ストックが切れるまで毎日投稿します。
18時40分に投稿するので宜しくお願い致します。
お気に入り登録、高評価、感想ありがとうございます。
モチベーションが爆増しております!
やっぱり原作「fate/」にします!
だって旅館出したいんだもん……
トネリコとか魔女とかfgo二部六章とか
それに十年も止まっている原作の世界を広げるのは私には無理だ……
(でも、また魔法使いの夜になるかも……)
(また要望があったらアンケートします)
(8,454文字)
12月15日・8時30分・裏山
木々の葉は全て枯れ落ち、落ち葉が冬の厳しさを伝える。
三咲高校の冬休みは十二月の丁度半ばで始まる。生徒や教員も各自が温かい自宅で自由を謳歌する時間。
あるものは惰眠を貪り、あるものは遠出の準備をする時間。新築の校舎には誰もおらず、門扉が南京錠で施錠されている。粛々と誰もいない校舎は佇んでいる。
けれど、旧校舎では人の気配がある。
本来、取り壊し別の施設を建築予定だった廃墟は新校舎設立によって資金が尽きた。
そのため、未だに裏山の広場に封建的な木造建築は佇んでいた。旧校舎周りで竹箒のしゃっしゃっ、と掃き掃除をする音が広がる。
広大な未墾の野からは数十の音が聞こえてくる。数年間も放置された魔境の土地を整備するには余りにも心許ない。
「ぜってー無理だろ!? 貴重な冬休みの時間に裏山の美化ってのは分かるよ。廃れ切って誰も使ってない旧校舎だけど、百歩譲って分かったよ。
でも、何で頭数が四十弱なんだよ!? どんだけ広いと思ってんだよ!?」
「少しうるさいぞ、木乃美。いつかは終わるさ。それに終わったら焼き芋も食べれるんだ。報酬があるだけ恵まれてると思うぞ」
「なあ、草十郎。やめようぜ。池も凍ってるのにジャージ強制だし。やっぱり、コレって刑務作業かなんかだぜ? ボランティア活動とは思えん待遇だぞ」
文句を言う木乃美の背後から天下の副会長が立っていた。
「ああ? テメェ、それだけ叫ぶ元気があるなら追加メニューを指示してやってもいいんだぞ」
「げげ、副会長!?」
「──― 鳶丸。彼は戦力なんだから邪険にしないでくれ」
「ああそうだったな。木乃美はここで作業を継続してくれ。
草十郎はそろそろ小休止だ。向こうで温まろうや」
「はあ? 差別! 横暴! 鬼! 副会長!」
「お前より一時間も早く掃除してんだぞ、草の字は? それにそろそろ女子どもがうるせえ……」
頭を抱えならため息をつく鳶丸。
生徒会役員である、鳶丸は焼却炉の管理を任されているので寒空でも比較的に暖かい場所で清掃活動をしていた。
帳に集う虫のように火に惹かれ焼却炉の周囲で作業する女子生徒たち。
この特別冬季清掃に自主的に参加したのは草十郎だけだった。彼女たちも強制参加だったので真面目に掃除する気はなかった。
けれど、鳶丸が草十郎も参加してることを途中で知った彼女たちは自分達の巣窟に引き込もうと画策する。
「いや、自分はここに残るよ。木乃美だけ残すワケには行かない」
「おお……ぉおおお…………!
草十郎、いい奴だな……初対面の時はいけ好かない野郎と思っていた過去の自分を殴りてぇ。すげえな、真心って本当にあったんだな。待ってろ、別の班から食材かっぱらってくる!」
急に走り出した木乃美は別の旧校舎付近で作業をする男子生徒たちの元へ走り出した。
「…………まあ、予想はしていたがな。ほらよ」
目つきの悪い副会長は少し優しい目になり、
ジャージのポケットから三本のホット缶を取り出す。一本受け取る草十郎は木乃美の食材を調理するためマッチで焚火を起こす。
その後ろ姿は望郷や追想、住む場所を奪われ追い出された流浪の民のようで寂しさを覚え草十郎の隣に座った。
「────― 元気ないな、草十郎。…………蒼崎関係か?」
「ん? …………まあそんなとこだ」
「テスト前に一緒に帰ったって聞いたぜ? あれから上手くいってないのか?」
「ああ、今は同棲してるよ」
「ほー。同棲とはよかっ────」
あまりにも自然な会話だったから、鳶丸も調子を合わせようとしたが、
「あん、同棲だぁ──!!!? マジか! マジで言ってんのか!!!?」
「木乃美より鳶丸の方がうるさいな…………」
「お、おう。それは悪かったなって! そうじゃなくて本当の話なのか?」
鳶丸も体では経験済みだが、彼女と同棲経験はなかった。
純朴で真っ直ぐな少年が知らない所で大人になった事に一歩遅れたと思う鳶丸だった。
「……コレって言っちゃいけないことだったか?
すまない、鳶丸。他言無用で頼む」
「まあ、そうだよな……安心しろ。言いふらす真似は絶対にしねぇよ。
それにしても一足飛び過ぎじゃあねえか?」
「勘違いしているようだけど、同棲してるだけだぞ? 山の中腹の屋敷に住まわせて貰ってるだけだ」
「屋敷って、久遠寺邸か? これ以上、爆弾を落とさないでくれよ……草の字。
いいか? ここらで屋敷って言ったらなあ。久遠寺グループの財閥令嬢の御座す所。
俺も跡取り息子ではあるが規模がちげぇよ。勿論、こっちが蟻だからな」
その後も説明をされるが話半分も分からず困る草十郎。
けれど、有珠がお金持ちの一人娘、ということだけは分かった。それにしては倹約質素な食生活を疑問に思うが口に出さなかった。
「それにしても上手くやったな草十郎」
「だから、そういうのじゃあないんだ。それに青子には頭が上がらないんだ。
理由は言えないけど、…………命の恩人っても表現が違うな。言葉にできないな────―」
真剣そうな眼差しをする草十郎。
額面通りではない事は鳶丸にも感じ取るがそれ以上に真剣に悩んでいる草十郎を放ってはおけずに焚火の火種を突く。
「手伝える事はあるか?」
「ありがとう。でも大丈夫」
それっきり会話が途切れ、ふたりは缶に残されたお汁粉を飲む。
その後、森から木乃美の悲鳴が聞えたので森へと走る。すると金髪の子供に食材を奪われた、と叫ぶ木乃美が地団太を踏んでいる。その後、木乃美が子供が逃げ込んだ別館の旧校舎に突撃しようとしたので制止して清掃活動へ戻った。
同日・15時00分・久遠寺邸
清掃活動も終了し、鳶丸たちと別れる。
夕方にバイトがあるがまだ数時間ほど先の話なので一度、洋館に帰宅する。先ほどまでの土の感覚はすっかり無くなり、舗装された道路を歩く。
いかつい鉄門の前で到着し門扉を開ける。林道を歩くこと十五分ほどでやっと屋敷が見えてくる。玄関を開けると居間の方で少女たちの会話が聞こえてくる。
「ただいま。青子、有珠」
青いタートルネック姿の少女と黒衣の少女は真剣に話してる。
先日の自動人形たちの襲撃者はタイミングや足取りが掴めないことから相当な術者である。
けれど、有珠の母ですらこの結界を解除は出来ないのに、それにしては魔力を感じないのが不気味であった。青子はテーブルの紅茶を飲み干して────―
「おかえり。お風呂入ったら? アンタ、
「────―」
草十郎も納得し、屋根裏部屋から服を取り出して洗面所に向かう。
この洋館は広いのに風呂は一つしかなく、階段下の扉を潜り抜け、洗面所に足を入れようとした。
けれど、脱衣場には青い刺繡が編まれた下着が洗濯籠に入っていた。草十郎としても風呂には入りたかったが同居人に配慮して湯浴みを諦める。
しかし、着替えはしたかったから洗面所の鏡下にある棚を引き、薄めのタオルを取り出す。
タオルに水を浸して雑巾絞りのようにギュッと絞る。洗面所で着替えは諦め、ロビーで上半身だけ脱ぎ濡れタオルで体を丁寧に拭く。
「…………アンタ、こんなところで何してんのよ。いったい────」
気がつくと居間で会議をしていたふたり少女たちがロビーにいた。
どうやら会議は終わったらしく、そこには赤面しながら質問する青子と目を見開いている有珠。
「何って体を拭いているだけだぞ」
青子は文句を言うと思ったが止まる。
服を着ててもガタイの良さは分かっていたが脱ぐとハッキリと分かった。
少年の腕は少女の胴より太く、筋がくっきりと分かる程の腹斜筋や腹筋、盛り上がった大胸筋が見て取れる。
けれど、彼女の口が止まったのは別の理由だった。少年の体はありとあらゆる所が傷で覆われていた。
腕には獣の嚙傷や刀傷、腹部には弾痕にも見える跡があり、背中は傷ついてない箇所を探す方が難しい。視線を逸らしながら恐る恐る口にする。
「それ、大丈夫なの?」
疑問もあったが口にしたのは心配だった。
「ああ、これか。もう全部治ってるから平気だ。でも。…………確かに気持ちがいいものじゃないな。すまない。自分の部屋で着替えてくる」
「ちょ、ちょっと待って。え──― あ、うん。その…………」
「ハッキリしないな。青子らしくないぞ」
この傷について深掘りしていいのか悩む。その前に────―
「アンタ何でここで着替えてるのよ?」
と、墓穴を掘ってしまう。
「その言いづらいことなんだが。下着の管理はしっかりした方がいいぞ。
どちらのモノなのかは知らないけど」
「言っておくけど、それは青子のだから」
「ちょ、有珠!」
傍観者に徹していた有珠は素早い防衛手段をとる。青子も先ほどまでの質問など忘れ手をわなわな、と震わせる。
「アルバイトもそろそろあるから行ってくる」
バイトは一時間以上も早いのだが空気を読み、久遠寺邸から出勤する。
「…………有珠」
「…………脱衣場に行ってくる」
その後、少女たちは草十郎の体について語る。
あの傷は過去の出来事として受け入れ後悔も持ってない様子だったのでこれ以上のあの傷への言及をやめることに同意する彼女ら。
それはそうとして、草十郎の肉体に見惚れていたのは青子だけではなかったことを確認し、有珠は西館に帰った。
草十郎はぼんやりしながら居間で寛いでいた。その後、玄関から二つの足音がしたので草十郎は台所へ行く。
これは後日談になるが、眠る有珠に紅茶を淹れてから草十郎が洋館にいる時は紅茶を淹れるのは彼の仕事になった。
そのためふたりが襲撃者の探索から帰ってくると必ずお茶会が発生する。因みに有珠に言わせたら一日に七回茶会を開きたいらしい。
けれど、その提案は青子によって却下され、今は一日三回になった。
今日も毒薬を飲むため青子に催促するが
ニマァ、と性悪な笑みを浮かべてジャケットのポケットから可愛らしい紙袋を取り出した。
「はい、これは入居祝いよ」
青子から錠剤の代わりに紙袋を受け取る。
中には白いベルトが入っていた。サイズから腰に巻くことは出来ず、手首や足首、首につけるのがギリギリの大きさ。
よく観察すると内側にローマ字で『A.A』と刺繡編まれており、更に有珠もそわそわし始めて嫌な予感がした。
「…………静稀君、コレ」
有珠もコートのポケットから小箱を渡す。
箱を開けると湾曲した円状の透明な硝子が一つ。サイズは指先の第一関節ほど小さく、透明だと思ったが薄く赤く見える。
「どう、気に入った?」
「──────」
「すまない。説明をもらえるか?」
「前にも言ったとけど、毒薬は辞めるっていたでしょう? その代替案。私の首輪で有珠のコンタクトね。
首輪は孫悟空の頭にはめられている金輪って言えば分かる? ご主人様が好きに締めることができるって覚えとけばいいわ。それで有珠の方は…………なんだっけ?」
「────― 私の方は観察と処刑器具ということだけ覚えて貰えばいいわ」
からかいの入った笑みを浮かべる青子。
対照的に静かに見つめる有珠。青子の趣味半分の実益半分で用意したのだが────―
「確かに毎日毒を飲むのは面倒だったしな。
うん。ありがとう。青子、有珠。有珠のはどうすればいいんだ」
すぐに受け入れる少年に少し戸惑いながら、
「左目に入れれば吸い込まれるわ」
有珠は装着方法を教える。
箱からコンタクトを取り出し、左目に近づけると磁石のように引き寄せられる。
左目に違和感なく近くで見ても気づけない程である。コンタクトは同化しているため特殊な薬液を使用しないと着脱出来ないが草十郎は知らない。青子の白いベルトも首に巻き付け装着する。
「こんな感じかな。合ってるか?」
本格的に犬のようになってきて、
ゾクッと何か目覚めてはいけないものが目覚めそうになる。少し赤面しつつ咳払いをする。
「よし。コレでいいんだよな」
草十郎は屈み込み青子と有珠に見せるように髪をかきあげながら左目と首を晒す。
美丈夫のその動作が余りにも妖艶で有珠も少し顔が熱くなり、視線を青子に向ける。
「──── ロックね。趣味に走りすぎよ」
「や、やかましいわ。大胆、有珠だって似たようなもんでしょう!」
「首輪と同列に語って欲しくないわ」
「もういい! 草十郎も秘密を守るのよ!
変なこと言ったら締め付けるんだから!」
青子はドスドス、と怪獣ばりの足音を立てながら退室する。
居間の扉の前まで立つと振り返る。
「もう寝る! くだらない事で起こしたらぶっ殺すから!」
居間の扉を壊さんばかりの勢いで閉める青子。
「…………青子はいつも怒ってるな」
「静稀君は気にする必要はないわ。貴方はこれからどうするの?」
「そうだな。時間があるし復習するよ。前回は散々だったからね」
「そう。静かにね」
勉強を進めるが集中することは出来なかった。
目の前で古本を読んでいる少女が気になる、ワケではない。青子も有珠も目的があって忙しなく生きてることに負い目を感じた。
青子が寝ると言ったが襲撃者の対応でまともな睡眠はしてないのではないか、と思いこの昼寝も彼女にとって数日ぶりのまともな休息だと思った。
草十郎には明確な目標がない。
山から降りてきた時から、タコ糸が外れた凧のように惰性と妥協で生きていくだけなのか、と暗い気持ちが胸に広がる。いずれ風もなくなれば落ちることしかできない。
「そうだな…………俺が本当に欲しいモノは────」
繰り返し自問自答しても答えが見えない。
勉強を進める手は完全に止まり、ペンを手放す。ふと視線をあげるとブラウン管に暗い表情が映っていた。
強い彼女たちと弱い自分を比較して哀愁に浸るのはズルい気がした。弱音を払い背伸びをしながら立ち上がる。
「よし、何か作るか。有珠は?」
「わ、わたし…………」
「ひとりずつ作るより一気に作った方が楽なんだよ」
エプロンを付けて厨房に向かう。
有珠は止めようとするが腹の虫が赤信号を出す。感情論を抜けば空腹を満たすために彼に調理させるのは合理的だった。
喉まで出かかるが黙認することにした。前回の玉子サンドは捨てて食べていない。今回は彼がどんな料理を持ってくるか待つことにする。
「…………変な人ね」
全ての針が頂点を差す時間。
草十郎はふたり分の食器をトレイで運びこんできた。粗末なモノだったら断る準備をしていた。
けれど、草十郎が持ってきた料理は余りにも暴力的な衝撃だった。
草十郎が作った料理はパスタだった。
しかし、それは有珠が知っているパスタではなく、どろっどろの真赤なトマトソースが絡まっており、ニンニクの香ばしい香りが部屋中を満たす。
何より気になるのがミートボール、と言うには巨大すぎる『肉団子』がゴロゴロとパスタの上に鎮座している。
それは溶岩のように湯気を立ち上がる。色合いのためにパセリが散りばめているがまるで隠せてない肉団子の存在感。
この料理は質よりも量を求める男飯。
未知の料理を眼前にしてどこから食べていいのか、と悩む有珠。
フォークが右往左往するが決心し、肉団子に突き立てる。フォークで一口大にするため肉団子を割ると中から肉汁がジュクジュクと湧き出し香辛料が鼻腔をくすぐる。パスタとソースを絡めつつ肉団子と共に口へ運ぶ。
”…………見た目ほど? ”
色合いから濃い味かと思っていたが想像より食べやすかった。
食材の味と塩コショウが肉を引き立たせる。トマトの酸味も次の口を準備を手伝い、もう一口食べようとする。けれど、次の一口は草十郎の質問によって中断される。
「ひとつ、聞きたいんだけど。
青子はまだ人を殺したことがないんじゃないか?」
「……おかしなことを聞くのね」
「すまない。食事時にする話じゃないな。コレは。でも、青子本人には聞けない事なんだ。だから言いたくないなら言わなくてもいい」
有珠はフォークで麵をクルクルしながら沈黙する。
「……そうね、静稀君の言う通りよ。
でも青子は必要なら人を殺すわ。その辺りは覚悟の問題ね。青子もその辺りが異常だから誰だろうと確実に殺すわね」
「…………そうか。すまない。この事は青子には秘密にしてくれないか?」
草十郎の顔は自責の念で暗くなる。
有珠も沈黙で同意しながら、今もフォークで遊んでる。
「ありがとう。それにしても有珠だけの秘密ばかり増えるな。それより、有珠」
草十郎が真剣な表情で有珠を見つめる。
今までも目が合うことはあったがここまで強く見つめられた経験はなく、人生の中でも初めての体験。本人も気が付かない内に顔が赤面していた。
「それ、食べないならくれないか?」
「……………………」
一気に血の気が引き、氷の女王となる。
しかし、手に入れた物を手放すはずがなく──────
「これ、わたしのだから」
多少の怒りを込めつつ返答する。
その後、青子を起こしに行き、下着姿の彼女と鉢合わせになるのだが、
それは別のお話。
12月16日・19時30分・久遠寺邸
あれは青子と有珠がまた店屋物のメニューと格闘している夕飯時。
青子が有珠の外出嫌いをからかい、静かに怒りながらプロイ制作で忙しかったと説明をするとバイトもないのに遅い帰宅の草十郎と出くわす。
「なあ。有珠のプロイってここで生まれるのか?」
遊園地以降、プロイには敏感な草十郎が尋ねる。
青子はニヤニヤしながらこちらを見つめる。
「なに? 草十郎。知りたいの?」
「知りたくはあるが…………青子の顔を見てたら知らない方がいいような────―」
「よし! 青子先生がダメな生徒に教授しましょう。触りなら問題ないでしょう。有珠」
「………………そうね。私が忙しいことだけは伝えなさい」
「──────」
足を組みなおす青子。
ソファーまで手招きし、浅めに座る草十郎。これより三十分ほどの講義が始まった。けれど、聞き手の能力不足もあるため話は途中で中断した。
「…………静稀君の覚えの悪さは三千世界に響き渡るわね」
”駄犬。死になさい”と続きそうなため息を吐く。
「まあ、草十郎はあるものを受け入れる気質だけど。この場合、わたしと一緒くたになってるのが問題ね。他の魔術師が聞いたら失神しそうな屈辱なのよ。ソレ」
青子も諦めた目をしている。
彼女とは試験勉強で長い付き合いがある分、有珠より耐性があった。
「そんな事はないぞ。区別くらいつく。
青子は壊すだけで有珠は作ったもので壊すんだろ?」
馬鹿にされていることは分かったので訂正する。
しかし、青い服の少女は遠い目をしており、黒衣の少女は胸を抑えながら辛そうにしてる。
「怖いわ青子。どうしてか胸が苦しいってあるのね。まるでお気に入りのティーカップを割った時に通りすがりのカバに”でもトロルよりはマシですよ”と慰められた気分。本当に苦しいの──────」
「誰がトロルよ。誰が」
遠回しに馬鹿にされたことに嚙みつく青子。
「でも草十郎の言うこともあながち間違ってないでしょう? 有珠のプロイだって殆どが役立たずじゃない?」
「いや、有珠のプロイには助けられたぞ。
森の落ち葉を拾っている時に双子の変わった豚がいた。あれは有珠が助けてくれたんだろう? 善行を黙っているのは美徳ってお客さんにも聞いたけど」
”有珠は照れ屋なんだな”と続ける。
当の本人は、試運転の調整だったが少年には良い事に映ったらしい。
有珠は胸の手をより握りこみ視線を外す。けれど、青いタートルの少女はこの状況が面白くないのかしかめっ面をしている。
この後、何故か青子の魔術や有珠のプロイを使用して『金儲け』出来ないか、と話し合いになるが青子の魔術は破壊に特化しすぎてて、有珠のプロイは見世物にするのは彼女のプライドが許さなかった。
宴もたけなわ、紅茶とクッキーだけの寂しいお茶会は終了した。
魔術の話以外にも互いの生活時間などを共有した。
「二時間も話したのね。有珠も饒舌だったし珍しい事もあるのね?」
「別に相槌をしてただけよ。本当に………………こんなの無駄話でしかなかったけど」
「そうでもないぞ。有珠、青子」
草十郎は居間から廊下に出て、大きな影と共に再度入ってきた。
持ってきたモノはホワイトボードでそこには空欄の役割分担表が載っていた。
「本日から君たちの不規則な生活を正そうと思って買ってきました。
特に君たちの食事が酷すぎるから三人のローテーションで回そう」
胸を張る草十郎。
青子は自らの愚かさを後悔し、有珠の目の光は失われていた。
「…………静稀君。この屋敷の主って事を分かってる?」
「うん。知ってる。でも夕飯を協力して作った方が美味しく食べれるし、
相互扶助が当然の義務だと思うんだよね。それに三人分の食費で一度に作った方が美味しいモノが食べれる。それに俺が有珠の料理を食べてみたいってのもあるかな?」
微笑む草十郎に一瞬、赤面する有珠。
「で、でもホワイトボードはやり過ぎじゃない?」
青子の提案に俯きながら頷く有珠。
「ダメだ。書かないと忘れるだろ?」
「う、うぅ………………」
「……なんてこと。責任の所在をハッキリさせるなんて…………
飼い犬に手を嚙まれた気分だわ……」
この後、一週間の食事当番を決めるのか、
均等に分担するのか、実力勝負で決めるのか、ギャンブルで決めるのか。
ひと悶着あるのだが、それは別のお話。
ご覧いただき、感謝いたします。
初投稿の素人なので誤字や不備があると思いますが何卒宜しくお願い致します。
感想、お気に入り登録、評価は凄くモチベーションが上がるので
気軽にしていただけると嬉しいです!
感想はひと言『面白かった』だけでも有頂天です!
(感想は時間が掛かっても返信するのでよろしくお願いいたします)
幻燈河貴様、アイムチキン様、旅旅様、ソーシロー様、ホモサピエンスストア様、トウセツ様、よっちゃんイカ様、トシアキ0414様
誤字・脱字報告ありがとうございます。大変助かりました。
(誤字、脱字、誤植など、いっぱいあったので修正作業は大変だったと思います。
皆様のお陰でとても良くなりました。本当にありがとうございます)
らにさまて様
評価10ありがとうございます。とても嬉しいです。
次回投稿は5月8日(水)の18時40分に投稿しますので
宜しくお願い致します。