舞園「超高校級のヌケーター?」   作:ゼフィガルド

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135時間目:ケイカク遂行中

「それで。モノスケの言う通り、黄色いオカリナを吹いたらプールの別館が使えるようになったのね」

 

 昼食がてら、食堂に集まったメンバーは新しく開かれた場所の報告会をしていた。最初に名乗りを上げた校舎外探索チームの報告を終えて、次は校舎組の地下担当グループの発表だった。

 

「こっちじゃ、新しく開けた場所は見つからなかったからよ。代りに、例の部屋を調べていたんだ。なんか新しいモンが無いかって」

「今まで、立ち寄った場所にも変化があるかもしれないと思って図書室の蔵書やAVルームのビデオ棚を調べたら、若干種類が増えていた」

「と言っても有益な物かどうかは分からないんっすけど」

 

 百田、春川、天海の報告を聞くに、地下の施設には際立った変化は無かったらしい。続いては1階の変化だが、ピョンと夢野が跳ねていた。

 

「うむ。茶柱が言う通り、体育館へと続く道にある場所に通行手形をハメると壁が崩れたのじゃ。その先には、ウチの研究教室があった」

「本当、夢野さん凄かったんだよ! 現代のオズの魔法使いだよ!!」

「見て下さいよ。私の夢野さんを」

 

 白銀が興奮気味に語っていた。茶柱に至っては後方師匠面をしていたが、知り合って数日でここまで馴れ馴れしくできるのは才能と言っても良かった。

 

「他にも気になる場所はあったけれど、途中で星君達に呼ばれて2階の調査に協力することになったの。というのも」

「あの龍の彫像の後ろにフロアが広がっていてな。3階まで開いていた」

 

 どうやら東条達のグループは途中で星達の2階調査組と合流したらしい。ウキウキしているゴン太を見れば、何があったかは想像に容易い。

 

「僕の研究教室もあったんだ! 沢山の虫さん達の卵や標本もあって、素晴らしい場所だったよ!」

「俺や東条の研究教室もあった。もう一つの部屋のプレートには『春川』と書かれていたぞ」

 

 自分の才能を磨ける場所を見つけることは、超高校級の才能の持ち主達にとっては喜ばしいことのハズだが、星と春川の表情は浮かない物だった。

 

「なんだよ、春川。嬉しくないのか?」

「私の才能、相手がいてこそ。だから」

 

 彼女の才能は『超高校級の保育士』である。彼女の才能は対象を必要とする為、研究教室を与えられた所で活かせる物ではないのだろう。

 

「しょうがねぇなぁ。オレ様が一肌脱いでスモック着てやって」

 

 瞬間。春川から凍り付く様な、心臓をぶち抜く様な、射殺さんとする様な視線を向けられたので、入間は最原の隣に避難していた。

 

「なんで、入間さんは学ばないの?」

「赤松さん。その辺にしてあげて下さい」

 

 ついでに赤松からもぶん殴られかけていたので、キーボが止めてくれていた。

 初日に碌でもないことをされたのに、庇い立てられる彼は間違いなく人間的に成長していた。

 

「これも『黒の挑戦(デュエル・ノワール)』の一環なんっすかね?」

 

 敢えて、自分達が調べられる場所を広げたのは、今後の布石か。あるいは事件を起こす為の場所を提供しているのかもしれないので、手放しで喜ぶわけにもいかなかった。天海が抱いた不安を煽る様にして、モノクマが現れた。

 

「勿論! それもあります! でも、これはご褒美でもあるのです! オマエラが最初の裁判を乗り越えたからね!」

「ねぇ、モノクマ。お前の息子……」

「モノスケに命じて気が済むまでボコしたから、今後。その話題は無しね」

 

 モノスケから口止めされていたのに、速攻でバラそうとしている辺り王馬らしかった。気を取り直して、続きを話した。

 

「ボクとしては想定外も良い所だったけれど、アレでも一応事件は事件だったからね。学級裁判のチュートリアル位にはなったでしょ? じゃあ、次の動機は」

「ちょっと待ちなさいよ。私達の場所はどうなったの?」

 

 モノクマの話を止めたのは春川だった。あの後、自分達が大事にしている場所がどうなったかというのは知らされていない。

 

「知らないよ。何も手を出していないんだから。仮にここで、ボクが写真や動画を提示しても信じる?」

 

 映像や写真なんて幾らでも加工できるし、LIVE映像さえ疑わしい。自分達の心臓は、この憎たらしいマスコットの掌の上で転がされているのだ。唯一、余裕そうにしているのは星位か。

 

「俺のはもう吹っ飛ばされているからどうでもいいけれどな」

「星君はハードボイルドですねぇ。でも、他の皆はまだまだ揺れ動く年頃。という訳で、じゃーん!! 皆さんに、動機を用意しました!!」

 

 モノクマが何処からともなく全員分のタブレットを用意していた。ご丁寧に名前まで貼り付けられているが、最原の物だけはない。

 

「あ、なんで最原君の分が無いんだ? って、思ったでしょ? 彼は電子機器と相性が悪いですからね。だから、ここで皆に見て貰うことにしました。彼への理解を促すこともまた、先生の役目ですからね!」

 

 何人かが抗議をしようとした所で、最原は手で制していた。食堂に突如として降りて来たスクリーンに映像が投射された。

 

『終一。元気にしているか? 兄さんの所で上手くやっているか?』

『ちゃんとご飯は食べている? また、無茶なことをしていないでしょうね?』

 

 小動物のような最原からは想像できない位にダンディな男性と画面映えのする女性だった。2人共、息子のことを本気で心配しているのか、最原は目頭を押さえていた。

 

『例の2人に憧れているかもしれないがな。お前は違うんだ。本当を言うと、探偵なんて物もやらずに平穏に生きて欲しいんだが……無理なんだろうな』

『また、あんな思いをするのはゴメンよ。嫌になったら、探偵なんてやめても良い、逃げても良いから。元気でいてね』

 

 両親からの愛情が痛い程に伝わって来た。こんな善良な親を人質にしようとしているのだから、全員がモノクマに対して怒りを覚えていた。映像は続く。

 

『そうだ。最近な、父さんたち。新作の映画に着手しているんだ。母さんを主演にしてな! 見てくれ! まだまだ、制服も行けるだろ!』

 

 先程の感動から一変。最原は絶句していた。何が悲しくて、同級生に母親のコスプレ姿をお披露目しなきゃいならんのか。

 だが、驚くべきは彼女の美貌。経産婦のハズなのに学生とまるで遜色がない。舞台俳優とはここまで凄まじい物か。

 

『お母さん、今度は主演女優をするの。そう、イルブリードの最新作のね!』

 

 あまりにショッキングな事実に耐え切れず、最原は白目を剝いた。慌てて入間と赤松が彼のことを支えていた。

 

「うぉおおおおおおお!! すげぇえええええええ! 最原ちゃんのお母さんがイルブリード最新作で女学生コスして主演するの!? 見たい!」

「ボクも素晴らしいと思うよ! 最原君の両親は素敵ですね!」

 

 王馬とモノクマが両手を打ち鳴らしてキャッキャッ騒いでいた。そして、赤松は何かを察した。

 

「あ、そっか。それで最原君、イルブリードを見るのを嫌そうにしていたんだ」

「恐怖云々前に、身内が出ているエログロ映画を見るのは嫌に決まっているよネ」

「素敵なご両親なのに……」

 

 真宮寺も頷き、白銀が明後日の方向に意見を飛ばしている中、最原夫妻の撮影現場に大量のモノクマフェイスをした人間が雪崩れ込んで来た。

 

『うぉおおおおおお! このイルブリードは解釈違いだぁあああああ! 予定調和の希望なんぞ入れてんじゃねぇえええええええ!!』

『くっ! 見つかったか! じゃあな! 終一! お前は、お前の信じる道を行け! 無茶をしない程度に!』

 

 ブツっと映像が強制的に途切れた。感動すればいいのか、怒りを覚えれば良いのか。皆が感情の迷子になる中、最原だけは気絶していた。

 

「フフフフ。最原君の優しいご両親は、どうなってしまうのでしょうか?」

「お前。あの映像から、俺達を脅す空気を作るのは無理があるぞ」

 

 モノクマが嗜虐的な笑みを浮かべていたが、百田は抗議よりも先に突っ込みをしていた。とりあえず、モノクマは最原以外の全員にタブレットを配った。

 中には碌でもない映像が入っているのだろうが、こんな場所に放り込まれた手前。やはり、大切な人の声を聴きたいという思いに駆られるのも無理は無く、動機になり得るハズだというのに。全員が受け取っていた。

 

「期限は明日まで! それまでに事件が起きないと、タブレットに映った人達はどうなってしまうでしょうか!! それでは!!」

 

 耳障りな笑いを浮かべて、モノクマは姿を消した。最原が身を挺してくれたおかげで麻痺していた恐怖心は、ジンワリと正常に戻りつつあった。

 

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