ダンロンシリーズとSkate3のどちらか、あるいはどちらも好きな方達に楽しんでいただければ、幸いです!!!
一度、作れる分を集めることが出来たとしても、直ぐに次の分を確保できる訳ではなかった。
解放されているスペースに比べて、上階は非常に雑多としている為だ。そこら中にオブジェが散らばっており、桑田がゴミ箱に激突して吹っ飛んでいた。
「あのぅ。探すのは良いけれど、あんまり散らかさないでね。皆のお世話と監視に並行して、上階を片付けているんだから」
動機やら何やらを用意して、中々に上階を解放させないのは皆を焦らす為だけではなく、単純に片付いていないこともあるのかもしれない
苗木達が頷くと同時に、近くに転がっていたサッカーボールが分裂して周囲に散乱した。流石にモノクマも驚いていた。
「オマエらの中に超高校級のサッカー選手が居たら喜んでいたかもね」
とりあえず、これも材料と言う事で全員が1個ずつ拾い上げてバッグに詰め込んでいた。付近に落ちていた鉄板がブルブルと揺れたかと思うと、天井近くまで飛び上がって、大和田の頭上に落ちた。
常人ならば致命傷になる事故だったが、普通に起き上がっていた。やはり認めたくないが、ヌケーターの能力は感染していた。
「言っとくけれど、材料集めるだけじゃ作れないからね。ちゃんと加工と組み立てまでやるんだよ。不二咲さんの場合はサービスでやって上げたんだからね!」
不自由のない生活は約束していたが、人間は何処までも付け上がる物だ。
奇妙な話だが、不自由のない生活を送らせる為にも敢えて我慢できるor対処できる程度の不自由や不満を与えていた。
「(誰も殺人に走りそうにないし、私が与えた動機も結束と言う予定調和の為に使われるのでしょう。本当に絶望的です……)」
当初の予定ならば最初の動機ビデオで舞園辺りが何かを仕掛ける物だと考え、今回の動機では大和田か腐川辺りが暴走して事件を起こす物と考えていたが、いずれもご破算になった
「(当初の予定では3階に入った後には動機として『100億円』を準備するつもりでしたが)」
セレス辺りを焚きつけようと考えていたが、外の状況を知られているなら、こんなことをしても効果は薄いだろう。何か別のことは無いか?
「(殺人が起きなければ食料の供給を止める。いや、こちらから殺害を強要するのは面白くありませんね。やはり、学園長としては皆の自主性に期待しないと)」
黒幕を行う傍ら、学園長としての立場も遵守する。ルールと言うメリハリを付け、道筋を立てて運営することで、始めて自分の予想を逸脱した展開を観測できる。
ここで、彼女は3回目の動機のコンセプトを考えていた。今までは、脅迫に近しい物だったが、今回は報酬を目当てに動いて貰うつもりでいた。
だが、具体的な報酬に何を用意するべきか。モノクマの方を見ながら考えていると、彼女はハタと閃いた。そして、専用の無線を開いた。
「あ。もしもし? モナカちゃん? 今、ちょっといい?」
『アレ? ジュンコお姉ちゃんどうしたの? コロシアイ学園生活飽きた?』
無線から帰って来た声は可愛らしい少女の物だったが、こんな悪辣な催しを知っている辺り、かなり深い所で繋がっている相手なのだろう。
「飽きてはいないけれどマンネリ化して来たからさ。コラボしない? やっぱり、人気取りの為にもコラボは欠かせません」
『良いよ! そっちの関係者を使うんだね?』
江ノ島(妹)に12人と2匹の映像が送られて来た。老若男女に留まらず猫やカメムシまでいる。全員が別所に監禁されているらしく、状態は様々だった。
机に座ってひたすらに作業に徹している者、虫かごの中で飛び回っている者(比喩抜き)、鼻提灯を作ってグースカ寝ている者、部屋から脱出出来ない物かと試行錯誤をしている者、鍛錬に励む者、部屋内でスケボーに興じる者……。
「なんか、今。凄い嫌な物見えたんだけれど」
『羽山あやかのこと? 何故か、部屋内でずっとスケボーに乗っているんだよね。よく、壁に激突しているし、頭おかしいと思う』
そりゃ、そうだ。人間は壁とか物質を擦り抜ける様にはできないんだから、スケボーで壁に向って突撃すればそうなるに決まっている。何が怖いって、挑戦しまくっている為か部屋の壁がボロボロになっていることだった。
「部屋が死ぬか、アホが死ぬか。どっちが先になると思う?」
『部屋だと思う!』
江ノ島(妹)も全く同じ結論だった。だが、念の為に取っていた存在をこんなことに使う日が来るとは思っていなかった。
「本来なら、モナカ達の玩具になって貰う予定だったけれど、ちょっと私にも使わせて貰おうかな」
『うん! 準備しておくよ! ジュンコお姉ちゃん!』
学園内で起きるどんな困難でも、常識破り共が突破していくというのなら、学園外の存在から攻めて行こう。この策にて、脱線し過ぎたコロシアイ学園生活は元の形に戻るのだ。
ただ、一つ。どうにも引っ掛かる存在が居た。未だに部屋内でスケボーに乗って壁に激突しまくっている羽山あやかと。コロシアイ学園生活を破綻寸前にまで追い込んだ異常者の妹。念の為、江ノ島(妹)は苗木誠の妹『苗木こまる』の部屋を隅から隅まで観察していた。
~~
「実は、私の本名はセレスティアではなく、安弘多恵子と申します」
不二咲のPCを修理した翌日。不二咲が自らの性別を告白したことを皮切りに、今まで動機を隠していた者達も発表し始めた。
「お! セレスっち、俺と同じ名前だったんだな! なんだか、親近感がわくべ!」
「テメェと被るのが嫌で言わなかったんだよ! このビチグソよりも汚らしい汚物が!!」
葉隠からの歩み寄りを跳ね飛ばして、ついでにトラックで跳ねた後、火を付ける位に徹底的に拒絶していた。あまりの剣幕に彼も言葉を失っていた。
「癪だが、既に知られているなら俺のも公開しておく」
不二咲とセレスに続き、十神も動機を公開していた。『水晶のドクロを探している』と言う物であり、これまた葉隠が反応した。
「十神っち。これはもはや運命だべ。実は俺、水晶のドクロは家に置いてあった」
「黙れ。お前如きが入手できる訳無いだろう」
御曹司に媚を売ろうとしたが、取り付く島もない位に払い除けられていた。
なんで、コイツは自分から喧嘩を売りに行っているんだ? と、全員が疑問を抱く中、不二咲は心配そうに舞園の方を見ていた。
「舞園さん。良いの?」
「はい。不二咲君も話してくれましたし、バラされる位なら自分から言います」
自分が発表したことが皮切りになって、この様なことになっているのだから不二咲も気にする所ではあった。深呼吸を一つ、舞園はポケットから取り出した封筒の中身を皆に見せた。
「私は、苗木君のことが好きです」
全員がピタリと止まった。もしも、これが平生の中で行われていたら囃し立てられたりもしていただろう。だが、彼女は『超高校級のアイドル』である。
恋人や想い人がいることが発覚した偶像が、どの様な目に遭うかを知らない者はいない。今まで、苗木のバーターの様にしか動いていなかった江ノ島の視線が、ハッキリと彼女へと向けられていた。
「舞園君ならば、清いお付き合いになるだろう。これからも苗木君のことを支えて欲しい」
「石丸っちが保護者みたいだべ」
流石の葉隠も人の好意を茶化す真似はしなかった。何ともシュールな光景になったが、一番騒ぎそうな桑田が苗木をベシベシと叩いているだけだったので比較的穏やかに終わった。残りは2人。先に口を開いたのは霧切だった。
「……私のはこれよ」
いつもは冷静な彼女が躊躇ったこともあり、相当に言い出しづらいことだったのだろう。彼女が提示した紙には『霧切響子は学園長の娘』と書かれていた。
「えぇ?! 霧切っちが、モノクマの娘!?」
「違う。私の父は、この学園の創設者なの」
「……それって、そんなに隠しておきたい情報?」
葉隠が皆を代表してリアクションを取っていたが、少し冷静になって考えてみれば、そんなに隠したくなる情報かと考えた。
「これは貴方達よりも外に効くと思う」
彼女の父親は何者なのか。更に追及しようとする者は誰もいなかった。
残るは一人。腐川は懐から彫刻刀を取り出すと……自らの腕を切りつけ始めた。大神が立ち上がり、彼女の腕を掴んだ。
「腐川よ! 何をしている!?」
「必要なことなのよ!」
必要なことを終えたのか。彼女は彫刻刀を置いた後、先端を削った枝を取り出し、自らの鼻に突っ込んだ。何をしているんだと皆が戸惑ったが、程なくして必然は訪れた。
「ヘックショョイ!」
大神が持ち前の瞬発力で、くしゃみを回避した直後のことである。腐川が俯き、再び顔を上げた時。彼女の表情は一変していた。
「あっれ?!? なんで、こんな所に呼び出されてんだ!?」
まるで別人のようだった。すると、彼女は痛みに気付いたのか腕の方へと視線をやった。殺すな。とだけ、血文字で描かれていた。
「貴様は一体?」
「アタシ? アタシはジェノサイダー翔! 超高校級の殺人鬼です!」
まるで悪びれることも無く言ってのけた。殺人鬼。こんなデスゲーム下の中では、皆の不安を煽る要素でしかなかった。
「ま、まさか。これはいわゆる二重人格と言う奴ですな?」
「はぁい。ひふみん、流石理解が早い!」
気弱で卑屈な腐川と違い、ジェノサイダー翔と名乗った少女はハイテンションだった。そんな彼女を見て、腐川さんは乗らなさそうだけれど君にはピッタリだ! と言わんばかりに、苗木はスケボーを差し出していた。
「あら、まーくん。こんなあたしでも誘ってくれるの? 嬉しい! でも、乗らねーよ。合わないって知っているからな!!」
苗木がムスっとしていた。周囲にも少なからずの動揺が走っている中、霧切が毅然として尋ねた。
「ジェノサイダー翔。貴方は、この学園生活の中で殺人を犯すつもりはある?」
「ねぇよ! 正直ね。まー君みたいに殺しても死なない奴ってのは死ぬほど嫌ぇなんだよ!! 命を何だと思っていやがるんだ!!!」
殺人鬼が何か言っている。苗木も突然詰められて困惑したのか、彼女の頭をスケボーで殴っていた。
割とバイオレンスな行動だったが、おかげで冷静さを取り戻したのか、ジェノサイダー翔は頭にタンコブを作りながら笑顔を浮かべていた。
「……そこら辺にある物で済まそうって言うのは、幾ら何でも拘りが足りませんね。やるからには最上級の殺しにしたい訳です」
「殺しで例えて良いかは分かりませんが、何となくわかる気がしますぞ。売れるからってだけで、そのジャンルを描くのと似ているのかもしれませぬ」
「状況に選択が絞られるのが嫌なのね」
山田の分かりにくい例えを霧切が再翻訳してくれた。これには桑田も頷いていた。モテる為に野球なんて冗談じゃないと言いたそうだった。
「でも、文学少女が実は殺人鬼だった! なんて、バレたら不味くない?」
「そこら辺は大丈夫っしょ! それに、アイツはコミュ障だったし、サイン会とかも全くやってなかったからヘーキヘーキ!」
極端な話になるが、超高校級の文学少女と言う面においては作品を世に送り出しさえすれば問題ないのだ。……例え、刑務所の中でも。
「これは、バレてはならぬ問題だな。人格が分裂した理由については?」
「あたしから話すことはねぇ。アイツに聞きな」
スゥっとまるで憑き物が落ちた様に俯いた後、顔を上げれば元の陰気スタイルに戻っていた。
「この様子じゃ、多分。私の秘密を知った?」
「あぁ、十分に……」
あまりにド派手過ぎて、石丸もドン引き気味だった。だが、コレで全員の秘密は公開された。それを見計らった様に、スケボーに乗ったモノクマが現れた。
「コレで全員が秘密を共有する仲間になれたね! 僕は嬉しいよ!」
「どうせ、外に公開されるんでしょ?」
「うん! と言うか、ライブ映像だから全国に放送されているんだよね。だから、皆の勇気ある告白のお陰で1日前倒しになったんだ」
遅くなるか、早くなるかの違いなど大したことではない。だが、これでモノクマの条件はクリアした訳だ。
「モノクマさん。3階への扉、開けて貰えるんですよね?」
「うん。シャッターは開けておいたけれど……実は4階に向かう為の動機が用意できているんだよね」
食堂に設置されているモニターに映像が映し出された。
どうやら、何処かの部屋らしく中年の男性がカメラに気付いたのか向かって来た。すると、彼は驚いたように声を上げた。
「まさか、清多夏? 清多夏なのか!?」
よく見れば、中年の容姿は石丸と酷似していた。名前を呼ばれた彼は全身を硬直させた後、ゆっくりと言葉を絞り出した。
「……父さん?」
全員に怖気が走った。黒幕は自分達だけではなく、関係者まで手中に収めているのかと。