舞園「超高校級のヌケーター?」   作:ゼフィガルド

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43時間目:ダンガン・アイランド

「この島にあった目ぼしい物と言ったらスーパーマーケットと牧場だね。空港には脱出する為の手立ては無かったし、後は僕達が過ごす為のホテルとコテージ位?」

 

 孤島かと思われていたが、思ったよりもしっかりと人の手が入っていることに感心していた。空港があったので、飛行機などを入手して脱出出来ないか? という考えも過ったが、直ぐに無駄だと分かった。

 他の生徒達も似たような調査状況だったらしく、全員が一旦ホテルに集まって調査状況を共有し合う中、ロビーに設置されていたゲームに夢中になっている女子が1人。超高校級のゲーマー『七海千秋』がレバガチャしていた。

 あまりに熱心にプレイしているので、物珍しく映ったのか。何処となく気品のあるプラチナブロンドヘアーの女子。超高校級の王女である『ソニア・ネヴァーマインド』が画面を覗き込んだ。

 

「七海さん。コレは一体?」

 

 見た所、自分が知っている様なゲームではない。ドットの様なレトロな感じはないが、最新のゲーム機ほどテクスチャが洗練されたような感じもない。

 画面内では七海が操る女性キャラクターが、粗いポリゴンで作られたゾンビやおどろおどろしい怪物をボコボコにしていた。

 

「イルブリードACだよ。家庭版からアクション要素だけを抜き取って移植されたクソゲーなの。無駄にスピード感とアクション性が向上しているのが腹立つよね」

「そ、そうですか……」

 

 普通に引いていた。ソニア以外の関心をまるで引かなかった為か、一同は彼女らを無視して今後の方針を考えていた。

 

「このホテルにも食材は揃っているし、飢えることは無いと思うよ。厨房の設備もしっかりしていたし、僕も腕の振る舞い甲斐もあるよ!」

 

 シェフ帽を被った一際小柄な男子『花村輝々』は、見た目から分かる様に超高校級のシェフだ。メリケンサイズのボトルコーラをラッパ飲みしていた十神が深く頷いていた。

 

「兵站の確保に問題はないと言うことだ」

「問題が無さすぎて問題だと思うぞ」

 

 左右田が十神の方を見ながら言った。お前の場合は足りすぎていると言いたそうだったが、見た目のパンキッシュさとは裏腹に控え目な性格をしていた。

 

「他に気になる所があったとしたら、何処かに続く大橋があったことかな。ちょっと先に行くのは皆と相談してからの方が良いと思って、引き返したけれど」

 

 九頭竜冬彦の妹。というだけではなく、超高校級の妹としても認められているという『九頭龍菜摘』が重要そうなことを述べた。

 例のぬいぐるみは修学旅行と言っていたが、この島だけで終わるとしたらあまりに行動範囲が狭すぎる。

 

「だったら、私が調べて来ようか? 先に何かあったとしても対応は出来ると思うが」

 

 竹刀袋を提げた少女、超高校級の剣道家である『辺古山ペコ』が名乗り出た。危険はない。と言っていたが、万が一の事態に備えてのことだろう。

 そんな彼女の疑問に答える様に、何処からともなくロビーに件のぬいぐるみが現れた。

 

「大丈夫でちゅよ! この修学旅行には危ないものはありまちぇん!」

「本当か? 糖尿病とか腎不全とか。内臓疾患みたいなのもか?」

 

 チラリと左右田が十神達の方を見た。どうしても、彼は不摂生のことが気になるらしい。これに関しては、ぬいぐるみも少し困った顔をしていた。

 

「大丈夫でちゅよ。……多分」

「そこは言い切れよ!!」

 

 左右田とぬいぐるみのコントを肴に終里と十神はビックサイズのポテチを食っていた。見ているだけで臓器がジクジクと痛む気がした。

 

「えっと、ぬいぐるみさん。で、良いのかな?」

「あ、すいまちぇん。自己紹介がまだでちた。あちしは『ウサミ』と申しまちゅ。気軽にウサミ先生って呼んで欲しいでちゅ」

「じゃあ、ウサミ先生。ここに来たってことは、僕達に何か用があるのかな?」

 

 今の所、害意や悪意の様な物は感じ取れていないが、狛枝は慎重に観察をしていた。ともすれば、緊張感すら漂う光景であったかもしれないがウサミは柔らかな雰囲気のままだった。

 

「はい。先程、話にもあがっていまちたが、例の大橋の先にある中央の島に来て欲しいんでちゅ。一応、解説はしておいた方が良いかと思いまちて」

「分かった。だが、もしものこともある。半数は残ろう」

 

 ボトルコーラを飲み干した十神にはエネルギーが満ち足りていた。彼の提案により、比較的運動神経の良さそうな者とガタイの良い者が向かうことになった。

 大橋を渡った先には、中央に巨大な像が建っている以外は何もなかった。だが、この島が重要であることは直ぐに分かった。

 

「他の島もあるんだね」

「はい。いきなり、全部の島を解放しては皆さんも何処に行けばいいか迷ってしまうと思ったので、解説するまでは一旦締めさせて貰いまちた」

 

 この公園の周辺には、自分達が渡って来たのと同じような大橋が幾つか設置されていた。数にして4つ。自分達が渡って来たのも含めたら5つの大橋が存在することになる。

 

「このレクリエーションが終えたら解放する感じで?」

「その通りでちゅ。ただ『修学』旅行である以上は漫然と過ごして欲しくはないので、課題も用意してあるんでちゅ。皆が一つの目標に向かって進んで行く中で、希望のカケラを見出して、大切な絆を育んで欲しいんでちゅ!」

 

 他の生徒達を代表して、狛枝が会話をしてくれている中。ガタイが良いだけで連れて来られた日向は退屈そうにしていた。

 ……そんな彼の感情を読み取ったかのように。中央に設置された像がガタガタと動き出していた。これはウサミも予想外だったらしく、少し驚いていた。

 

「何でもかんでも、ゆるふわほのぼの路線だなんて。そんな低刺激。視聴者も飽きちゃうだろ!!」

 

 ピョーンと像のてっぺんに降り立ったのは白と黒のツートンカラーをした、クマがモチーフとなっているであろうマスコット的な存在だった。

 連れて来られた生徒達の方は何が起きているか分からず困惑する中、ウサミはステッキをライフルの様に構えていた。

 

「そう言うのはいりまちぇんから」

 

 可愛らしいステッキの先端から大量の弾丸が放たれた。この攻撃は、突如現れたマスコットとしても予想外だったらしく、像から転げ落ちていた

 

「お前物騒過ぎだろ!!」

「あちしにはミナサンを守る責任があるんでちゅ!」

「オメーが一番の脅威だよ……」

 

 冬彦が漏らした感想に誰もが頷いていた。ただ、新たに現れたマスコットもやられっぱなしと言う訳ではなかった。

 

「クソーッ! お前が、そう言うつもりならこっちも考えがあるんだぞ! いでよ! モノケモノ!!」

 

 中央の像に亀裂が走る。すると、中から4体の巨大メカが出現した。

 いずれも殺意に満ちた武装をしており、ウサミとは比べ物にならない程に強大な存在だった。これには生徒達も絶句する外なかった。ただ、ウサミの行動は異様に早かった。

 

「日向クン!!」

 

 突如指名された彼は首を傾げた瞬間である。子供の身長位しかないと思っていたマスコットは思ったよりもマッシヴだったのか、彼を担ぎ上げていた。

 

~~

 

「モノクマ!? どうして……」

 

 順調に行っていた希望更生プログラムに突如として現れた忌々しい存在に、モニタリングをしていた霧切は目を見開いていた。学園長肉も困惑する中、戦刃は不二咲の方を見た。

 

「どうにかする方法は?」

「あるよ!」

 

 まるで、この事態を想定していたかのように不二咲は特定のコマンドを入力した。すると、カムクラのカプセル内でアームが動き、ちょびっとだけ封殺スーツが脱がされた。大層なギミックのわりにやることはしょぼかった。

 

~~

 

「どぅおりゃああああ!!」

 

 日向を掲げたウサミは、まるで彼を丸太の様に扱いメカを打ち据えた。

 普通ならば武器として扱われた彼にダメージが行くだけだが、いかなる奇跡か。殴られた虎型のモノケモノは天高く打ち上がり、遠方の海に落ちた。

 

「まだまだでちゅよ!!」

 

 脅威認定されたのか。蛇型のモノケモノがウサミ達を絞め殺そうとした中、続く日向アタックを食らうと、その場で回転運動を始めた後。最終的に上半身だけが地面に埋まった前衛的なモニュメントになり果てていた。

 

「キーッ!!」

 

 2体も撃破されたのを見て、鳥型と馬型。更には人型も同時に襲い掛かって来たので、ウサミは日向が脇に抱えていたスケボーを奪い取ってライドした。

 すると、彼女達は高く飛び上がり、鳥型モノケモノの背中に取り付いた。すると、いかなる奇跡か。まるでモノケモノを従えたかのようにスーッと移動して、馬型と激突してスクラップになった。

 残る人型が握りしめた拳を振るって、ウサミと日向をぶっ飛ばした。あの質量で殴られたらミンチになる外ないというのに、特に何の問題も無かったかのようにリスポンしていた。

 

「またかよ!!!」

 

 白黒マスコットが抗議していたが、ウサミは最後まで日向を使い倒していた。彼と共にスケボーにライドして高く飛び上がったかと思えば、相手の頭上へと降り立ち地面までヌルリと落ちて行った。

 その際、重要なパーツをぶち抜いたか引き裂いたか。人型のモノケモノも沈黙していた。……ウサミはステッキをライフルの様に構えながら、白黒マスコットににじり寄っていた。

 

「ミナサンは! あちしが守るっ!」

「お前が一番生徒を危険に曝しているんだよなぁ……」

 

 好きな様に使われた日向から怪訝な視線を向けられる中、ウサミは白黒マスコットを拘束していた。トホホホ……と漏らした辺りで、勝利と安全を確保した彼女は皆の方を振り向きながら言った。

 

「ミナサン。トラブルはありましたが、もう大丈夫でちゅ!」

 

 スクラップと化したモノケモノ達を背景に笑顔を振りまくウサミがどの様に映ったのか。誰も一言も発していない、この状況こそが答えだった。

 ただ一人。突然、武器の様に振り回された日向だけが不満を晴らすかのように、手にしていたスケボーでウサミの頭を殴っていた。

 

~~

 

 事の顛末は直ぐに共有された。あのウサミって奴は、突然生徒を武器の様に扱う超暴力主義の存在だということを。

 

「アイツが言う課題って言うのも、きっと俺達を殺し合わせるつもりに違いねぇ。さっきの出来事はデモンストレーションだ」

 

 九頭龍が顔を青褪めさせながら言った。長年、暴力の世界に身を置いて来た彼には茶番か本気かという位は見分けが付く。

 皆が肝を冷やしている中、正に正に件の存在であるウサミが現れた。隣には先程の白黒マスコットがゴシックロリータ調にアレンジされていた。耳もウサギの様に伸ばされている。

 

「ミナサン。悪い子だった、モノクマちゃんはオシオキされて、モノウサちゃんになりました! 仲良くして上げて欲しいでちゅ!」

「み、皆。コイツには逆らわない方が良いよ……」

 

 だろうな。と、全員が静かに同意していた。そして、本来の用件を思い出した様にウサミは、ロビーに設置されていたボードに何かを書き込んでいた。

 

『花飾り』

 

「まずはミナサンに物作りに慣れて欲しいんでちゅ。だから、最初は簡単にできるフラワーアレンジメントが課題でちゅ!」

 

 パパパパと皆に説明書の様な物を渡していた。可愛らしい絵柄と見易いフォーマットで作られた物であり、小学生でも作れそうな物だった。

 

「き、期限は?」

「そうでちゅね。期限は5日。のんびり作って欲しいでちゅ。材料を集める所も含めて課題でちゅよ!」

 

 ピョンとモノウサを連れてウサミ達は何処かに去って行った。

 ……コロシアイはしなくてもいいにしても、作らなければ何をされるか分からないという恐怖が渦巻いていた。

 

「まずは材料を集めに行くか」

 

 動かねば。そう感じたのか、十神が全員に指令を下していた。一先ず、全員がホテルから出て目標の材料を探しに行った。

 

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