ボーダー隊員は帰郷を目指し   作:ボーダー技術開発室職員

6 / 15
第6話

さて、日課となっている早瀬(ユウカ)さんのところでのお手伝いを終えて、今日の分の仕事はひとまずOKと言われたオレが来たココは『ミレニアムサイエンススクール』の一角にある数ある演習場の中でも屋外のもののひとつだ。

使用用途は、まぁその名前の通りだが、新装備やロボットのテストプレイなんかでも利用されるらしい。特にココの特徴としては地面が舗装などされていなくて、いわゆる土のグラウンドのようになもの……というのが、「抉れたりしても費用があまりかからない演習場」という要望を聞いた生塩ノアさんがココを紹介したわけだ。まあ、ただの土なら費用はかかりにくいのかもしれない。

 

 

オレがこんな演習場に来ているのには理由があるんだけど……

 

「なんであなた達がいるんですか?」

 

 

「「「「「「「?」」」」」」」」

 

 

オレの言葉に、一緒に来たコユキさん以外の人たちがこっちに視線を向けた。具体的には、つい先日諸々の事情で戦ったC&C(クリーニングアンドクリアリング)の4名と、後にコユキさん本人から聞いて知ったがあの日にコユキさんと戦ったというエンジニア部の3名。

許可を取って、必要な準備をして、で演習場に来てみればエンジニア部がなぜかいて「他の人と被った? でも、ある程度の広さのある演習場なら問題はないか?」と少し面倒な気もしたがどうにかなるだろうと思っていたが、そこに狙ったかのようにC&Cが来て「あ、狙ったものか」と確信したわけだ。

 

十中八九、オレの予想通りにワイワイ寄ってきて「まぁまぁ」「気にしないで」と流されていた。しかし、目的を果たす前に、さすがに問いかけてしまったわけなんだが……。

 

「なんで…って、今日ココに君が来るのはわかっていたから」

 

「あなたには色々と興味が尽きませんから、この機会に色々とお話してみようかと」

 

オレが来るまでの時間つぶしに使って(いじって)いたのだろう機械類のそばで猫塚(ヒビキ)さんと、メガネをキラリと光らせた豊見(コトリ)さんがが何故かグッドサインをしてきた。

例の日も、上からの指示もあったとはいえ、遠征艇やその技術に興味津々だったと聞いているから、こうしてココに来た動機はわかった。もちろん、教えたりする気はないけれども。

 

「私も似たようなものだよ。あとは――」

 

他2人に続いて口を開いた白石(ウタハ)さんは、その端整でキリッとした顔で――

 

 

 

 

 

遠征艇(あのフネ)に主砲を取り付ける気はないかい?」

 

 

 

 

 

「お断りします」

 

「何故だい!?」

 

「どう考えてもコストが(かさ)みますもん。運用はもちろん、取り付けただけでその分飛行時のエネルギー消耗が数%…あるいはもっと上昇しちゃいますよね」

 

「そうでしょうけど、断るのはせめて概要を聞いてからでも…!」

 

「宇宙戦艦に搭載すべく、部費をつぎ込んだレールガンだよ!? ロマンだよ!!」

 

白石(ウタハ)さんだけでなく、エンジニア部全員が詰め寄ってきた。だがそうは言われてもなぁ。

 

「そもそもキヴォトスでの滞在は長期航行のための補給の意味もあるのに、コストパフォーマンスが落ちてしまったら本末転倒です……ロマンはわかりますけど」

 

「ロマンはわかるんだ」

 

意外そうに言う猫塚(ヒビキ)さんに「それは、まぁ」と答える。カッコいいし。特に切り札的なものには憧れがある。

残念そうにしながらも、とりあえずは引いてくれたエンジニア部。だが、諦めた様子はなさそうで、今は『未来視』は無いが今後もことあるごとに色々とありそうな気がしてきた。

 

 

その流れで…というわけではないが、C&Cがかたまっている方へと目を向ける。

視線に気づき、オレの意図もわかったのか、一ノ瀬(アスナ)さんがにこやかに手を振りながら理由を言ってくれる。

 

「私は暇だったから~」

 

「付き添いです」

 

続いて、室笠(アカネ)さんは、その見た目通りメイド然とした立ち姿で答えた。

……にしても、C&Cって意外と暇なのか? それともたまたま?

 

 

そんな疑問を抱いていると、ふと視界にこっちへ歩き近づいできくる角楯(カリン)さんの姿が見え、自然とそちらへ向き直ってしまう。

 

「私もキミに興味がある。それに、どうしても聞いておきたいことがある」

 

「聞きたいこと?」

 

オレが聞き返すと、角楯(カリン)さんは小さく頷いた。

 

「あの時、何故私の居場所がわかった?」

 

角楯(カリン)さんの投げかけた疑問に、おそらくはあの一連の戦闘について情報共有をしたのだろうC&Cの面々は、思い当たったような表情を見せた。

もちろん、オレも彼女が何のことがわかったし、別に隠すようなことでもないため答えを返す。

 

「一対一じゃないことがわかった時点で、あの場所での戦闘で援護があるとすれば同じ階あるいは上下の階からの挟み撃ちか、あるいは狙撃だろうって考えたんです。それで、まずは一番脅威になりそうな狙撃手から戦闘不能にすることにしました。場所は――――()()()()()()()()()()()()()と思ったからです」

 

「自分が撃つ……? もしかして」

 

「ええ、まぁ元々は狙撃手として訓練してましたので」

 

「なるほど、納得した。いい狙撃手なんだな。時間が許すなら、詳しく話してみたい」

 

「機会があったらこちらこそお願いします、角楯(カリン)さん」

 

狙撃手としてもそこそこやれる自信はあるけれど、狙撃の腕に関してはほぼ間違いなく角楯(カリン)さんの方が上だろうからお互い話を有意義なものとして思えても「勉強になる」って意味だと、間違いなく()()()()()()()()()()()()()()だろう。

オレの狙撃銃……いや、ソレに限らずトリオンで生成された弾は()()()()()()()()()()()()()。近距離はまだしも遠距離である狙撃銃が本来無視できない風の影響を無視している自分が、どこまで角楯(カリン)さんの話についていけるかはわからないが、それでも――だからこそ、彼女のような狙撃手の話を聞いてみたいと思う自分がいる。

 

 

それはそれとして、残った一人。この中で一番の実力者だろうという初対面の時から変わらない美甘(ネル)さんへと視線を向ける。

 

「あー……あたしも似たようなもんだ」

 

目をそらした美甘(ネル)さんのその言葉は、嘘じゃあないみたいだけどなんとなく歯切れの悪いような……?

 

「リーダーったら、足の怪我は大丈夫なのかって心配してたよー」

 

「なっ、バッ!? デタラメ言うんじゃねぇ!!」

 

「罪悪感か、居心地悪そうにしていた」

 

一ノ瀬(アスナ)さんに図星を突かれたらしく、顔を赤くし声を張り上げ睨む美甘(ネル)さん。立て続けて、今度はオレのそばまで来ていた角楯(カリン)さんの言葉に反応したため、コッチの方を向いて「キッ!!」と睨みつけて怒り……いや、気恥ずかしさやらが混じっているんだろう激情を声にならない声で響かせた。

 

……で、彼女たちの話に合った怪我っていうのは、あの戦闘で美甘(ネル)さんに撃たれ抉れた右足のことだろう。あのまま、『セミナー』会長のところまで行ってって感じだったから、美甘(ネル)さんからしてみれば怪我したままの印象だったんだろう。もちろん、普通に過ごしていることを知ってはいるだろうから、そう心配いらないことはわかってはいると思うんだけど……そのいわゆる不良(ヤンキー)じみた格好や言動で勘違いされそうだけど、良い人だな。

 

 

美甘(ネル)さん、お気になさらず。見ての通り自ぶ――――

 

「にはははっ! 大丈夫なのにそんなオロオロしてるネル先輩、おもしろいです! 『とりおんたい』は壊れても時間が経てば(なお)せますし、生身には傷一つないんですから~」

 

――――んは……」

 

 

オレが言い切る前に、隣にいるコユキさんがケラケラと笑いながら言った。

 

 

「くそチビぃぃぃいいぃーーー!!」

 

「ぎゃああぁぁああ!!??」

 

 

さっきまでは、ぎりぎり押し留まっていた美甘(ネル)さんでしたが、その劇場が堰を切ったかのように爆発し、大声を上げてコユキさんを追いかけ――コユキさんも大きな悲鳴を上げて演習場を逃げ回り始めた。

 

なお、ふたりの身長はそう変わらない――いや、むしろほんのわずかにではあるがコユキさんの方が高い気もする程度だ。

 

 

「その、よかったの? かなり大切というか、重大な機密(こと)のように思うんだけど……」

 

「ワンワン泣くのを止めるために話したのは、自分なので……コユキさんを責めるつもりはありません」

 

あまり表情の変化が見えない澄ました顔が印象的な角楯(カリン)さんが、目に見えて心配そうにしている表情を視界の端に見つつ、オレはそう返す。

 

実際のところ『トリオン体』については遅かれ早かれ気付かれるものだと思っていた。だから「逆に言えば、生身の時は対抗手段がない」と判明してしまうその事実がコユキさんの口から()れたとしても、想定の範囲内だ。

それに……やっぱりあんなに泣き着かれてしまったら何もしないわけにもいかなかったしなぁ。遠征艇に帰ったらいつものことになってて先に侵入してきてたコユキさんが、そんなオレの足を見て飛び上がって泣いて(わめ)いて大騒ぎ。()()()()()()()『トリオン体』を解除して生身になって無事なことを教えて、説明して……で、ようやく落ち着いてくれたんだから、あれだけ心配させたとなれば申し訳なさもあって強くは言えない。

 

「黒崎コユキのことは名前で呼ぶんだ……なるほど、確かに甘い」

 

「懇願されたので。でもそれのどこが甘いんでしょうか?」

 

「いや、こちらの話」

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

一通り逃げ回ったコユキさんがオレを盾にしようと背後に隠れたあたりで、美甘(ネル)さんとの仲介をし、なんとか(いさ)め……諫められたかは微妙だが、とりあえずは落ち着かせたので、本来の目的のため、コユキさんと準備に入る。

 

「あのーホンゴーさん? 私は何をすれば?」

 

「こう、手を出して感想を言ってください」

 

「感想?」

 

 

 

「はい。撃った際の外傷の有無に関してはこちらで確認できますから、コユキさんは痛みの程度を教えてください」

 

「撃った際!?」

 

オレの言葉に、コユキさんはもちろん、視界外も含めた周りの人たちが驚いた様子が手に取るようにわかった。

もちろん、その驚きには誤解も含まれているだろうから、先にこちらから説明を付け加える。

 

「怪我もまず無いことは『ボーダー』の名に誓う。今日はあくまで安全処理(セーフティ)の確認だから」

 

「セーフティ、ですか?」

 

「そう。『ボーダー』の使う『弾』には安全処理が設定されてあって、万が一流れ弾が生身の民間人に当たっても痛みと衝撃で気絶する程度になってます」

 

「そ、そうなんですかぁ? なんか凄いSFチックですね……って、気絶するほどの痛みと衝撃ですよね!? やばくないですか!?」

 

それは、確かに否定しきれない。

いちおう、オレも単独行動中には覚悟をしていたものの幸運なことに未だに生身の人を撃ったことは無いので、この安全処理がいかほどのものかは実のところ詳しくは知らない。ただ、不安要素もあるがプラスに考えられそうなこともある。

 

「大丈夫ですよ。それに、こちらの方々は生身で銃撃戦ができる程度に丈夫だと聞いてますので、ウチの生身よりも影響は小さいでしょう」

 

そう、()()()()()()()()()キヴォトスの人たちの多くはかなり丈夫らしい。それこそ銃弾で撃たれても「痛い」で済む程度に。MG(マシンガン)で乱射されても穴だらけにはならないとか……それでも、痛いし、打ち所が悪かったりずっと撃たれたりしたら気絶等々しはするらしいが、となるとボーダー製の弾では気絶すらしないかもしれない。

 

オレの説明に、落ち着きを取り戻したコユキさんが「なるほど」と納得し――――首を傾げた。

 

「あれ? じゃあ、なんで今日はその安全処理を確かめる必要が」

 

「今回はどちらかというと、『弾』トリガーじゃなくて『(ブレード)』トリガー……接近戦用のモノの実験がメインなんです」

 

「ブレードって……って! 今、実験って言いましたよね!?」

 

「いやぁ、それが、『弾』については安全処理があることは知ってるんですけど『(ブレード)』には付いているかどうか知らないんですよ。いちおう、いじって調べようとしてみたんですけど、いまいちわからなくって」

 

そうなのだ。オレが分類される『万能手(オールラウンダー)』は、『弾』系の中距離トリガーと『(ブレード)』系の近距離トリガーを使いそれぞれの個人(ソロ)ポイントが6000ポイント以上になることが条件とされる――実際のところ、まだ5000台だったので正確には『万能手』扱いではないのだが――職種なのだが、単純なことを言うと、本来戦闘で使うべき近距離トリガーの対人での安全性が不明なのが現状である。

なので、トリガー構成を考える際や戦闘の際、色々と意識しないといけないから十分には戦えないのだ。

 

「なので、今後の活動を考えて『(ブレード)』の安全性についても確認しておきたいんです。安全処理の有無や対象はどの程度なのか。ガラスは斬れたけど、生身と服との判定の差があるかどうか……その結果によって、構成を変えてよりキヴォトスでの戦闘に対応できるようにしてね」

 

「うわぁああぁあっ! わかんないところもあるけど、いいたいことは納得できるけど! なんか不安なことが増えてませんか!?」

 

「「危ないことはしないように」と早瀬(ユウカ)さんにも言われてますので、斬りかかったりはしませんよ。ただ――――」

 

 

「オイ」

 

 

ゲシッっと足を蹴られた感覚と聞こえてきた声。

その方向…斜め後ろへ目を向けると不機嫌そうな顔をした美甘(ネル)さんが。なんだろう?……って! また蹴られた!?

 

「あたしの記憶が正しけりゃ、そのブレードとやらで思いっきり斬られそうになったんだが……そこんとこどうなんだ?」

 

ああ、なるほど。戦った時に、安全性の確認できていない『(ブレード)』…『スコーピオン』で横薙ぎにしたことに不満があるんだな。「そんなことを言いながら怪我させる気満々だったじゃん」って感じで。

もちろん、何も考えがなかったわけじゃない、というか……

 

「アレは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そのワリには、足撃たれたりしてて計算通りって感じじゃなかったが?」

 

「それだけ、追い詰められてましたから」

 

最強だなんて本人も言っていたけれど、そう言うだけのことはあると思う。あの時、勝ちを掴めたのも、オレの実力を見るためか美甘(ネル)さんがしていた手加減と模擬弾の使用、それと戦闘中の動揺と『鉛弾(レッドバレット)』という初見殺しとも言えてなおかつ絶対に怪我をさせない使用であるトリガーを設定していたため遠慮せず撃てたからというものである。

それらに何かしらのズレ――例えば、『スコーピオン』を避けた時に横跳びじゃなくて、搔い潜るように突っ込んできてたら――普通にまだまだ負け筋があっただろう。

 

 

「ふーん……ま、そういうことにしとくか」

 

 

いちおうは納得してくれたのか、美甘(ネル)さんは蹴るのを止め離れていった。

その口元はなぜか少しニヤついていた気がする。

 

 

 

「そうか。詳しくは聞いてなかったが、リーダーの時はそんなことをしたのか。比べて私はすぐに制圧されてしまったから……移動しようと思ったら下から飛んできて、咄嗟に銃口を向けたら空中で方向転換されて見失い、すぐに撃たれて終わり」

 

「私はねぇ、箱がバラバラーって散ってビームみたいな弾が沢山飛んできて。それは避けられたけど、今度は()()()が分かれて弾になって飛んできてそれも避けようとしたんだけどー…手前で飛んできてる弾がこうばぁあって曲がって広がって避けきれなくて負けちゃった!」

 

「私は、その、目の前に現れた彼を注視していたら、いきなり上から何か降ってきて……あとは知っての通り、重りで動けなくなってしまいました。今思えば、アレもアスナ先輩の言う『曲がる弾』を事前に撃ってたんですね」

 

C&Cの面々が、あの時の戦闘を思い返して淡々と、楽しそうに、あるいは恥じるように当時のことを話している。

あの時は、最速で戦闘不能にするために、いわゆる「わからんごろし」ってヤツをしてたわけでぇぇつッ!?

 

 

「オイ…ッ!」

 

 

……さっきも似たようなことが…!?

というか、今、ヘッドロックされて……!? 身長差があったから跳びかかられて、かっ!?

 

「空中方向転換とか、曲がる弾とか、あたしに使ってねぇよなぁ……?」

 

美甘(ネル)さん、なんか怒ってません!?

首を絞めようとしてきてる腕をタップしながら、意図を探りつつなんとか言葉を絞り出す。

 

「『グラスホッパー』は『シールド』無しでSMGを避けきれないしそもそも『レイガスト』の重さで使い辛いし! 『変化弾(バイパー)』は使ってたよ! ……弾道制御は切って直進にしてたけど」

 

「はぁ!? わけわかんねぇコトばっか言って、しかも手ぇ抜いてたとかなめてんのかぁ!!」

 

「逆だ! 速攻で落とせないなら「直進だけ」って思いこませてから仕留めるための仕込み!! 仕留めるための道筋なんていくつも用意しておくものでしょ!?」

 

そこまで言ったところで、ヘッドロックが解かれた。

納得してくれたか……?

 

 

「なら、今すぐ戦え!」

 

 

してなかった!!??

というか、機嫌が悪い理由って、戦った時に手を抜かれてたんじゃないかって疑念からなのか!?

 

「いやいやいや!? 今日ココに来たのはあくまで実験のためですから!」

 

「じゃあ、ビビッてるコユキ(そいつ)に代わってあたしがその相手になってやるよ! 実戦で!!」

 

「だから! 全力で戦うためにも、安全処理(セーフティ)がどうなってるか知る必要があるんだって!!」

 

「なら! とっととやれ!!」

 

そう言い放った美甘(ネル)さんが右手をグイッと差し出してきた。たぶん、最初にコユキさんに「手を出して」っていう指示を出していたのを聞いて覚えていたんだろう。

 

そこまで言うなら、まぁ別に相手はコユキさんじゃなくてもいいですし、やりますけども。

 

 

「……おい、待て」

 

「? どうかしましたか?」

 

「今手に出したのが『ブレード』だよな? 戦った時にも出してたっていう」

 

「ええ。『スコーピオン』っていう小ぶりのものですが」

 

美甘(ネル)さんは、差し出された腕を支えるように持ったオレの左手とは逆、右手のほうに視線を向けたまま言う。

 

「なんか、手から生えてこなかったか?」

 

「そういうものなんです。色々制限はありますが、形を変えたり体の中から別のところから刃を生やせたりするんですよ」

 

そう言いながら、右肩から少し『スコーピオン』のブレードを出し、グネグネと動かして見せる。すると「それで背後のガラスも切ってたのか……」とどこか納得した様子の美甘(ネル)さん。

そして、いつの間に近づいてきていたエンジニア部の3人が、『スコーピオン』のことを見ながら「フムフム」「ほうほう」と何やら考えるような仕草をしている。

 

それはさておき、実験を……と、手に持つ『スコーピオン』を変形させ、ペンを持つようにしてチクッッとだけ刺せるようにする。

 

 

「お、おい! ちょっと待て」

 

…? また、何かあったのか?

 

「なんつーか、その構え方とか、スコーピオンってのが変な形を作ってるのが……」

 

「何って、あくまで確認ですからチクッと刺すだけだからコレがいいかなぁと思いまして」

 

 

 

「だからって、なんで注射器みたいな形にすんだよっ!?」

 

なるほど。その腕をさし出したような体制は注射をする際と似たようなものと言えなくもない。それに、最低限の外傷リスクとするためにナイフ型の基本形から少し変更したのは、針のようなに細く・長く・鋭くした形となっているので……まぁ確かに言われてみれば、こちらも注射器のようにみえますね。

 

 

「それじゃあ刺しますよ」

 

「いや、やっぱちょ――――!!」

 

 

何か言いたげで、暴れ出しそうな美甘(ネル)さんと観察しているエンジニア部をスルーしつつ、また、美甘(ネル)さんの背後で口元を手で押さえ笑いをこらえている様子のコユキさんに「後でまた追いかけまわされても知りませんよ」という視線を向けつつ実験を開始する……。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

結果だけ言うと、『弾』のセーフティはあって、『(ブレード)』もいちおう安全処理のようなものがあることはわかった。ただ、目立って傷がつかなかったのは、本当に安全処理(セーフティ)のおかげなのか、キヴォトスの人特有の丈夫さ故なのか……ちょっと微妙なところだ。

 

そして、オレは『トリオン』消費が気にかかったが、美甘(ネル)さんに演習に付き合わされるのだった……

 




多数の評価ありがとうございます。気づけば評価バーに色がついてました。
週一投稿のペースですが今後とも暇つぶしにでもよろしくお願いいたします。


次回あたりは他校での話になる予定です。


アンケート機能利用
期限:次の投稿まで
結果は、場合によっては話の流れに影響があります。
あと、例外的に下2つの選択肢は複数先生(?)になります

登場する先生は?

  • 女先生
  • 先生(便利屋)
  • 先生(ゲーム開発部)
  • アニメ先生
  • その他一般アプリ先生
  • お前が先生になるんだよ
  • ペンチメンタル
  • ラグビーやってた人
  • 『それを決めるのは私ではない』
  • EX
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。