お気に入り登録、高評価、感想ありがとうございます。
モチベーションが爆増しております!
ストックはまだありますが第7話を投稿して、
一旦は毎日投稿はお休みを考えております。
理由としては
1つ目がFGOの草十郎が思いの外、強かったので作品をドボン、上方修正。
2つ目が投稿する前のチェックが予想以上に時間がかかって本編を書けていないこと。
(これは完全に私の落ち度でした……
修正、誤字チェックしながら本編もかけると思っていた……爪が甘すぎる……)
第8話以降は5月7日(火)から毎日投稿する予定です!
沢山の投票とアンケートありがとうございます!
原作「まほよ」 に決定です!
けど、第8話以降は5月7日(火)………
絶対に迷子になる人が出てきそうで怖いです………
ランキングから作品が消えて検索大変そう………
タグのFateでも検索できます!
先に注意しておきます。
原作、草十郎のコミュニケーションが
最適解過ぎてココをいじると終わるんだよな………
なので、オリジナル要素が薄めです………
いきなりお姫様抱っこしたらBADエンド直行だしね……
(9,849文字 )
12月6日・5時00分・久遠寺邸
暖房のない屋根裏部屋は外気温と変わらない寒さ。
朝の目覚めは陽の光が差し込む前に隙間風の冷気によって起床する。ベットの上に置いてあったブランケットが無ければ寝ることは難しかった、と思いながら朝の支度をする。
屋根裏の階段を降りて居間に向かう。途中の廊下で青いコマドリが誘導するように眼前を飛んだがあまり気にしなかった。
居間に到着するとまだ誰も起床してはおらずがらん、とした居間にひとり立っていた。
まだ登校まで時間があるので一宿一飯の恩を返すために台所で朝食の準備することにした。
今から続く台所まで行き、少女ふたりが生活するには大きすぎる冷蔵庫の前に立ち扉を開ける。けれど、冷蔵庫の中はスカスカで少しの卵と厚切りの食パン、開封済みの牛乳パックしかなかった。
他の棚を探せばパンに塗るチョコクリームやジャムがあるのだが草十郎は気付かなかった。
朝食の献立を悩む草十郎。
ここはフレンチトーストにしようか、と思うがすぐに止めた。青子は学校に登校するので一時間もすれば起きるだろう。
けれど、今日から学校が休みと言っていた有珠が何時に起きるか分からなかった。冷めたフレンチトーストはべちゃくちゃで正直言って美味しくはない。
同居生活一日目に不味い料理を提供するのは接客業をしている身として許容出来なかった。
ここは無難に玉子サンドを作ることにした。
幸い、調味料の類は充実していたので順調に調理を進める。ついでに飲み物を用意出来ないか、と他の棚を物色すると食器棚の隣の棚を開けると様々な種類の茶葉を発見する。
如何やら、ここの住居人は紅茶が好きなのか高級品の茶葉まで取り揃えてある。ディンブラ地方の茶葉があったのでイングリッシュブレックファーストティーとして妥当だ、と思い数ある茶葉の中から選択する。
計量スプーンを銀食器棚から取り出し、三人分の量を取り出しティーポットのお湯を注ぎ、ストレーナーを使用して中の茶葉をこして透明なティーポットに移し替える。
本来、 ストレーナーは直接カップに注ぐために使うのだが、まだ起きてこない少女たちのためにティーコジーを注ぎ直したティーポットに被せる。
それから、十数分後に
「おはよう。青子」
「ふあ……おはよう、草十郎」
欠伸をしながら制服姿の長髪少女は適当な挨拶を返す。
居間にはトレイに乗ったティーポットと三つのティーカップが乗せてあり、テーブルの中央には耳なしサンドイッチが並んでいる。
”おお”、と感嘆の声を漏らす青子はソファーに浅めに座る。
「コレ、アンタが作ったの?」
「まあね、もう少し買出しをしてくれたらもっとマシな朝食になったんだけどね」
「いやいや、上等でしょ。
私も有珠も朝食を食べずに過ごすことが多いし食べられるだけマシよ。
やっぱり、こういう時に小間使いがいると便利だわ。有珠にも慣れてもらいたいものよね」
青子のティーカップに紅茶を注ぐ。
「…………朝食を作るのは構わないが、有珠は何時くらいに起きてくるんだ?」
「さあ。最近、襲撃者への防衛手段に手を割いてて余り眠れてないみたい。
学校もないんだし、後、二時間もすれば起きてくるんじゃない?」
青子は「いただきまーす」と、言いながら玉子サンドを持ち上げる。
味にご満悦なのか、ぱくぱくとすぐにひとつ平らげ、二個目のサンドイッチに手を伸ばす。六個あったサンドイッチは四個となり、草十郎もひとつ食べる。
玉子サンドは半熟卵とマヨネーズ、塩コショウ、少しのオリーブオイルと砂糖を加えて作ったため優しい味付けで朝食には丁度良かった。
青子は二つ目のサンドイッチもすぐに食べ終え思い出したかのように制服のポケットから小さな錠剤を取り出す。
「草十郎、プレゼント」
「──── なんだこれは?」
「毒よ。正真正銘の致死性のね」
「…………青子。朝からコレは…………」
酷いんじゃないか、と草十郎は尋ねる前に彼女が語る。
「安心して即効性はないから。
効き目が出るのは半日すると出てくるんだけど、その前に新しい
飲み続けないとばったり逝くって寸法ね。私はそこまでする必要はないって言ったんだけど有珠のヤツ、これぐらいしないと信用できないって言い張ったのよ」
どう怖い、とニヤニヤしながら草十郎を見つめる。
けれど、ポニーテール姿の少年は水も使わずに、ゴクッ、と錠剤を飲み込んだ。
「──── きっと彼女は不安なんだ。
だから、俺の方から寄り添って行かないといけないと思うんだよ。
…………それにしても、毒を以て毒を制すなんて、また古風な真似するな、有珠は」
笑いのツボに入ったらしく、草十郎は頬を緩む。
一方、青子はつまらないモノを見るように草十郎を眺める。
「まあ、暫くはこの形式になると思うけど、
…………有珠も意味なかったわね」
有珠としては飲むことを拒否した場合、
小瓶に詰める予定だったのだが魔女と呼ばれる少女の思惑は彼女の知らない所で失敗した。
少年も食事を再開してサンドイッチを食べる。食べ終えた二人は台所で食器を洗い、一緒に登校するのだった。
同日・16時20分・三咲高等学校
本日の授業が終わり下校前のホームルームの時間に山城教諭が一日の締めをする。
草十郎のクラスの2-Cの担任らしい、心温まる気遣いと共に試験について説明する。山城教諭としてはクラスの平均点が低くても関係のない、と語った。
けれど、鬼の生徒会長はソレを許さない。仮に点数が良くなかった場合、冬休みがなくなることを宣言した事を伝え、クラスの空気が一瞬にして氷点下まで落ち込んでいく。
下校時間だというのに沈んだ教室から扉を開けて帰ると廊下で山城教諭に話しかけられる。
『憎むべき昼行灯、教師にあるまじき暖簾に腕押し糞野郎』、と青子は評価していたが彼は彼なりに草十郎の事を気にしていた。
草十郎がクラスで上手くやっているか、と質問してきた。2-Cは体育会系が多いので口が悪い人が多い。
けれど、付き合いも真っ直ぐな人ばかりなので草十郎としても中途半端な時期の転入でもすぐに馴染むことができたことを伝える。
それは良かった、と言いテストも頑張ってね、と手を挙げて山城教諭は去っていった。
草十郎はその足でバイト先に直行しようとしたがその前に二日も開けてしまった部屋に帰り、前の同居人に説明するためにアパートに向かう。
けれど、アパートに向かうまでもなく、教会の前で彼女と遭遇した。彼女は暗い表情で掃き掃除をしている。だが、巨大な図体の少年を発見すると箒を投げ捨て走り寄る。
「──── ッ! 草十郎くん!
本物よね! 幽霊とかじゃなくて!?」
「心配かけてすまない。ただいま、律架さん」
「もーう……心配したんだから! 二日間も何していたの?」
胸に顔を埋めながら、上目づかいで見つめる。
もう離さない、と言わんばかりに抱き着かれ、困ったような表情をする。
草十郎は彼女の肩を優しく掴み引き剝がす。
「それは…………うん。言えないんだ。
後、アパートに帰ることも出来ない。唐突で本当にすまない」
「え…………何で!? どうして?」
「この町から居なくなるわけじゃないから、学校やバイトには行ける。
だけど、アパートに住むことは出来ない。いつまでアパートに帰れないのか、俺にも分からない。
でも、律架さんだけには伝えたかった」
少年にも事情があることを察する。
初対面の時の事を思い出す。血塗れな白いチャイナ服、数え切れない刀傷。
この少年が抱える問題はまだ解決していないことは分かる。魔術協会から派遣されてきた窓際職員でもそれくらいは理解できた。
これ以上、質問しても答えてくれない、と思い冷静になるため一呼吸いれる。彼女も数日前にトコちゃんと会っていることを秘密にしている。
トコちゃんが絡んでる、と一瞬よぎるが合理主義である彼女が魔力を持たない一般人を襲う可能性は極めて低い。もう一度、深呼吸をして彼を見つめる。
「…………草十郎くんは大丈夫なのよね」
「うん。絶対とは言えないけど大丈夫」
「──────」
彼女は叫んで疲れた、呼吸を整える。
「分かりました…………
この件についてはこれ以上は聞きません。
危ないと思ったら教会に逃げる事! でもバイト先には顔を出すからね」
「────― 本当にすまない。
いつか言える時が来たら必ず教える」
「約束だよ────?」
短い再開を惜しみつつ草十郎はバイトに行く。
けれど、バイト先には先回りしてカウンター席に座っている律架が居るのだが、
そのことに気付くのは少し先の話。
バイトも終わり夕飯を律架と外食で済ませる。
帰る場所は秘密だけど、門限が午後十時と伝えるとなら食事だけでもアパートで食べよう、と提案される。
別段、断る理由はないのだが毎晩となると青子や有珠に無断で食べるワケにもいかない、と思い悩ましい表情を浮かべながら生返事する。
山の中腹に聳え立つ洋館の窓からは灯りが見え、少女たちも帰宅したことを確認する。
久遠寺邸の門扉を開き玄関から直接明かりのついた居間に向かう。奥の部屋のサンルームに人の気配がするため足を運ぶ。
サンルームのテーブルで食事をする普段着を着た青子とシスター服にも見える黒い服を纏う有珠。可憐な少女たちの食事風景は絵画のようだった。
けれど、テーブルの中央の置かれている食品は食パンしかない。カットされた食パンの周りには色とりどりのジャムが置かれ、ひっそりとテーブルの端にサラダボウルがある。
草十郎は夕飯に対する知識は詳しくはないがコレでは手抜きの夕飯というより、朝食である。
「草十郎、お帰りなさい」
「──────―」
ふたりの少女たちは会話もなく、食事を続ける。
食器の音、椅子ずれの音、時計の針の音だけがサンルームに広がり草十郎は食事の内容より寂しい、と感じる。今後この屋敷の食事当番になるのだがそれは先のお話。
「ただいま。青子、有珠。
つかぬ事を聞くんだが君たちの食事は毎晩こうなのかい?」
「いやあ、今夜は有珠が食事当番だからこうなのよ」
「…………それだと私の料理が不味いと聞こえるわ。…………訂正して、青子」
「だって有珠、お祝い事がないとまともな食事作らないでしょ?」
「青子の料理も同じよ ────」
黒衣の少女は青子を睨みつける。
けれど、青子は我関せず、と言わんばかりに食パンを食べる。
「すまない。俺が藪蛇だった。
だから、この話題はここまでにしてくれ」
ふたりの少女たちは会話のない食事を続ける。
少年はふたりの食生活が心配になるがこれ以上ここにいても進展はない、と思いサンルームを後にする。
ふっと、サンルームを振り返るとばったりと有珠と視線が合った。今日一日は有珠と会話がない事を思い出した。
彼女が話しかけたいのか、と思ったが不機嫌な有珠に話しかける勇気はなく、そのまま屋根裏部屋まで帰る。
草十郎が居なくなると水色のタートルネックを着た少女は話しかける。
草十郎を完全に無視するのにチラチラッと見ていると仲良くなりたい、と勘違いされるから止めなさいと忠告する青子。
目を見開きキョトンと驚く黒衣の少女は「そうなるの?」と問いかけ、「今も勘違いしてるわよ。絶対」と言われて、態度を改めることを誓う。
青子としても彼にはもっと動いて欲しいのだがわざとらしいおべっかは有珠が嫌うことを知っているため悩んでいた。
ふたりの少女はそれぞれの悩みを胸に夜を過ごした。
丘の上の屋敷で寝泊まりするようになって二日経過した。
草十郎の生活はというと泊まる場所がアパートから洋館に変わっただけで特段の変化はない。
起床、朝食、登校、バイト。状況は一向に変わらない。館内では頻繫に青子が隣にいたりする。
期末試験一日目が終わり、かねてよりの計画を実行しようと思ったら――――――
”静希草十郎くん。今夜は私の部屋で缶詰めだから。
バイト? キャンセルに決まっているでしょ! ”
青い炎が背中から見えそうな生徒会長が学校の廊下で仁王立ち。
その手からはしわしわの草十郎の解答用紙が握りこまれていた。山城教諭から青子に手渡され奪い取った戦利品だろう。
久遠寺邸に帰るや否や青子の部屋に連れ込まれる。中に入ると洋館に似つかわしくないギターやガラスのテーブルが所々に設置してここが青子の部屋ということがよく分かった。
更に壁紙を見ていると壁に無くしたと思っていた白いコートが掛かっており、返してくれ、とお願いしたらクリーニングしてから返すからチョット待って欲しい、と言われた。
草十郎は別に気にしないのに、と思っていたが乙女の秘密的にここで返却することはできなかった。
コートをクローゼットにしまい、青子と草十郎は試験勉強を始める。草十郎の時折見せる仔犬のような表情を堪能しつつペンを走らすのだった。
朝日が昇り、目の下のクマが濃くなる青子。
反面、変化のない草十郎に怒りを覚える。試験勉強は壮絶を尽くし、特にまるで下地のない化学と古典は混沌を極めた。
けれど、なぜか英会話はできるらしく、紙のテストが初めてでやり方を教えたらすんなりと回答欄を埋めた。
「ふう…………少し休憩。
草十郎、お茶入れてくれる?」
「ティーパックしかないけど、コレでいいのか?」
「いいのよ。時間もないんだし、でも有珠は嫌がるかもね。
──────そうだ。草十郎、有珠と上手くいってる?」
「…………彼女と会えるのは食事中だけだし、あの黙食中にどうやって仲良くなれって言うんだ」
「まあ、そうなんだけど。
でも、草十郎も有珠を怖がってないし、
有珠も草十郎を追い出す理由を探してるし、コレって十分脈アリよ?」
疑うように首を傾げる草十郎。
「青子がそう言うなら、そうかも知れない。
──────でも、うん。このままじゃいけない気がする。
俺は彼女の事を知らず、彼女も俺の事を知らない。今のままでは、有珠も不安なままだ」
真剣な目で語る彼を隣で紅茶を飲みながら聞く青子。
「だから、近くで話しかけようと思う。
とりあえずひとりで帰って、有珠と話してみる。青子はゆっくりと帰ってきてくれ」
「────────」
短かな、ほんの数秒ほどの沈黙。
彼女として危険な事は辞めて欲しい。けれど、それが最適解にも思えて止める事が出来なかった。青子は草十郎を見つめて―――
「分かったわ。────、 策はあるの?」
「ないけど、そういうのは要らない。
有珠にあれこれ説明しても響かないと思う。だから────、
うん。それより俺が彼女を好きだから話したいって事じゃないか?」
それは助かりたいとか見返りを求めての求愛ではない。
草十郎には打算のなく、ただ清純な心そのものだ。青子の場合、求愛と勘違いしてひと悶着あったがそれは人として美しいあり方なんだろう。
けれど、計算と妥協、我欲のせめぎ合い。合理主義者である蒼崎青子には少し眩し過ぎた。
「…………アンタ。いつか刺されるわよ」
小声で呟き、草十郎は優しく微笑む。
「それが草十郎の武器よね。私にも有珠にとっても猛毒かもね。
でも、気を付けて。有珠はアンタが思うほど甘くない」
そして、小休止は終わり一時間ほど勉強を再開する。
登校時間になり、二人は制服に着替えて期末試験に向かった。試験が終わり徹夜のお陰で前回よりも手応えを感じる草十郎。
今朝、約束をした通り一人で下校する。坂の道は険しく、傾斜は増していき森の深さも増すばかり。
けれど、草十郎として舗装された車道は山での生活に比べたら快適なもので気にせず坂を登る。
洋館の門扉を開き、玄関まで歩いていく。一度だけ深呼吸をし、草十郎は館内へと入っていく。
しかし。草十郎が迎えたのは予想外の光景。
玄関からでも見えておりロビーまで歩くとその光景の全貌は露わになった。柔らかい陽射しが照らし出す黒衣の少女は四角い柱に体を預け眠っている。
その光景に魅了された草十郎はつい、天井を仰いでしまった。美しい絵画のようで小瓶に入れられた時より心臓が跳ね上がった。
彼女の表情は静かで命を感じさせない眠りだが陽の光の温かさが彼女を幸福に包み込んでいるように見えた。
「……………………」
自分にも分からないが無意識に何故かふたり分のお茶を淹れていた。物音に気を配ってトレイを有珠の前に置いた。
静かにカバンから教科書を取り出す。ホールにはページをめくる音だけが響いていく。
結局、有珠は目を覚まさずに数時間が経過して草十郎は静かに立ち上がる。
バイトの時間になり、本当はこの光景をずっと眺めていたかったが仕方ない、と久遠寺邸から外出した。
バイトも終わり久遠寺邸に帰宅する。
居間には青子しかおらず、紅茶を飲んで休んでいる。
「草十郎、おかえりなさい。って、どうしたの? そのダンボール?」
「ただいま。いや引越しの荷物だよ」
「──── それしかないの? 草十郎ってミニマリスト?」
「そういうワケではないけど、青子は夕飯食べたのか?」
「まあ、ボチボチ」
「…………少し心配だな。そろそろ食費を君たちに渡すべきかと
本気で検討しているんだぞ。俺は」
「…………食費、………………引っ越し。
あ、そうよね! 宿泊費! ここで生活するんだし払ってよ。有珠も喜ぶわ、そりゃ」
余計な事を言ったと後悔するが
青子はタウンワークの分厚い本を開き、宿泊先の料金表を見ながら値段を検討している。
一点の曇りのない笑顔で”…………かける三十だから”と子供のような笑顔である。どうやら本気で搾り盗る気でいるらしい。
その後、有珠が怒っていたことを知らされる草十郎。
どうやら寝顔を見られたことにご立腹、とのことだが草十郎の感性的に理解出来なかった。
その後、明日も一人で帰る事を伝え、青子との試験勉強を再開するのだった。
期末試験最終日は初日に比べたら天地の差の仕上がりにご満悦な草十郎。
草十郎としても勉強も先生も大好きだったのでテスト結果が悪いのは大変残念だった。
初めてのペーパーテストを終え、次は始めから青子にお願いしようと思いながら足取り軽く帰るのだった。
草十郎としては今度こそ有珠と話そうと決意を固め久遠寺邸に帰る。
多少邪険にされても、無視されても、例え殺されても挨拶ぐらいはしたかった。けれど、草十郎を待ち受けていた光景は何となく予想していたものだった。
昨日同様に黒衣の少女は大きな柱にもたれかかり眠っていた。よく観察すると女の子座りで昨日よりは楽な姿勢なんだろう。
ちらりと玄関に視線を向けて、すぐに居間の方向に歩き出した。昨日はフォションを選んだが今回も同じ手順で紅茶を淹れた。
ただ昨日のように数時間も経過すれば香りも半減してしまうので反省を活かして今回はアイスティーにした。
水出しも考えたが仕込みに一晩は欲しかったので簡易のアイスティーを選択する。
ロビーは昨日より寒くアイスティーはやめておけば良かったと思った。
けれど、少女が寝ている場所は陽射しのお陰で少し暖かったのでそのまま準備を始めた。
昨日同様にトレイを有珠の前に静かに置く。試験は終わったが復習しようと教科書を取り出す。昨日の巻き戻しのように数時間経過して静かに立ち上がる。
バイトの時間になり玄関に向かおうとする。”そういう事なら仕方ない”と納得するように黒衣の少女をロビーに後にした。
しかし、背後からの物音を聞いて、足を止めた。
「や」
気軽に、優しく、草十郎は語りかけた。
寝起きとは思えない整った顔は静かに草十郎を見つめる。有珠の表情からは感情を読めずに怒っているのか哀しいでいるのかさえ表れない。
「何のつもり──────」
魔女と呼ばれる少女の問い。
返答次第では指先ひとつで殺される。暫し迷った後に覚悟を決めた。その前に────
「話が長くなるから座っていいか?」
長話になるから座りたかったワケではない。
有珠は眠っていた時の体勢だったから、目線を合わせて話したかった。
有珠は不満そうな視線だったが止めてこなかったので静かに腰をかける。
「それで…………?」
「時間はかかったけど、こうして君と話がしたかったんだ。有珠」
少女の宝石のような目を大きく開き、すぐに怪訝な視線になる。
「何故…………わたしと?」
「青子と話したけど、今は君と話したかった。
もっと言ったら三人で話したい、かな?」
理解できない様子で草十郎を睨む。
「青子は有珠とはそんなに会話がないって言うんだよ。
俺が原因でも、そうでなくてもそれは困る。
折角、同居生活しているのに話さないなんて勿体ないって思うんだ」
有珠は少年の意図がまるで分からず困惑する。
けれど、恐れから起因したものではないことだけは分かる。
「貴方、私が怖くないの?」
「そう言えるほど、君の事を知らないから分からない」
ふたりの一方通行のような会話は途絶えて、
不思議と心地良い沈黙が流れ、少女は否定するように気を引き締める。
「私と話がしたいって言ったでしょう。なら話せばいいわ」
できるものなら、と続きそうな口調で有珠は語りかける。
「じゃあ、あの青い小鳥。あれは何だ? プロイってヤツなのか?」
「…………あれは、プロイだけど私とは何も関係もない
「勝手に住んでいるのか?」
「勝手に住んでいるわけがないでしょう。
ロビンは本当に役立たずだけど、特別に住まわせてあげてるの」
「安心したよ。ここに住むには必ずしも役に立たなきゃダメってワケではないんだね」
「っ──」
無防備と思っていた少年からの反撃に黙り込んでしまった。
この後は少年が一方通行的に話しかけた。喫茶店がバイト先でここの茶葉の種類に驚かされたこと。学校では副会長にお世話になっていること。遊園地や町の感想。青子が宿泊代を請求してきて困っていること。
何の得にもならない話を二十分ほど話した。
「バイトの時間だ。もう行かないと」
あれほど待っていた機会を諦めて玄関に向かおうとする。
そのまま見届けそうになる。本来、これ以上必要のない背中を呼び止める。
「…………どうして、私を起こさなかったの?」
「どうしても言わなきゃいけないか?」
視線に殺気を含めながら睨む魔女。
噓でもつまらない答えでもその先に待っているのは破滅。黒衣の少女が真剣であることを理解して真面目に答える。
「青子に殺されそうになった夜。
あの時なら死んでもいいと本心で思った。それくらいあの時の青子は関われなかった。
君の寝顔はあの時と同じぐらい、何というか判断に困った」
草十郎は有珠が森の少女に見えた。
他者を必要とするのに誰も望まないその姿に。
「…………静希君にはその機会はなかったのね」
「そうでもない。いまこうして機会は巡ってきた」
「…………それでも私は貴方を拒絶するしかないのに?」
「そうだな、それが大きな問題だな。だけど────、
…………うん。そこを解決しようとしてるのは俺だけじゃないんじゃないか?」
それは彼の勘違い。けれど、彼女を苦しませる。
その願いは余りにも人の善性を信じ過ぎていて、清らかで浅ましい希望。魔導の道を歩むと決心する際に真っ先に捨てた感情。
彼女たち魔術師には決して手が届かない。故に少年のあり方が眩しく茨の棘のように愛おしかった。それでも──────
「…………けど、私は同居を認めてないわ」
「それは今、解決できない問題だろうな。
でも、何かの拍子に解決できるかも知れない。だから、それまでは俺のこと嫌っていていいんだ。
まあ、ここまで言ってあれなんだが、後は我慢の問題だよな。
結局のところ一緒にいて邪魔にならない程度ならその可能性も見えてくるんじゃないか?」
「────────」
ここまでで草十郎が害にはならない事は分かった。
後は納得の問題。けれど、紅茶を飲み干した彼女は初めからこうなる予感をどこか隅の方で思っていた。
有珠はゆっくりと立ち上がりもう一度視線を合わせる。
「例えば、貴方が隣に居ても寝てられるくらい?」
「そうだね。有珠、いってきます」
「いってらっしゃい。静稀君」
笑顔で答え、玄関に向かおう。玄関先で立ち止まり、隠れて見守っていた青子に「覗き見についてはしっかり有珠に謝るんだぞ」と眉をひそめながら言い、バイト先に向かった。
その後に彼女たちは居間で話し合う。青子の使い魔にする話は保留になったけれど、有珠が草十郎を殺す、という選択肢は無くなった。
その後、草十郎の宿泊代の金額とその取り分を草十郎が淹れた紅茶を飲みながら魔法使いと魔女が密談する。のだが
それは草十郎の知らないお話。
ご覧いただき、感謝いたします。
初投稿の素人なので誤字や不備があると思いますが何卒宜しくお願い致します。
感想、お気に入り登録、評価は凄くモチベーションが上がるので
気軽にしていただけると嬉しいです!
感想はひと言『面白かった』だけでも有頂天です!
(感想は時間が掛かっても返信するのでよろしくお願いいたします)
アイムチキン様、ソーシロー様、13121様、よっちゃんイカ様
誤字・脱字報告ありがとうございます。大変助かりました。
(誤字、脱字、誤植など、いっぱいあったので修正作業は大変だったと思います。
皆様のお陰でとても良くなりました。本当にありがとうございます)
緑茶抹茶紅茶珈琲様
評価10ありがとうございます。とても嬉しいです。
因みに、有珠は玉子サンドイッチを食べていません。
有珠が侵入者の草十郎の作ったものを食べるわけがない。
有珠の好感度を上げるにはゆっくり、じっくり、コトコト、です。
それと木乃美!お前…本当にいい奴だな……
ここでは適当に処理したけど、ごめんね。(何らかの形で救済したい…)
多分、ひとりだけの願いだった理由
両親は『 』を辞めて欲しかったんだろうな………
殿下もカッコ良かったし、草十郎も最高だったし
有珠も可愛すぎたし、青子は破天荒な破壊神だし………
最高のコラボでした!!!
第8話以降は5月7日(火)の18時40分なので宜しくお願いします。
それでは5日後の火曜日に!再会しましょう!