
彼女の信条として危機を避けるべきと訴える。
けれど、倒れていた影は巨大だがその顔は幼さを残した少年だった。長髪の少年は金属製の四角いゴミ箱の隣で壁にもたれかかるように雨風に晒されており、遠目でも瀕死の状態。
本来、緊急搬送すべき家出少年なのだが、中国のチャンパオのような服を身に着けていた。
その服は至る所が千切れ、その下からは刀傷や弾痕が見える。厄介ごとの匂いしかしない。少年を見捨てて引き返すべきなのだが、彼女の足は彼の元へと行く。
彼の顔をもう一度観察する。
この少年が何に絶望したのか分からない。けれど、揺れ動く肩に対して瞳の奥が濁り切っていた。
生きる事を諦めた者の表情は幾度も見てきたがこの少年も同じ顔をしている。だがそれは末期患者の老人や戦地帰りの精神疾患者であって少年がしていい顔ではなかった。
無意識だった、彼女は少年の慈しむように抱きしめる。
少年の意識は目覚めない。しかし、少年の頭を優しく撫でると一瞬だけビクッ、と体を震わせる。これ以上傷つけないように幾度も頭を撫でる。少年は瞼を閉じ、意識を手放す。
彼女は少年を教会へと運んだ。
本来、これだけの巨体を華奢な律架が運ぶのは不可能なのだが、そこは少し
常駐している神父は他の急用で教会には居ない。けれど、妹の唯架が居たから二人で治療を始める。流れ出る血は夥しく、秒針が進むにつれ命が零れ落ちるのを感じた。
一夜ぶっ通しの治療に滝のように汗が流れ疲労で今に倒れそうだったが諦めることは出来なかった。
二日後、少年は目を覚ます。
少年の名前は静希草十郎と教えてくれた。
少年はきょろきょろと周りを見渡す。目覚めたら見知らぬ人と場所に誰でも戸惑う、と思っていたがそうではなかった。
草十郎くんは病室の天井の照明に驚愕していた。彼の話を聞いたら草十郎くんは山の奥で暮らしており、無我夢中で山を下りたら気が付いたここで目覚めてたとのこと。
少年の話を出鱈目と切り捨てるのは簡単だろう。
しかし、彼の瞳からは虚偽や欺瞞はなく、真っ直ぐな瞳はこちらを捉える。
草十郎くんの話を聞くと住民票の存在すら知らず、身分を証明するものが何ひとつ無かった。
このままでは町で暮らす事は出来ないため、また山に帰るしかないことを伝えようとするがその先が喉から出てこない。
きっと山に帰ったところで彼は殺されるだろう。
それが草十郎くんを切りつけた人物なのか、またあの瞳に戻り自分に殺されてしまうか、そこまでは分からない。
けれど、このままではいけない、と覚悟を決めた律架は彼を見つめる。
「草十郎くん? 私と暮らさない?」
それが彼との出逢い。
その後、偽装した身分証明書や国民健康保険など、様々な物を用意した。
妹の唯架ちゃんに未成年の異性と同棲生活など言語道断、と言われて半同棲生活になるのだがそれは別の話。
ご覧いただき、感謝いたします。
初投稿の素人なので誤字や不備があると思いますが何卒宜しくお願い致します。
感想、お気に入り登録、評価は凄くモチベーションが上がるので
気軽にしていただけると嬉しいです!
感想はひと言『面白かった』だけでも有頂天です!
(感想は時間が掛かっても返信するのでよろしくお願いいたします)
ソーシロー様、Vamdio様、よっちゃんイカ様、トウセツ様、アイムチキン様、
誤字・脱字報告ありがとうございます。大変助かりました。
(誤字、脱字、誤植など、いっぱいあったので修正作業は大変だったと思います。
皆様のお陰でとても良くなりました。本当にありがとうございます)
さあかさあ様、剣 雄輝様、かにほん様
評価10ありがとうございます。とても嬉しいです。
ちょっと短めだったのでおまけで過去回想回でした。
次回投稿は5月2日(木)の18時40分に投稿しますので
宜しくお願い致します。
第8話以降は5月7日(火)の18時40分なので宜しくお願いします。