舞園「超高校級のヌケーター?」   作:ゼフィガルド

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 やっと、ダンロン2編DAAAAAAAAA!!!!!!!!


狛枝「超高校級のヌケーター?」(1章を読んだ後、ここに来ても大丈夫です)
42時間目:ようこそ、ジャバウォック島


 未来機関の尽力によって77期生達は希望更生プログラムに掛けられることになったのだが、経過を見に来た霧切が疑問を浮かべていた。

 

「不二咲さん。今回の希望更生プログラムに掛けられた者の中には、ヌケーターも居るのよね? 機械に接続できるの?」

 

 コロシアイ学園生活の際に自分のPCがぶっ壊された苦い思い出もあったが、彼はキチンと反省して次につなげていた。

 

「うん。霧切さん達が塔和シティで見つけてくれた『超高校級のメカニック』の人が装着していたスーツがあるでしょ? アレを該当者に装着させた上で装置に入って貰っているんだ」

 

 話に上がったスーツはどういう訳かヌケーターの能力を無効化する働きがあるらしく、該当者が収まったカプセルに行くとゴテゴテしたスーツを着たまま収納されているという何とも奇妙な光景があった。

 

「……このスーツ。一体、どういう理屈が働いているのかしら?」

「ちょっとだけ話す機会があったから聞いたんだけれど、理屈は良く分かっていないまま何となく使っていたらしいよ。で、僕達も何となく複製して使っているんだ」

 

 凄くフワッとしていた。おかげでヌケーターとなった人間達と意思を交わすことも出来るようにはなったのだが、未来機関内がパワードスーツを着た連中で溢れ返っていた。背後の扉が開いた。

 

「霧切ちゃん、私も様子見に来たよ」

 

 体のラインが浮かび上がる。なんて、セクシー路線は一切期待できないスーツを甚く気に入ったのか、戦刃はご機嫌に挨拶していた。彼女はカプセルに入っている者達を見ても特段反応を示さなかった。

 報告を見る限りでは、江ノ島や戦刃の働きにより彼らは追い詰められ超高校級の絶望となったのだが、本人には後悔も喜悦も無さそうだ。

 

「戦刃さん。彼らを追い込んだことに対しては何か思うことは?」

「無いけど。だって、私達がやったのは皆に才能を与えたことだし。洗脳した訳でも無ければ、彼らを脅した訳でもないし」

 

 もしも、彼女達が実際に洗脳行為などを行っていたら首謀者として問い詰める所だったが、彼女達がやったのは予備学科生に才能を植え付けた事と……生徒会のメンバーをコロシアイに参加させたことだけだ。

 

「例のコロシアイだって、旧校舎から普通に出ることも出来たんだよ? 鍵も掛けていなかったしね」

「それでも、貴方達が殺し合いを焚きつけたことには変わりない」

「それは間違いないね」

 

 本当に悪びれた様子もない。江ノ島は陥れることに喜びを感じていたかもしれないが、戦刃は行為自体には特に何の感慨も無いのだろう。

 不二咲は不気味に思っていた。コロシアイ学園生活において、戦刃は自分達を助けてくれた。スケ落ちした後の行動も本心からの物だったと言うことは分かっているだけに、彼女の豹変ぶりが恐ろしく見えた。

 

「戦刃さん。どうして、そんなことをしたの?」

「盾子ちゃんがやりたがっていたからね。それに予備学科の人間がどうなろうとどうでも良いしね」

 

 自分達に対する信頼や好意は確かな物だ。だが、他に対する温度差があまりにも激しいことが、不二咲にはどうしても理解できなかった。

 

「やっぱり、貴方も世界の敵なのね」

「酷いよ、霧切ちゃん。私は希望ヶ峰学園の方針に則っていただけなのに」

 

 希望ヶ峰学園の方針。即ち、今はステーキとなった元・学園長の考えと言うことでもあり、同時に霧切の父親を揶揄したことに気付いたのか、戦刃は口元を抑えていた。

 何とも言えない気まずい沈黙が場を支配した所で、この空気を打破しなければという責任感に駆られた戦刃はとりあえず思い浮かんだことを口にした。

 

「でも、今は汁も滴る良い男になったよ?」

「彼女が貴方を残姉と言っていた理由を理解したわ」

 

 擁護所か追撃を加えただけだった。そして、噂をすればと言った具合で学園長肉も入って来た。流石に1枚肉が飛び跳ねている姿はSAN値によろしくないと判断された為か、今は取り付けられた人工の手足を使って移動しているが、どっちにせよ不気味だった。

 

「あ。学園長。様子を見に来たんですか?」

 

 霧切は顔をしかめたが、不二咲は見慣れたのか普通に対応していた。

 学園長として非道に走る彼らを止められなかった責任感から足を運んで来たのだろう。カプセルで寝ている彼らは穏やかな物だった。

 言葉を発することが出来ないが、既にこういった対応にはなれた為か。未来機関には各所にお絵描きボードが設置されており、仁はペンを取っていた。

 

『私達の事情で何度も彼らを振り回すことを心苦しく思う。せめて、プログラム内では失われた青春を謳歌して欲しい』

 

 評議委員会に付け込まれたこと。予備学科を蔑ろにしていたこと。全てが積み重ねって、今日に至る悲劇を招いていた。

 全ての責任から目を背けて死ぬ訳にもいかない。償いきれる訳もないが、自分の人生は贖罪の為に費やされる物だと考えていた。

 

「出来ると思います。だって、彼らが楽しんでいた頃の思い出をしっかりと持っている人が2人も一緒にいますから」

 

 不二咲は菜摘と七海の入っているカプセルも見ていた。彼女達の記憶はそのままにプログラムに入っている訳で、不測の事態が起きた時の対処方法も教えているが、やはり不安なことには変わりなかった。

 皆が学園生活でしんみりしているなか、輪に入れない戦刃は仁が使ったお絵描きボードを拭いていた。仁がその動きに気付いて、身を捩じらせていた。アレは何をしているんだ? と。

 

「貴方が使った後のお絵描きボードはべた付くから、ああやって見た人が拭いているのよ」

 

 常に肉汁が滴っているんだから仕方がないが、まるで腫物を扱われている様で、ちょっぴり傷付いていた。

 

~~

 

 教室内で目を覚ました者達の多くは困惑していた。自分達はどうして、こんな所にいるのだろうかと。情報をすり合わせた所、希望ヶ峰学園に入学したと思ったら、この状況であったらしい。

 

「も、もしや。拉致された、とかですかぁ?」

 

 

 全身に残る傷痕が特徴的な少女、超高校級の保健委員『罪木蜜柑』が縮こまりながら可能性を口にした。超高校級と言われるほどの人材であれば、人質としても十分に価値がある。

 

「だったら、もう少し待ってみよう。もしも、僕達を人質に使うつもりなら脱走を防いだり、恐怖を与えたりする為にも説明が来るはずだからね」

 

 特に悪びれもせずに長身の男子。超高校級の幸運『狛枝凪斗』が言った。一同の緊張が高まる中、九頭龍冬彦は怯む様子も見せずに叫んでいた。

 

「オラァ! 出て来やがれ! 俺ら兄妹を誘拐(サラ)ったっていうんなら、覚悟できてんだろうな! 人の形で死ねると思うなよ!!」

 

 童顔で小柄ではあるが、放たれた声に込められた威圧感と殺気は周囲の人間を押し黙らせるには十分だった。自らの才能である『超高校級の極道』としての存在感を放っていた。

 シンと静まり返る中、前方の経壇がガタガタと揺れた。そして、ピョン。と、何かが躍り出た。

 

「九頭龍君。そんなに怒らない欲しいでちゅ」

 

 ピンと突き立った長い耳にふわりと揺れる天使の羽、手には魔法のステッキ。ふわふわモコモコの体を揺らすとフリルが躍った。桃色のファンシーなウサギのぬいぐるみ。一同が共通で抱いた印象だった。

 

「君が解説役?」

 

 誰もが呆気にとられる中、狛枝だけは事態に動じずに尋ねていた。すると、ぬいぐるみはペコペコと頷いていた。

 

「解説役って言うと少し固いから、先生って呼んで欲しいでちゅ」

「こういうぬいぐるみとかが主導権握った後、デスゲームを始めるとか映画とかであるあるだよな……」

 

 黄色いツナギを着たバイオレットヘアーの男子。超高校級のメカニックである『左右田和一』がぼそりと呟いた言葉に反応して全員が身構えていた。これには目の前のぬいぐるみも慌てて否定した。

 

「なんてことを言うんでちゅか! 先生はミナサンにそんなことをさせるつもりはありません!」

「では、これはどういう集まりだ? 俺達に何をさせるつもりだ?」

 

 肥満体を震わせながら十神が尋ねた。実際に自分達が集められた理由は誰もが気にしていることではあった。

 

「修学旅行でちゅよ! ミナサンには楽しい思い出を沢山作って欲しいんでちゅ! そぅれ!」

 

 魔法のステッキからエフェクトが放たれたかと思えば、周囲の壁がセットの様に剥がれ落ちた。波の音、白い砂浜、照り付ける日差し、揺れるヤシの木。教室の外には南国が広がっていた。

 何が起きたか分からずに唖然とする一同であったが、ぬいぐるみは驚いていると判断したのか、説明を続けた。

 

「この島で沢山の思い出を作ってでちゅねぇ」

「うぉおおおおお! デスゲーム定番の孤島だぁああああああ!」

「アンタうるさいよ!!」

 

 そばかすがチャーミングな赤毛の少女。超高校級の写真家である『小泉真昼』が が左右田に注意をしていた。何があってもデスゲームに誘導したい彼の発言を聞いて、ぬいぐるみはションボリしていた。

 

「ひょっとして、そういった映画とかが好きなんでちゅか? でも、大丈夫でちゅ! この島に、そんな危険なことや血生臭いことは無いでちゅよ!」

「だろうな。こんな所に秘密裏で拉致って来れる組織に取っちゃ、自分達を脅かす『危険』や『血生臭い』ことはないも同然ってことか……」

 

 九頭竜が息を飲んでいた。菜摘は口元を抑えていた。恐怖からではない。笑いをこらえているからだ。

 

「(そりゃ、皆。あんな生活を送っていたから猜疑心が強くなっていることは分かるけれど……)」

「なるほどな。背中の羽は天からの遣いと言う訳か」

 

 組織と言う言葉に反応した男子の体で4匹のハムスターが跳ねていた。南国だというのにストールなどを身に着けた彼は、雰囲気も合わさって非常に独特な雰囲気を醸し出していた。外連味溢れる言動ではあるが、超高校級の役者。という訳ではなく超高校級の飼育委員である『田中眼蛇夢』だった。

 どうやっても誤解が解けないでいるので、ぬいぐるみが困り果てていると、豊満な褐色ボディを身軽に動かし、超高校級の体操選手である『終里朱音』がヤシの木を登っていた。

 

「終里しゃん!?」

「お。取れた」

 

 成っていたヤシの実をもぎ取ると、華麗に飛び降りた。そして、素手で叩き割ろうとした所で筋肉質の巨漢『弐大猫丸』に止められた。

 

「待たんかい!! 道具を使わずして手を痛めたらどうする!!」

 

 相手のコンディションを気遣う繊細さは、彼が『超高校級のマネージャー』故である。自前の筋肉を用いてパカリと割ると、中には透明な液体が入っていた。ガボガボ飲み干していたが、当たり前の様に美味しくなかった。

 

「あの。お腹減っているんでちゅ? だったら、スーパーに行ったら色々と美味しい物も置いてあるんでちゅけど」

「マジで!? 行く! 行く!!」

「ふむ。何か食える物があるなら、俺も行こう」

 

 そう言って、終里は集団を飛び出して何処かに行ってしまった。彼女を追ったのは、弐大に並ぶ巨漢。しかし、引き締まったからだとは一切無縁なわがまま脂肪ボディを揺らして『十神白夜』は彼女を追った。まだ太るつもりだろうか。

 小学生でも、もっとマシな態度を取るぞと言わんばかりの無法地帯であったが、ぬいぐるみは色々と諦めたのか、皆に薄いスマートフォンの様な物を渡していた。

 

「これは電子生徒手帳でちゅ。この島に関する地図やルールとか。色々なことが書いているので、困ったことがあれば見て欲しいでちゅ」

 

 生徒一人一人に配っていた時のことである。日向に渡した生徒手帳の画面はバグっていた。手帳の名前は『アネ゙デパミ゙』と表示されていた。

 

「……えっと、後で直しておくでちゅ」

 

 自分だけ電子生徒手帳を受け取れなかったことを不服そうにしていると、狛枝から肩を叩かれた。

 

「そう言うこともあるよ。じゃあ、僕と一緒に行動しない? 何かあったら、僕伝手に呼べばいいし目印にもなると思うしさ」

「そうしてくれると助かりまちゅ。暫くは、自由時間でちゅ! 好きに、この島を見て回って欲しいでちゅ!」

 

 パタパタと羽搏いて行くと、ぬいぐるみは何処かに姿を消した。各員、暫く顔を見合わせた後、まずは重要なことを始めることにした。

 

「とりあえず、お互いに自己紹介をしておかない? 名前も知らないのは不便だからさ」

 

 狛枝の提案により、先に出て行った十神と終里を除いた者達で自己紹介をすることにした。概ね、順調に進む中。日向に番が回って来た。

 

「……」

「なんか言えよ」

 

 九頭龍に促されたが、日向はムスッとしたままだった。すると、再びぬいぐるみが現れた。

 

「あ。日向クン、生徒手帳の一部修理が終わったから渡しておくでちゅ!」

 

 彼が受け取ろうとした所で、菜摘が覗き込んでいた。彼女からすれば茶番に過ぎないが、納得を得るために必要な行動ではあった。

 

「へぇ。日向創って言うんだ。超高校級のスケーター、だってさ」

 

 脇に抱えているスケボーを見りゃ、誰でも分かる。一通り、自己紹介を終えたので、改めて一同は各々に行動を始めた。

 

「日向君、もしかして喋れないの?」

 

 狛枝からの問いかけにブンブンと頷いていた。集団生活をする上で不便ではあるが、特に気にしている様子も無かった。

 

「だったら、僕が君の代りになるよ。幸運しかない僕でも役に立てることがあるなら嬉しいな!」

 

 卑屈にポジティブだった。そんな彼に対して、己を肯定する為にはコレが一番と言わんばかりにスケボーを差し出していた。

 

「いや、流石に砂浜でスケボーは無理じゃないかな。詳しくは知らないけれど、その車輪? みたいな部分に砂が詰まっちゃうかもしれないし」

 

 ならば見ていろ。と言わんばかりに、日向は砂浜の上で地面をプッシュした。すると、いかなる奇跡だろうか。普通に滑った。これには狛枝も震えていた。

 

「素晴らしいよ! 僕みたいなゴミカスの不安なんて不要だったんだね! でも、僕には畏れ多くて乗る気にはなれないかな」

 

 離れ業を見せてしまったことで、却って遠ざけてしまったらしい。かくして、日向達の修学旅行は始まった。

 

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