舞園「超高校級のヌケーター?」   作:ゼフィガルド

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125時間目:原則として立ち入らない

「つまり、貴方達はキーボ君がセクハラされている現場に立ち会った所で、入間さんの発明品が暴走して、彼女の拠点が大爆発したと?」

 

 中庭の探索を命じたメンバーと加害者&被害者が頷いていた。コレには東条もこめかみを抑えるしか無かった。

 

「確かにセクハラしたのは悪いけれど、私の開発品と研究所(ラボ)まで爆破しなくてもいいじゃんかよぉ……」

 

 説教に次ぐ説教で、入間の顔は半泣きで固定されていた。隣では申し訳なさそうにしている最原が、慰めがてらにスケートボードを差し出していたが払いのけられていた。

 

「いらねぇよバカ! 人ん研究所(ラボ)爆破しやがって! 近付くんじゃねぇ!」

 

 結構本気で怒っていたので、コレには最原もビックリした後、ションボリしたので、王馬が慰めていた。

 

「オレ達だって悪気があった訳じゃないのにね。キーボを助けるために入ったって言うのに、当の本人は最原ちゃんを慰めもしないなんて。冷たい奴だよ!」

「いや、あのその……。感謝はしているんです。いや、本当」

 

 と、言いつつ。キーボは最原から距離を取っていた。傍目から見たら恩知らずに見えてしまうが、フォローするかのようにアンジーが口を開いた。

 

「終一の神様はメカと仲が悪いからね。喧嘩しちゃうんだよ」

 

 スピリチュアルな物言いだが、受け入れ易くはあった。

 あのエグイサルを吹っ飛ばし、デスロードのギミックを次々と吹っ飛ばしているのを見るに、彼は機器に対する特攻の様な物を持っているのだろう。

 

「制御が利かんタイプの魔法じゃな。下手に本人に何かをさせようとするより、ウチらが気を使った方がいいじゃろ」

 

 夢野も納得していた。この両者にはシンパシーでもあるのか、非常に会話がスムーズに進む様だ。

 

「夢野さんが言うなら……。こっちが気を遣わされるのは腹が立ちますが」

 

 そして、彼女が納得するなら付随して茶柱も頷くので、この集団における人間関係の一端を見た気がした。

 

「2人の組み合わせは今後の参考にさせて貰うわ。じゃあ、皆が調査して分かったことを話していきましょう。私達は1階を探索したの」

 

 食堂、購買部、倉庫等。自分達が才囚学園で生活していくのに必要な施設は、このフロアにまとめられているらしい。

 

「食堂と倉庫にある物は勝手に使っても良いみたいだけれど、購買部だけは物品がガチャにまとめられていたね」

 

 白銀が懐からメダルを取り出していた。モノクマの顔が刻印された物で、腹立たしい外見はしているが、この学園における通貨の様な物であるらしい。

 

「モノクマーズに聞いたけれど、学園の何処かしらには落ちているから拾ったら使って良いとのことよ」

「普通に選ばしてくれたらいいのにね」

「それは違うよ、赤松さん! 何が手に入るか分からないって言うワクワクとドキドキが」

「それじゃあ、星君。2階の報告をお願い」

 

 白銀が急に前のめりになって語り出そうとする、オタク特有の距離感バグを見せ始めた所で、東条が次の話題を促すことでカットしていた。

 

「2階は大した物は無かった。龍の置物と教室以外には、ドアにピアノのペイントが施された教室があった位だ。鍵が掛かっていて、入れなかったが」

「ピアノ!」

 

 星の報告に赤松が目を輝かせていた。1日練習しなければ、3日分衰える。という、慣用句がある様に。才能は磨かなければ、直ぐに鈍ってしまう。

 

「赤松さんにとって有用な報告で良かったわ。最後に百田君達の報告を」

「おぅよ! 地下には『ゲーセン』『図書館』『AVルーム』の3つがあった。ゲーセンは設置されている筐体も少なかったけれどよ」

「AVルームは大量のビデオがあったけれど、大体はドキュメンタリーや資料ね。娯楽用の映像作品も幾つか並んでいた。『イルブリード』とか言う、聞いたことのない奴ばっかりだったけれど」

 

 百田と春川の話を聞くに、学園側から娯楽を提供する気はないらしい。となれば、残るのは図書館位だが。

 

「図書館の本は兎に角乱雑に詰め込まれていたっすね。外国の奴から、国内の奴まで。小説から漫画まで本当に何でもあったっす」

「退屈しそうだね!」

 

 天海からの報告を聞いて、王馬が笑顔で答えていた。すかさず、横から『なら、これをやらないか?』と言わんばかりに、最原がスケートボードを差し出していたが、シカトされていた。

 

「校舎の概要から考えて、2階までしかない。なんてことはあり得ないと思う。それに、入間さんには研究所(ラボ)が用意されていたのよね?」

「無くなっちまったけれど……」

 

 ジロリと睨まれたので、最原は『謝罪のしるしにどう?』と言わんばかりにスケートボードを差し出していた。勿論、相手を挑発するだけだった。

 

「だったら、生徒全員分の才能を研究する為の部屋が宛がわれているハズよ。だから、この校舎にはまだ開かれていない場所があるのだと思う」

「そうだね。俺達も校舎の外を探索していたら、ツタに覆われて入れない建物とかもあったし」

 

 東条の考えに王馬を始めとして、皆が頷いた。だとすれば、どうしたら解放されるのか。というのは、まるで見当が付かなかったが。

 

「とりあえず。もう少し情報を調べられそうな場所を調べてみる価値はあると思うけれど、一旦休憩にしましょう。根を詰めても長続きはしないから」

 

 この事態に巻き込まれてから、今までずっと動きっぱなしだったこともあって、一同はようやく一息吐いていた。

 

~~

 

 自由時間。寮に行って休息を取る者もいれば、先程の報告にあった部屋を確かめに行く者達もいる。赤松は2階にある、自身の為に用意されたと思しき部屋に向かっていた。

 

「おぉ~。ここがバカ松の部屋か~。テンション上がるな~」

 

 極当たり前の様に入間と最原が付いて来ていた。ピアノだけではなく、古今東西のCDやレコードも用意されており、正に彼女の為の部屋。と言えた。なのに、入間は落ち着きなく部屋内をうろうろして、最原は地蔵のようにジッとしていた。

 赤松は思慮分別がある人間なので、言葉にはしなかったが……ぶっちゃけ2人共邪魔だった。

 

「あの。2人共、暫く1人で練習したいんだけれど。良いかな?」

「なんだよ。オレ様が邪魔だってのか!」

 

 うん。と言った日には戦争になることだろう。角は立てたくないが、どう追い返した物かと悩んでいると、入間が鼻を鳴らした。

 

「ははぁん。オレ様がピアノ弾けないと思っているんだな。でも1曲だけ行けるんだぜ!!」

 

 自信満々にトムソン椅子に腰を下ろした。だが、赤松には彼女の考えが手に取る様に分かっていたらしい。

 

「そうなんだ! あ。『4分33秒』とか言わないでね? アレは沈黙することで、意図していない音が起きている状態を表した物だからね。何もしない状態のことを言っている訳じゃないからね?」

 

 一瞬で入間の顔が真っ青になっていた。図星だったらしい。

 才能がある人間にとって、自身の領域を茶化して来る存在がチャバネゴキブリめいて排除の対象になることは、その筋の人間の多くが理解していることだが、彼女には分からなかったらしい。すると、最原が入間をどかした。

 そして、普通に弾き始めたので2人共ビックリしていた。奏でられる旋律は音楽に詳しくない入間でも分かった。

 

「あ。コナン君のやつだ」

「しかも、結構上手い……」

 

 てっきり、彼はスケートボード以外興味が無いと思っていたが、意外と教養もあるらしい。こうなっては話も別で、途端に最原のことが好ましく思えた。

 

「私にも弾かせて!」

 

 1曲が終わり、スッと最原が席を譲った。餅は餅屋と言うべきか、赤松の演奏は、彼女が超高校級であることを知らしめるには十分すぎる物だった。

 極当たり前の様に、本当に自然体で、必要な力だけを注いで奏でている。極限まで無駄を削ぎ落している姿勢までもが美しい。喧しい入間でも黙ってしまう程の物だったが、曲の終わり辺り。最原がピクリと反応していた。

 

「うぉおおお! すげぇ! やるじゃねぇか赤松!」

「あ。うん……えへへ」

 

 入間はべた褒めしていたが、最原も少し渋い表情をしていた。赤松も手放しで喜んでいる雰囲気が無い。

 

「おい、どうしたんだよ。すっげぇ、上手く弾けてたじゃん」

「いや、ちょっとね。連れて来られてブランクがあるのかも」

 

 入間には何処がダメだったか全くわからないが、本人的には良くなかったらしい。赤松の表情が晴れないのを見て、彼女はバシバシと背中を叩いていた。

 

「気にすんなって! 私もオナ禁した後は、何処がスポットか忘れるけれど、やり続けりゃ思い出すからよ!」

「うん。私が聞きたいのは慰めであって、自の文字を前に付けて欲しくないかな」

 

 この品性と教養に満ちた部屋に撒き散らすにはあまりに汚い文言だったが、彼女なりの励ましだったかもしれない。暫く、3人で演奏会をしていた。

 

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