舞園「超高校級のヌケーター?」   作:ゼフィガルド

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 ふ、2日間サボって最終防衛学園していました。ぼんやりとダンロンとのつながりを感じるよね。


136時間目:エラー修復

「1回目の時もそうだったんっすけど。モノクマの言い方がどうにも気になるんっすよね」

 

 モノクマが去った直ぐ後のことである。天海が皆に聞こえる様に言った。直ぐに東条が聞き返していた。

 

「天海君。それはやはり『どうなってしまうのか』という言い方のこと?」

「そうっす。なんで、直接的に始末するって言う風に言わないんっすかね?

 

 これは1回目の帰属先を狙った時の言い方もそうだったし、先程は誤魔化されたが、結局自分達の帰るべき場所が無事であるかも分からない。

 

「オレ達の危機感を煽る為。って言いたいけれど、モノクマはGMとして公平であることは意識してあるから、言い逃れの余地を作っている感はあるよね」

「言い逃れって。何を言い逃れるんだよ?」

 

 王馬の言う『余地』がイマイチ分からず入間が問い質した所、キーボが何かを思いついていた。

 

「そうか。デスロードと一緒ですよ! あの迷路は学園からの出口ではありました。けれど、ボク達が外の世界に戻る為の出口ではありませんでした」

 

 この学園から出られる。という淡い期待をあざ笑うかのように、才囚学園に外へと続く道は無かった。今回も同じ様なパターンであるかもしれない。

 それが何を意味するか? と言うことを考えた際、察しの良い人間はとある可能性に気付いた。瞬間、最原が立ち上がり、星の肩を叩いた。いつの間にか骨折していた腕も直っていたらしく、スケボーを掲げている。

 

「ここで考えこんでも碌なことにならねぇ。俺は最原と一緒に滑って来る。春川もちょっとついて来てくれ」

「分かった」

 

 この、息が詰まるような食堂から3人は抜け出して表へと行った。彼らを見送りながら、赤松は渋い顔をしていた。そんな彼女に王馬が耳打ちをしていた。

 

「最原ちゃん人気者だからねぇ。積極性見せないと、赤松ちゃん。どんどん後回しにされちゃうかもよ?」

「え? いや、別に私は最原君を拘束するつもりはないし」

 

 そんなに意識をしているつもりも無いと言ったら、逆張りが過ぎるのではないかと言葉を呑み込んだ。隣では入間がウキウキしている。

 

「なぁなぁ、赤松。さっきのカジノ行こうぜ。景品の中にメッチャ良いブーツがあったんだよ。アレ、取れる前でスロット打とうぜ!」

「おぉー。大切な人間を放り捨てて、スロットに興じようとする現代の縮図~」

 

 カスみたいなことを言っている彼女をアンジーが煽っていた。だが、赤松の見方は違っていた。

 

「そっか、入間さん。恐怖を紛らわそうとして……。分かった。私も付き合うよ。ハイエンドヘッドホンが取れるまで一緒に頑張ろうね!」

「二人だけにはいかせない! オレも一緒に行くよ!」

 

 こうしてコロシアイの恐怖も大切な人の存在も、一旦横に置いといて赤松達はカジノエリアへと向かった。他の面々も姿を消していく中、食堂には東条が食器を片付ける音だけが響いていた。

 

「(恐らく、何人かは勘付いていた。どうしてモノクマが『今から実行する』と言わなかったのか。恐らくは……)」

 

 タブレットの中にはアーカイブの様な形で、集まった生徒達の大切な場所が映し出されている。その内、星の物だけは爆破されてしまっていたが。

 卓上に置かれているタブレットの電源を付ければ、件の映像は流れるのだろう。それこそ、自分達の不安を煽る様な。コロシアイを促す様な物が。

 故に、適切な対処を促す時間を与えない為に、これだけ期日を短く設定しているのだろう。

 

「(大丈夫。皆が早まってしまう危険性を知る為に、先に私が見ないと)」

 

 この状況においても皆を牽引する程の胆力と冷静さを持っている彼女をしても、大切な人がどうなっているかは気にせずにいられなかった。

 それこそ、超高校級のメイドである彼女が食器洗いを中断する程だったのだから、動揺が見て取れる。震える手を落ち着かせて、電源を入れようとした所で、ドタドタと茶柱と夢野が姿を見せた。

 

「すいませーん! 東条さん! 夢野さんに皿洗いを手伝わせたいのですが! 構いませんかね!!」

「嫌じゃ!! 余は皿など洗いとぅない!!」

「ど、どうしたの?」

 

 タブレットを再生する手を止め、突如として現れた乱入者への対応を優先することにした。すると、茶柱は滾々と語り始めた。

 

「夢野さんがですね『これより修行に入る』と言って、購買部で大量の菓子と飲み物を抱え込んでいたんです。このままでは小動物の様に愛らしい彼女が『夢野(48):一人じゃ生きていけないよぉおおおお!』になる所だったので」

「お主は、ウチが菓子を持ち込む姿だけで何処まで幻視しとるんじゃ!!」

 

 間食をすること自体は止めるつもりもないが、何が起きるかも分からない状況下においては、出来るだけ日常を保ちたいと思う茶柱の気持ちも分からなくはない。何より、自分の才能で人をダメダメにすることは東条としても望ましくない。

 

「そうね。じゃあ、手伝って貰えるかしら?」

「はい! じゃあ、夢野さん! 私と一緒に!」

 

 渋々と言った具合で夢野は渋々手伝うことになった。リクエストだけは聞いて貰ったのか、食器洗いではなくテーブルを拭いていた。一方、茶柱は東条と一緒に食器洗いをしていたのだが、舌を巻いていた。

 

「何時もこれだけの量を?」

「えぇ。メイドの基礎中の基礎よ」

 

 涼しい顔で言っているが16人分の食器だけではなく、調理器具からシンクの洗浄も含めて、結構な作業量になる。これに加えて、献立なども立てているのだから、茶柱としては感心する外無かった。

 

「東条さん。凄いです! 全く、どうして誰も手伝わないんでしょうかね!」

「台所は調理から片付けまで含めて私の領分だから。きっと、同じ超高校級の才能同士、手を出すべきでない領分と言うのが分かるのでしょう」

 

 先程、入間が余計なことをしてブチギレられていたように。才能を持つ者にはテリトリーが存在している。故に、茶柱は気まずそうにしていた。

 

「あ、それじゃあ。転子はご迷惑を?」

「いいえ。貴方が夢野さんの矯正に託けて、手伝いに来てくれたこと位は分かるわ。ありがとう」

 

 普段は怜悧な彼女が柔らかく微笑んだ。茶柱は気恥ずかしさから何とも言えない表情をしていたが、直ぐに落ち着きを取り戻して穏やかな表情を浮かべていた。

 

「そう言って貰えたら幸いです。なんだか、東条さん。色々な物を背負い込み過ぎている様に思えて。そりゃあ、転子は最原さんみたいな不思議な能力は持っていないから、ちょっと頼りないかもしれませんが」

 

 普段は入間レベルの発言をしている茶柱だが、根っこにはちゃんと優しさがあるらしい。

 

「でも。そう言う心遣いは貴女だけが持っている素敵な物よ」

「うぉ。不肖、この茶柱転子。ドキッとしてしまいました。こんなドキドキ夢野さん以来ですよ!」

 

 随分と最近の話だと言うことも一旦置いといて、その後も日常的な話に興じつつ後片付けをしていた。概ね、東条が茶柱の愚痴を聞くだけだったが。

 

「白銀さんと言い、入間さんと言い。私達の品位を落とす様な真似は本当に止めて欲しいんですよね。転子『女性の敵は女性』と言うのは身内争いを促す、卑劣な流言だと思っていましたが、ちょっとだけ理解できそうなのが怖いんです」

「芸術肌の人間の感性は特殊だから……」

「ウチは知っておるぞ。職業適性検査で芸術肌って項目は『社会不適合者』を言い換えているだけじゃと」

 

 後片付けも終わって、一息ついた所で。東条は2人にスコーンを振舞っていた。今朝方、渦巻いていたモノクマが振り撒いて行った粘着質な悪意もまとめて片付けられたのではないかと思う位に、和やかな時間が流れていた。

 

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