舞園「超高校級のヌケーター?」   作:ゼフィガルド

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28時間目:ダストシュート

 苗木達がヌケー闘を繰り広げている中、桑田や大和田達も塔和シティを奔走していた。擦れ違いざまにモノクマ達を破壊しながら、倒壊した建物で道が塞がれている場合は擦り抜けながら、死体を見ればそっとスケボーを添えながら。

 その光景にモノクマキッズ達は不気味がって石を投げて来たりもした。効果が無いと知るや、彼らは途端に悪戯を始めた。モノクマの仮面をしている時は不気味に思えたが、中身はちゃんとクソガキだった。

 最初の内はバナナの皮や空き缶など可愛らしい悪戯だったが、子供と言うのは加減を知らない。次第にサッカーボールやベンチ、置石など。洒落にならない物を設置し始めて来たので、桑田達はお絵描きボードにデカデカと書いた。

 

『やめろ!!!』

 

 これを見たモノクマキッズ達は手を叩いて喜んだ。『効いている! 効いている!』。言葉にしなくとも、皆がそんなことを思い浮かべているのは明白だった。

 だが、この程度ならヌケーターである彼らには問題はない。飛び越えたり、避けたりすることも出来たからだ。車などは移動させられないし、瓦礫は子供達に移動させることは出来まい。

 大和田と共に一安心したのも束の間。彼らは目の前に設置された物を見て、目を剥いた。円柱のメタリックボディの上部はタバコなどを捨てる灰皿の機能も兼ねているが、それより下にはポッカリと穴が開いており、不要物などを捨てるスペースを設けている。そう、ゴミ箱だ。

 ヌケーターである彼らにとってゴミ箱は大敵だ。何故かすり抜けることは出来ず、必ず吹っ飛ばされる。じゃんけんのグーがパーに勝てない位に厳然とした摂理が存在しているのだ。

 桑田と大和田はゴミ箱に衝突すると勢いよくぶっ飛ばされ、地面を何度もバウンドした。モノクマキッズ達は大喜びしていたと同時に学習していた。彼らは兎に角、ゴミ箱を集め始めていた。

 

『やべーぞ!』

 

 桑田が急いでお絵描きボードに書き込んだ。馬鹿げた光景に見えるが、大人ならば採用できない発想。

 目の前の非日常に柔軟に対応できるキッズ達だからこそ、ヌケーターがゴミ箱に弱いという事実を使って追い詰めて来ることが出来るのだ。

 

『逃げんぞ!!』

 

 モノクマキッズ達がゴミ箱を一生懸命動かし始めた辺りで、桑田と大和田は急いで逃げ出した。

 

~~

 

「魚住さん。なんか、モノクマキッズ達の動きが変じゃないですか?」

 

 魚住と呼ばれたメイド服姿の探偵に同行している仲島は疑問を口にした。

 先程まで引き連れていたモノクマ達が居なくなっている。代わりに彼らはゴミ箱を運搬していた。まるで意味が分からない光景だった。

 

「連れていても壊されるから、置いて来たとか?」

「結構な数の残骸は見ましたね。どういう力で壊されたかは分かりませんが……」

 

 雪丸の意見にチャバことサルバドール・宿木・梟が同意した。拡声器型ハッキングガンによる破壊よりも凄絶な壊され方をしていたモノクマを多数見て来たが、一体どのようにして破壊されたのだろうか?

 

「油断しちゃダメだよ。また、何処かに待ち伏せさせてあるかもしれないんだから」

 

 魚住の言葉に仲島はブルリと震えた。雪丸と二人きりでいた時よりかは心強いが、未だに死の気配はピッタリと張り付いている。

 腕に巻きつけられたバングルも不気味だし、何時までこんな事態に身を置き続けなればならないのか。

 

「帰りたい。お兄ちゃんに会いたい……」

「大丈夫。ボク達が必ず会わせてあげるから」

 

 魚住や雪丸からの励ましを受けながら、何とかここまで持って来た。だが、彼女が限界間際にいることは明白だった。

 モノクマキッズ達に見つからない様に裏路地などを進んでいる彼らだったが、キッズ達の甲高い歓声は、極限状態にある彼女の精神状態をザリザリと削っていた。一体何が楽しいのだろう? と考えた直後、バッコーン。と間抜けな音が響いた。見れば、何かが打ち上げられたらしい。

 

「見ちゃ駄目」

 

 魚住は直ぐに仲島の目を覆った。この高度で人間が打ち上げられたなら、無事でいられるハズが無い。これもまた遊びという名の処刑なのだろうと察した。

 打ち上がった人間は魚住達の目の前にドサリと落ちて来た。ガタイの良い少年2人だった。……暫くすると、普通に起き上がった。

 

「総長!?」

 

 極力声量を抑えながら、雪丸は叫んでしまった。コレは夢か幻か。何故か、自分が慕う男が目の前にいる。常人ならば死んでしまう程のシチュエーションに在りながら、特段何事も無かった様にサムズアップを決めて見せた。

 魚住の隣にいた宿木も呆然としている中、起き上がった桑田が魚住へと近付いた、かと思いきや。仲島のことをハグしていた。

 

「……お兄ちゃん?」

『よく頑張ったな』

 

 お絵描きボードにサラリと書いて、見せた。暫く、固まっていたが彼女の瞳からボロボロと涙が零れ落ちていた。

 まだ、安心できる場所にも出ていないのに、何も事態は解決していないのに。こんな状況だからこそ、迎えに来てくれたことが本当に嬉しかった。

 

「どうして一介の高校生がこんな所にいるのかは疑問ですし、あんな高度から落ちて来て無事なのも気になりますが」

 

 宿木が視線を遣った先にはモノクマキッズ達がズラリと並んでいた。

 彼らの背後には四つ足のビーストモノクマから、ジャンク品を繋ぎ合わせて作られた恐ろしい見た目をしたジャンクモノクマが控えていた。

 

『タケ。付いて来れるか?』

 

 大和田が何処からともなく出現させたスケボーにそんなことを書きこんでいた。

 迷う素振りは無かった。彼は拡声器型ハッキングガンを宿木へと返却して、代わりにスケボーを受け取っていた。

 

「総長。俺は親衛隊長です。ぶっちぎってやりましょう!」

 

 初めてだと言うのに、スケボーに乗る動作にまるで躊躇いが無かった。大和田の隣を走っていたこともあり、センスは抜群だった。

 直ぐにスケートボードに馴染み、2人でモノクマキッズ達に突っ込んで行く。ジャンクモノクマやビーストモノクマが迎え撃とうとするが、彼らに接触した瞬間地面に埋まったり、全身が捻じれてぶっ飛んだりと。

 だが、キッズ達も負けじとゴミ箱を用意してヌケーター共をクラッシュさせたりと、熾烈な争いが繰り広げられていた。

 

「街中に居たモノクマ達の残骸。貴方達がやったんですね?」

 

 宿木の問いかけに桑田は頷いた。彼の腕には仲島がすっぽりと収まっており、先程とは打って変わって頬を緩ませていた。

 

「私、ちょーー幸せ」

「白馬の王子様じゃなくて、スケートの王子様だね。少し、シャレオツな感じがして嫌いではないかな」

 

 大和田達がモノクマ達を食い止めている間に桑田達は急ぐ。やがて、向こう側から走って来る人間の姿が見えた。コートを着た男性が叫ぶ。

 

「魚住! チャバ! こっちだ!」

「燕尾さん!」

 

 彼に先導されるがままに地下街へと向かう。モノクマやキッズ達を振り切り、下水道へと入って、ようやく一息ついた。

 

「雪丸竹道はどうした?」

『大和田と同じ世界に行ったぞ』

 

 桑田のお絵描きボードの書き込みを見て、燕尾は『そうか』と小さく頷いていた。魚住と宿木には全く分からないのだが、既に通じる何かが出来ているらしい。

 

「燕尾さん。他の要救助者達は?」

「後は『苗木こまる』と『朝日奈悠太』。それに猫と虫だ。苗木誠が向かった」

『勝ったな。風呂入って来る』

 

 桑田の顔には全く心配が浮かんでいなかった。まるで勝利を確信したかの如き表情だった。下水道を進んで行き、梯子を上った先には避難場所があった。

 ただし、悲壮感は殆ど無く、老若男女問わず全員がスケボーをしているか、何処から拾って来たか分からないショッピングカートを手押ししていた。あまりに前衛的な光景だったので、魚住と宿木は絶句していた。

 

「なにこれ?」

「俺も知らん」

 

 魚住の疑問に答えるだけの回答を持っていなかった。安全な場所に出て気が緩んだのか、仲島はぺたりと座り込んでいた。

 

「ご、ごめん。お兄ちゃん、もう立てない……」

 

 すると、彼はスケボーを手放してしゃがみ込んで背中を見せた。彼が意図したことを汲み取り、仲島は桑田におんぶされていた。

 兄妹の再会に自分達は余計だ。魚住達はそっと離れて、止まってある大型のトラックへと向かった。荷台では太市が引き続き作業をしており、ぺこりと頭を下げていた。

 魚住達が向かったのは2つ並んだカプセルの一つ。彼女達にとっても知り合いである、五月雨結が未だに眠り続けていた。

 

「まさか、生きてキミと再会できるとは思わなかった」

「私もです。貴方の発見が遅れたこと、私は何度も悔やみました。まさか蘇生措置を受けていたとは」

 

 未だにカプセルの中に眠り続けている五月雨結を看取ったのは、宿木だった。

 彼が見た時、彼女は完全に生命活動を停止しており、病院に連れ込んで正式に死亡したという報せを受けていた。魚住がそっとカプセルの表面を撫でた。

 

「キミのお陰で、ボク達は皆生きている。だから、早く目を覚ましてくれ。ボク達がハッピーエンドを迎えるには、キミだけが足りないんだ」

 

 太市は作業をしながら、彼女の独白を聞いていた。

 自分は五月雨結と言う少女については何も知らないが、死地に飛び込むことも厭わない程に皆を助けて来たというのだろうか?

 

「絶対に。全員で生きて、ここから出よう」

 

 つい、太市は応援の言葉を送っていた。魚住達もまた頷き、そっとトラックの荷台から離れて行った。

 

~~

 

「ボクちん。アイツらに勝てるかも」

 

 塔和シティの様子をモニタリングしていた蛇太郎はかつてない程にドヤ顔をしていた。言子がウザそうにしている中、モナカだけがニッコリと笑顔を浮かべながら、尋ねた。

 

「蛇太郎君。何か分かったの?」

「あの、スケボーに乗った魔物達はね。ゴミ箱に弱いんだ!!」

「え? だから?」

 

 言子の反応は極自然な物だった。ゴミ箱が苦手だからなんだというのか。しかし、モナカはパァっと閃いた様だった。

 

「そうなんだ! じゃあ、ゴミ箱をたくさん作ろう!」

「そうだよ! モナカちゃん! ボクちんに任せて! ボクはゴミだからね! ゴミ箱を作るのは誰よりも得意なんだ!」

 

 超小学生級の図工の時間であり、自己評価が底辺である彼のテンションはぶっちぎりに上がっていた。自分の得意分野で作りたい物で大活躍できる可能性が回って来たとなれば、テンションが上がらない訳にも行かない。

 

「左右田君は役に立った?」

「すんごい活躍してたよ! 帰って来たら、左右田のお兄ちゃんと一緒にゴミ箱を作るんだ!」

 

 召使の少年にもノリノリで返事をしていることから相当に機嫌が良いことが伺えた。いてもたっても居られなかったのか、蛇太郎はバタバタと何処かへと走り去っていった。インスピレーションが溢れて止まらないのだろう。

 

「……とりあえず、様子を見てみるか」

 

 比較的真っ当な感性を持つ新月渚はバカ共の狂騒曲に振り回されるばかりだった。

 

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