舞園「超高校級のヌケーター?」   作:ゼフィガルド

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139時間目:手ほどき to ルール

 カジノエリア景品交換所。最原はむくれていた。何故なら、彼は出禁となっているからだ。さり気なく紛れ込めば、モノスケの目を誤魔化せるかと思ったが、直ぐにつまみ出された。

 なので、ショーウィンドウに飾られているトランペットを見る様にして、交換所の景品を眺めていた。

 

「なんや。自分、景品欲しいんか?」

 

 いつの間にか、背後にはモノスケが居た。最原は頷いていた。

 カジノコインが稼げないんだから、自分だけ景品がお預けなのは酷くないか。自分にだって欲しい物があるのに。と、彼が指差した先にはスタイリッシュなスケートボードが展示されていた。

 

「すまんの。オマエだけ特別って言うのを認める訳にはいかんのや。欲しかったら、同級生に頭下げるこっちゃな」

 

 ちょうど、遊び終えたメンバーがゾロゾロと景品交換所へと表れていた。赤松はこちらを見つけるや手を振っていた。

 

「最原君、待っていてくれたの?」

 

 最原の視線は彼女が手にしているドル箱へと向けられていた。割と順調に稼いでいたらしく、結構積み重ねていた。

 

「終一が野球グラブを欲しがっている少年めいているねー」

「最原君は出禁にされているから、仕方ないと思いますよ」

 

 アンジーの手にもまぁまぁドル箱が重ねられていた。一方、キーボは手ブラだった。スッてしまったのだろう。ギャンブルには敗者と言う存在も必要なのだ。

 

「欲しいのは一目瞭然だけれどさ」

 

 春川はあまり興味が無かったのか、そもそも遊んですらいなかった。保育士がギャンブルというのもまた具合が悪かったのだろう。

 さて、ここからが本命である。ドル箱をどんと積み上げて姿を現わしたのは、星だった。高揚感も無ければ、喜悦も無い。自然体だった。

 

「竜馬はよくかせいだね~」

「こういう所だけツイているんだ。ドックタグを貰おうか」

 

 景品交換所に設置されている投入口に指定枚数のコインを入れると、ガランと該当の賞品が排出された。赤松もドル箱の中身を入れて、ハイエンドヘッドホンを入手していた。最原はジィ~~っと眺めていた。

 

「意外と最原君って子供っぽい所があるんですね」

 

 ボソっとキーボが呟いていた。コロシアイ学園生活においては東条や天海等と一緒に事態の対処に当たることも多いが、プライベートは割と年相応の少年なのかもしれない。

 そして、最後に現れたのは王馬だ。どっさりと積み上がったドル箱を運んでいるのは、素寒貧になった入間だ。

 

「な、なぁ。王馬サン。景品交換所まで運べば、私にも分け前をくれるんだよな?」

「ちゃっちゃと運んでねー」

 

 現代の縮図が展開されていた。高額な景品も何もかも選び放題で、王馬は片っ端から景品を交換していた。なお、投入口にコインを入れる労働は入間が喜んでやっていた。

 

「スポンサーの為にヘコヘコしているところまで含めて、物凄く発明家って感じですね。世知辛いですね」

「ロボットに言われたら、増々悲しくなるよ」

 

 労働を代替する為の存在であるロボットに労働の辛さを語られているのは何とも皮肉が聞いていた。春川も口を挟む程度には芸術的な光景だった。

 

「手帳のスキンを買って……。うわ! エレキテンペストもあるし! 他には、愛の鍵も買っちゃおうかな~」

 

 これが格差だと言わんばかりに、王馬はガッツリ買物をしていた。

 その度に入間がコインを投入口に運ぶ様子は、井戸から水をくみ上げる奴隷を彷彿とさせた。

 

「なぁ、王馬。手伝ったら、オレ様にも景品くれるって言っていたけれど。まだなのぉ……?」

「ごめんごめん。これが最後の買い物になるから」

 

 散々、娯楽用品や景品を買った後、王馬は1冊の本を交換していた。

 その場で、流し読みをして中身を確認すると、彼は続けて15冊分。同じ景品を交換した。そして、入間に差し出した。

 

「はい。コレ上げるね。最原ちゃん達にも上げるよ」

 

 王馬はその場にいた全員に書籍を配っていた。真っ黒な表紙で中身は分からないが、どうにも不穏な空気を漂わせていた。

 

「なにこれ?」

 

 入間としては、もっと洒落た物を期待していたのに、渡されたのは訳の分からん本1冊。ともなれば、文句も言いたくなった。

 

「今のオレ達に必要な物だよ。モノスケ、別に配布しちゃいけない。とかのルールはないよね?」

「……まぁ、稼いだコインをどう使うかはソイツ次第や。本当はあんまりやって欲しぅないけど」

 

 念のために取った確認に渋々と頷いていた。早速、最原は流し読みしていたが、眉間に深い皺を刻んでいた。赤松も本を開こうとしたが、猛烈に嫌な予感がした。なので、捲る前に王馬に尋ねた。

 

「この本は一体?」

「『クロの書』。ザックリ言うと、滅茶苦茶エグイ殺人事件とか表沙汰にならない事件とかをまとめた実録書なんだけれどさ」

「『ジェノサイダー翔』や『キラキラちゃん』とか。一世を風靡した事件の詳細も書かれていますね」

 

 キーボも軽く流し読みをしていた。ここら辺は大事件になった連続殺人鬼の話だが、ページを捲るごとに隠匿された事件などの話へと移って行く。真っ先に拒否反応を示したのは星だった。

 

「王馬。俺達の不安でも煽るつもりか?」

「星ちゃんが嫌がるのは分かるけれどね。オレ達に必要な情報が載っているんだよ。ほら、ここのページ」

 

 王馬が開いたページには特集が組まれていた。正に、ずばりと言った具合で『犯罪被害者救済委員会』と『黒の挑戦(デュエル・ノワール)』についてだった。

 

「こんなの。カジノの景品に置いていて良いの?」

「オマエらが巻き込まれている事態について調査することに制限掛けたりはせぇへんからな。それに、景品に置いとったんを目ざとく発見したのはソイツの功績や。好きに調べぇや」

 

 赤松も困惑していたが、モノスケは特に止める様子も無かった。ただ、内容が無いようなので自分達だけが知るのもどうかと思い、一旦。彼らは校舎の方に戻ることにした。

 

~~

 

「ルールは以前に王馬君が言った物に加えて、もう一つ。召喚された探偵を殺してはならない。ある意味、当然だけど」

 

 東条がクロの書をサラリと読み上げて、要点をまとめていた。そして、天海が感想を漏らした。

 

「探偵と勝負する。って言うのがルールなんっすから、勝負相手を殺して推理勝負に勝つ。なんて真似は認められる訳が無いっす」

「後、思ったんだけれどよ。黒の挑戦って言うのは、トリックやら何やらを用意して復讐相手を殺すってゲームなんだよな? コロシアイ学園生活って言う舞台と相性が悪すぎねぇか?」

 

 百田の言うことは最もだ。動機を見せて脅かし、誰が誰を殺すか分からない状況を作り出す。と言うのは特定の人間を狙う殺人ゲームと相性が良くない。下手をすれば、実行犯が先に殺される可能性だってある。

 

「いや、モノクマが言う様に僕達全員を狙っているのだとしたら、コロシアイ学園生活で問題ないんだヨ。向こうは起きるかも分からないコロシアイを期待するしか無くて、僕達は7日間生き延びれば良い。どっちが有利かなんて、言わずとも分かるよネ?」

 

 真宮寺が余裕綽々と言った様子で言った。あくまで相手は動機を提示して促すだけしか出来ないのなら、有利なのは自分達だと確信している様だった。

 

「転子。少し気になったことがあるんですが。黒の挑戦(デュエル・ノワール)とコロシアイ学園生活のルールって干渉するんでしょうか?」

 

 報復殺人ゲームとデスゲーム。この二つのルールに関書する所なんてあったのだろうかと考えた時、王馬が可能性に行き当たった。

 

「オレ達が最原ちゃんを殺せるか? って話だよね」

「え、いや、その……」

 

 幾ら男性嫌いでも殺すつもりはない茶柱としては言葉を詰まらせるしかなかった。直ぐに夢野が助け舟を出した。

 

「王馬よ。茶柱は可能性に思い当っただけじゃ。揚げ足取りをするもんじゃないぞ」

「分かってるって。こういうのはモノクマに聞いてみようよ」

 

 王馬が手を叩くとモノクマが現れた。今までの話もキチンと聞いていた上でモノクマは答えた。

 

「あのさ。君ら、コイツのこと殺せんの?」

 

 エグイサルを吹っ飛ばし、デスロードをぶっ飛ばし、どういう訳か知らないが怪我をしていたことはあったが、死ぬことは無さそうな雰囲気は出している。

 

「ちょっと待ちなよ。この間、怪我していたじゃん。最原は無敵超人でも何でもないんだから」

「春川さんは優しいですねぇ。じゃあ、ちゃんと明言します。最原君を殺すのは禁止です! 校則違反に追加しておきます!」

 

 全員が電子手帳を見る。『最原終一』を殺すのは禁止! という、校則が付け足されていた。ついでに天海が手を挙げていた。

 

「後、1つ気になることがあるんっすけど。モノクマーズは生徒として登録されているけれど、運営側なんっすか? 極端な話、アイツらが俺達を殺しに来るって言うのもアリなんっすか?」

「あ、それは駄目ですね。そうしたら、ボクらが有利すぎるので。アイツらはオマエらには手出しできません。心配なら、ルールに明記しておくよ」

 

 ついでと言わんばかりに校則に『モノクマーズは身内以外に手を出してはいけません』という項目が追加されていた。

 

「つか、俺達が一方的に手を出して良いにしても。アイツらに手を出すメリット無いだろ」

「でも、事故はあるかもよ? それこそ、第1の事件で最原がやったみたいにね」

 

 百田の懸念が決して杞憂でないことを、春川は強調していた。

 偶然、モノタロウがトドメを刺したので最原が犯人になることは無かったが、一歩間違えていれば彼がクロになっていた。

 

「その場合でも、最原君はおしおきされていたんっすかね?」

「どうだろうね。さぁ、明日までに事件が起きないとどうなるだろうね! うぷぷ!」

 

 耳障りな笑い声を残して、モノクマは姿を消した。改めて明記されたルールを見て困惑する者もいれば、電子手帳を握る指に力が籠る者もいた。そして、大抵の人間が、今回言及された最原のことを見ていた。

 

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