咲と照のセリフと高校が逆だったら   作:緋色の

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今更ですけど、原作の照さんは高校一年生の段階でチャンピオンになれるぐらい強かったみたいだすね。戒能プロが、藤白が照を弱らせたから勝てたと言ってましたし。組み合わせ次第では照は優勝してたわけなんですよね。

結論、ギギギが見たい。


姉妹

 インターハイを終えた彼女たちを待っていたのは、嫌いな人を探すのが難しい夏休みだ。

 

 照はあのインターハイで全てを注いだのかのようにだらだらと過ごしていた。冷房の効いた部屋で冷たいものを飲みながら読書するのは最高で、時間を忘れてしまう。

 

 咲との仲は改善されていない。負けたのだから当然とも言うべきか。しかし、照はそのことを残念に思っていなかった。まだ心には決勝戦のことが強く残っており、お祭り気分が抜けきっていない。きっと、元に戻ったら酷く後悔するんだろうなと自分でも思っていた。

 

 しかし、条件を満たせなかったのにもう一度とすがりついたら、それこそ咲を失望させるだけなのもわかっていた。そのため照は何もできずにいた。

 

 飲み物を切らし、新しいものをと思って部屋を出る。とってきて戻ると、扉に紙が貼ってあった。紙には『あそこで待ってる』と書かれていた。これが咲からのメッセージなのはわかったが、問題は場所だ。

 

 一瞬、咲は麻雀卓のある部屋のことを言っているのかと思ったが、この家にいい思い出がないのにわざわざそこを指定するわけもない。念のために確認してみたが、案の定であった。

 

 具体的なヒントもなく、ただあそことだけ書いてある。普通なら、こんな時でもなければいたずらだと無視しているところだ。だが、今回はそういうものとは違う。どうして咲が今になってこんなことをする気になったのかはわからないが、一つだけ確かなことはあり、このメッセージにある場所に行かないと二度と仲直りする機会は得られない。

 

 意地悪とかいたずらでないのなら、この場所には意味がある。咲にとって思い出の場所。幼い頃は家族旅行をした。県外にも行ったりしたし、県内の景色のいい場所にピクニックに行ったりもした。

 

 難しくはないはずだ。不仲になってからはそういった思い出作りはしていないのだから、まずそれ以降のことは外せる。更に県外もない。県外への旅行は確かに楽しかったが、こんな時に指定するほどの思い出が残る場所はない。

 

(私だけの見方は駄目だ。あくまで咲から見た特別な場所なんだ)

 

 思い出せる限りのことを思い出していく。家族旅行以外のことも思い出す。昔はお姉ちゃん子だった咲は照に甘えていた。よく二人で遊びに行ったりもした。

 

(あそこ、あそこだ)

 

 過去に一度だけそこに行った。

 

 大急ぎで着替えて、机の上に置いていた財布を引ったくるようにしてとった。

 

 家を飛び出す。走り出してすぐに部活メンバーに遭遇した。話しかけられそうになったので、後でとだけ言ってその場を走り去った。

 

 子供の小遣いでも行ける場所にある。昔はバスを使ったが、今回はタクシーを使ってそこへと向かう。

 

 近くまで来たところで、照はタクシーを降りた。

 

 立ち止まる時間はないと、走り出した。昔のようにそこはあるのだろうか。そんな不安がふっと湧いたが、目的地に到着して、その不安は無意味であることを知った。

 

 残っていた。土地開発とかそういうのは一切されていなかったのだ。そう、あの日のままの姿で照を迎えた。

 

 いつか咲と来た丘だ。どうしてここに来ようと思ったのか、そこまでは流石に思い出せないが、だけどここは思い出になった。

 

 そして、そこにはいた。

 

「咲」

 

 咲は長い髪の毛を風に遊ばせていた。呼ばれると、くるりと振り返って、その人をしっかりと見た。

 

「よくここがわかったね」

 

 照はその瞬間声が出なくなった。咲が自分に笑いかけていた。しかも口調は嬉しげである。長い間、それを向けられなかった。感動のあまり言葉を失ってしまった。

 

「立ち話もなんだし」

 

 足下にあった鞄からビニールシートを取り出して、地面に敷いた。咲はそこに座り、隣をぽんぽんと叩いて誘う。誘われるがままに、照は隣に座った。

 

 何を言えばいいのか。話したいことはたくさんあるはずなのに、いざその時を迎えたら何も言えない。どの話もこの場に合わない気がして、口から出せずにいた。

 

 咲の方も迷っている風ではあったが、今ある空気を払うようにして話をはじめた。

 

「たまにだけど、ここでのことを夢で見てた」

 

「夢で?」

 

「そっ。何で見るのかわからなかった。だって私は家族なんか特別と思っていなかったし、それはお姉ちゃんの方もわかってるよね?」

 

「まあね。久しぶりの再会はあれだったし」

 

 姉を見ても無関心そのものだった。あれだけで心が折れるような思いをした。

 

「でも、昔は大好きで、大嫌いにもなった。本当に何にも思っていないのかたまに気になったり。まあ両親はほんとに何とも思っていないけど」

 

 咲は一拍置いて、続きを話した。

 

「お姉ちゃんはどうなのか。どちらかと言うと、私は両親よりお姉ちゃんのが好きだったみたい。そのせいで辛い時期もあったけど。ちょっとしたものだけど疑問ではあったんだ」

 

「その疑問は解けたの?」

 

 その質問に咲は余計な力が抜けたような、自然な笑みを浮かべた。

 

「そうだね。インターハイ決勝戦でのことも考えると、私はお姉ちゃんをお姉ちゃんと思えるぐらいには好きなんだと思う」

 

「さ、き……」

 

「お姉ちゃんと久しぶりに打った麻雀は本当に楽しかった。もしもお姉ちゃんじゃなく、別の誰かだったらあの気持ちは得られなかった。それが例え世界最強でも。お姉ちゃんとしたから意味があったんだと思う」

 

「うん、うん……」

 

 言葉なんか出てこなかった。泣きそうになるのを堪えるので精一杯だ。

 

 麻雀に対して嫌悪することもあった。やめようと思ったこともあった。だけれど、続けていてよかった。麻雀で壊れた関係が、麻雀でなおった。

 

 もしもやめていたら、咲とは二度と仲直りできていなかったろう。

 

「あーあ、でも、お姉ちゃんと仲直りしたらしたで面倒なこともあるんだよね」

 

「?」

 

「みんなに何と説明したものか。雑誌とかで全否定したし」

 

「ああ……。ま、頑張って」

 

「えっ、仲直りしたばかりの妹をそんなあっさり見捨てるの?」

 

「姉をそんな都合よく使わないの」

 

「まさか、お姉ちゃんがそこまで冷たいとは夢にも思わなんだ」

 

「そんな面倒なのは後で考えて。今はどこかに遊びに行かない?」

 

「話をそこまで露骨に終わらすかね。とはいえ、確かに面倒だし、適当にごまかすからいっか。それでどこに行くの?」

 

「さあ、それは見てから決めよ」

 

「うん」

 

 ビニールシートを仕舞い、二人は歩き出す。

 

 いつかのように姉妹仲良く、その丘を後にした。

 

 また喧嘩をする時が来るかもしれない。

 

 今度は修復不可能となるかもしれない。

 

 昔以上に仲良くなれるかもしれない。

 

 今度は壊れないかもしれない。

 

 未来なんかわからない。

 

 未来なんか見なくてもいい。

 

 今はここにあるものを壊さないようにしたい。




これで物語は終わりとなります。

長かったような、短かったような。

正直に述べますと、団体決勝戦で白糸台は二十三~二十五万の間になるはずだったんですよ。ただ私がはやく個人戦書きたいと思って、それと技量の足りなさからぶっ飛んだスペックになったんです。本当はか弱い女の子なんです、嘘じゃないですよ、本当ですよ。

終わってみてから、あそこをああしたらよかったかなとか思ったりしてますが、そういう気持ちがきっと次に繋がるんだと思います。こんな風に書くと、まるで次の作品を書く気があると捉えれますが、今のところ予定にありません。

気が向いたら、というかいけそうだなと思えたら書きますが……思えるかな?

では、短いですけど、またどこかでお会いしましょう。

最後まで本当にありがとうございました。
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