ボーダー隊員は帰郷を目指し 作:ボーダー技術開発室職員
外側がガラス張りの廊下。
その曲がり角の片面が割れ、ヒト一人が通れるほどの穴があいていて、多少のガラス
「……チッ」
飛び散ったガラスを踏み、風が吹きこむ穴の方へとあたしは一歩踏み込んだ。
ガラスに開いた穴の破壊痕に目を向けながら、あたしは通信を繋げる。
「どうだ?」
『ここからは見えない。辛うじて舞い上がった土煙の端が見える程度だ』
「だろうな。コッチもそんなもんだ」
ここから見える建物、その一つの屋上で待機しているであろう狙撃手・カリンに、通信機越しにそう言いながら、覗き込むようにして穴から下を見るとモウモウと上がっている。十数階ある高さから地表までは遠く、地表から立ち上る土煙の発生元はロクに見えやしない。
『少し位置を変えようと思う』
「おう。アカネとアスナは落下地点に回れ」
あたしの所属する組織C&C……
『わかりました』
『もう行ってるところー。まぁ、あの人は大丈夫だと思うけど』
「だからだ……気をつけろよ。
最後に「あたしも行く」と付け足して、改めて
……追うにしても、ここから飛び降りるのはわざわざするほどではない、か?
にしても、
アカネの配置からもわかるが、逃げることは想定の範囲内だ。単純に戦えないから、あるいは――滞在許可は出てるとはいえ孤軍である状況では考えにくいが――護身用でも何でも武具の装備をしていない場合に拠点である例の飛行物体のところまで撤退するためとかそういった理由でな。
引っかかっている点として、ガラスにできた穴の破壊痕とたちのぼる土煙。
「な、なななぁなっ! なんてことしてるんですかぁあ!!」
ひかれるように声のした方、右手のほう――外側面全ガラス張りの廊下の角、あたしが待ち構えていた廊下とは別の方、交わる廊下側――に目を向けると、そこには見知った顔があった。泣きながら顔を青くして、いつもは肩から紐で下げてある
……そういえばいたな、黒崎コユキ。『セミナー』所属……というか、半分くらい監視留置の扱いを受けている問題視の生徒で、問題を起こして脱走した時にはあたしらC&Cが鎮圧・捕獲することがよくある。だから、このチビともやり合ったことはこれまでにもあるしな。
今日は、ホンゴウトワの背中に隠れるようにしていたが、あたしが発砲する寸前にホンゴウトワが掴んであたしからは死角になる歩いてきた方の通路側へと、半ば投げるようにして離れてたっけな。
けど、てっきりいつものように涙目で逃げるもんだと思ってたんだが……逃げるためのやけっぱちじゃなく、ここまで明確に対峙しようとするのは、何気に珍しい気がするな。
「うるせぇな、今はお前に用はねぇんだよ」
――そんなつもりはなかった。
内心思っていた言葉は別のモノになって出てきていた。わざわざ言う必要も感じない、というのもある。
もちろん、ホンゴウトワのような『ヘイロー』を持たないヤツはあたしらと違って脆く、銃の一発が致命傷になることはわかっている。けど、
「うるさいって、なんですか!? 『ヘイロー』のないホンゴーさんを撃って、落として――――」
「当ててねーよ! つか、自分で穴開けて、自分で後ろに跳んで落ちたんだ。十中八九、死んでねぇし、落ちても死なねぇ自信があるに決まってるだろ」
「え? じ、自分で???」
投げられた直後で、目でも瞑ってしまっててちゃんと見れてなかったのか?
このままうるさくされんのも面倒で、目を真ん丸に見開くチビに、ガラスに開いた穴を
「そこからでも、いちお見えんだろ。穴の角あたりよく見てみろ」
「え……ん? 線?」
「
一部、砕けたところもあるが、実のところ、それすら
もっとも、
「あと、いくら
落ちりゃ、地表よりも『ヘイロー』無しの身体のほうがどうにかなるだろうってのは、見たことがなくても想像できる。
じゃあ、舗装された地表でこんな土煙をあげてるとなると、相応の爆発物――あるいは、それと同等の
「確か、情報じゃあホンゴウトワの所属している『ボーダー』ってのは
あたしの言ったことを聞いて、少し顔色が戻った様子のチビは、それでも迷うように「で、でも…」と構えた銃を下ろしきらない。
まぁ、制圧することも、無視することも簡単だからな。もう――
『リーダー! なんとなくだけど、やばいかも?』
「……は?」
ふいに、耳につけた通信機から聞こえてきたアスナの声を、あたしは、一瞬、理解できなかった。
「オイッ! 何があったってんだ!?」
『なんとなくというか……飛んでて、箱が光っ――おおっと!?』
何を言ってるのかわけわかんねぇが、通信機越しにゴチャゴチャと音が聞こえて、アスナもいつもの気の抜けた声ではあるが、どうにも慌ただしい。加えて、通信機とは別に離れたところから、かすかに戦闘音らしきものが聞こえる。
「アカネっ! アスナと合流できるかっ!!」
いつもと違う慌ただしさに嫌な予感がし、アスナと同じくヤツの落下地点に向かっていたアカネに確認を取る――――
「……おい? アカネ? カリンっ! 何してんだ!?」
――――が、反応がない。
それは、狙撃場所の移動をしていたはずのカリンも同様で、いまだに反応がねぇ……?
まさか!?
そのありえねぇ考えに至ってしまった瞬間、走りだそうとし――視界の端に、あたしの動きに反応してか下ろしかけていた
「コイツにかまってたから…!」と苛立ちが湧いてきて離れ際に、先にこっちから銃弾をプレゼントしてやろうかと、走り出しながらも銃口を向け――――
ピリリリリッ! ピリリリリッ!
「初期設定」、そんな言葉が浮かんでくるような無骨な着信音が響き、あたしらの動きはピタリと止められる。
発信源は……あたしでも、目の前のチビでもない。
「はい。早瀬さん、どうかしましたか」
着信音が切れ、一拍置いて聞こえてきた声。
もっぱらエレベーターが使われて、物好きか緊急時くらいしか使われないだろう階段のほうから聞こえてきたそれは、先ほどまでは気づかなかったのか聞こえてこなかった足音ともとに近づいてきて――
「ああ、近くにいるというか、その大きな音っていうのは自分がやったことで……いえ、襲われたので」
登ってきたのは、
「
左手にはどこに隠し持っていたのか身体を半ば隠せるほどの大きさの半透明で淡く光るライオットシールドらしきものを持ち、反対の手で携帯電話を持ち誰かと電話しているソイツの視線はあたしへと向けられ、交わった。
「いちおう聞きますけど――早瀬さんと黒崎さんもグルですか?」
「
さっきまで小声で「よがった~」って泣いてた
「…ウソじゃないですね。一瞬でも疑ってしまい、すみません」
「よかった。ふたりに嵌められたってなったら……さすがにショックでしたから」
電話先の相手、話からして『セミナー』の早瀬ユウカから何か言われたのだろうホンゴウトワは、一言「はい」と返答し、そのまま言葉をつづけた。
「お互い、いろいろと確認したいところですけど……どうにも、
そう言って一方的に通信を切ったホンゴウトワは、携帯電話をポケットに入れ、そのままそのポケットから
つまり、さっき聞こえたアスナ、そして通信すらなかったアカネとカリンの通信機をご丁寧に取ってきたわけか。
信じられねぇことだが、他の3人をこの短時間で戦闘不能にしたんだろう。
ただ、落下地点を目指していたアカネやアスナはともかく、狙撃手のカリンを補足できた理由や、そもそもの想定される移動距離や決して弱いとは言えないC&Cメンバーを倒すことがこの短時間でできることに疑問が残る。
「ずいぶん驚かせてしまったみたいですね」
あたしから視線を外さずに、少し横にいる
「そーですよ! いったい何を考えて――」
「色々とあるんですよ。…で、いきなりで悪いんですけど、下の
「えっ?」
ホンゴウの言葉に、チビだけでなく、あたしも眉をひそめる。
「襲う目的として考えられるのは、自分かあの
「そ、そう言われても、私、そんな強くないし」
「頼んだ」
「っ……はい!」
さっきまでの調子はどこへやら、一転していい返事をしたチビ。
ホンゴウが登ってきた階段へ向けて、
そんな姿をあたしはただ見守り、ホンゴウはあくまであたしから目を離さないまま、
「どういう心境の変化だ?」
エレベーターの扉が閉まりきるのを合図に、視線の先のホンゴウにあたしが問いかける。
「最初に逃げ出せてたんだ。わざわざ戻ってくる必要は無かったろ。それこそフネとやらにテメェ自身が行きゃぁいいじゃねーか」
「まぁね。安全優先なら
手に持つライオットシールドの角で、カンッと床を叩き、小気味いい音を鳴らした。
「アンタ、強いでしょ。メイドさんたちの中でも――――
――――
これまでの落ち着いた様子とも、情報にあったどこか抜けた感じとも違う、
一瞬、目を見開き――つられて口元がゆるんでしまう。
「そりゃぁお目が高いこった。けどなぁ…」
両手の愛銃を握り直し、改めて狙いをホンゴウに定める。
「『最強』を舐め過ぎじゃねぇか!?」
「ならっ痛い目見せてみなよ!」
あたしの
「『
ホンゴウが何かつぶやいた。すると、ヤツの右手あたりから胴ほどの大きさのある
…っ! アレがアスナが言ってた「箱」か!
てことは……
いくつもの
つーか、レーザービームかなんかかよっ!?
飛んできたビーム(?)のいくつかはSMGの弾丸とぶつかりはじけたが、それでもそれぞれが撃ち出したモノは、
ビームは、遅いわけじゃないが、だからといって避けきれねぇほど速くもなく直線的に来るから、問題なく避けきることができた。
対してホンゴウは、構えたライオットシールドでSMGでばら撒かれた弾丸を受け切っていた。ヤツのライオットシールドはその見た目に違わずかなり丈夫なようで、傷一つ見当たらない。……特に
と、レーザーを避けきったその体勢の流れのまま、ホンゴウへ向けて再びSMGを叩き込む。
――――その視界の
次の瞬間、さっきも見たような光景――キューブが光り、レーザーが射出された。その軌道は、あたしのさっきいた所を通過するモノだった。今回は空振りとなり誰にも当たらないまま外側へと飛び、一面のガラス張りを打ち抜き穴をあけ、その衝撃でひびを入れ、一部砕けている。
「小賢しいマネしてんじゃねぇよ」
お返しとばかりに弾を撃ち放つが、ライオットシールドで正面から受け切られてしまう。その裏で、ヤツはまたキューブを出し、分割して、打ち出してくる。ご丁寧に数個はそのまま残して、あたしに対し距離を保ちつつ移動しながらまたキューブを作り出した。
その意図は、すぐに察せた。
置いておいたモノと自分のものとでの「ひとり
だが……
「オラオラオラオラッ!!」
あたしの持つ2丁のSMGのうち、片方をシールドを構えるホンゴウに、もう片方を
果たして、キューブはあたしの思った通り、その場で光り
そして、散っていたキューブを撃ち壊せたのとほぼ同時に、あたしはリロードしつつ駆け出していた。
標的はもちろん盾を構えたホンゴウ。ここまでで、真正面からあのレーザーを撃たれても避けられることはわかった。多少散らされて撃たれれば避けなきゃらなねぇ範囲は増えはするが
対して、現状あたしのSMGがライオットシールドを真正面から突破できないのも事実。だから近づく。自分がより特異な間合いに、状況にするために。
ホンゴウは、また数個キューブを散らして撃ち――あたしもソレを破壊しつつ、ライオットシールドの間合いに入り込むべくさらに近づき、キューブを撃ち終えたホンゴウを目前として
右腕が横薙ぎに振るわれた。
風切り音。
ライオットシールドはよりその身左側に近づけられ、代わりに少し出された右腕が横薙ぎに振るわれていた。
キューブを撃ち出すよりも、よっぽど速い
けど、あたしは
脳裏にあったのは、ヤツが落ちる際に
「忘れてねぇ…よッ!!」
三角跳びの要領で跳び背面を取ったあたしは、着地の体勢をとりつつライオットシールドで守りきれていないホンゴウへ向けて乱射する。
ホンゴウも、腕を振るった勢いのまま片足軸で身をひねりライオットシールドをコッチに向けなおしてきた――が、わずかに遅い。頭や胴の大半はなんとか隠してきたが、それでも足元までは瞬時にカバーしきれない。
ライオットシールドで受け切れなかった弾丸の、その中の一つが右太もも外側に着弾し――――
…
……
………
…………は?
―――――――――
そもそも、今ネルが撃っている弾丸は演習用の模擬弾。『ヘイロー』を持たない人を相手にすることはわかっていたため、そんな相手でも打撲程度で済むようにわざわざそういう装備にしていた。だから、普段ほどガラスを打ち抜けないし、シールドを真正面から突破できる自身はなかった。
にも関わらず、相手の身が抉れた。
加えて、その抉れた部分からは黒い煙のようなものが噴出してきているときた。
トリオン体はトリオンによる攻撃でなければ破壊されない。事実、高所から落ちようが、高速で動く車にぶつかられようが、戦闘用のトリオン体が傷を負うことはない。そのため、キヴォトスでは銃撃戦が日常茶飯事だと聞いてもそれほど危機感を抱かなかった。なぜなら、銃であっても傷を負う恐れはないのだから。
今日の戦闘で
しかし、傷を負った。効果があるはずもないと思っていた、ただの銃による攻撃で。
ふたりの固まった思考。
ほんの数秒にも満たない空白。
そんな中で一瞬早く復帰したのは――
―――――――――
「『スラスター』オン」
衝撃。
痛みで意識を引き戻され、わけもわからずやや右側から受けた衝撃の意味を探る。
ぶつかってきやがった。
着地寸前のところに、向けなおしたライオットシールドでのシールドバッシュ。それも多少あった距離を一瞬で詰め、ぶつかり、そのままの勢いで足の浮いたあたしごと進む
「ガッ!?」
廊下内側の壁に叩きつけられ、その衝撃で肺から空気が押し出される。
痛みはある。が、まだまだいける。
シールドと壁に挟まれ窮屈ではあるが、逆に言えばコッチの間合いでもある。模擬弾では突破できなくとも、腕っぷしなら――――
そこまで考え、動こうとし固まる。
着地中不安定な体制での接触だったからか、あるいはこちらを向き直りながらのシールドバッシュだったからか、ライオットシールドとぶつかったのは、あたしのやや右側で――そのぶつかって押し付けられていた右腕・右足にライオットシールドの半透明の盾部分が
いや、その表現も正しいかどうか。初めからそんな形だったかのように開いていた穴に腕と足が肘・膝の前後あたりがはまっていて動かしようがなくなっていたのだ。
同時に気付く。シールド越しに見えるホンゴウの右手に
盾越しに撃つ? いや、盾に穴が開くのか!?
あたしも黙ってやられはしない。
身をひねり、固定されてない左腕を動かし、シールド脇から出した銃口でなんとかホンゴウの方へと発砲しようとし――――
消えた。
ライオットシールドが、右腕・右足を固定していたシールド部分のみ、奇妙な形をした持ち手部分を残して、一瞬に消えていた。
意味が解らない。
だが、標準を定めいた左手はそのまま引き絞り、同時に、押し付けられ曲がっていた右足を伸ばす要領で蹴りを繰り出す。もちろん、目の前にいるホンゴウへ向け。
右手に握られた
だが
弾丸は明後日の方向へ飛び、蹴りは空を切った。
受けた衝撃は弾丸で撃たれたものと違っていた。
意味が解らない。
そんな中、あたしの視界の下の端に移った
「っ!!??」
重力に引かれ、床へ叩き落とされ、何かがあたしの胸をどついた。
いや、違う。気づいた。理解した。
理解し、なんとか動こうとするのとほぼ同時に、銃声が響く。
一度、二度、三度……と。
そのたびに、足が、膝が、肘が、手が重くなり、場所によっては押し上げられるように動かされる。
握りしめていた愛銃は、手から零れ落ちた。手首あたりが撃たれ、そこから生えた黒い円柱上の塊のせいで手のひらから余りグリップに指がかからなくなって、押し出されるような形で手元から離れてしまっていた。
さらに言えば、立ち上がることもできない。その生えたモノの重量もあるが、加えて膝とか主要な関節から生えた塊が邪魔をしてまともに曲げ伸ばしができない。そんな状態じゃあ起き上がるための動きなんてできやしない。
「くそっ」
床にぶっ倒れて動けないあたしの耳に何かが触れ、つけていた通信機が盗られた。つーことはホンゴウだろう。
「それじゃあ、せっかくだし色々と聞かせてもらおっか」
『その話、少しまっていただきましょうか』
○今回のトリガー構成
●メイン
・スコーピオン
・アステロイド(HG)
・+(グラスホッパー)
・バイーパー
●サブ
・レイガスト
・+(スラスター)
・+(グラスホッパー)
・+(レッドバレット)
とある理由でかなりアホな構成になってます。
なお、戦闘に関して+の大きい
アンケート機能利用
期限:次の投稿まで
結果は、話の流れに影響があります。
次のタイミングでの副作用
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未来視
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嘘を見抜く
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動物意思疎通
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敵感知・気配遮断
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強化聴覚
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強化睡眠記憶
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強さ色識別
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身体精密操作
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感情受信体質
-
EX