舞園「超高校級のヌケーター?」   作:ゼフィガルド

71 / 145
71時間目:テリトリー

「出発する前にコイツを配っておく。何かあったら、連絡を入れてくれ」

 

 左右田から通信機を受け取った一同は、彼から使い方の説明を受けていた。

 この島における目ぼしい施設と言えば、モーテル、病院、ライブハウス、映画館、これに電気街を加えた5つだ。

 

「ライブハウスの方は澪田が調べるっす! やっぱり関係者が入った方が違和感とかも気付きやすいと思うし」

「じゃあ、ワシもそっちに行こうか。機材などを移動させたりする必要もあるかもしれんからな」

「弐大のおっさんが行くなら、オレもそっちに行くかな」

 

 澪田の言う通り、ライブハウスに出入りすることの多かった彼女であれば違和感などにも気付きやすいだろう。また、機材の移動や万が一の襲撃などがあった場合も弐大と終里が居れば安心も出来る。

 

「あ、それと。日寄子ちゃんも来て欲しいっす!」

「あ? なんで……」

 

 疑問に思った終里が口に出そうとした所で弐大に制された。西園寺は小さく頷いていた。

 他の者達は口にこそしなかったが、澪田が彼女を勧誘した理由を察していた。先の口論の件もあって、日向と距離を置く為だろうと。

 

「澪田。何かあったら、直ぐに連絡をくれ」

「りょうかーい!」

 

 十神に元気よく返事をすると、二つのグループに分かれて調査が始まった。

 日向達が向かった電気街は猥雑としていた。建物が林立しており、店先には電化製品だけではなく、関連製品なども雑多に並べられている。

 

「ちなみにここにあるのは持ち出し自由です」

 

 モノウサが補足を入れると、数人が目を輝かせたが頭を振った。今は小泉の捜索を優先するべきだと。

 

「何かあったら、直ぐに通信機で連絡を入れろ。正午になったら一度、ここに集合する様に」

 

 十神の言葉に全員が頷いた。誰かと行動を共にする者、単独で動く者と別れて、電気街の探索が始まった。

 

~~

 

「ヌッ!!」

 

 調査を始めて数分。七海は電気街を堪能していた。ゲームショップと思しき場所に辿り着いた彼女は、調査と言う名目でリュックに往年の名作を詰め込んでいた。これも必要なことである。

 目ぼしい物を収穫した彼女は、また別の建物に入ろうとした所で先客に出くわした。同じ様にソフトを漁っていたソニアである。

 

「七海さん? あ、いや。ひょっとして、こう言ったパッケージにも何かが記されているのではないかと思って……」

「嘘つけ。チラチラ見ていただろ」

 

 小泉の探索よりも自らの趣味を満たす為に、店内のラインナップを見ていただろうと。ピシャリと言い放った。自分のやって来たことは棚に上げて。

 

「いえ、見るならガッツリと見るべきです。何処に何が仕込まれているか。ほら、弱火でじっくりと頼んだら、作動する仕掛けもあるらしいじゃないですか」

「そうだよ」

 

 彼女らは年の為にゲームソフトのパッケージや棚、倉庫なども調べていたが、当たり前の様に仕掛けや手掛かりなどがある訳もなく、七海のリュックの中身を増やした位で終わった。

 

「七海さん! 次の建物の調査に向かいましょう!」

「おかのした」

 

 そう言って、向かった先にある建物の看板には『レトロゲー』と書かれていた。決して遊んでいる訳ではなく、どんな小さな可能性をも見逃すまいとする、王女特有の慎重さを発揮していた。

 七海も証拠になりそうなものを何としてでも見つけんと店内を見て回っていた。ショーウィンドウの中に並ぶプレミアソフトに心を引かれつつ……。

 

~~

 

「電気街って言ったら、僕と無縁な街だと思っていたけれどさ」

 

 花村が居たのは電化製品の中でも調理家電などキッチン関係の物が置いてある場所だった。隣に居る十神は眉間にしわを寄せていた。

 

「花村。今は、小泉の手掛かりがないかを調べている時だ。製品にうつつを抜かしている場合じゃないぞ」

「分かっているよ。でも、こう言うのがあったら調理の幅も広がるんだろうなって。この島に来てから碌なモノ食べてないでしょ?」

 

 思い返すに。映画館では訳の分からない物が入った食料を渡されたし、病院で食った物の味付けは最悪だった。そんな経緯を思い返せば、超高校級の料理人としても思うことはあったのだろう。

 

「料理人と言えば手作業や職人の技。と言ったイメージはあるが。お前もこう言った物を使うのか?」

「当然だよ。道具は道具だからね。今時、手作業しか認めないなんて流行らないよ」

 

 そもそも、第1の島にあるホテルにだって調理器は充実している。ここにある物を運び入れたら更に……と考えると。十神は変化が起きて以来、湧いてこなかった食欲が湧いてくるのを感じていた。

 

「この島での事が済んだら、花村。お前には盛大に腕を振るって貰おう」

「望む所だよ。この島に来てから、ずっと我慢していたからね」

 

 暫く、調理家電が並ぶ建物を見て回っていたが、彼らは比較的真面目だったこともあって、気を取られることも無く建物なども含めた調査を進めていた。

 

~~

 

 九頭龍、菜摘、辺古山。と、家電には特段強い興味の無い3人が調査を始めていた時である。ふと、辺古山が店頭に並んでいるテレビに触れた瞬間、モニタに砂嵐が走った後、ブツンと電源が落ちてしまった。

 

「なんだ? もしや、近くに何かが!?」

 

 九頭龍が警戒心を高め、辺古山もスケボーを構える中。菜摘は少し首を傾げた後、手招きをしていた。

 

「ねぇ、ペコ。ちょっと、私と一緒にテレビ触ってみて?」

 

 2人して同時に別々のテレビに触れた。菜摘が触った方には何の異常も無かったが、辺古山が触った方は先程と同じ様に砂嵐が走った後、ブツンと電源が落ちてしまった。

 

「なんで、ペコが触ったらこうなるんだ?」

「分からない。……けれど、相性が悪いんじゃない?」

 

 ガーンと。彼女はショックを受けていた。超高校級の剣道家として研ぎ澄まして来た雰囲気のせいで小動物達を遠ざけてしまっていたが、今度は電化製品にまで拒否られてしまうのかと。

 言葉こそ発することはないが、彼女が落ち込んだ様子が伝わって来たので、九頭龍がフォローを入れていた。

 

「何かあったら、俺が代わりに操作してやるよ。お前はいつものを頼む。……それと、菜摘。見られていないからってペコ呼びは止めろ」

「そう言うお兄ちゃんだって、今は結構家モード出ているけれどね」

 

 彼らの距離は非常に近かった。九頭龍と菜摘は未だしも、2人の辺古山との距離は、島に来てから初めて出会った物とは思えなかった。

 

「その帰る家が残っているかってのも疑問だな」

 

 探索を続けながら、ポロリと九頭龍が漏らした。実際に映像を見た訳ではないが、十神達の話によると自分達は外でも相当派手にやっていたらしい。

 極道ともなれば、排除される理由には事欠かない。世間から見れば疎まれ、蔑まれる存在だとしても、自分達にとっては帰るべき場所なのだ。

 何の気なしに吐いた言葉であったが、菜摘は暫く黙ってしまった。自分達が居れば、九頭龍組は……という気休めも過ったが、組員の皆はそんな軽い存在ではないと言うことも分かっていた。

 

「だったらさ。キッチリ直して、皆が戻って来るべき場所を保とう。全員が帰って来れなかったとしても」

 

 極道の世界の片鱗を覗いている彼女には分かっていた。仲良くしてくれた組員たちが帰らぬ存在になることも珍しくはない。外の荒れようを考えれば、無事な人間の方が少ないかもしれない。だが、希望を捨てる訳にはいかなかった。

 

「そうだな。だったら、こんなふざけた事する野郎に落とし前を付けさせてやらねぇとな」

「うん。その調子! さっさと、あのそばかす女を見つけないとね。……それと、佐藤の奴も」

 

 極道らしいやり方をすることを決めた兄に賛同をしつつ、目的の人物達と知り合いである菜摘の胸中は複雑な物となっていた。

 

~~

 

 左右田は電気街を歩き慣れたモノだった。狛枝と田中を連れて、グイグイと先へと進んで行く。途中で何かを取りながらも辿り着いた場所では、既に日向、罪木、モノウサが調査をしていた所だった。狛枝は満足そうに頷いていた。

 

「君達もここに来たんだね」

 

 彼らが来たのは、カメラ関係の品が並ぶ一角だった。デジタルからアナログ。レンズやボディ以外にも三脚などの関連グッズも大量に並んでいた。

 

「小泉に執着している様子だったからな。痕跡が残っているとすれば、この辺りだと思った」

 

 佐藤の執着ぶりから考えるに、小泉の才能を錆び付かせるような真似はしないハズだと、日向は睨んでいた。故に、遠からずここに来るとは考えていた。

 

「この店にある在庫が減っていないかを確認していたけれど、特に変化は無いよ。だから『まだ』来ていないってことだね」

 

 在庫を把握していたモノウサからのお墨付きともなれば、本当に来ていないのだろう。だが、遠からず来る必要に駆られるのは分かっていた。

 

「あの、だったら最初から皆でここに来ればよかったのでは?」

「念の為だよ。もしかしたら、他の店舗にもカメラ関連の商材が置かれていたり、本当に隠しスペースが無いかを確認する為にもな」

 

 罪木の疑問に左右田は理路整然と応えていた。超高校級のメカニックと言うこともあり、電気街は彼のテリトリーと言っても良かった。ここに来て、田中が何かを閃いた様だった。

 

「貴様らの話によれば、例の女は蛇状の下半身をしていたと言うことだったな。どれだけ挙動が即しているかは分からんが、絡めとる方法は幾ら浮かぶ」

「そう思って、途中で取って来たんだよ」

 

 彼が取って来た物は発信機だった。どうやら、田中の考えることは左右田も思いついていたらしく、他の面々も何をするか直ぐに理解したらしい。

 

「でも、カメラ関係の所に仕掛けまくればいい訳じゃないですよね? これだけ広い場所に大量に設置していたら、流石に怪しまれるでしょうし」

 

 カメラ関係の品は大量に置かれているし、同型の物でも幾つか設置されている。罪木はこれらのことを良く分からなかったにせよ、超高校級と呼ばれる程の人間の扱う道具が適当に選ばれる訳がない。

 

「後で菜摘に聞こう。中学生の頃に一緒だったって言うなら、そう言った道具関係についても知っているだろうしな」

「なら、それまでの間に必要な道具を揃えるとすっか。発信機だけじゃなくてだな……」

 

 左右田が必要な物を口頭で述べ、皆がそれらを獲得する為に電気街を走り回ることになった。正午は目の前に近付いていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。