舞園「超高校級のヌケーター?」   作:ゼフィガルド

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94時間目:トイハンターEX 2

「577号室へと向かえ」

 

 タマゴ殺しの罪に問われた3人のインダは刑務所に連れて来られていた。

 どうやら、この施設は内部に裁判所も併せ持っているらしく効率的に犯罪者を檻の中にぶち込める司法が整っているらしい。

 言われた通り、3人が向かった裁判所には特に弁護士や検事の姿も無く、裁判官と思しき存在の声が聞こえて来た。

 

「インダ被告はトイ刑法第99条により……死刑!!!」

「ふざけないで!! この国の司法はどうなっているの!!」

「ちゃんと機能していると思いますよ……」

 

 佐藤が思ったよりも役にハマり込んでいるので、自らの境遇に対して抗議をしていたが、罪木は納得せざるを得なかった。

 

「本日午後6時に絞首刑で地獄に落とされる。精々、後悔しろ! この殺人鬼のクソ野郎!!!!」

 

 法の番人にあるまじき感情任せの発言だった。3人は裁判所から引きずり出され、残り少ない時間を過ごす牢屋へと向かうことになるのだが、トイ刑務所に収監されている囚玩具達はいずれも凶悪そうな面をしていた。

 

「ハハッ! どうして、僕がこんな目に遭わなければならないんだい!」

「ば……隠せ!!」

 

 例えば、白と黒の鼠をモチーフにしながら甲高い声で笑うタイプの玩具もいた。何とは言わないが、デザイン自体は本物にはまるで似ていない。看守達が慌てて囚玩具用の鉄マスクを被せていた。

 

「本物殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」

 

 あるいは海賊版として著作権をガン無視した玩具が精神に異常を来していたりと。自分達もこのラインの存在であることを思うと、佐藤インダとしては涙を堪えられなかった。

 

「私、こんな奴らと一緒なの……?」

「はい」

 

 いきなり3人殺す奴は同ラインとしか言いようが無いと考えていたのか、罪木インダが無慈悲に肯定していた。そんな檻の中に日向達は差し入れと言わんばかりに、コッソリとスケボーを入れていた。

 

「ゲーム的に言ったら、トイ地獄に行かないといけないのよね」

 

 イルブリードを視聴済みな佐藤インダは実に話しが早かった。

 トイハンターではインダ君がセクシードールを助けるために地獄へと向かうのだが、玩具達が落ちる地獄は『トイ地獄』と言い、普通とは別物らしい。

 

「どうやったら行けるんですか?」

「子供と一緒の棺に入らないといけないから、手ごろな子供に死んでもらわないと……」

「もしかして、佐藤さんって未来機関に潜り込んだ絶望の手先だったりします?」

 

 さっきからの発言や行動を鑑みれば、コイツが未来に希望を願うエージェントであるのは無理があり過ぎると思った。

 第3の島で遭ったころは神経質な女性だと考えていたが、中身は自分と同類かカスであると認めた為か、罪木インダの距離は非常に近しい物になっていた。

 

「茶化さないで! 私は本気で考えているのよ!」

 

 自分の罪を認めない辺りが、最高に同じ穴の狢感があった。先程のダウンタウンで子供の姿を見掛けなかった以上、自分達は新たに子供を探す必要があった。

 

「じゃあ、この監獄はどうやって抜けるんですか?」

「フフフ。私にいい考えがあるの。この先にね、インダ君の相棒がいるのよ」

 

 監獄を陽気に歩く姿はヤクでも決めているのかと言わんばかりだったが、これは解決の糸口が見えているが故の楽観的な態度だった。

 

「相棒って誰ですか?」

「そりゃ、インダ君がね。トイでストーリーな主人公をパロディっているんだから、相方はアレに決まっているでしょう。さぁ、行きましょう! 無限の彼方へ!」

 

 パロディ元にクソを塗りたくなるような宣言に罪木インダと日向インダは微笑むしかなかった。そして、上機嫌で辿り着いた独房の先に居たのは。

 

「誰か、いるのか?」

 

 看守の目の前で正々堂々と脱獄しようとしたのか、上半身を壁にめり込ませた宇宙船型の玩具が居た。

 

「僕はインダ。こんな所で何をしているんだい?」

「脱獄しようと思ったら、ガス欠になっちまったんだ。俺はポテドンだ。よろしくな」

 

 彼が目指しているのは無限の彼方ではなく、無法の彼方だろうか。

 著作権のみならず、世界情勢に対しても喧嘩を売るスペシャル煽りトイは永遠に刑に服しておいた方が良い気もしたが、助けないと話が進まなさそうなので、罪木インダ達は仕方なく佐藤インダに付き合うことにした。

 

「でも、佐藤さん。宇宙船の燃料なんて、こんな所で手に入るんです?」

「大丈夫よ。アイツ、ガソリンで動くから」

 

 宇宙船がガソリン??? 玩具としても燃料がガソリンと言うのは危険極まりない気もした。堂々と脱獄幇助をしようとしているが、看守達は突っ立っているだけで止めようという気も見当たらない。

 別の房へと辿り着くと、白骨化した玩具達が並ぶ中。GASと書かれたドラム缶型の玩具が身をくねらせていた。彼は佐藤インダ達の方を見ると驚いていた。

 

「おや、こんな所にお客さんが。どうしたんだい?」

 

 こんな場所では珍しい、柔らかい物腰の持ち主なことに罪木インダは驚いていた。佐藤インダが事情を説明すると、彼は納得した様だった。

 

「ポテドンさんが困っているなら、僕の体からガソリンを持って行きなさい。容器はそこら辺で白骨化している玩具で良いか」

「この刑務所、倫理観どうなってんですか?」

 

 マトモそうに見えても、所詮はトイ刑務所の囚玩具だった。佐藤インダは特に躊躇うことも無く、白骨化した玩具にガソリンを入れて貰っていた。

 あまり科学用品に詳しくない罪木インダであったが、そんな危険物をテキトーな容器で持ち歩いて大丈夫なのかと思ったが、もう一つ気になったことがあった。

 

「所で、貴方はどうして刑務所に?」

「ポテドンさんとタッグを組んでね。気に入らない連中の所に僕の中身をぶっかけて、火を付けたんだ。アレはよく燃えたな~。他には、対立勢力の玩具の血管に、僕の中身を注射したりもしたよ。――覚え、ない?」

 

 ギョロリと罪木インダの中身を覗き込むような目付きをしていた。

 忘れているが、この無法トイ達に負けない程の悪行を犯していたのが自分達なのだ。決して、他人事ではない。

 

「罪木~。早く行くよー」

「あ、はい」

 

 逃げるようにして、この場を後にした。壁にめり込んでいたポテドンにガソリンを補充すると、そのまま壁をぶち破るかと思われたが、どういった力が働いたのか。逆方向にすっ飛んで行った。

 

「ふひー。あのまま、壁にめり込んで死ぬかと思った」

「あ。だから、放置されていたんですね」

 

 死刑の手間が省けるから放置されていたのだと、罪木インダは納得した。

 改めて、ポテドンの全容が露わになった。カラーリングがどう見ても無限の彼方へと行くアイツを意識している物だが、造詣は冒涜的な物であった。

 宇宙船のトイらしくメルヘンなお目目が付いているかと思いきや、ボディと頭部の間に不自然な溝があり、そこに血走った人間の目が浮かんでいた。グロテスクだった。

 

「で。こんな所に放り込まれたって、何したんだ?」

「ちょっと、卵3個殺しちゃって」

「3個くらいで死刑って本当に狭量だよな、この世界。俺とガソさんも対立勢力の玩具共をちょっと焼いたくらいで死刑にしやがってよ」

「もしや、ここが地獄じゃないんでしょうか?」

 

 こんな悪影響ばかりの玩具は全部廃棄処分された方が良い気がしたが、佐藤インダと共にHEHEHEHE! と笑い声をあげているのを見るに、ウマは合うらしい。日向インダは暇なのか、壁に出来た穴を調べていた。

 

「でも、私は死ぬ訳にはいかないの。ヘンリー少年を止める為にも!」

「何だって? どういうことだい」

 

 佐藤インダは事情を説明した。非業な死を遂げた少年。悪魔の力を借りて蘇り、地獄で自分達を待ち構えていること……セクシードールが一緒に埋葬されたので、取り戻したいこと。

 

「待てよ。昔読んだトイ聖書に書かれていたけれど、玩具と一緒に埋葬された子供の魂はトイ地獄に向かうんだ」

「そこは天国じゃないんですね」

 

 果たして、ヘンリー少年はここまでの仕打ちを受ける程の事をしたのだろうかと。罪木インダは常々疑問に思う所だったが、ポテドンは彼女の言うことを一切無視していた。

 

「でも、この刑務所に子供なんていないし……」

「だったら、外に探しに行けばいいんだよ。そう、脱獄だ」

「脱獄ですって!?」

 

 この刑務所に最大の不備があるとすれば、さっさと死刑を執行しない怠慢だろうか。1つも反省の様子を見せないトイ共であったが、佐藤インダはノリノリだった。これにはポテドンも気をよくしていた。

 

「そう。トイ刑務所の関係者や看守共をぶちのめして皆で脱出する。『TOY EXIT』だ。待っていた。お前みたいな相棒を」

「ポテドン……」

「日向さん。何見ているんですかぁ?」

 

 これ以上、こいつらと付き合っていたら頭がおかしくなると判断してか、罪木インダは日向インダの方へと擦り寄っていた。すると、彼は壁に出来た穴を指差した。

 覗き込んで見れば、中には大量の積み上げられた玩具の残骸があった。意外とちゃんと処分は行われていたらしい。

 

「壁の中に隠さないでちゃんと埋める……のも許されないんでしょうね」

 

 所詮は犯罪者。真っ当な死に方も死後も用意されていない有様は、自分達の未来を見ている様でもあった。だが、日向インダは彼らの残骸に近付くと死体から剥ぎ取ったパーツで加工を始めた。

 

「日向さん……?」

「おぅ、インダ。良い所に目を付けたな。ソイツは猛毒怪獣ドヘラの死体だ。そっちは殺戮マシンロボミネーターだ。そっちは私刑戦隊ジャスティスウォーリアのメンバーだ」

 

 ジャスティスウォーリアが使っていた武器にドヘラの死体を塗り込み、マシンロボミネーターのパーツを使って即席の猛毒武器を作成していた。……どうやら、謀反する気MAXであるらしい。

 それだけではない。先程のガソリン君を思い出し、ロボミネーターに内蔵していた火器を取り出したり、ジャスティスウォーリアの炎属性の武器を取ったりもしていた。

 

「流石、相棒だ。殺る気はバッチリだな! いざ、行かん! 無限の彼方へ!」

「ついに行っちゃいましたね」

 

 頭がイっているのは今更言うまでもないが、ポテドンの燃料に火が付いたらしい。流石に看守達もヤバいと思ったのか、拳銃を構えて独房に入って来た。

 

「即時死刑だ!」

 

 躊躇いも無く拳銃が引かれたが、日向インダのクイックファイヤが火を噴き、先に看守の頭を撃ち抜いていた。

 全員が牢獄を出ると同時に。見計らった様に囚玩具達が牢屋からグリッチする様に出て来た。真っ先に向かったのはガソさんの房だった。

 

「おや、ポテドンさん。やるんだね?」

「あぁ! また、一緒にやってやろうぜ!」

 

 佐藤インダ達がガソさんを迎えに来た頃。日向インダがばら撒いていたヌケーターの能力が同時多発的に発動し、刑務所での大量脱獄を引き起こした。

 

「ハハッ!! 看守共を夢の世界へと連れて行ってあげるよ! 悪夢のね!」

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す」

「クソトイ達が一斉脱獄しやって! 機動隊来てくれ!!」

 

 何故、こうなるまで放置していたのか。刑務所の各地で小競り合いが始まり、看守と囚玩具達の死体が積み重なって行く中、入り口には脱獄させまいとする機動隊がトイパトカーでバリケードを作っていた。

 

「撃ち殺せ!!」

「ポテドン!!」

「任せろ!」

 

 佐藤インダの期待に応えるようにして、ガソさんを抱えたポテドンが機動隊に向って突っ込んで行った。

 上空からガソリンが機動隊やトイパトカーに向って巻かれたのを見た後、日向インダがジャスティスウォーリアから回収していたレッドブレードを掲げた。刀身から迸る熱が、ガソリンへと引火し……大爆発を引き起こした。

 

「熱いよー! 痛いよー!」

「た、助けてくれ……」

 

 トイパトカーや機動隊が火達磨になり、ボロボロになったころ。看守達を打ち倒した囚玩具達が積年の恨みを晴らす様にして、傷付いている彼らをいたぶっていた。正にトイ刑務所はカオスの極みになった。

 

「よっし! 後は、新しい子供を見つけて一緒に棺に入るだけね!」

 

 全くぶれない佐藤インダを見て、罪木は恐怖を感じていた。

 もしや、未来機関は誰かを傷つけることを全くいとわない狂人の集団ではないかと。イルブリードの視聴を義務付けている組織に真っ当さは感じていなかったが、現状を作り出した彼女が危険人物であることは確かだ。

 

「インダ。俺達も付き合うぜ」

「ポテドンさんが行くなら、僕も付き合わせてくれよ」

「ありがとう。2人共!」

 

 こうして、凶悪犯罪者達は街へと解き放たれた。少なくとも、今の自分達は死んだ時点で地獄行きが確定しているんだろうな。と、罪木インダは現実逃避するしかなかった。

 

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