クソボケな元先生は今日も行く   作:富竹14号

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 書いてて思ったのが、呪術廻戦書いてる時以上に話の進みが遅いなっていう感想だった。


ひとまず決着

 

 

 隕石が如く落下してきた白衣の天使…お馴染みとも言うべきライオットシールドとショットガン、そして変わらぬ例の台詞を大声で叫びながらその場に降り立ったその姿に、鏡は知らずの内に引き攣ったような声を上げた。

 

「───ミネサンッ!?」

 

 予想外の事態であったせいなのだろうか、半ばカタコトと化した悲鳴に近い声色で声を上げた鏡にさしものワカモも疑問に思ったのだろう、狂気の笑みを引っ込めて音の方向へと戸惑いがちに視線を向ける…そして、鏡同様にその状況に理解が至った。

 

 天使が盾を振り被る、向かい来る暴走車両と化したオープンカーを前に一歩も引くことなく堂々たる姿で以て大きくその鈍器を振り被った天使…蒼森ミネの姿に鏡とワカモの両者は悟る…あ、これヤバいやつだ…と。

 

 しかしそう認識出来た所で両者共々全力のぶつかり合いをしていた真っ最中、当然ながらそんな状況下から直ぐ様ほんの数瞬後の災害から逃げられるというわけでもなく…結果として、それは訪れる。

 

「───救護ぉぉぉっ!!!」

 

 お馴染みの台詞と共に振り下ろされた盾が車目掛けて振り下ろされる、鉄を叩きつける音と共に音を立てて砕け散る地面、最高速度を落とすこともなく突っ込んできたはずの自動車はそのスピードごと車体を為す術も無くひしゃげさせ、その勢いを停止させた。

 

 それだけには留まらない、猛スピードで突っ込んできた自動車の勢いを上からの衝撃によって強制的に止めたことでその力の方向は全てが後ろ…つまりは後輪部の方へと向かっていく。

 

 結果としてどうなるか…車体が後方から浮き上がり、何の備えも無ければ何なら不安定な体勢でいたであろう約二名の搭乗者が正面目掛けて放り投げられる。

 

 身体が浮く、容易く車体の外へと晒された鏡の視界の中には呆然とした表情で此方を見つめるケイの姿があり…次の瞬間、ワカモもまた自身と同じく外へと放り出されていることに気が付いた。

 

 地面へと接触、あまりに突然のことであったが故に受け身を取ることさえ出来なかった鏡は身体をモロに擦り減らすように地面を滑る、身体に奔る痛みはそれがどれほどの勢いを以て地面へと接触したのかを如実に現していた。

 

 そしてそれはワカモも同じこと…擦り減るような速度での地面への接触、背中から接触したが故にその箇所は頭にまで至る。

 

 

「───ッッ!!」

 

「───これしきッ…!!」

 

 しかし、だからどうしたと両者は即座に駆け出す。

 

 擦り減るような速度で地面を滑った両者は皮膚が傷付き剥がれるのも厭わず掌で勢いを殺しながら敵手目掛けて駆け出していく、武器が無いが故の徒手空拳…それを、未だに続けようとしている。

 

 ワカモは執着故に、そして鏡はそんなワカモの性格を知っているからこそこれでは終わらぬだろうと踏んだが故に、両者は相手の意識を刈り取るまで決してその戦いを止めない。

 

 そして───

 

 

「───いや、ここまでだ」

 

 それを理解しているが故に、その声の主は両者の一撃を受け止める形で間に入った。

 

 黒く歪な形をした翼が視界に入る、両手に持った二丁の紅いショットガンで拳を受け止めながら此方を見据えるその紅い瞳とワサワサと揺れる長く黒い髪にはこれでもかと言わんばかりの既視感があった。

 

 トリニティの正義実現委員会の委員長、トリニティ総合学園の誇る最強の一角、歩く戦略兵器とも呼ばれる敵対者を潰れた空缶にするとまで言われた破壊者。

 

 『剣先ツルギ』…正義実現委員会の最終兵器…と言うには頻繁にあちこち壊して回ってはいるが、その最強の戦力の一角がこの場に現れた。

 

 まさかまさかとはこの事であろう。

 

 鏡も、そしてワカモもこのタイミングでツルギがやってくることなどまるで考えてはいなかったのだから…故に、その驚愕は愚直なまでに簡単に面に出てくる。

 

 互いに浮かべた驚愕の表情、それに呼応するように両者を見据えたツルギの口元がパカリと割れる。

 

「…ケヒャッ」

 

 口から漏れ出た奇妙な笑い声、それが何の合図であるかを知っているが故に両者は一斉にツルギから距離を取ろうとするが…既に遅い。

 

 距離を取ろうとしたワカモの腕をツルギが掴む、手放した散弾銃が地面へと落下を始めるのを鏡は捉えた…瞬間、ワカモの身体がツルギ側へと一気に引き寄せられ、そこへともう一丁の散弾銃の弾丸が叩き込まれる。

 

 零距離、散弾銃と呼ばれた武器が恐らく最も威力を発揮するであろうその距離にて撃ち放たれたその一撃がワカモの腹を打つ、最強角の放った弾丸の衝撃にワカモは強制的に息を吐き出させられた。

 

 息が吸えない、吸おうとしても身体がそれを受け付けない、身体が上手く動かない…そんなことを思考するワカモへと更に更にと追い打ちが叩き込まれる。

 

 膝蹴り、更に腹部へと叩きつけられた一撃がワカモの意識を揺らす、膝蹴りと共にクルンっと回転させられた散弾銃から薬莢が排出される…それはつまり、装弾を終えたと言うこと。

 

 もう一撃、駄目押しと言わんばかりに放たれる散弾銃の銃弾、腕を掴まれている為、避けようと思っていても避けられず反撃しようにも息が出来なかったワカモはその一撃をまたもやモロに喰らう。

 

 吐き出す息はもう無く、蹴りによって半ば限界に近かったワカモの肉体は続けて放たれた一撃によって遂に膝を着く、狂気的に笑みを浮かべながらスピンコックを行うツルギの姿は何方かと言うと悪魔に近かった。

 

 ゲボっと嘔吐のような音が響く、本当に吐き出しているわけでは無いがそれに近い何かを吐き出そうとする音…実際は息を吸い上げようとして噎せたワカモが発した音なのだがそれを気にする人間はこの場にはいなかった。

 

 一方的…そう一方的だ、あれだけ苦戦し苦労させられた狐坂ワカモがこうも一方的に為す術も無く打ちのめされている…その事実に、鏡は改めてキヴォトス最強格という言葉の重みを理解出来たような気がした。

 

 

 

 …実際は、ここまで一方的になることはないだろう…圧倒はされるがここまで一方的になるということも恐らくは無い、決定打も致命傷も与えられないかもしれないがそれでもある程度は勝負になる…それだけの実力が狐坂ワカモにはある。

 

 では何故にこうも一方的なのか…その理由を挙げるのであればそれはやはりワカモ本人の自業自得としか言いようが無いだろう。

 

 直前まで鏡と命を削り合うが如き近接戦を繰り広げていたこと、武器を失っていたこと、そして鏡に集中するあまり剣先ツルギの接近に気が付けなかったこと…幾らミネの襲撃による動揺があったとはいえ、それを差し置いても狐坂ワカモは来栖鏡に執着し過ぎていた…それが、今回の状況に繋がったと言えるだろう。

 

 …しかし、それを自覚した所でワカモは恐らくそれを止めないだろう、何せ───

 

 

 

「───邪魔です…お退きなさいっ…!!」

 

 

 

 

 恋する乙女は、何時だって一生懸命なのだ。

 

 

 

 

 決着は着いた…そう誰もが考えたその瞬間、狐坂ワカモは再起する。

 

 瞳をギラつかせ、口元から僅かに漏れ出た血液を拭うこともせず唐突にツルギへと拳を叩き込む…ゲホッと吐き出したソレはまだまだ苦しそうで、思うように息を吸えたとは言い難い、きっと無理矢理にでも身体を動かしたに違いなかった。

 

 拳がツルギの頬に突き刺さる、重く鋭く響く打撃音がその一撃の重さを証明しており、当然喰らった人間はただでは済まない…しかし───

 

 

「───アキャッ…!!」

 

 剣先ツルギ…彼女はこのキヴォトスに於いても埒外の枠に入れられる人間である。

 

 殴られ仰け反った…その瞬間、ツルギの持つ散弾銃の銃口がワカモへと向く。

 

 ガチャリと鳴らして目の前に広がる黒い穴、引き金が引かれればそこから飛び出るのは避けるのは実質不可能な広範囲の散弾、ニタァっと狂気をそのまま押し出したような笑みを浮かべたツルギにワカモは反射的にツルギの股下へと転がり込んだ。

 

 瞬間、放たれる散弾、僅かに獣耳を掠めた散弾の痛みに歯を食い縛りながらワカモはツルギの股下を通り抜け、ツルギを転ばせようと画策する。

 

 当然ツルギはそれをさせない、股下を潜ろうとしていることを悟ったツルギは足先を少し下げてから自らの体勢を下げ、潜る穴を無くす…目当てのモノが無くなったワカモは舌打ちを一つ打ちながらならばと次の目当てへと手を伸ばす。

 

 目当てはツルギの散弾銃、先程ワカモの腕を掴む為にその場に置き捨てたもう一丁の散弾銃…このままではあまりに不利であると思考したワカモはせめて武器をとツルギのソレへと目を付けた。

 

 低い体勢のまま、半ば飛び出すように四足の体勢で落ちた散弾銃へと手を伸ばす、飛び出すように動き出したお陰かその体重に僅かにツルギの身体が引っ張られる…が、それを許すかとツルギは無理矢理ワカモの腕を引っ張り、ワカモの思惑を阻止する。

 

 掴まれた腕により散弾銃へと伸ばした手は掠めることなく空を切る…チィッと今度は大きく舌を打ったワカモはならばとその引っ張れた勢いのままにツルギの顎へと蹴りを繰り出し、それをツルギは分かっていたと言わんばかりに躱す。

 

 一進一退、先程までの一方的な展開は何だったのかと言わんばかりの攻防、一対一のあまりに白熱したやり取りに黒服は知らずの内に息を呑んだ。

 

「しつこいですね、貴女もッッ!!」

 

 厄介、邪魔者、どうして誰も彼も私とあの方の逢瀬を邪魔したがるのか…ギラつき燃え盛る瞳の奥にそんな感情を乗せながら狐坂ワカモは未だに腕を掴んで離さないトリニティの戦略兵器へとそんな悪態を吐き捨てた。

 

 

「───いや、お前も大概だろうがよ」

 

 そんなワカモの耳へと、その声は響く。

 

 ガチャンっと響く装弾の音、先程から何度も聞いたレバーアクション特有の音にワカモは瞬時にその方向へと視線を向け…瞬間、ワカモの目の前に銃口が置かれた。

 

 蒼い瞳が目があった、焦がれて焦がれて焦がれ尽くした青空のような綺麗な蒼い瞳…銃口の奥に存在したその瞳にワカモは狂気とは無縁の少女らしい薄い笑みを浮かべた。

 

 

「───今回は、此方の負けですね」

 

「───無効試合だろ、どっちかと言うと」

 

 

 銃声が響き渡った…容赦無く躊躇も無く、引かれた引き金と共に吐き出された散弾がワカモの頭へと殺到する、揺れた頭が地面へと向かいそのまま狐坂ワカモの肉体は地面へと沈んだ。

 

 銃口から煙が上がる、ふぅっと堪えていた何かを吐き出すように息を吐き出した鏡は手慣れたようにレバーを動かし、装弾を終えた。

 

 

 ひとまず決着…そんな雰囲気だった。

 

 

 

 

 




狐坂ワカモとの関係について

 教師時代の際には最低でも20回以上に戦ってて、生徒時代だと50回以上は戦ってる。

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