舞園「超高校級のヌケーター?」   作:ゼフィガルド

98 / 145
98時間目:トッテオキの攻略方法

 街全体は近未来的ではあるが、夢や希望などの解放感とは無縁な雰囲気だった。林立するビルや工場が放つ威圧感によって、閉塞感すら感じさせた。

 

「さながら、鋼鉄の獣の内臓と言った所だろう」

「サイバーパンクって奴ですね!」

 

 田中の表現をソニアが聞き馴染みのある言葉に変換していた。

 ビルの壁面には件の映像が映し出され、刻一刻と時間が過ぎて行っている。これだけ建造物が入り乱される島で、24時間以内に特定の人物を探し出すという挑戦は、無理ゲーとしか言いようが無い。

 近くの工場に入ってみれば、田中達には良く分からない部品や武器らしき物。途中まで姿を現していたが、第4の島以降では姿を見なくなったモノケモノなど、製造されている物品には兵器然としたものが多かった。

 

「こんな物を製造しているというのに、生田さんは島ごと私達を沈めるつもりなのでしょうか?」

 

 世界に対して復讐を敢行するなら、この島は稼働させておいた方が良い。

 だというのに、これらを犠牲にしてまで自分達を葬ろうとする彼女の思惑がイマイチ分からなかった。

 ソニアの思考を他所に、先程から口を開いていない花村も工場内を見て回っていた。スケートボードに乗って縦横無尽に動き回り、接触した機械やコンベアが爆発し、火を噴いていた。

 

「花村!? 何をしている!!?」

 

 まだ、この工場の詳細も調べていないというのに。と、田中は考えていたがソニアは両の手を叩いていた。

 

「いえ、田中さん。むしろ、名案かもしれません。この島にあるビルや工場の全てを懇切丁寧に調査するのは現実的には不可能です。だったら、爆弾などを始めとした機械と思しき物を全て破壊すれば……大幅に短縮できます!」

 

 王女らしい豪快な意見だった。ソニアの案に頷いたのか、花村の無法ぶりは物理の法則にまで干渉し始めたのか、壁を抜け、天井を抜けた触れた機械という機械をバグらせ、工場内では作り掛けのモノケモノや兵器などが宙を舞っては爆発するか吹っ飛んでスクラップ化していた。

 

「……一応聞いておくが。そう言った干渉が原因で件の爆発物が作動した場合は、どうする?」

「詰みですね。ただ、このまま闇雲に捜索してもタイムアップで詰みなので、割は良いと思います!」

 

 無茶苦茶なようでいて合理的な説明だった。田中は覚悟を決めた様に、自分のストールの中に住まう破壊神暗黒四天王に語り掛けていた。

 

「すまん。地獄まで付き合ってくれ」

 

 4匹のハムスターは『何を今さら』と言わんばかりに、前脚を掲げてサムズアップをしていた。そして、ソニアと田中が脱出したのを見計らって、花村も飛び出して来た頃。創作に入った工場は度重なる爆発に耐え切れずに瓦解していた。

 

~~

 

「アハハハハハ!! やっちゃえ!!」

 

 ソニア達と同じ考えに至ったグループは他にもあったらしい。十神がスケートボードにライドして、奇妙な挙動をとっては工場内部の機械などを破壊するかバグらせては建物ごと潰している。

 この光景を見た西園寺は色々と吹っ切れたのか、笑っていた。未だに常識が死にきれない小泉はただ呆然とするしかないが。

 

「(でも、考えたら私達が理不尽な目に遭っているのもアイツのせいなのよね?)」

 

 今までは誘拐されたり、被害に遭ったりと。ヒロインチックな立ち位置にいた彼女であったが、イルブリードで大量の理不尽に曝されたことにより、攻撃的な思考と言う物が彼女の中にも産まれていた。

 

「小泉おねぇ! 見てみて! ビルがぺーしゃんこ!」

 

 一仕事を終えて、十神が出て来た後。色々と潰れたのか自重が支えきれなくなったビルが崩落していた。もしも、あの中に件の人物がいたら圧死は免れない。何のビルだったかは謎だが、1つだけ分かっていることがある。

 

「ここはもう調べなくていいのね。じゃあ、次に行こう!」

 

 24時間の捜索で島の中にあるビルや工場の仔細を調べるのは不可能だ。こんな挑戦は理不尽という外ない。ならば、こちらも理不尽で対抗するまでだ。

 次の対象を探していると、九頭龍達と遭遇した。見れば、辺古山も菜摘もスケートボードを手にしている。

 

「その様子だと、そっちも同じ考えに至ったみたいだなぁ?」

「十神が勝手にやり出したのを見て、意味を把握した感じだけどね。でも、本当に、この島ならではの攻略方法だよね」

 

 ヌケーター達は機械とは壊滅的に相性が悪い。彼らが触れた機械類はバグったり、宙に浮いたりと。兎も角、無法地帯になりがちだった。

 

「その割には、ホラーモニターとか。USBメモリとか一部の機械は無事だった様な……」

「作用するには一定の大きさみたいなのが必要とかじゃねぇのか? 実際の所は何が起きているのかは良く分かってねぇけれど……」

 

 西園寺も抱いた疑問を、九頭龍は気にしないことにした。

 ここまで共に歩んで来たヌケーター達であるが、黒幕の正体が分かっても彼らの正体は未だに分からない。見た目は同級生の姿をしているが、果たして中身まで本当に同一人物なのか。

 ただ、分かるのは自分達に協力的であること。そして、このサイバーパンク島と呼べる建物を次々と崩落させていること。もしも、黒幕が悠長にビル内で待ち構えていたら、爆弾ごと圧死していることだろう。

 

「なんか。今の私達、世界の破壊者っぽくない?」

 

 西園寺が悪戯っぽく笑っていた。今まで、自分達が大罪者であることを後ろめたく思っていたが、いざ破壊者として手を染めてみれば……意外と爽快感に満たされていた。

 

「こんなバカみたいな世界は潰すに限る。今まで、出来なくてやきもきしていたんだからよ。むしろ、こっちの方が俺らの本分って感じだろ?」

 

 九頭龍組の跡取りとして、最も世界の敵に近しい立ち位置にいた彼が言ったら、一層それっぽく聞こえた。溜まった鬱憤を晴らすかのように、サイバーパンク島には破壊の嵐が吹き荒れていた。

 

~~

 

「ハハハ。皆、派手にやるよね」

 

 サイバーパンクな光景からは少し浮いているかもしれないが、狛枝達は屋台村で食事を取っていた。ボタンを押せばインスタントよりは多少味がマシな位の料理が出て来るので、七海もうどんを啜っている。

 

「ある意味ゲーム的な攻略だよね。Gジェネとかで言う所のエースユニットが出てくる前に戦艦を叩くとか。そもそも、ボスとして登場する前に始末するみたいなRTA的な仕草かも」

「この島がサイバーパンク島だから、避けられない展開だったかもね」

 

 今まで通りに行けば、工場を調べて数々の秘密を知って……みたいな流れだったかもしれないが、先の島で体力と精神力を消耗させられた挙句、時間制限まで設けられたんだから真っ当に攻略するはずがない。加えて、自分達の方にいるヌケーターが特攻としてぶっ刺さっているのだ。

 モノウサも言う通り、最適解の攻略をするならこうなる。ラスボスも生き埋めにしてしまって、爆弾とかもお釈迦にした方が早いこと済む為だ。

 

「うーん。でも、澪田は良く分からないんっすけど、こういう衝撃で爆発するとか。そう言う可能性は無いんっすか?」

「爆弾って簡単に言うけれどね。ゲームみたいにちょっとした刺激で爆発したりとか、誘爆したりする物じゃないよ。ちゃんと正式な動作を踏まないと作動しないよ。もしも、簡単に爆発したら危険すぎて使えないじゃん」

 

 モノウサは屋台から出て来た髪の容器に入った謎の中華麺料理を食べていた。サイバーパンク物でお馴染みの謎麺だ。

 

「でも。ビルとかに居なくて、地下とかに居たらどうしようか。そうしたら、これだけ暴れている皆の行動に意味も無くなるし……」

 

 派手に暴れている皆を見ながら、狛枝にも懸念事項があった。

 もしも、黒幕が地下に居たりしたらビル破壊による生き埋めor圧死作戦が意味をなさない。

 

「とりあえず更地にしてみてから考えた方が早いかもね。向こう側も、この事態を想定していないとは思えないしね。後、この謎麺料理甘ったるくて美味しくないや」

 

 と言っても、モノウサはちゃんと全部食べ切っていた。近くに設置されたモニタには、間もなくタイマーのカウントが20:00へと切り変わろうとしている大型爆弾が映し出されていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。