舞園「超高校級のヌケーター?」   作:ゼフィガルド

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 書いていると色々な物が揺さぶられます。いやマジで。


88時間目:キャッシングデパート!

「来たよ! お肉屋さんだ!」

 

 地獄のケーキに先導されて、階段を下りた先には精肉店のコーナーが広がっていた。既にデパートは閉店されているハズだが冷ケースの機能は生きており、真空パックに包まれた精肉の数々は食すことも出来そうだった。

 

「こんな気持ち悪い物いらない……」

 

 西園寺は冷ケースに近付くのも嫌そうにしていたが、十神は陳列された商品を吟味しつつ、懐へと入れていた。

 小泉も止めようかと迷ったが、先のジュラルミンケースの件もある。このアトラクションは不条理と理不尽で作られている様に見えて、意外とロジック立った物で構築されている。つまり、可食できる肉が並んでいるという時点で理由がある。と考えても良さそうだった。

 

「(でも、肉が必要な状態って何だろう?)」

 

 ふと、小泉は隣でマスコット面して歩く地獄のケーキを見た。先程はコレに生首をデコレーションするというファナティックトッピングを施したが、今回も同じ様なパターンだろうか?

 

「見てよ! あんなに沢山お肉を集めている! ボクが主役になる為のお膳立てをしてくれているんだね!」

 

 モノウサ以上に馴れ馴れしく、テンションも高いのでコミュニケーションをとる労力があまりに大きい。だが、BBQで満足するという文言を聞いてある可能性を思い浮かんだ。

 

「(あ、そうか。いっぱい食べさせて満足しないと退かない障害物とかあるのかな?)」

 

 童話めいた存在だが、立って歩くケーキもいる位だし、満腹にならないと動かない障害物が設置されていたとしてもなんら不思議はない。

 肉の種類は牛、鳥、豚とあったが、特定の肉を食わないと満足しない。みたいなタイプ等と考えていると、十神が皆を手で制した。……小泉の推測は正しかった。天井からズルリと障害物と思しき存在が這い出て来たのだ。

 長い2本の触覚。体から生えた節足には細かい毛が生えている。全体的に茶色っぽくテカテカと光沢を帯びている。……まぁ、具体名は出さないがどの家庭にもいるアレである。しかも、異常に巨大化しており全長が2m程もあった

 

「「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!!!」」

 

 これには小泉も西園寺もお互いに抱き着きながら悲鳴を上げた。ホラー的な要素は脅威であるが、何処か作り物として堪えられる部分はあった。

 だが、コレは無理だ。生理的に染み付いた嫌悪感に抗うことは出来なかった。凄まじく珍しいことだが、普段はクールな十神が表情を歪めていた。地獄のケーキは数歩下がっていた。

 

「やっぱり精肉コーナーはクソだ!! 衛生観念どうなってんだ!!」

 

 どうやら、今までの喋り方はキャラ造りしていたらしく、本性は割と粗暴だった。驚き方も演技とは思えないので、部門間同士の繋がりは薄そうだった。

 一同の精神的ショックは兎も角として、ゴキブリはクネクネと触角を動かしながら十神の方を見ていた。どうやら、肉が食いたいらしい。

 ただ、彼も近付きたくないのか遠くから肉を投げつけていた。……だが、Gは床に落ちた肉を食らおうとしなかった。触角をクルクルと回していた。まるで、ちゃんと配膳しろと言っている様だった。

 

「……と、十神。お願い」

 

 材木人間とか殺人ミミズみたいなバカの権化みたいな存在ではなく、誰しもが理解できる造詣をしていたが故に脳髄まで恐怖に満たされていた。西園寺は声を上げることも出来ず、小泉がようやく絞り出せた位だった。

 そして、十神は皆を率いるのにふさわしい勇気の持ち主でもあった。彼は天井からぶら下がるジャイアンGの傍まで行って、肉を口に運んでいたのだ。

 

「うわ、きったね」

 

 彼の勇気ある行動に対して、地獄のケーキは身も蓋も無い発言をしていた。

 天井からぶら下がるジャイアントGは散々に食い散らかした後、満足したのか天井裏へと戻って行った。十神が溜息を吐いたのも柄の間だった。

 

「あ」

 

 地獄のケーキから間の抜けた声が上がった。入れ替われる様にして、もう1匹。同じサイズのジャイアントGが姿を現した。体を走る模様や細かな違いから別個体であることは直ぐに分かった。

 

「日寄子ちゃん!? 日寄子ちゃん!!?」

「この畜産部門のMGR誰だ!! 出て来い! クソッたれ!!」

 

 西園寺は泡を噴いて気絶し、小泉が呼びかけ、地獄ケーキが口汚くヒステリーを起こす中、十神は進んだ。そして、持っていた肉を満足するまで上げた。

 ヒタヒタと触角が彼の体に触れているが微動だにしない。やがて、2匹目も満足したのか。ジャイアントGは再び引っ込んで行った。

 

「皆! 先へ行こう! 次のが来る前に!」

 

 一番行動が早かったのは地獄のケーキだった。彼は二本足でダッシュして、直ぐに十神へと追い付いた。時間が経てば、また新しいGが湧くかもしれない。

 

「日寄子ちゃん! あぁ、もう! おぶってあげるから!」

 

 気絶状態の彼女を背負って、小泉もまた十神達の後を付いて行った。精肉コーナーを抜けた先には『Steak House』と書かれた看板が掲げられたテナントが入っていた。

 

「オッホッ。やったね、おデブちゃん! ご褒美だよ!!」

 

 地獄のケーキがぴょんぴょん跳ねていた。あれだけ辛い目に遭ったんだ。今まで持って来た肉を焼いて、好きなだけ食えよと言う、イルブリードらしからぬ計らいだろうか。十神の表情にも笑顔が戻って来た。

 店に入ると、コック帽を被った恰幅の良い男性が両手に持ったフォークとナイフを打ち鳴らしていた。だが、よく見れば動きがぎこちないので人形的な物だということは直ぐに理解できた。

 

「へい、らっしゃい! アンタ、いいお肉持っているね~! 精肉コーナーから沢山お肉も持って来ただろう。ササッ、そこの鉄板で焼いて行きなさい」

 

 ジャイアントGが2匹も出て来る精肉コーナーの前でやっているステーキハウスの衛生状況は疑問であったが、十神は嬉々として肉パックを取り出していた。

 むっちりとした鶏肉、脇役から主役まで変幻自在の豚肉、俺こそ肉の王者だ、牛肉。鉄板の上に広げられてジュージューと音を立てていると、店主から全員分の分厚いブーツを渡された。

 

「なんで、シューズが必要なの?」

「直ぐに分かるよ」

 

 すると、小泉達が立っていた床が移動して鉄板の上へと落とされそうになっていた。こうなっては、急いでシューズに着替えないと自分達が焼かれてしまう。

 

「あー! 僕にも靴をお願いします! というか、ケーキなんで溶けちゃいます! 助けて!」

「十神! そっち頼んだ!」

 

 小泉が西園寺に専用のシューズを履かせ、十神が地獄のケーキにシューズを履かせた。そして、鉄板の上に降り立った彼らを待ち構えていたのは……焼かれているハズの肉達だった。

 ぷりぷりの鶏肉は生前の雄々しさを取り戻したかのように飛び跳ね、豚肉は先祖返りをしたかのように突っ込んでくる気満々であり、牛肉はお前達を食らってやると言わんばかりに意気込んでいた。

 

「頭がおかしくなりそうだよ」

「奇遇ね。私も同じこと考えていた……」

 

 地獄のケーキが自らの正気を疑っているが、小泉からすれば両方共似たようなモンだった。ただし、十神のやる気は違っていた。

 両の掌を打ち鳴らす。まるで、頂きますと言わんばかりに怪異と化した肉達に突っ込んで行った。いずれも香ばしい匂いを放ちながら、食われてばかりだった頃の怒りを晴らすかのように突っ込んで行く。

 

「ケーッ!!」

 

 真っ先に襲い掛かったのは鶏肉だ。成長ホルモンを大量にぶち込まれ肥大化した筋肉から繰り出されるフライングクロスチョップの一撃は、如何に百貫デブの十神ですら無事では居られないだろう。

 だが、十神は受け止めていた。そして、手羽先をバリバリと貪り、少しパサついた胸肉を食らい尽くし、もも肉を血肉へと変えていた。鶏肉は知った。自分は弱者なのだと。所詮は食われるだけの肉にしか過ぎないということに絶望しながら、彼の栄養として還元されて行った。

 

「ブビィイイイイイイ!!」

 

 勇んだ豚肉が襲い掛かって行く。分厚いバラとロースの2枚肉が十神の歯を通さず、重量でぶっ飛ばしてやると息巻いていた。

 だが、バラが混じっていた時点で敗北するしかなかった。デブにとってバラ肉は、巨大WEB小説サイトおけるTSと曇らせ位に重要な栄養源である為、瞬く間に吸収されてしまった。消化されて行く中で豚肉は見た。十神に宿る豚神の姿を。

 いよいよ、後が無くなった牛肉が破れかぶれで突っ込んで来た。2体が弱らせた後なら! この鉄板に迸る熱は奴を狩る火だ。バラして、こロース! そして、炙ってやると意気込んだが、瞬間。十神の体が何倍にも膨れ上がった。

 

「あっつぅい! 早くして! 融ける!!」

 

 地獄ケーキの一部が溶け出し、鉄板の上でジュウジュウ鳴っているのを見て、十神は無心で牛肉を食らっていた。全ての肉が始末されたのを見て、店員ロボは不服そうにしていた。

 

「ッチ。特性の肉を入れ損なっちまったよ! さっさと出て行ってくんな!」

 

 どうやら、十神達が犠牲にならなかったことが甚く不服だったので、店員にあるまじき不愛想さで4人を追い出していた。

 

「堪能してないでさぁ!! もっと早くに助けろよ!!」

 

 本性を現した地獄ケーキのカスみたいなヒステリーを受けていた十神だったが、満腹になったこともあって余裕そうだった。

 

「……帰ったら寝よう」

 

 未だに気絶している西園寺を背負ながら、小泉はコテージに帰宅したら真っ先に寝ることを決めていた。

 

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