ボーダー隊員は帰郷を目指し 作:ボーダー技術開発室職員
あれからどうなったかといえば――――
きまぐれな
「ホンゴーさん…もう、終わりにしたいです」
「もう少しでひと段落ですからね。自分も手伝ってますんで手を動かしましょう」
「……全部してくださいぃ」
パソコンと書類が配置されたデスクに突っ伏してしまっている黒崎さんの肩を持ち、イスの背もたれへと引き上げる。
……面白い泣き顔をしている。狙撃手の先輩で同学年の
そんなこんなで、黒崎さんの仕事の手伝いをオレがするのが全体の半分ほどとなっているのだ。逆に、オレの仕事の手伝いもとい監視(?)を黒崎さんがしていることもある。
思うに、それもあるだろうけど「相互監視」に近いものだろう。同時に、職務に対する不平不満が溜まりがちな黒崎さんのガス抜き要因としての意味合いがある気もする。これまで以上に、いろいろと緩い気がしていて「それでいいのか?」と思いつつも甘えさせてもらっている。
っと。気づけばさっき言ってた「ひと段落」まで終わっていた。
ん? この書類って確か
一応、
そのために、まずは
――――――――――――
部屋を出ていく
「本当にあのふたりだけで行かせて良いの?」
「コユキにはいろんな意味で気をつけなきゃいけないけれど、彼が一緒にいれば大丈夫でしょ」
コユキちゃんは幾度もの問題行動だけでなく、その
それはそれとして――
「ユウカちゃんは彼のことを信用してるのね」
ユウカちゃんは一瞬だけキョトンとした表情になり――ちょっとだけ考えるようなしぐさをみせて「んー…」と声をもらしてからぽつぽつと話しだした。
「ちょっと融通が利かない部分があったり、隠してることがあるのは分かりきってるけどそれでも真っ直ぐ誠意でこたえようとしてくれるし、反対にこっちの立場や都合も察して深く触れてこなかったり……真面目で話が分かる人だもの。あれが普通に生徒としていてくれたら色々助かりそうなくらいね」
少ししか接していない私でも、ユウカちゃんの言葉には頷ける。
立場の問題で、本当に簡単で重要な内容には触れないものや単純な肉体労働系の雑務しかしてもらっていないことをふまえても、何事もそつなく真面目にこなしていることは「最低限」という言葉がついてしまうかもしれないけれど、いて困ることはない存在……それに、現状学園には癖が強い人が多くいるから彼のような比較的真っ当な人材がいてほしいというのもわかる。
加えて、あの飛んできた乗り物やその技術、雑務からは見いだせない彼の長所など、良くも悪くも
「それに……なんというか、ほっとけないのよね」
「ふふっ」
「な、なによ?」
「いいえ、私も同じようなことを考えていたってだけですよ。末っ子気質とでもいうんでしょうか?」
そういうとユウカちゃんは「あー…」と遠くを見て――何か過去にあった場面を思い浮かべてか――苦笑いをうかべた。
そんな様子につられて私も笑ってしまっていた。
――――――――――――
近未来的というか、超ハイテクな感じがしていたから全部データで送信って感じで一発で終わらせるとばかり思ってたけど、どうやらそうでもないらしい。もちろん、これまでの手伝いの中で「普通に書類仕事って感じだなー」っていうのはわかっていたけど、先入観というのは抜けきれないものだ。
よくよく考えてみれば、『ボーダー』でもある程度はデータ化しても書類はなんだかんだ言ってなくなったりしなかったし、そういうものなのかもしれない。流出とかのリスクについてはどっちもどっちっぽいのもあるのかな。
そんなことを考えながらも黒崎さんと話しながら階層を移動し、会長室を訪れたんだけど――――
「書類の提出こそできましたが今日も会えませんでしたね、生徒会長さん。お話しできればいいなぁと思ってたんですけど」
「まあ、いないことが多いですからねー」
いちおう、例のオレが『ミレニアムサイエンススクール』に滞在することの許可決定とかに関しては、『セミナー』の人たち、
立場上、こっちから色々言ったり内部事情に首を突っ込みたいとは思わない。けれど、それでもこうも会う機会がないとなると、いろいろと気になってしまうし、同時に不信感も少なからず感じてしまう。
……だからって、今、どうこうしようとも思ってはいない。そもそも
「ねぇ、ホンゴーさん! 戻る前にちょっと寄り道していきませんか?」
「遊んだりはできませんけど、休憩の時のお茶請けを買ってくるくらいだったらいいんじゃないですか?」
「えー……でもまあ、それもアリですね!」
多少のお小言はもらってしまうかもしれないけど、それくらいの息抜きのタイミングがあってもいいだろう。
「よぉ」
早瀬さんたちのいる執務室から目的地を変え、売店へ向かうために階段やエレベーターのある方へ来た道を戻っていたオレたちが廊下の角を曲がったちょうどその時。曲がった先から聞き覚えの無い声が投げかけられた。
そこにいたのは、赤毛ショートヘアの女子。
身長はコユキさんよりも少しだけ小さく、オレと比べると10……いや、もう少し小さいかもしれない。
特徴的なのは、
「うげぇっ!?」
「ん?」
「てめぇがホンゴウ トワだな」
――オレのほうか。
オレは
「そうですけど、なんですか?」
「ちょっと付き合えよ」
スカジャンメイドさんがガンを飛ばしてくる。
だからオレは、口元にだけ笑みを浮かべ――軽い調子で言葉を返す。
「ふーん? 何の用か知らないけど、一回『セミナー』の早瀬さんに許可もらってもいい?」
「ハッ! いらねぇよ、そんな手間」
白い歯を見せる鋭い笑みを浮かべたスカジャンメイド。
両手に持つ二丁のサブマシンガンが構えられ、二丁を繋ぐ鎖が音を鳴らした。
「あたしとてめぇでやりあうってだけだ。それに――すぐに終わる」
ああ、この感覚。
久々に感じる、違和感とも嫌悪感ともいえなくもない、そして視覚的に感じられるソレにオレは、『ボーダー』で共に過ごし競い合った友人のことが思い浮かび、自然と口が動いた。
――――おまえ つまんない ウソ つくね
「あんた、つまんねぇウソつくな」
瞬間。
連続した銃声。
ガラスが砕け散る音があたりに鳴り響く――
○
女子チームB級那須隊・狙撃手。同学年だが入隊時期が早かったためボーダーとしては先輩。
トワに先輩風を吹かせるタイミングが何度かあったが、単純な狙撃の腕ではすぐに追いつかれ、その後はトワのポジションの変更があったため訓練等で競うことは無くなった。それまでの積み重ねから、ただ単純に話しやすい同学年の異性という関係性。
トワがいなくなったことを知った際には「どぅわああああーーーー」と泣きじゃくった。
○
B級鈴鳴第一(来馬隊)・狙撃手。明るいムードメーカー的存在であるとともに『悪』と読者から称されるほどのトラブルメーカー。入隊時期は少しだけ先輩。
同じ狙撃手としてのつながりがあるが、それ以上に同隊所属の副作用持ち村上鋼が迅の紹介でトワに紹介されてからの隊ぐるみの付き合いの方が比率が大きい。1学年差があるものの実は気が合うという意味ではトップクラスの友人。ただしトワは振り回される。
当然、いなくなったことで曇ったが「トワを信じてるから」と立ち直った。
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