クソボケな元先生は今日も行く   作:富竹14号

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お久しぶりのブルアカ小説、相変わらず自己満足全開の作品だなぁと思ってみたり。




『納得』

 

「…えっ? はっ? 生徒…会長…? アリウスの? ……俺が?」

 

 

 素っ頓狂な混乱の声、何を言われたのかイマイチ理解出来ていないのかもしれない…そんな風に思わせるような声色でそう言う鏡に対し、黒服はさも当然のようにえぇ…っと、一言返した。

 

「アリウス自治区アリウス分校生徒会長『来栖鏡』…それが、この世界で知られる貴方の立場です」

 

 軽く当たり前の様に言ってのける、何処からか取り出したのか暇潰しと言わんばかりにリンゴの皮剥きを行い始めた黒服は、薄く笑みを浮かべながら混乱する鏡の様子を面白そうに見つめていた。

 

 

「ちょっと待て!? じゃあベアトリーチェはどうしたよ!? 俺の知ってる限りじゃ、アリウスの皆は俺等と知り合うまではベアトリーチェの思想を鵜呑みにしてたはずだろ!?」

 

 言いながら思い出すのは元いた世界のアリウス組との出来事だ…全ては虚しいと言って憚らない錠前サオリに人生そのものに絶望を抱いていた戒野ミサキ、幸せな未来が信じられずに人生は苦しいだけのものと断定していた槌永ヒヨリ…唯一ギリギリ話が通じたかもしれない秤アツコも実質的には敵対関係以外の何者でもなかった。

 

 それもこれもベアトリーチェによる希望や幸福を望む者には厳罰を下すという度を越した害悪統治が原因であると知ったのは、文字通りその全てを叩きのめした後のことではあったが…今はそこではない。

 

 問題は、そんな状況のアリウス分校の生徒達に一介の部外者でしか無い鏡の言葉が届くかという話だ…絶対に無理だと鏡は断言出来る、出来るだけの経験を積んできている、実際シャーレの先生をゆっていた際に試してみた結果として、それらは失敗に終わっているのだから。

 

 故に分からない、この世界の自分がどうやってアリウス達を動かしたのか、どうやってベアトリーチェの呪縛から解放したのか…そもそも、アリウス分校をどうやって経営したのかも。

 

 悩みに悩み続ける鏡、今にも頭を抱えて煙でも吐き出しそうな気配すら漂っている知人に対して、黒服はクックックッっと定番の笑い声を吐き出すと共に…その真相を告げた。

 

 

「───食い殺したそうですよ?」

 

「───はぁっ?」

 

 

 ノータイムの怒りの声が混じったような声を口から捻出した鏡に黒服は重ねるように言葉を吐く。

 

 

「貴方やその当時を知るアリウス生曰く、貴方はベアトリーチェを頭から食い殺したのだそうです…大きな肉を一口で食べ切るように、頭の先から上半身全体に至るまで、パクリッ…と」

 

 リンゴの皮を剥き終わり、コトリっと皿を置いて皮だけをモグモグと食べる黒服に鏡は今度こそ意味の分からないモノを観るかのような目で黒服を見つめた、本当の本当に何を言っているのか分からないとでも言いたげな顔だった。

 

 どうやって?…そんな言葉が如実に聞こえてきそうな複雑な表情を浮かべる来栖鏡という人間に対して、黒服はうっへっへっ…という何処となく別の人間を連想させるような声を出しながら、その答えを鏡へと与える。

 

 

「この世界の貴方は…正確に言うなら生徒としての貴方は自らの神秘を自在に扱えたのですよ」

 

「『シッテムの箱』によって封じられ、大人のカードに使用によってのみその楔を解くことを許された『暴食』の神秘…その力を」

 

 

 

 

 それは正しく、来栖鏡の求めていた答えそのものだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前は、何がしたいんだ…?』

 

 

 何時だったか、そう問いかけたことがあった。

 

 ふと過った過去の記憶…何時のことだったか、どんな時に放った問いかけであったのか…今では、酷く曖昧な記憶だった。

 

 自分達を叩きのめしたシャーレの先生…お前達の絶望等知ったことかと、お前達の憎しみなど知ったことかと叫んだかつての敵。

 

 縋るような目で見上げてくるくらいなら最初からこんなことするなと、震え上がるような憎悪を抱いた瞳と共にその凶刃を己へと振り翳したかつての悪夢…それが、シャーレの先生こと来栖鏡に対しての私の印象だった。

 

 

『…何が?』

 

 

 そうぶっきらぼうに言葉を返しながら、シャカシャカと銃の点検を進める先生…拳銃を分解し、分解したパーツを布で拭き上げ汚れを落とし、ブラシでバレルの奥を擦っていく…そんな無防備な背中へと、私は疑問を投げかけた。

 

 

『私達のことだ…敵だったんだぞ、私達は…なのに、何故こうも容易く側に置こうと思える』

 

 言いながら、懐の拳銃へと手を伸ばした。

 

 無防備な背中だった、今その背中を撃てばそれだけで全てが終わってしまいそうに思える程に無警戒なその姿、不意打ちをまるで想定していないようなその様子…寝込みを襲われるとは思わなかったのだろうかと、当時の私は思った。

 

 

『お前は私達を私兵にすると言った…有事の為の戦力、いざという時の為の汚れ役、何時でも切り捨てられるような使い捨ての武器…それに妥当するからと、それにピッタリだったからヴァルキューレから引っ張り出してきたのだと…お前はそう言ったはずだ』

 

 

 そう、最初はそうだった、そんな建前でシャーレのオフィスへと連れてこられた…そう言って、ヴァルキューレから連れ出された。

 

 自分にだけ付き従う私兵が欲しい、その為の戦力として私達を引き抜く…そう言って、先生は私達を牢獄の外に引っ張り出した。

 

 別に良かった、慣れていたから、分かった気になっていたから…今までと何も変わらない、自分達を支配する人間がベアトリーチェからシャーレの先生に変わっただけだと…そう思っていた。

 

 …けど───

 

『なのになんだ、今のこの状況は…何なんだ…これは…』

 

 

 先生は…私達に何もさせようとはしなかった。

 

 想像していたものと違った、想像していたような環境では無かった…率直な感想として抱いたのは正しくこれだった。

 

 任務らしい任務も無い、あったのはシャーレで行われる一般的な授業と自由な時間、そして先生自身と囲む日常的な時間の数々だった。

 

 劣悪な環境なんて何処にも無い、食料も水も当たり前に与えられて知りたいと思えたことは当たり前の様に知ることが出来た…ベアトリーチェに支配されていた時とは比べ物ならない程に恵まれたその環境、その癖して本来の用途とも言える私兵としての役目に関しては全くと言って良い程に音沙汰が無かった。

 

 何も無い、本当に何も無かったのだ…強いてあったとするならば簡単な書類の整理だけ…逆を言えばそれ以外は何も無い…本当に、たったそれだけのことだったのだ。

 

 与えられた穏やかな日常、何者にも侵されることの無い求めていたはずの日々…けれど、それは私の疑心を育てるには十分過ぎることだったのだ。

 

『何がしたいんだ…私達に何をさせたいんだお前はッ…!』

 

 スラリっと拳銃が抜き放たれた、慣れた手付きで向けられた銃口の先にいるのはその日常を与えた大人だった。

 

 ヒヨリはバクバクと幸せそうに食事を頬張っていた…最初はビクビクと怯えていたが、ここで過ごせば過ごす程にその態度も収まっていった。

 

 ミサキは何も変わっていないように見えた、変わらず人生に絶望しているように見えた…けど、その傷口は少しずつ減っていっているのだ、自分を傷つける行為そのものが明確に減っていっているのだ。

 

 姫もそうだ、当たり前の様に喋る、当たり前の様に私達に関わりに来る…支配から逃れたからだ、誰も自分の縛り付けていないからだ…良く笑うようになった。

 

 かく言う当時の私もそうだった…確かな安心を覚えていたのだ、皆の幸せに喜ぶ自分が居たのだ…だが、目の前の大人はそれを容易く壊せる位置に居るのだと私は知っている。

 

 だから…きっと、返答次第では撃とうと…そう思っていたのかもしれない。

 

 だから───

 

 

 

『───整備したい』

 

 

 その言葉に、理解が及ばなかったのは当たり前の話だったのかもしれない。

 

 疑問の顔を浮かべる私に椅子ごと振り返った先生は、何処か光を失ったように思えるその瞳を私に向けながら、一つ息を吐き出して…告げた。

 

 

『…銃で例えるなら、お前達はありとあらゆる部品にガタが来てる、言ってしまえば廃棄物目前のガラクタだ』

 

 

『フレームはガタガタ、銃身は曲がってるしバネも破損済み、マガジンだって入れ辛くて仕方がない…もういっそ買い替えた方が安上がりかもしれない…そう思えるくらいのガラクタ一歩手前の代物だ』

 

『けどお前等は人間だからそういかない、使えないからハイ捨てますとはいかない…だから整備する』

 

『ガタガタの身体(フレーム)直して、曲がってる銃身(思想)壊れたバネ(健康)直して、最後にマガジン入れやすくして(知識)を込めてやる…ここまでやってようやく使えるようになる』

 

『なんで使わないんだって思ってるんだろ? 言ってやるよ…壊れた道具使う程、俺は暇じゃない』

 

 

 以上、それだけ…そう言って、先生は椅子を戻して作業に戻った。

 

 一息の内に、こちらの言葉も許さぬと言わんばかりに捲し立てるように言い切られたその言葉に、私は暫し呆然とした。

 

 壊れた道具に与える仕事なんて無い…そう言われたからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …今にして思えば、先生は私が納得するような言い方であぁ言っただけで、きっと純粋に私達のことが心配だったのだろうと思う。

 

 そうでなければ…傷ついた私達を命懸けで助けるなんて真似は、しなかっただろうから。

 

 

 

 響くヘリの機械音に、意識が現実に引き戻される。

 

 星の瞬く夜空の下、無数の破壊音の響く埒外の戦場へと向かう連邦生徒会所有の装甲ヘリの機内で私はその瞳を開いた…眠ってしまっていたらしかった、らしくもない。

 

 

『良く眠れましたか?』

 

 

 耳元から声が響く…インカムから聞こえてきた声だ、聞き馴染みはあまりない。

 

 

「あぁ…良い夢だった」

 

 

 言いながら立ち上がる、携えた銃器を持ち上げ羽織った黒いコートを靡かせて、私は眼前に広がる破壊の権化へと視線を向けた……無数に存在する紅い尾を振り下ろし、薙ぎ祓い、破壊と捕食の限りを尽くす、先生の姿をした『ナニカ』へと。

 

 

『他三名は全て定位置に付きました、後は貴女だけです…準備は、宜しいですか?』

 

 

 準備を問うだけのその言葉…しかし、その内側には私の覚悟を問うような重厚さを秘めているような気がした…今から行われるかつての恩師の姿をしたナニカの命を奪う…その覚悟を。

 

 その言葉に私は…静かに、嗤った。

 

 

「問題無い…『連邦捜査部S.C.H.A.L.E』所属…錠前サオリ…これより、作戦を開始する」

 

 

 私は足を踏み出した…怪物殺しの戦場、その真っ只中へと。

 

 

 

 

 

 

 

 




鏡と本来の先生の相違点

・基本生徒のことを一人の人間としか見てない(守るべき子供として見ようとしているけど、実際の所は出来ていない)

・生徒全員の味方になれない(逆を言うと敵にはなれる)

・本来の先生と違って自ら来たんじゃなくて半ば誘拐みたいな形でキヴォトスに来ている

・アロナが一方的に嫌っている為、アロナバリアが完全に機能していない

・大人としての定義が非常に曖昧

・先生と比べて事務能力や戦闘能力が桁違いに高い、ただしコミュニケーション能力は本来の先生の方が上

・大人のカードの役割が異なる

・何方かと言うと役割としては副担任


同位点

・クソボケ

・何だかんだ言って生徒に好かれる

・基本お人好し
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