翌朝。例の隠し部屋で見つけた用途不明の物品が何処で使えるかというのを確認する為に、幾つかのグループを作っていた。
メンバーは、先日の才囚学園探索隊と同じであるが、校舎外チームには入間とキーボも加わっていた。
「はい。皆、元気出して行こう! 赤松ちゃん! 元気ないよ!」
昨日は学級裁判やら黒の封筒やら、色々とあったのに王馬は元気だった。そんな彼に呼応する様にして、入間も声を上げていた。
「オレ様は朝からビンビンだぜぇ!! 心のマラがよぉ!!」
「最原君、赤松さん。なんで、入間さんは自分から魅力をナーフしていくんですか?」
キーボの疑問は最もである。黙っていれば顔良し、スタイル良しの抜群の素材なのだ。事実、最原の心配をしていた時の彼女はとても魅力的だったが、調子を取り戻したらコレである。
最原は微笑んでいた。彼女は心配に顔を曇らせているより、こっちの方が良いとでも、思っている様だった。一方、赤松は難しい顔を続けていた。
「赤松さん?」
「あ、ゴメン。考え事していた」
彼女は朝食を取っていた時から、ずっと難しい顔をしていた。
キーボは考えた。余計なことを尋ねると顰蹙を買うかもしれないので、言っても問題無さそう。と、思う事柄を弾き出していた。
「やはり、昨日の黒い封筒の件ですか?」
「違うよ、キーボ。楓はね。何を悩んでいるか聞いて欲しいんだよー。で、何があったの?」
アンジーがぴたりと赤松の要望を救い上げていた。キーボも努力はしたのだが、慎重になり過ぎるあまり見当違いのことをしてしまう。なんてことはよくある。
「夢を見たんだ。私が最原君や入間さん達を追いかけているって言う、内容なんだけれど」
最原が一瞬だけビクッとしたが、直ぐに元に戻った。夢の内容自体はさほど珍しい物の様には思えない。
「追いかける夢ってのはねー。目標に向かって努力しようって気持ちの表れなんだよー!」
「なんだァ? つまり、赤松は私に近付きたいって訳か? ヒャ~ハハッハ! オレ様は容姿も才能も揃ったパーフェクトヒューマンだからな!」
残念ながら品性は付属していなかった。とは言え、これだけパワフルで自信に満ちた態度は、なるほど。憧れる対象としては十分だ。
「楓、大丈夫ー? 憧れる対象間違えていない?」
「間違っている訳ねーだろ!! なぁ、最原!!」
入間が同意を求めるべく、最原の背中をバシバシ叩いていた。ここ数日で、2人の距離が滅茶苦茶近くなっていることが若干引っ掛かっていた。
「よぅし! 皆、元気でたね! じゃあ、ここ開けるよ!!」
王馬達は校舎外の一角に聳え立つ、城門の様な造りをした場所に辿り着いていた。見たこともない装置から飛び出した金属棒が閂の様になっていた。
「自転車の鍵みたいなですね。鍵穴は」
「コレだろ」
キーボが装置を観察していたが、入間の発明家としての直感が突起を指差していた。王馬も理解していたらしく、六角クランクを取り出していた。
はめ込んで回すと、閂が取り除かれて行く。開かれた城門の先には夜景が広がっていた。それと反する様にケバケバしい看板が掲げられた建物が二つ。
「『CASINO』は分かるんですが」
読んで字の如くだろう。学園にはまるで相応しくない施設だが、世には超高校級のギャンブラーもいそうだから、必要な物ではあるのだろう。問題はもう一つの方である。
「『HOTEL KUMANAMI』って……」
赤松が顔を真っ赤にしていた。カジノに隣接する建物となれば、普通のホテルだとは思えなかった。王馬がパンパンと手を叩いた。すると、ぴょ~んとモノファニーが現れた。
「あら、カジノエリアに来たのね。メダルの交換?」
「それは後でやるんだけど。あっちのホテルってどういう施設?」
ピシッとモノファニーが固まった。解説役も説明を躊躇う様な施設を置いておくなよと、皆が思っているとモノファニーも手を叩いた。今度はモノダムが現れた。
「ナニカ 用?」
「モノダム。あのホテルの説明をしてあげて!」
「アレハ ラブアパートダヨ。二人一組デ 入ル 施設デ 相手ガ 思ウ 愛ノ劇場ガ 繰リ広ゲラレルヨ デモ 夢落チ ダカラ 安心 シテネ」
「た、例えばどんな?」
見た目通り、かなり際どい施設っぽいが、アンジーは特に怯むことも無く尋ねていた。すると、モノダムが1本の鍵を取り出していた。
「ジャア オイラト モノファニー ノ 劇場 ヲ 見セテ 上ゲル ネ」
「え!!? 駄目よ! 私にはモノタロウが……」
「説明 ニ 必要ナ コトダヨ。ハイ、現場モニタリング用 ノ タブレット」
この無機質モノクマは自分達に一体何を見せつけようとしているのだろうか。
モノダムとモノファニーの2体がラブアパートに入って行った。回転するベッドやピンクな道具の一式。普通にラブホみたいな内装だった。
「モノファニー 考エテ クレタ カイ?」
「駄目よ。私達、兄妹みたいな物じゃない。考え直して!」
マスコットキャラクターの分際で気持ち悪い恋愛劇をされるんで、タブレットを見ている者達の顔がゲンナリする中、キーボだけが見入っていた。
「どうなるんでしょうか?」
「どうにもならねぇよ」
入間が真顔で叩き落していた。なおも、モノダムはモノファニーへと迫っていた。申し訳程度に彼女が装着していた下着が引っぺがされていた。当たり前だが、マスコットキャラクターの乳首が詳細に造形されている訳も無かった。
「皆ガ イジメテ 来ル 中。君 ダケハ 優シカッタ。ロボット ノ オイラヲ 人間ニ シテクレタ ノハ 君 ナンダ」
「あぁ、駄目よ! 私にはモノタロウが……」
「君 ダッテ 兄弟 ニ 懸想 シテイル ジャナイカ 淫乱 メ!! オイラ ノ メガ粒子砲 ヲ ブチ込ンデ ヤル!!」
シャっと2人がいたベッドのカーテンが締まって、シルエットだけで何が分かるかという映像が垂れ流されていた。最原がガシっと握りしめると、タブレットは空中へとぶっ飛び、爆散した。
「皆でカジノの方に行こうか!」
「お、そうだな」
王馬の提案に入間が棒読みで返事していた。全員、何も見なかったことにしてカジノの方へと向かった。何が悲しくてマスコットの近親獣姦を見なければいけないのか。
記憶にこびり付いたポッカキットめいたグロ動画を払拭するべく、足を運んだカジノは、これまたスタンダードなカジノだった。彼らを出迎えたのは、モノスケだった。
「おぅ、よう来たな。ここはカジノや。この学園、何ものぅて暇やろからな。ワシらが作ったんやで!!」
「ねぇ、キミの兄弟が近親姦していたんだけれど」
「モノクマメダルはカジノコインに出来るで! そんで、カジノコインは景品と交換が可能や!!」
モノスケは声を張り上げて、王馬の報告を掻き消していた。聞きたくもないらしい。コレには赤松を始め、皆が彼へと視線を投げていた。デスゲームに放り込んで来るようなクソヤローでも、気遣うレベルの話だと。
「ただ、最原の兄ちゃんは出禁や。悪いな、皆にゲームを楽しんで貰う為や。堪忍な」
本人もちょっぴり興味があったのか、むくれ面をしていた。せめてもの慰みと言うことで、景品コーナーを見ていた。
「おぉおおおお!! この、オヒゲ最高に活かしていますね!!」
キーボは景品の中に在るロボット用の白髭を見て目を輝かせていた。
装着することで、自らも黒歴史になりそうな気はするが、並んでいる品は良さげな物がズラリと並んでいた。中にはモノダムが使っていた『愛の鍵』もあった。
「あんなのを見せられて、アレを欲しいって思う人はいるのかな……」
赤松がやや引いていた。自分のことではないが、身内の不祥事を咎められた、モノスケはペコペコ頭を下げていた。
「すいまへん、アレでも身内なんです。黙っといて貰いますやろか。コレ、上げるさかい」
ざっと彼が差し出したのは遊戯と交換用に使うであろうカジノコインだった。1人当たり、1000枚位はありそうな量だった。
「おぉー。神っているねー!」
「なんでしょうか。強烈な罪悪感に襲われているんですが」
アンジーは無邪気に喜んでいたが、キーボ、赤松、最原の3人は申し訳なさそうにしていた。そんなつもりじゃなかったんだけれど。と。
「探索終わったら、後で遊ぼ。後、ちょっと聞いておきたいことがあるんだけれど。コレ、どう使うの?」
王馬は懐から黄色いオカリナを取り出していた。他の道具達と違って、これだけは明らかに使用用途が分からないからだ。
「あぁ。ちょう、コレは分かり辛いわな。このオカリナはやな。頑固に絡まったツタとかを枯らせる旋律が吹けるんや。ぶっちゃけ言うと、校舎のすぐ隣にあるプールが使えるようなるんやけどな」
最近のニーズに合わせた答え丸教えタイプのアドバイスだった。このカジノで遊んでいきたい欲求を堪えつつ、王馬達はプールの方へと向かった。
そして、モノスケは彼らを見送った後、ラブアパート前に待機して、出て来たモノダムを思いっきりぶん殴っていた。
なのに、なんて物を書いているんですかね。