舞園「超高校級のヌケーター?」   作:ゼフィガルド

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 すんごいしょうもないネタを仕込んでいます。過去作のAC6編を見ていると、引っ掛かる要素があるかも。


59時間目:苦行

 左右田は考えていた。一体、何処で自分は退出するべきだったんだと。

 江ノ島扮するエリコの快進撃は続いて行き、復讐に燃える父親をバットで滅多打ちにした後、巨大化した彼を操るアトラクションスタッフをも撲殺していた。

 最初こそ、皆はグロテスクな展開にドン引きしていたがあまりに暴力シーンがお手軽に出される物なので感覚がマヒしていた。最初に体調を崩していた弐大もポップコーンを片手に鑑賞を続けている。

 

「アトラクションの数的に考えてよ。導入と3つ目くらいまでクリアしたら、きっと1部は終わるんだよな?」

 

 最初に三部作と表示されていたので、劇中で示されていたアトラクションの数から、その様な構成になることを左右田は逆算していた。

 しかし、両隣にいる日向と狛枝は真剣に鑑賞している為、声を掛け辛かった。チラリとモノウサの方を見ると、力なく首を横に振っていた。

 

「(なんで、全員出て行かねーんだよ!!)」

 

 左右田の予定としては、弐大や終里辺りが出て行ったのを見計らって、共に出て行き『なんだよあのクソ映画!』と悪態を吐いて盛り上がるつもりだったのだが、誰も出て行かない。

 それ所からシーンが進むごとに皆が映画の世界にのめり込んでいた。エリコの恐怖を感じないという設定は、江ノ島によって完璧に演じられていた。ホラーの演出の度に左右田が悲鳴を上げようと主人公が毅然として立ち向かう様は人間賛歌さえ感じられた。

 

「幻覚だぞ」

 

 左右田の思考を読み取ったかのようにモノウサが注意していた。

 2つ目のアトラクションは惨劇の現場と化したキャンプ場で真相を探るという話であり、短絡的にホッケーマスクを被ったアイツを思い出していた。

 

「ちなみに1作目の犯人は本人じゃないんだよね。こんなクソ映画を見るより、よっぽど面白いからそっち見なよ」

 

 そりゃ、ホラー映画を見ない人もキャラ名が分かる位に有名なんだから名作に決まっている。そして、今回のアトラクションも全力で駆け抜けていく訳だが。

 

「お……」

 

 ここに来てドン引きしていた花村から黄色い声が上がった。エリコが使っていたショックイベントを回避する為のホラーモニターが奪われたのだが、これには衣服を透過させる機能が付いていたのだ。

 ホラーと言えば、グロ! エロ! を地で行く、大人のお子様ランチとも言える様相であったが、現役のJKに何をやらせとるねんと言わんばかりに江ノ島の見事な裸体が晒されていた。これには興味が無かった左右田の唇の端から変な笑いが出ていた。チラリとモノウサ見ると。

 

「ファッキュー」

 

 マスコットらしい丸い手の中心部から指らしきものが生えて、天を突きさしていた。意外とエロはお気に召さないらしい。狛枝は兎も角として、日向も喜んでいるかと思えば真顔だった。

 

「(本当にコイツ。何考えているのか分からねぇよな……)」

 

 話すことは出来るが、依然としてスケボーにしか興味がないのかもしれない。

 こんな思考をしている間にもアトラクションは進み、敷地内の奥に居た巨大殺人ミミズとおじいさんの感動的でチープな再会を前に、狛枝や終里が涙ぐんでいた。ソニア、西園寺、澪田は爆笑しっぱなしだった。

 

「ぎゃひゃひひひはははげほっ」

「(こんなソニアさん。見たくなかったなぁ……)」

 

 彼女の気品高さに惹かれていたが、こうも俗世に順応している姿は中々見るに堪えない。

 そして、ようやく1部作の〆らしき3つ目のアトラクションへの挑戦となっていた。今度は人々を材木人間にしてしまう恐るべき製材所の話だ。

 

『あぷぷー ぷりぷりー』

 

 木製のマネキンが意味のなさない鳴き声を上げて闊歩していく様子は、もはや芸術的とも言えた。小泉なんて、映画館のマナーをガン無視して写真を撮るレベルだった。

 そして、エリコもまた材木人間にされて殺人木こり達との死闘を潜り抜けた先。何処の誰の物かは分からない脳みそを取得するという、いよいよ倫理観と常識の崩壊を目論む描写を入れて来た。

 

「もう十分堪能したよ……」

 

 左右田だけではなく、七海もまた倒れかけていた。幾ら見入っていても限界はあるらしい。だが、映画が3部作であるならココで区切りになるはずだ。左右田は頑張って耐えて、耐えて、耐えた……!

 

「(あ、あとこれが2つ……)」

 

 エリコがアトラクションのラストに居た樹木と化した社長を斧で引き千切り殺して突破した。そして、良い感じに次に続きそうなことを言ったのでスタッフロールが流れるかと思いきや。

 

「アレ?」

 

 普通に4つ目の攻略が始まった。まさかとは思うが、この作品は6つ全部をクソ真面目に攻略していくつもりなのだろうか? 

 左右田と似たような考えをしていた者達は他にもいたのか、普通に6つ目の攻略まで上映されそうな様子を見て数人が青褪めていた。ソニア達は手を叩いて喜んでいたが。

 

~~

 

 上映時間、実に4時間23分。6つ目の攻略からエリコの父親との確執や糞便シャワーなどのショッキングシーンも含めて、最後まで視聴者を虐め抜く構成だった。スタッフロールが流れた際には涙さえ溢れた。感動ではなく、苦行から解放された喜びでだが。

 

「西園寺さん! 澪田さん! 小泉さん! 見て下さい! パンフ置いていますよ!! 貰って行きましょう!!」

「良いですね。記念に一つ貰って行きましょう」

「要らないよ、こんなクソ映画のパンフ。家にあるだけ恥になるしね!」

 

 ソニアと澪田がノリノリで持って帰る中、西園寺は冷たく払い除けていた。

 反応していなかった小泉と言えば、上映中にマナー違反の極みであり、才能の唾を吐く盗撮行為の賜物を見返してはウットリしていた。

 

「みなさぁあああああああん!! お水ですよぉおおおおおおお! 水分補給はしっかりとですねぇええええええ!!!」

 

 罪木から渡された水が心身に染み渡った。そして、幾らか時間を置いて冷静になった所で、左右田は重要過ぎる事実に気付いた。

 

「あの映画!! 俺達の記憶に何も関係ねーじゃん!?」

「そうだね。画面内にそう言った情報が無いかも観察していたけれど、特にそう言った者は無かったよ」

 

 江ノ島の活躍を見ていただけではなく、そう言った所もちゃっかり観察している所は狛枝らしかった。

 

「唯一、希望ヶ峰学園に関係のある物と言えば、主演女優である江ノ島盾子が希望ヶ峰学園への編入が確実と言われる位に超高校級であるという位か?」

「だが、俺達には直接的な関係があるとは思えないな」

 

 日向と十神が話し合っていた。もしかしたら、失われた記憶の中で関係があったかもしれないが、そこまで重要な情報だとは思えなかった。

 自分では有益な情報が出せそうにないので、左右田は上映中に死に掛けていたモノウサの方へと駆け寄った。映画館から出て来た彼は、燃え尽きた感じで壁に凭れ掛かっていた。

 

「おぅ、大丈夫か?」

「この映画に出演を決めたのは、どう考えても正気じゃなかった。絶望的と言ってももっと考えるべきだったよね」

「確かにな。超高校級レベルのギャルなんだから、もっとマトモなラブコメとか原作ありの実写映画に出ればよかったのに」

 

 手堅く行っておけば良かったのにと思いつつ、こんな映画に出演を決めた主演の江ノ島は何を考えていたのだろうかと思った。

 しかし、ここでふと左右田は疑問が浮かんだ。こんなクソ長映画だから3分割される位で良いと思っていたのに、一切濃度と量を薄めないまま透過して来た。残りの2部はあるのだろうか?

 

「(いや、きっと三部作を一挙上映したんだ。そうに違いない)」

 

 でなければ、こんな長い映画が作られる物か。だとしたら、何の情報も無い映画を見せられていた訳になるのだが。きっと、これは一種の挑発行為だと思っていると、滅茶苦茶笑顔なソニアがパンフを振り回していた。

 

「みなさーん! イルブリードは3まであるらしいですよ! 次回作である2は惑星で発見された新資源を巡って企業間の思惑が交差するSFホラーアクションですって!!!」

 

 彼女の無邪気な発言に喜んでいたのは、クソ映画愛好会と化した周囲の人間だけであり、左右田とモノウサはかつてない程に絶望していた。

 

~~

 

「お♡♡♡ やっべ♡♡♡ 盾子ちゃん最高♡♡♡」

 

 希望更生プログラムの名を借りて絶望的な行為を傍観していた間接的加害者共の内の1人、戦刃むくろは勤務時間中に映画鑑賞にプラスして興奮のあまり、その場で奇怪な舞を踊っていた。

 隣で一緒に経過観察をしていた霧切はかつてない程に眉を顰め、プログラムのバグチェックなどを現在進行形で行っている不二咲は深く頷いていた。

 

「ゲームの世界観を見事に表現した、とてもいい実写化だと思う!」

「嘘でしょ?」

「盾子ちゃんのカッコいい姿もセクシーな姿もお腹いっぱい楽しめる、見る栄養補給剤だよ」

「何も会話がかみ合っていない」

 

 不二咲も戦刃も好き勝手に言っていた。2人が勝手に盛り上がっているので、霧切はカプセル内に収められている、77期生達を見に行ったが大半の者は苦痛に顔を歪めていた。

 

「(3部作だから、恐らく2部と3部に彼らの記憶に関する情報を細切れにして入れ込んでいるんだと思うけれど)」

 

 だったら、普通に1部目にも入れておけばよかったのでは? と思ったが、単純に苦痛を与えることを目的にしていたのかもしれない。

 いや、あるいは自分達が監視していることを考えて、バグ側が監視者達の注意とやる気を削ぐ為に仕込んだトラップだったかもしれない。

 

「(そう。今、このプログラムには私達の意図していない何かが動き回っている)」

 

 それは、77期生達が犯した過ちの代償とも言える物であり、自分の父。霧切仁が学園長を務めていた希望ヶ峰学園の罪とも言える。

 だからこそ、彼らを助ける為に動くのは贖罪なのだ。……バグ側の相手を助けられる気はしなかったが、少なくとも彼らの恨みや怒りは受け止めなければならない。

 

「(あの映画も、そう言った形の一つなのかしら?)」

 

 真面目に考察していたが、多分何の関係もない。だとしたら、侵入者側にバカが居るとしか思えないが、彼らの意図が全く分からない以上。如何にして動くべきか……。

 

「ねぇ、不二咲君。皆で先にイルブリ2も見てみようよ。実際に上映される映画との差異を確認する為にもさ! これの主演も盾子ちゃんなんだよ!」

 

 永遠にイルブリに振り回される女と化した江ノ島。もしも、彼女が健在であれば、内容についても色々と聞くことは出来たのが、望めそうにもない。

 

「監督は1作目の人と同じ、コッダーカさんで。助監督に入っているペイ……なんて読むんだろう? まぁいいや」

 

 霧切はゾッとしていた。まるで、不二咲が止める様子が無いのだ。実際にプログラム内で上映される映像と差異が無いかを確認するというのは、必要な作業だとは思うのだが。

 

「2人共。それって、私も見ないと駄目?」

「え? 見ないの?」

 

 戦刃は見ないというアイデアが信じられないという顔をしていた。彼女が絶望姉妹の片割れであることを、改めて認識した。……そして、彼女の合理的思考は差異を確認する為にも見るべきと言う結論に達していた。

 

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