モンキラーとレイチェル達の子が住まう、ただのモンスターハウスとなったイルブリードに別れを告げ、彼らは第5ノ島へと辿り着いていた。
今までの島は外国モチーフだったり、テーマパークを模した物だったりしたが、この島は現代的なコンクリートビルが幾つも立ち並び、大量の工場も稼働している、工業地帯と言った風景だった。
「今までの施設と違って、ここは一番物騒な所だな」
「あ、そうなんですか? さっき、体験して来たインダくんの冒険と比べたら普通だって思いました」
「何を見て来たのよ……」
九頭龍が警戒心を露わにしている中、罪木が間の抜けたことを言ったので小泉がドン引きしつつ佐藤の方を見ていた。何があったんだと。
「真昼。これには語るも涙な話があって」
「佐藤さんが一番ノリノリだったように思えるんですけれど……」
ここで、彼女の風評などを特に気にしない罪木が真実を言いそうになったが、佐藤の一睨みで黙らされた。ただ、小泉の怪訝な視線は2人に注がれたままだった。
「君達、結構余裕だね。なんか、クライマックスな雰囲気が漂っているって言うのにさ」
モノウサが大仰に肩を竦めた。第4ノ島を攻略し終えて、直ぐに第5ノ島に続く橋を渡されたのは、即ち黒幕側からの挑戦に他ならない。状況的には緊張感が漂って然るべきであるが。
「きっと、皆。イルブリードの余韻に浸っているんだよ。なんていったって、アレだけの名施設だったからね」
「は????」
七海が心の底から出た気持ちを口にした所、モノウサの神経を逆撫でしていた。あのクソ施設の何がそんなに気に入ったんだろうか? と言わんばかりに、皆から怪訝な視線を向けられていた。
「工業地帯。となったら、左右田の活躍所なんじゃろうが」
当の本人はと言えば、イルブリードから持って来たチューインガムを噛んでいる位で、メカを見て目を輝かせるなんて様子は無さそうだった。
「畜生。オレ達のせいでこんな」
「だが、生きてはいる。気にし過ぎることはない」
弐大と終里は後悔していたが、田中がフォローしていた。確かに変わり果てたが、死んではいないし元気にスケボーはしている。
島の入り口で好き勝手にしていると、視界範囲の中にある建物の壁面が変形してモニタになった。電源が入り、映像が映し出される。
『ようこそ。サイバーパンク島へ』
生田ことみ。生徒会メンバーの生き残りであり、第4ノ島では九頭龍達の前に立ちはだかった存在。やはり、彼女が黒幕なのか。
疑問は大量にあった。何故、自分達をこんな目に遭わせるのか、目的は何なのか。皆が抱いた疑問を他所に、生田は一方的に言った。
『早速ですが、皆さんにはゲームをして貰います。そう! この島全体を使ったかくれんぼです!!』
「は?」
西園寺が素っ頓狂な声を上げた。ここまで来て、かくれんぼ? 意味が分からない。1人で勝手にやっていろと言おうとすると、モニタ内の映像がズームアウトしていく。すると、彼女の背後には巨大な機械が設置されていた。中央部には24:00:00と表示されていた。
彼女がリモコンを操作すると、数字の表示が減り始めた。全員から血の気が引いた。であろうことを見計らって、生田が続ける。
『見た目がごちゃごちゃしていて分からないから、説明してあげるね。コレ、この島を吹っ飛ばす爆弾なの。皆さんには今から24時間以内に私と爆弾を見つけて貰います。解除できれば貴方達の勝ち、出来なかったら一緒に心中しましょう』
「ふざけんな!! なんで、テメェの自殺に付き合わなきゃいけねぇんだ!?」
「死ぬなら、アンタ1人で死ね!!!」
九頭龍と西園寺がシュプレヒコールを飛ばしているが、モニタ内の生田は真顔になっていた。
『ここまで来るのに色々と情報は上げたでしょ? 私達は世界の敵なのよ。未来機関はアンタ達を生かそうとしているみたいだけれどね。そんなこと出来る訳無い。だから、かつての同志として引導を渡してあげる訳』
「勝手なこと抜かすな!!」
弐大も吠えた。自分達の過去は血塗られた物かもしれないが、死にたいと思ったことは無い。慈悲の様に見せかけた勝手で殺されて堪るか、というのはこの場にいる者達の共通の認識であった。
『だったら、生き延びて見せなさいよ。もしも、私を見つけた時。アンタ達にも、とっておきのご褒美があるからね。じゃあ、精々足掻きなさい』
生田が姿を消し、カウントを続ける巨大な機械だけが映し出されていた。自分達は24時間以内に爆弾を解除しないと、彼女の心中に巻き込まれることになったのだが。
「モノウサちゃん。あの爆弾、実はブラフだったりしないっすか?」
「流石に僕も映像からだと判断し辛いけれど、あれは多分本物だよ」
澪田が否定して欲しくて聞いてみたが、モノウサは首を横に振った。こういった時の彼は意外と誠実に答えてくれる。真実である方が、彼らを絶望させられるからだ。
「ならば、とにかく動き出しませんか!? 24時間なんてあっと言う間ですよ」
イルブリードを探索した時の疲れも抜けきらないまま、こんな挑戦を出されるとは思っていなかった。ソニアは比較的、体力も余っている方だったが小泉や九頭龍達はしんどそうにしていた。
「文句は言ってられねぇよな。よし、第3の島でやった方法で探索するぞ。まずは残り20時間になった時点で一旦集合するぞ。班分けは、さっきのと同じので行くぞ。今更、分け直すのも面倒臭ェ」
実際に、第4の島での分け方はイルブリード攻略用でもあったが、戦力的な分散としても丁度良かった。
「流石に何が起こるか分からん以上、細かく分けることも出来んしな。だが、七海達は大丈夫なのか?」
田中も言う通り、探索中に相手側から妨害や襲撃が無いとも限らない。自分達のチームにはヌケーターとして花村がいるが、七海達のグループには荒事が出来るメンツが居ない。
「モノウサちゃん。何とかならないっすか?」
「うぷぷぷ。この島なら、何とかできるかもね。ほら、僕のアップデートとか色々と出来そうなことはあるしね。チーム分けはコレで良いと思うよ!」
むしろ、彼が嬉しそうにしていることこそヤバいことの表れだとも思ったが、議論を重ねる時間も惜しかった。最初に九頭龍が取り決めた約束を胸に、各チームは第5ノ島を探索するべく、それぞれが走り出した。
~~
「コイツは。戦闘機か?」
弐大達が向かった場所には戦車や戦闘機が並んでいた。今まで、見て来た島の中で、最も修学旅行に相応しくない兵器の数々だった。
「左右田がマトモな状態なら、何か出来たかもしれないけれどよ」
当の本人は喋りこそしないが飛行機や戦車などを見てジィっと立ち止まっていた。何を考えているかはサッパリ分からないが。
「もしも、ワシがパイロットなら戦闘機を操縦して島から脱出とかもあったんじゃろうが……」
「お。良いアイデアじゃねぇか! それ、出来ねぇの?」
「無理よ。戦闘機を動かすには知識と肉体面での訓練は必須じゃ。1日しか時間がない中で使える様になる訳がない。もしも、やるとすれば何年も時間を掛ける必要がある」
「だったら、この戦車や戦闘機は何の為にあるんだ?」
誰が使う為にあるのか? 少なくとも自分達ではない。となれば、生田位しかいないが、彼女にはこれらを扱える才能でも有るのだろうか?
「あるいは。ドローンみたいに自動操縦かもしれんな」
すると、左右田が頷いていた。彼が手招きしたので寄って、操縦席に該当するであろう部分を見ればコックピットが無かった。
「なんで、操縦席がねぇんだ?」
「自動操縦だからかもしれんな。もしも、AIとかそう言った物で動かせるなら人間が収まるスペースにまで部品を積むことが出来る。そうしたら、より高性能な機体になるという訳じゃ」
どちらにせよ、自分達が奪って使うという真似は出来ないらしい。自動操縦機体であるなら、碌な使われ方をしないことは想像できた。
「おっさん。コイツら、先に潰しておいた方が良くねぇか?」
「そうしたいのは山々じゃが。流石にワシらでもコイツは無理じゃろ……」
幾ら屈強な肉体を持つ二人でも戦闘機を破壊するのは不可能だ。だが、存在させておくのも危ない。と考えた時、左右田が自らを指差していた。
何をするのかと思えば、スケートボードに乗った彼が、待機状態の戦闘機にぶつかった。すると、戦闘機は一人でに高く飛び上がり、空中に留まって回転をしたかと思えば、まるで急に力を無くした様に落下して、地上にあった戦闘機と激突して大破した。
「左右田よ! 全部やってしまえ!!」
弐大からの声を受け、左右田のテクニックにより兵器工場にあった戦闘機や戦車は次々に使用不可能な状態へと陥って行った。