舞園「超高校級のヌケーター?」   作:ゼフィガルド

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133時間目:二章へ行く前に。

 幾ら、ロジックが整っていたとしても、やはり男性が女子トイレに入って来ることには抵抗がある。と言うことで、女性陣監視の下。王馬と最原だけが踏み入ることを許された。

 

「なんで、最原ちゃんも?」

「王馬君がなんかやらかした時用にね」

「後、最原君。あんまり男っぽくないから!」

 

 赤松がそれらしいことを言う中、先程の学級裁判で疲れている為か。白銀がデリカシーさ皆無の発言をしていた。無口な最原も渋い顔をしていた。

 

「最原ちゃんが男の娘デビューする日も遠くないかもねー」

 

 女子トイレの用具入れの奥にある壁に触れると、王馬の手が沈み込んだ。すると、壁が上方向へとスライドすると、地下へと続く階段が現れた。

 念の為に罠などが無いかも確認しながら進むと、先程の部屋に出た。モノキッドの残骸や散乱したゴミ箱は片付けられ、モニタも元の位置に戻っている。

 

「隠し部屋なのだろうけれど、特に何がある訳でもないのよね」

 

 改めて、東条が周囲を確認していた。先程の調査の段階で部屋は調べたが、特に何がある訳でもない。強いて言うなら、玉座が置かれている位だろうか。ドンと、王馬が腰を下ろした。

 

「オレ。さっきの調査で見た時から、ここに座ってみたかったんだよね。THE・総統! って感じがしない?」

 

 最原の方を見ながら言ったが、彼は苦笑いするばかりだった。

 王馬がご満悦な表情を浮かべていると、突然。部屋の一部にスポットライトが当たった。該当箇所の床が沈んだかと思えば、再びせり上がって来た。宝箱の様な物を乗せて。何かを閃いたのか、王馬が咳払いをした。

 

「学級裁判の攻略ご苦労! 褒美を遣わそう!」

「お主が用意した訳じゃないじゃろ」

 

 夢野からの指摘はそこそこに、宝箱を開ける前に東条が簡単に外箱をチェックしていた。爆発物などが入っているとは思えないが、無警戒に開けて良い物とも思えなかった。

 

「一旦、皆離れて。何があってもすぐに逃げられるように例の隠し通路の扉側に寄っていて。直ぐに逃げられるように」

 

 言われた通りに移動した後、宝箱を開けた。特に何がある訳でもなく、軽く中に入っている物を確認して、安全だと確信できたのか皆を手招きした。

 中に入っていたのは、六角クランク、通行手形、黄色いオカリナ、竜の宝玉。と彫られた赤い水晶玉だった。

 

「なにコレ。ゴミ?」

 

 春川が身も蓋も無いことを言っていた。ただ、茶柱は何かピンと来たらしく、通行手形を手に取っていた。

 

「コレ。体育館に向かうまでの通路で、はめ込む場所があった様な」

「オレも。この六角クランクを使えそうな場所知っているよ!」

 

 王馬が六角クランクを手にしてウキウキしていた。この学園は未だに調査の出来ない場所が多いが、これらが何かしらの切っ掛けになるのだろうか?

 一同が、取り出した物品の使用用途について考えている中、最原東条は宝箱の底をそっと見ていた。気になったのか、赤松も覗き込んでいた。

 

「2人共。何か、底にあるの?」

「こういうのは先にダミーを見せて、本命は仕込ませてあるというパターンも考えられるから」

 

 当たり前の様に最原と東条が2人掛かりで宝箱の底面を剝がしていた。すると、新しい底面が現れた。二重底になっていた。

 とは言え、物を仕込むスペースとしては狭すぎる場所だ。小物程度を仕込むのが精々だろう。だが、仕込まれていた物は爆弾よりも恐ろしい物だった。最原が震える手で拾い上げた。

 

「東条さん。その『黒い封筒』は何?」

 

 赤松が尋ねた。使用用途の分からない変な物よりも、態々仕込まれていた物の方が気になるに決まっている。いつの間にか全員が集まっていた。

 黒い封筒には特徴的な封蝋がされている。殆どの人間が疑問符を浮かべる中、王馬が嬉しそうにしていた。

 

「へぇ、『黒の挑戦(デュエル・ノワール)』かぁ。まぁ、何となくモノクマの言いようから察してはいたけれど、リアルに巻き込まれるなんてね」

「あ? 急にどうした? 中二病か?」

 

 入間の揶揄も気にしないで王馬はニヤニヤとしながら、最原に尋ねていた。

 

「どうする? 最原ちゃん。この場で開けてくれない?」

「待ちなさい、王馬君。貴方はその意味が分かっているの?」

 

 最原は決して封筒を渡そうとはしなかった。何故、こんなに険悪な雰囲気になっているのか分からない人間が多数を占める中、入間が神妙な面持ちで言った。

 

「とりあえずよ。話すにしても、全員の前で言った方がいいんじゃねぇか?」

 

 彼女は事前に『犯罪被害者救済委員会』の話を聞いていたので、状況のヤバさを理解して穏当に着陸する方向に話を持って行こうとしていた。彼女のフォローに感謝しつつ、東条が頷いた。

 

「そうね。一旦、皆と合流しましょう。探索は後日にして、先にコレがなんなのか。皆に説明した方がいいわね」

 

 一通り部屋を調べ終えた一同は退室して、そのまま待機していた男性陣と合流して食堂へと向かった。

 

~~

 

「つまり、俺達は報復殺人の舞台に巻き込まれたって訳か?」

 

 東条の説明を聞いた後、百田が自分達の置かれている状況を端的に述べた。星が少し考え込むような仕草を見せていたが、キーボが言った。

 

「でも、星君だけが対象だとしたら、巻き込まれた人が多すぎやしませんか?」

「あーあ。言っちゃった」

 

 王馬が落ち込む素振りを見せていたが、口角が僅かに吊り上がっていた。キーボの発言に東条や天海なども眉をしかめていた。

 

「あの、僕。何か失言を?」

「あのね。今のキーボ君の発言だとこうも聞こえるんだよ。『もうちょっと恨みを買っている奴がいるんじゃない?』って」

「なんで追撃を入れるんっすか?」

 

 白銀の追い打ちに天海がやんわりと非難していた。そんな彼女をフォローするべく、アンジーが両手を組んで言った。

 

「主は言いました。つむぎは余計なことを言う天才だと」

「そんな才能要らないよ!?」

 

 仲良く赤信号に突っ込んでくれた同士がいたおかげで、キーボの罪悪感も多少は薄れていた。そんな中、赤松が手を挙げていた。

 

「その報復。って言うのは、正当な理由が無いと駄目なんだよね? 例えば、私がコンクールで受賞したから、自分は落ちた。みたいな人の報復には手を貸したりとかはしないよね?」

 

 最原が頷いていた。人は何処で恨みを買うか分からない。本人も意識していない物から、逆恨みと言える物まで様々だ。

 

「おぅ! 悪いことした奴がいるなら手ェ挙げろ!! 俺が何とかしやるからよ!」

 

 百田が宣言していたが、手を挙げたのは星位だった。一体、誰が手を挙げるというのか。

 

「何とかするって。お主、どうするつもりだったんじゃ?」

「ソイツと一緒に行って、モノクマに謝罪するんだよ。殺して終わりだなんてよ。加害者も被害者も救われねーだろ」

 

 先程の呼びかけ事態はアホっぽく聞こえたが、やろうとしていた行為自体はちゃんと考えられていた。

 

「うん。ゴン太もそう思うよ。だって、復讐で誰かを殺したら、今度はその人が誰かから恨まれちゃうだろうし」

 

 以前に話した時と同じ反応をしていたが、やはり彼は心優しい。だが、異議を唱える者もいた。王馬だ。

 

「2人共感動的な意見だね。オレ、泣いちゃいそう!」

「で。実際の所はどうなんっすか?」

 

 彼と性質の近しいであろう天海は、王馬の言葉が本心の物ではないこと位は直ぐに分かった。これは前振りだと。

 

「普通に考えてさ。謝ったり、復讐の連鎖を考えるような奴が殺人なんてする訳ないじゃん。それだけの覚悟の奴が言葉で止まるとは思えないけどね」

 

 感情は理屈を超える。犯罪であることを顧みずに行動する人間が、どれ程の思いで動いているか、自分達には想像もつかない。

 

「王馬の言う通りだ。復讐をしようとする奴は後のことなんか何も考えちゃいない。こうして、報復されようとしていてもな」

 

 ここに集まった者達の中で唯一『復讐』を成し遂げた星が言うのだから、重い言葉だった。

 

「で。そんな奴が起こそうとしている事件の手掛かりが、その黒の封筒に入っているんだよね。どうして、最原ちゃんは見せてくれないのかな?」

 

 王馬に問い詰められ、皆の視線が最原に注がれる。が、東条が遮った。

 

「黒の挑戦は探偵に届いた封筒が開封された時点で発生する。現状でも事件らしき物は起きているけれど、恐らく。封を破った時から、動きが本格化するハズよ」

「本格化。って、どういうことだよ?」

 

 こんな大掛かりな学園を用意している時点で本格的では無いのか。と、入間が尋ねると、王馬が答えた。

 

「黒の挑戦はね。幾らかルールがあるんだ。その一つにね、封を開けたら168時間までに対象を抹殺しないといけないっていうルールがあるんだよ。つまり、最原ちゃんが封を開けて7日間生存出来たら、オレ達の勝ちってことになるの。……これが本当に黒の挑戦ならね」

 

 7日間生き残る。そんな明確な目的が出来れば、少なくとも一種の指標にはなる。希望を見出すことが出来る。だが、同時に事件や妨害がもっと本格的になると言うことでもある。

 

「最原君。開けてみようよ。このままでも、モノクマの妨害は続くんだし」

 

 赤松が言った。実際、この封筒が見つかる前から妨害や脅しは行われている。ならば、こちらから打って出ようという算段だ。

 このままでいても脱出の兆しは薄いと考えてのことだろう。いや、皆が何かしらの指標を欲しがっていたと言うこともあったのだろう。誰からも否定の声が上がらなかったので、最原は意を決して封を切った。東条が入っていた手紙の内容を読み上げた。

 

「探偵に告ぐ。黒の叫び声を聞け。場所は才囚学園。凶器は……駄目ね。他の文章が殆ど読めない」

 

 場所は書かれていたが、他の面は塗り潰されていて解読が不可能だった。唯一他に読める所は、最後の文章だけだった。

 

「以上のコストから、次の探偵を召喚する。『最原終一』」

 

 最原は一度目を閉じて、深く息を吐き出して、自身を落ち着けた後、面を上げた。先の学級裁判よりはるかに強い緊張感に包まれていた。

 

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