クソボケな元先生は今日も行く   作:富竹14号

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 注意…作者のブルアカ知識の大半は二次創作が四割、原作が二割、残りの全てはアニマンです。


乱戦

 

 

 ズカンッと音が響いた…目の前からだった。

 

 握り込まれた拳が身体を打つ音、放たれた拳が錠前サオリの身体を吹き飛ばした音が鏡の目の前で響き渡った。

 

 吹き飛ぶ身体、建物の一角へと叩きつけられ土煙を上げるその場所へとケイはスーパーノヴァ(仮)を起動、先程のモノとは違う通常出力へと戻した一撃を敵手目掛けて発射する。

 

 視界は常に動いている、そもそもが高速で移動する車の上で繰り広げられていた光景なのだ、当然ではあるがケイがサオリを殴り飛ばした時点でかなりの距離が離れていた…はずなのだが、放たれた光弾はさも当然のように壁へと叩きつけられた箇所へとドンピシャで着弾、一角を更に吹き飛ばす。

 

 轟音が響き渡る、爆炎を上げながら吹き飛んだ建物の一角が周囲に大量の瓦礫を量産するのを尻目にケイは再び鏡と黒服へと視線を向けた。

 

「…そういうわけですので、そこの男は貰っていきます…嫌と言うなら抵抗も構いませんよ、出来るものならですが」

 

 ジャコンッと銃口を向けるケイ、紫色に輝く瞳が危険な色を放つ中で黒服は引き攣ったようにククッと呟くことしか出来ない、冷や汗を大量に流しながら漏れ出たその口元はひくひくっと引き攣っていた。

 

 かく言う鏡も似たような状況だった…何せ突然攫われていざ何とか話の内容を呑み干したと思ったら唐突に現れるかつての生徒、そしてそこに乱入してきた何故か自分を弟呼ばわりする同じくかつての生徒…そうして始まった戦闘に鏡の脳は混乱していた。

 

 どうするべきか、どう言葉を返すべきか…頭の中をぐるぐると動き回る纏まらない思考の数々に鏡の脳はショート仕掛けていた…が、そんな鏡のことなど向こうは待ってくれないのだ。

 

「早く帰りますよ猟犬…王女達が貴方を待っているんです」

 

 そう言って仕方がないと言わんばかりにむんずっとケイは鏡の首根っこを持ち上げた、まるで猫を運ぶかのような持ち上げ方に鏡はちょっ!? と声を漏らすがケイは気にした様子も無い。

 

「少し揺れますが…まぁ、貴方なら問題無いでしょう」

 

 そう言って足へと力を入れるケイの姿に鏡は悟ってしまう、こいつこの状況で跳ぶ気だと、この高速で動く自動車の上から地面へと降り立つ気なのだと。

 

 それは流石にヤバい、吐くとか嘔吐するとかそんなのじゃなくて純粋に危ないという感情が鏡の頭を支配する、ケイの身体は頑丈でこそあるがケイ自身が妙なところでポンコツ属性を発揮するせいで安全性が保証出来ないという考えが鏡の中にはあった。

 

「ちょっ、待ったケイ───」

 

 

 

───あらあら、これまた楽しそうなことを…私も混ぜてくださいな?

 

 

 何処からともなく、そんな声が聞こえてきた。

 

 瞬間、全身を突き刺すようにやってくる濃厚な殺意、咄嗟にその出先へ…上空へと視線を向けた先には…爛々と目を輝かせる、見慣れた狐の姿。

 

 本能的な行動、自身の首根っこを掴んでいるケイを側へと引き寄せまるで抱きかかえるような形で胸へと納める、あまりに唐突に引き起こされた行動にケイの顔はポカンっとしていた。

 

 そんなケイの様子なぞ気にも止めずその勢いのままに鏡は抱えていたシャベルへと手をやり…そのまま空へと思い切り振り抜いた。

 

 瞬間、空から落下してきた物体と丁度良くぶつかる形でシャベルが激突する、大きな鉄の音が重々しく響き渡り衝撃と重みが自動車へと許容量を超えかねない程の負荷を叩きつける。

 

 ミシリっとシャベルの柄が悲鳴を上げた、ギリギリっと鍔迫り合いになったのは一種のこと、直ぐ様大きく振り抜き相手を空中へと吹き飛ばした鏡はポイッと黒服へとケイを投げ渡した…直後、放たれた弾丸が頬を掠める。

 

「───()()()()()()()()()()()()()っ!! 貴方様のワカモが会いに来ましたわっ!!!」

 

「───昨日会ったばかりだと思うけどなぁっ!!?」

 

 掠めた頬が熱を持つ、慣れた痛みは気にもせず歓喜の感情を惜しみげもなく押し出してくる見慣れた狐面の少女へと鏡はハンドガンを連射する。

 

 空中に浮いているのだ、避けるのは困難と言わざるを得ない…それが分かっているのだろう、故に災厄の狐は慣れた様子で自らの銃を盾にした。

 

 自分に直撃するであろう物のみに狙いを定めて防御する、一部は太ももや肩口に当たりはするが大して痛くもないと雄弁に語るようにワカモはそのまま鏡へと突っ込んだ。

 

 何時の間に取り外していたのやら、短刀片手に斬り掛かってくるワカモを相手に鏡は拳銃を投げ捨てシャベルを振り被る。

 

 激突、短刀とシャベルが火花を散らして衝突する、銃が主軸のこの世界で刃物や鈍器と言った物を用いた近接戦を好んでいるのはこのキヴォトスに於いても彼等くらいのものであろう。

 

 

「嗚呼っ! 嗚呼ぁぁっ!! 何とお恥ずかしいことでしょうっ!!! よりにもよって貴方様を忘れ、あろうことかそれを思い出せないでいたとは…ワカモは恥ずかしゅう御座いますっ!!!」

 

 

 鍔迫り合い、火花を散らしながら互いの得物を押し付け合う両者、そんな中で心底から歯痒いとでも言う様に目を血走らせながら言葉を放つワカモに何言ってんだこいつは…っと鏡は奇妙なものを見るような目線をワカモへと送る。

 

 時折変なことを言うことはあったが今回は一段と変だなと思いながらも込める力は緩めない、ただの一時でも気を抜けばそこから一気に攻め崩されることを鏡は良く知っているからだ…そして、そんな鏡の心境を知りもせずに災厄の狐は歓喜の感情を押し出してくる。

 

 

「しかし思い出しましたっ! 貴方様とのあの捲る捲る素晴らしい日々をっ、貴方様と繰り広げた撃って撃たれてのあの日々をっ!! 」

 

 自らの感情を盛大に吐き出しながら狐坂ワカモは短刀ごとシャベルを跳ね上げ、そこに蹴りを叩き込む。

 

 空中へと跳ね上げられる互いの武器、高速で動く自動車の上での出来事ということも相まってその影は瞬時に向こう側へと消えてしまう…つまり、これより行われることはたった一つのシンプルなこと。

 

 それ即ち、徒手空拳による超接近戦(インファイト)

 

 武器を蹴り飛ばされた、武器を失った…その時点で来栖鏡と狐坂ワカモの思考は格闘戦へと移行していた。

 

 拳がワカモの顔面に突き刺さる…純粋な拳による打撃、失うことを前提としていたワカモよりも尚も速く来栖鏡はその一撃を災厄の狐へと叩き込んでいた。

 

 僅かに崩れる体感、そこから反射的に放たれる蹴りが鏡の横面へと突き刺さる、バランスが崩れることも厭わない半ば捨て身の一撃…であるが故に鏡は不意を突かれた。

 

 身体が揺れる、互いにバランスを崩した…座席へと倒れ込んだワカモとその場でたたらを踏み、危うく車内から落ちそうになる鏡…オープンカーであるが故に両者は何時その場から落下しても可笑しくないような状況にあった。

 

 先に動いたのは鏡の方だった、たたらを踏んだ身体を何とか安定させた鏡は座席に倒れ込んだワカモの上体へと乗り込み、マウントを取ろうとする…そして当然、それを簡単に許す災厄の狐ではない。

 

 マウントを取ろうとする鏡、その為に此方へと飛び込もうとしてくるその足を丁度の良いタイミングで蹴った…足を踏み込み飛び込もうというあんまりにもあんまりなタイミングでのその一撃に鏡は滑るようにバランスを崩す。

 

 結果、半ば押し倒したような体勢でワカモの上体と到達した鏡、そんな鏡の首へと腕を回したワカモはそのまま抱きしめるように鏡の首を締め上げる…完全に寝技であった。

 

 凄惨な笑みを浮かべながら鏡を締め上げるワカモ、そんなワカモの顔を間近で見ながら歯を食い縛って締め上げから逃れようとする鏡…ミシミシと骨が音を立てるのを感じながら必死に逃れようとする鏡の姿はワカモは愛おしそうに見ていた。

 

 

「───ガァァァッ!!!」

 

 咆哮、獣のような声を掻き鳴らしながら鏡はワカモの横腹を全力で殴り付けた…あまりに強い一撃だったのだろう、本来であれば耐えられる程度の打撃であるはずのソレが普段の何倍もの威力を持っているように感じてしまったワカモは耐えきれず首の締め上げを緩めてしまう。

 

 その隙を逃す鏡ではない、網を通すように瞬時に拘束から逃れた鏡は思い切り息を吸い上げながら座席を掴み取り、まるでドロップキックでもするかのような姿勢で起き上がろうとするワカモへと渾身の蹴りを叩き込んだ。

 

 鳩尾へと入る蹴りの一撃、背後の座席のパーツを粉砕しながら叩き込まれたその一撃はワカモの口から吐血を強いるに至る。

 

「───カッハハハッ!!!」

 

 血を吐き出しながらもその笑みを崩さない災厄の狐、叩き込まれた一撃を愛おしそうに想いながら続けてやってきた拳による打撃を首を動かすことで躱し、逆にその顔面へと拳を叩き込む。

 

 鼻血が飛び出る、鼻面へと直撃した一撃がミシャリっと嫌な音が聞こえてくる…もしかしたら鼻の骨が折れているかもしれない…だからどうした知ったことかと言わんばかりに、お返しだと言わんばかりに鏡はワカモの顔面へと更に拳を叩きつける───

 

 

 

 

「───救護ぉぉぉぉぉぉぉぉぉォォォォォォォッッ!!!!」

 

 

 

 

 そんな時だった、天空の彼方から天使が落下してきたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 




 団長は酷い怪我してるやつがいたら何処にでも救護(物理)してきそうなイメージがある。
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