舞園「超高校級のヌケーター?」   作:ゼフィガルド

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72時間目:ログ

 正午になり、一旦集合した面々は各自の成果を話し合っていた。……と言っても、左右田達以外は目ぼしい成果を上げてはいなかったが。

 

「だけれど、意味はあった。何の成果も無いと言うことは、何かしらのギミックや仕掛けは他所にないってことだからな」

「そうだよ」

 

 日向の吐いた言葉は気休めの物ではなく、他のグループの働きを純粋に労う物であった。これにはリュックをパンパンに膨らませた七海も頷いていた。

 カメラ関連に仕掛けを施す。となれば、以前の学校で小泉と同じ写真部に居た菜摘に注目が集まった。そんな期待に応えるようにして、彼女は頷いた。

 

「大丈夫。アイツが使っていたカメラ関係のことはしっかり把握しているよ」

「でもよ。これを機会に別のカメラを選んだりとかってのも、あるんじゃねぇか?」

 

 この電気街を見て回った九頭龍に浮かんだ疑問だった。あまり電化製品に詳しくはないが、高級品や性能の良さそうな物が並んでいる位は分かった。

 ならば、これを機会に乗り換えたりする可能性もあるのでは? と考えたが、菜摘は首を振った。

 

「それはない。カメラって単純なスペックとかじゃないし、真昼が使い慣れた物を簡単に変える訳無いし、何よりも本当にアイツが佐藤なら使い慣れていない物を渡す訳がない」

 

 これは、以前から彼女達の知り合いである菜摘だからこそ言い切れた。

 だとすれば、もう迷う必要はない。全員でカメラ関連の製品が置いてある区画へと向かい、菜摘の指導の下で工作を始めた。ここに十神が口出しをした。

 

「待て。工作が素直すぎる」

 

 カメラや物品に発信器を取り付けており、簡単には分からない様にカムフラージュなどを被せて居たりはしたが、これでは不満であるらしい。ただ、この指摘を待っていた。と言わんばかりに狛枝が満面の笑みを浮かべていた。

 

「だよね。十神君ならどうする?」

「俺ならば……」

 

 超高校級の御曹司と言う肩書を持つ、彼の工作が披露されることになり、これを見ていた者達は舌を巻いた。

 

「へぇ。発信機、って言うか。GPSって種類があるんだね」

「だから、発見する側も取り付ける側も鼬ごっこと言う訳だ」

「じゃあ、コイツをもう少し改良することにして……」

 

 花村が驚嘆する中、十神が呆れた様に言い、左右田は電気街で集めた工具キットを用いて、品物の加工をしていた。

 工作が順調に進んでいる中、十神の通信機に連絡が入った。相手はライブハウスの調査に行った澪田だ。

 

『白夜ちゃーん! こっちは特に何も無かったっす! 隅から隅まで調べたけれど、ライブ関係の機材とかがあった位だったすね。そっちは何か?』

「それなりに有益な物がな。こっちの仕事は現状の人員で出来そうだから、お前達はモーテルに戻ってくれていて構わない」

『準備が良い!! でも、皆が働いている中、先に帰るのは申し訳ないから、離れた所からでも君に届け!』

 

 通信機から喧しい音が響いて来た。どうやら、超高校級の軽音部らしく即興でライブをやり始めたらしい。折角のエールなので、とりあえず切ることも無く垂れ流しにしていたのだが。

 

『お星様とお日様に文句も言えないし、やたらと晴らそうとされる曇り空の気持ちも分かって欲しいだけェエエエエエエエ!』

 

 通信機から流れて来る曲は軽音からかけ離れた何かが流れている気がしたし、歌詞も毒々しい……とまではいかないが、ネガティブで陰険な物が多かった。

 普段の澪田からは想像も出来ない曲が練り出されているのを聞いて、大半の者が戸惑いを覚える中、聞き入っている者もいた。

 

「でも、私。この曲好きですね。なんか陰険でネガティブでカスな人にも寄り添ってくれる優しい曲ですね」

「え?」

 

 罪木である。思わず左右田が聞き返してしまったが、特定の層にはガンガン響く曲なのかもしれない。……BGMには若干不向きな物であったが、途中から気にならなくなったのか、作業は進んだ。

 

~~

 

「ねぇ、佐藤ちゃん。お願いがあるんだけれど、良いかな?」

 

 小泉もこの状況に甘んじているつもりはなかった。佐藤との話の中で聞きたいことも聞けた。ならば、自分も行動する必要がある。

 

「なに?」

「外に出して欲しいとは言わないからさ。ここに来てからカメラのメンテナンスを少しサボっていたから諸々が欲しいんだけれど。ダメかな?」

 

 才能を錆び付かせる訳にはいかない。という建前があったのも本当だが、小泉は賭けた。外にいる皆が、自分の発想を汲み取って何かしらのことを起こしてくれる可能性に。

 佐藤は少し目を細めていたが、小泉が手にしているカメラを見て、頷いていた。

 

「前の学校に居た時から同じ物ね」

「うん。佐藤ちゃんなら必要な物は知っていると思うから、任せてもいいかな?」

 

 任せる。という言葉に佐藤は笑みを浮かべていた。自分を頼ってくれているということが、彼女を興奮させていた。

 

「勿論よ。色々と取って来てあげるから、私に任せて」

 

 シュルシュルと蛇の様な下半身を這わせて、人間では到底出入りの出来ない場所から外に出て行く。

 彼女が居なくなってからしばらくして、小泉は部屋を調べ始めた。扉らしき物はあるが開く気配はない。唯一外に繋がってそうな排気口に昇る術はない。

 壁などにも触れてみるが、都合よくギミックが備わっている訳もない。だが、何もせずにはいられない。そんな彼女の執念に応えるようにして、視界に入り込んだのは小さなUSBメモリだった。

 

「(佐藤ちゃんの落とし物かな?)」

 

 わざと落としたのか。それとも、浮かれていて気付かなかったのか。判別はし難いが、今拾っておかなければ手に入れる機会はない。彼女は懐へとしまい込み、引き続き部屋内の探索を続けた。

 

――

 

 佐藤は浮かれていた。監禁した真昼と十分に話すことも出来たし、自分に頼ってくれたことに喜んでいた。

 自分達が置かれている状況を考えれば、そんな気分に浸っている余裕などある筈も無いのだが、友人へ抱いていた崇拝と懐古が混じった念が彼女の制動を狂わせていた。

 

「(大丈夫。私は冷静よ)」

 

 先走る自分の感情を戒めながら、彼女は電気街のカメラが置かれている一角……に行く前に、防犯コーナーに来てGPS、盗聴器、小型カメラの発見器などを手にしてから、周囲を観察しつつ向かうことにした。

 

「(監視カメラとかは無さそうね。そもそも、島中に設置されている物を使うことが出来れば、直ぐにでも救出に来れるはずだし)」

 

 監視カメラの類は無い。とすれば、発信機の類が無いかを注意しながら進むと、GPS発見器の方に反応があった。

 

「(なるほどね。地雷みたいな物か)」

 

 地面に目立たない様に設置されている。きっと、この体ならば這いずって行く最中に付着することを狙ってのことだろう。実際に、この巨体では避ける方法は無い。……が。

 

「(なら、踏みつぶすだけよ)」

 

 体に付着することを許さない様に、蛇型のモノケモノの下半身を用いて設置された発信機を轢き潰しながら、目的の品がある場所へと辿り着いた。

 

「(どうせ、これにも仕掛けられているんでしょうね)」

 

 案の定、ピンポイントに必要としている物品に発信器が仕込まれていた。

 しかも、従来の品と違って発見しにくい様に更に小型化されている。恐らく、超高校級のメカニックによる仕業だろう。

 

「(でも、アンタらがそれ位は出来ることを知ってんのよ。……同時に)」

 

 小泉が愛用していたカメラのメンテナンス用品の外袋に取り付けられていた物を外し、一度中身を見れば製品自体に取り付けられている者もあったので 剥がした。

 

「(ブロアーを裂いて閉じるとかはしていないけれど、クリーニングペーパーやクロス内に仕込まれているってのも面倒臭いことしてくれるんだから)」

 

 外装に取り付けられている物や同封されている物を捨てたとしても製品自体に仕込まれている物までは見落としてしまうかもしれない。

 一度発見した安堵や実際に使用する際まで使われないと想定してのことだろうが、その程度の仕掛けには引っ掛からない。

 

「(GPS発見器の方も反応は無くなったし、一度開けちゃったけれど使えなくはないから、問題は無いとして)」

 

 ブロアーを手にして、佐藤の脳裏に過ったのはかつての日々だった。

 希望ヶ峰学園なんかに行くことも無く、灯林学院で菜摘達と共に写真部で活動していた頃。小泉が撮影する写真はどれも素晴らしく、自分なんかでは到底追い付かない物だと思っていたが、彼女は自分の写真も良い物だと褒めてくれた。……そんな彼女と一緒に入れたら、自分も何かになれる気がした。

 

「(でも、超高校級と褒め称えられた末路が)」

 

 あまりに無惨だった。あの才能は穢されて良い物では無かった。

 だから、彼女は美しく輝いていた頃のままであるべきなのだ。外になんか出なくても、元の生活に戻らなくも良い。押しつけがましいことは理解していたが、選ばざるを得なかった。

 必要な物品を調達した彼女は帰り際にも何度か発見器で確認しながら、何の反応も無いことを確認して……、自分の根城へと戻って行った。

 

 

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