クソボケな元先生は今日も行く   作:富竹14号

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 久しぶりのブルーアーカイブ、しかし内容は意味不明なのではないかと思う今日この頃。


おなかすいた

 

 

 銃声が、鳴り響く。

 

 連続して鳴り響く銃声、一秒の間に五発は撃っているのでないかと、そう思わせられる程に連続する鉄火の音…そして、ソレに混じって聞こえてくる、斬撃音。

 

 

「───クッソッ…!!」

 

 そう、吐き捨てるように呟いたのは誰だったのか…何処か焦ったような口調で吐き捨てられたその言葉、それとほぼ同時に鉄と鉄が衝突したような音が夜の街へと響き渡る。

 

 ジャラリと視界を掠める長い鎖、二丁の銃へと備え付けられたそれが蛇のように蠢き、瞬きをしたその瞬間には既に目の前にソレがある。

 

 振り抜かれた鎖、高速で迫る鉄の塊を前に男は…クルスカガミは咄嗟に上体を仰け反らせてソレを躱した。

 

 目の前を通過していく長い鎖、直撃した先でその細さに見合わない破壊をばら撒くソレを前に、臆することなくカガミは一歩を踏み出す…が、そこへと降り注ぐ銃弾の雨にその動きを堰き止められる。

 

 飛び退く、横合いへと降り注ぐ銃弾から逃げるように走り出す。

 

 後方から鳴り響く銃弾の音、地面に当たって弾けてアスファルトを砕く音、後方からやってくる死の音に舌打ちと鬱陶しさを感じつつもカガミは走ることを止めず…ふとしたように、徐ろにその刀を振り抜いた。

 

 ガキンッと鳴り響く鉄の音、刀から感じる感触と強い衝撃にカガミは含み笑いを浮かべ…震えるその手を庇いながら一目散に逃げ出した。

 

 

(───重たっ!? SMGの銃弾ってこんなだっけっ!?)

 

 

 銃弾を弾いたその手がまるで凍えるように震える、銃弾一発一発から感じる重さが並のものではない、もしかしたら特殊な弾丸でも使っているのかもしれない。

 

 響く足音、曲がり角と障害物を駆使しながら右へ左へと身体を動かし放たれる弾丸の予測を外す、間一髪の様相を保ちながらカガミは必死の形相で夜の街を駆け抜ける。

 

 美甘ネルとの戦闘直後に思考した美甘ネルへの対応策…即ち一か八か、武器を破壊して撤退させる、或いは自身が逃げても直ぐに追跡が出来ない状態に追い込む…言っておいてなんだが、これら二つが実質的に不可能であることをカガミは知っていた。

 

 コールサイン『00』…ミレニアムが誇る最強の個、勝利の象徴を背負った彼女に勝つということがどれだけ難しいことであるかをカガミは良く知っている、ついでに言うとそのタフさも良く知っている。

 

 幾らダメージを負っても止まる気配を見せないその姿、傷だらけで剣先ツルギのような回復体質を持っていると言うわけでもないのに、間違いなくダメージは蓄積しているはずなのに一向に止まらないその姿を、クルスカガミは良く知っている。

 

 そんな人間を追跡不可にまで追い込む? 最低でも武器を破壊する?…ハッキリ言おう、無理である、通常の状態であればまだワンチャンあったかもしれないがただでさえ空腹の状態なのについ先程までカガミは強敵と交戦していたのだ、無茶があるにも程があろう。

 

 飛んでくる銃弾を身体全体を動かし、飛び込むように躱す、地面を転がり肌を傷つける地面の感触を煩わしく思いながらもカガミは咄嗟に曲がり角の向こう側へとその姿を隠した。

 

 命の危機に心臓が馬鹿みたいに鼓動を叩く、息を荒く吐き出しながら立ち上がろうとするが…やはり疲れがあるのだろう、響く腹の音と共に力が抜ける、足が上手く上がらず膝を付く。

 

 

「───チィッ」

 

 膝を思い切り叩く、震える足を押さえつけるようにドンッドンッドンッと強く叩く、震えこそ収まるがそれでも入る力は未だ弱く、これではもう走ることする出来ないのではないかと思わせる。

 

 駄目だと思った、これでは戦うどころか一方的に滅多打ちにされた挙句に説教地獄へと連行されてしまう…カガミの思考がその結論に達するのと同時に、クルスカガミは深く深く…それはもう深いため息を吐き出した。

 

 

 

「…あんまり、やりたくはないんだけどなぁ……背に腹は代えられないか…!」

 

 

 呟くように吐き出されたその言葉と共に、視線が手元の刀へと向く、鈍く輝く鋼色の刃はその鋭さを誇示するように月の光を反射してカガミの目元へと当てる…その光を眩しく思いながらも、カガミはふとしたようにこう思った……()()()()()…と。

 

 刃の刃先を口元へと充てがう、まるでポッキーの先端を口元へと向かわせるように口元へも刀を近づけ、それへとカガミは大きく口を開いた。

 

 ズザァッと地面を滑る音がする、土煙を上げて曲がり角の向こう側からその姿を現した美甘ネルはその銃口をカガミへと向けて…一瞬、呆けた。

 

 当たり前だろう、何せ自身が追いかけていた男が刀を口の中に放り込もうとしているのだ、端から見ればそれは自殺しようとしている人間の光景にしか映らず、なればこそ美甘ネルの思考の停止も頷けるというものだろう。

 

 だが───

 

 

『駄目だネルッ!! ()()()()()ッッ!!!! 』

 

 

 その一瞬だけは、決して与えてはいけなかった。

 

 鼓膜から響く友人の声、今回の作戦に自ら協力を申し出た少女の声にネルの身体が動き出す、弾けるように動き出した銃口が火を吹き銃弾を放つ、けたましい音を掻き鳴らしながら放たれるソレはしかし…あと数瞬だけ、遅かった。

 

 

───シャクリ

 

 

 咀嚼の音が、響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『暴食(グラトニー)』…かつて、そう呼ばれた神秘がある。

 

 七つの大罪、その内の一つの名を冠したその神秘はその名の通りありとあらゆるモノを喰らうという特性を持ち合わせていた…その神秘を持ち合わせた者はただ一つの例外も無く、大喰らいの大食人間であったと言う。

 

 喰らうものに見境は無い…無機物であろうが有機物であろうが、マグマに毒液に硫酸にガソリン、文字通りこの世に現存するありとあらゆる全てを喰らう…それこそが『暴食』と呼ばれた神秘だった。

 

 …とは言っても、そこまで危険な代物である…というわけでもない。

 

 何てことはない、言ってしまえば宿した人間がいっぱい食べる人間になるというだけの話なのだ、事実として過去に七つの大罪の名を冠した神秘を持ち合わせた人間が起こした騒動を鑑みて見ても、暴食が起こしたと言う騒動や事例はあまりに少なく、あまりに低い。

 

『七罪神秘』…過去にゲマトリアと呼ばれた集団がそう名付けたモノの括りの中で言えば、暴食は最も温厚且つ最も大人しい神秘と言えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただし…ある特定の条件さえ満たさなければ…という但し書きが付くが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 弾丸が…空を切る。

 

 目の前で刀へと大口を開けていたかつての先生の姿、馴染み深い姿からは随分と変わってこそいたが、それでもその顔を忘れることはないと、そう言ってしまえる程度には仲を深めたその人間の姿が…美甘ネルの視界から掻き消えていた。

 

 何処に言った、今の一瞬で何処に消えた…右にも左にも逃げ場は無い、奥に逃げたとしても音も無ければ足跡も無い…ならば残るは───

 

 

 

『───ネル!! 上だっ!!』

 

 

 辿り着いた結論は同じ、そしてそれを導き出した時間も同じ、耳元のインコムから飛び出してきた声と同時に美甘ネルは上を見上げて…息を呑んだ。

 

 

 ソレは、立っていた。

 

 自身の持っていた刀、そのもう一振りを壁へと突き立てて、そうして出来上がった即席の足場へと、ソレは何ということはないように立っていた。

 

 本来の色とは真逆の色、白亜のような白色の髪を靡かせて、何時かの赤い空を連想させるような真っ赤な色の瞳を爛々と自身へと向けるその姿にネルは反射的に銃口を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『暴食』を扱うにあたって、最もやってはいけないのは『暴食』の神秘を持った人間を飢餓状態に追い込むことだった。

 

 普段は大人しく、モグモグと美味しそうに食事をがっつくだけの存在でしかない『暴食』は、しかし飢餓状態に陥った際にはその今までの状態からは想像も出来ないような暴れっぷりを見せる…空腹を癒す為に、辺り一帯の物を兎にも角にも食い散らかすのだ。

 

 これが純粋な食い物であればまだ良いだろう、そこら一帯の食事店がその日の営業を諦めるだけである…だが、先も言ったように暴食の神秘の食事対象には無機物すら含まれている。

 

 よって引き起こされるのは『暴食』による建築物の破壊や車やバイクと言った物の捕食…空腹が収まるその時まで我を忘れたかのように辺り一面の物を食い荒らすその姿は正しく暴食の悪魔の名に相応しい存在であったと言える…そしてこれは、クルスカガミでさえも例外ではない。

 

 彼は軽い飢餓の状態にあった…流石にこれだけでは暴走することもなく、比較的安全に捕らえることも可能であるのだが……問題だったのは、暴食に捕食を行わせてしまったことだった。

 

 分かる人間には分かるだろう…空腹とは、生半可に食ってしまった分だけ、より一層苛烈に自身を責め立てるのだと言うことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤が、映り込んだ。

 

 カガミの背後で蠢く赤、丁度尾尻の辺りから突き出すように現れた四本の尾のような赤いナニカがネチネチとその音を鳴らしていた。

 

 最早人間のソレではない…そう思考したらしいインカムの向こう側に居る誰か、そして美甘ネルの耳に…その音は届く。

 

 

───グーッ

 

 

 間抜けな音だった、カガミを中心として鳴り響いたその音は静かに空間へと響き渡り、カガミはそうして鳴った腹へと手を寄せて擦り───

 

 

 

「───アキャッ…!」

 

 

 

 狂気的な笑みを、ネルへと向けた。

 

 

 大飯喰らいの、食卓が開く。

 

 

 





クルスカガミについて

 本人は言語を話しているつもりだが周りからは言語として認識されていない、獣のように唸ったり狂気的な声程度にしか聞こえていない。

 因みに正気のようで正気じゃないという状態、イメージとしては銃の魔人状態に近い。

 喰種みたいな戦い方をする。


暴食について

 イズミ以上に何でも食べて、アカリ以上に一杯食べる、具体的には色彩を丸ごと食べかける。

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