「え~。頑張ってクロを指摘してください」
モノクマは非常にやる気が無さそうだった。無理もない。
折角デスゲームを開催したのに、死ぬのは運営側の奴ばっかりだから萎えるに決まっている。
「じゃあ、まず。被害者の死因から議題していきましょう」
2回目ともなれば勝手も分かって来たのか、東条が切り出した。
死因から推定できることは多く、前回の裁判でも有用性が分かっているが故の切り出し方だった。
「そもそも。モノクマーズはそんな簡単に死ぬモンなのか?」
「ある程度の耐久性はあるわ。転んだり、殴られたりとか。その程度で破損したりはせぇへん。ホンマに殺意を持って凶器をフルスイングしたりとかでもせん限りはな」
1回目の事件ではモノキッドが死んでいたが、別に彼らが死にやすく調整されているということはないらしい。
「そもそも。アタイ達が『助手生徒』として位置されている以上は、生徒側に過失を犯し易くするように作られていたら、やっぱり公平感は失われるでしょうしね」
「そう言う所はフェアなんだネ。じゃあ、モノダムが死んだと言うことは相応の力が加えられたってことだネ」
モノファニーの補足に頷きつつ、真宮寺が視線を送ったのは最原だった。
やはり、エグイサルを撃破したという実績は大きいし、事件現場には彼とモノダムが居たこともあったからだろう。
「じゃあ、お前らは最原がモノダムを破壊した。って言うのか?」
「何せ、最原には魔法が使えるからの。ただ、命を奪うのは禁呪側じゃが」
渦巻いている懸念を百田が否定する中、夢野が独自の肯定をしていた。場の空気を察して、ゴン太が口を挟んだ。
「でも、殺害に使われた凶器は何処にもなかったし……」
「そいつは違うぜ!」
ゴン太の疑問に対して、入間の指摘が入った。あの部屋にあったのは彼女の為に用意された物ばかりなので、こういう時には強い。
「部屋の中央にバカデケェ機器があっただろ? アイツにはとんでもない電流が流れていて、ソイツに触れたらバチっと即逝きだ!」
「い、入間さん。そんな危険な物使っているんだね……」
赤松がちょっと引いていたが、これに関しては入間も思うことがあったのか。珍しく反論していた。
「使い方の問題だっつの! 料理人が使う包丁でも人は殺せるし、野球のバットでも人の頭をフルスイングすりゃ事故になるだろ?」
「その点に関しては同意だ。使い方次第だよ」
星がやんわりと同意をしていた。凶器に使われたのは、便宜上『高圧電流発生装置』と言うことにして、ここから更に議題を重ねることにした。
「じゃあ、問題はこの装置をどうやって凶器に使ったか。だよね?」
白銀の言わんとしていることは皆も分かっていた。包丁やバットの様に使用者が簡単に動かせる物ではないし、罠に使うとしても扱い辛い。
「入間さん。転子はこういった物についてはよく分からないのですが、危険な代物。であると言うことは、装置自体は頑強に作られているんですよね?」
「当然だよ。加えて、こういうのは何重も安全装置も掛けられていて、故障していた場合は電源が落ちる様になっているんだよ」
普段の迷走ぶりは何処にか。やはり彼女も超高校級であるらしく、自分の得意分野に関しては饒舌だった。
「じゃあ、オレ達みたいな門外漢が、この装置を故障させて電気トラップに使うみたいなことも相当に難しいってことだよね?」
「そうなるな。もしもやる場合は、安全装置を誤魔化して、何処を破損させれば危険な状態になるか。まで、計算しねーと出来ねーぜ」
王馬の質問にもスラスラと答えていたが、そんなことが出来る奴って……。と、なると。皆の視線が彼女に集まった。
「おぉー。正に美兎のことだねー」
「ひぅ!? な、なんで。オレ様がそんなことしねーといけねーんだよ!!」
アンジーからの指名が入り、先程までの饒舌ぶりが飛んでいくかのような狼狽えぶりだった。
「そもそも! オレ様と一緒にAVルームにいたテメーらには、アタシがそんなことをする暇なんてないこと位は分かっているだろ!!?」
「いや、でも。そう言う時限装置的な物を作っていた可能性もあるかもだし」
一緒に映画を見ていた白銀からも刺されていた。同時視聴組から一斉に刺された所を見るに、入間が見ていた映画のラインナップは彼女達の好みに合わなかった可能性もある。
「でも、一応道理ではあるっすよね。だって、あんなのを弄れるのは入間さん位っすから」
「そもそも。アタシは修繕されていた研究教室になんて行ってねぇ!!」
「でも、アタイ達もいつでもいた訳じゃないから。そっと侵入して、装置を取りつける位なら出来たかもしれないし」
ついでと言わんばかりに天海とモノファニーからも追撃を食らっていた。思わぬ窮地に追い込まれた彼女を見かねたのか、赤松が『それは違うよ!』と声を上げていた。
「そもそも。事件が起こる直前まで、装置はモノダムがチェックしていたハズだよ。幾ら、モノクマーズ達が常駐していなかったけど、事件が起きるまで撤去されなかった。なんて考え辛いし」
「それに。調査をした時、そう言う時限装置みたいなのは無かったしね」
調査に参加していた春川も賛同していた。となれば、議題は振り出しに戻るかもしれないが、可能性を潰しただけでも進歩と言える。何処の時点から始めようかと考えた時、モノファニーがおずおずと手を挙げた。
「ここはシンプルに考えてみない? 一番、あの装置を触る機会があったのはモノダムよ」
「でも、アイツは被害者だろ?」
件の装置を触る機会という点ではモノダムが一番だっただろうが、百田も言う様に彼は被害者だ。だが、もう一つの可能性もある。
「モノダムの自殺だったと言いたいんだネ?」
「理解が早くて助かるわ」
斬新なアプローチだった。機器の調整をしていたのは彼なのだから、自分を害するトラップを作れるのも彼自身だ。というのは、道理は通っている様に思えた。
「もしかして、その。ラブアパートの一件を気に病んで。とかですか?」
「あんまりその話題を出して欲しくはなかったんだけれど、裁判に必要だから話すわね。あの後、アタイ。モノダムに酷いことも言ったし」
キーボが自らのデリカシーの無さを後悔している傍ら、当てつけにも巻き込まれていたしな。と、スケーター勧誘団の3人は思っていた。口に出したら、面倒臭いことになりそうなので黙っていたが。
「自殺だとしたら、なんでこんな回りくどい真似を?」
「……もしかして。アレっすかね?」
赤松の疑問に心当たりがあるのか、天海は最原達の方を見ていた。コレには星が溜息を吐いていた。
「昼間にスケーター勧誘をした時、モノファニーから声を掛けられたんだよ。最原も喜んで教えていた」
「は!? オレ様を放っておいて、そんなことを!?」
思わぬ方向からキレられた最原はションボリしていた。だって、入間さん。一緒にスケボーをしてくれないし。と言っている様でもあった。
「最原君に直接手を出さなかったのは、校則と黒の挑戦の件があってのことだろうネ」
真宮寺が、モノクマとの質疑応答の際に得られた情報を反芻していた。自分から距離を取った相手を殺したい。だが、ルール的に出来ない。
と、なれば自分の命を使って学級裁判を引き起こして、全員殺す。なるほど、生徒達に手出しを出来ないモノクマーズが唯一使える加害方法ではある。
「もしも、そうだったら最低よ! 強姦魔の心中野郎が身内だったなんて!」
「あんまり、ホトケさんの悪口言うなや。アレでも身内やぞ」
モノファニーの感情が噴出したので、モノスケがフォローに回るという何とも珍しい光景だった。これに触発されたのは茶柱だった。
「全く! なんて奴ですか! やっぱり、だ」
「茶柱よ。落ち着け、落ち着け」
これ以上言葉にすると色々と危険そうなことを吐きそうになっていたので、夢野がフォローに回っていた。
モノダムの行動に非難が集中する中、彼が死ぬ直前まで話をしていた最原は思い出していた。本当に彼はそんなつもりだったのだろうか? と。
一瞬、天海に視線を送ろうとしたが直ぐに逸らした。どうして、そんなことをしたのかと言われたら勘としか言いようがないが、他にも意見が近しいと思われる人間に視線を送った所。モノクマが楽しそうにしていた。
「我が子ながら面白い提案をしますね。ザックリ言うと、現状。オマエ達の意見は『モノダムが自殺だったかどうか』で別れていますね」
ここは事件の推理をする上で非常に重要な分水嶺だ。クロの指摘を間違えれば、自分達は全員葬られてしまうのだから。
「じゃあ、ここは1つ。スクラムを組んでぶつかり合ってみましょう! 議題は『自殺であるか』『自殺でないか』です!」
モノクマーズも含め全員で18人。丁度、半分ずつになる様に分かれての検討。いうなれば『議論スクラム』と言った所だろうかが開始されようとしていた。その際、最原の隣に来た赤松が言った。
「コレ。多分、事故じゃなくて。事件だよね?」
この段階までの議論で、先日の裁判と質が違うのが見て取れた。
今回は犯人が何かしらのトリックを用いて自分達を陥れようとしている。また、議論も複雑化していることから、認めたくはないが、自分達をハメようとしている人間がいることは疑いようもなかった。
故に最原は気を引き締め、自殺である。という意見の側にいる、天海の方を鋭く睨んでいた。