咲と照のセリフと高校が逆だったら   作:緋色の

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先鋒、次鋒、中堅、副将、大将、全部で五話。全国は準々決勝、準決勝、決勝戦の三つですが、全て清澄サイドです。阿知賀入れたら一つ増加の四つ。更に会場到着時のことも書いて一話増加。団体戦だけで二十五話+?話という(笑)個人戦になったら何話増えるのやら。


第6話

 片岡優希の滑り出しは好調だった。

 

 龍門渕高校の井上純が流れを読んで変えようと、鳴きの弱点を克服した優希には大した影響はなく、ツモを決めてみせた。結果東場で+27600と中々の稼ぎを見せた。途中純が跳満を和了し、親被りを受けたとはいえ、この稼ぎは大きい。

 

(あらあら。調子がよさそうね。そろそろ止めないとだめかしら)

 

(こいつ、流れを変えてもあがるのか。厄介だが、どうやら風越が動くみたいだから合わせるか)

 

 純にとって一番手強いのは清澄のタコス女よりも風越の福路美穂子だ。昨年のデータ、映像は見ている。猪突の優希とは違い、他家を上手く利用してくるのでこの先鋒戦では一番注意すべき相手だ。

 

 逆に言えば味方になった時はこれ以上ないほどに心強い。そして、純は流れを読めるのでサポートしつつも美穂子の流れを削ぐことも可能だ。

 

 片岡優希にとってこの先鋒戦は最初の試練だ。清澄の麻雀部では、他家と組んで、トップを打ち落とそうとしてきたことはあるが、それはいつも照にしてきた。優希は自分がやられた経験がない。

 

 弱点克服の時も狙い打ちされたわけではなく、ただ鳴かれまくっていただけの話であり、他家同士が組んでいたわけじゃない。

 

 優希は己の未熟さを知り、この先鋒戦を糧にしなければ、この先何度全国に行っても結果を残せなくなる。

 

 だから優希は学ばなくてはいけない。例えマイナス収支になろうと、次に繋げる力を得るために。

 

「ポンです」

 

(うう……あのノッポ、明らかに風越のお姉さんをサポートしてるじょ)

 

 東四局にて、それは起こった。

 

 純が風越のサポートに回り、早々にテンパイさせたのだ。巡目が早いこともあって、待ちが読めない。

 

「うう」

 

 南場が次局ということもあって、優希の手は親の時と比較するといいものとはいえなかった。しかし、それでも東場ということもあり、手は完全に死んでいない。

 

(九筒捨てでテンパイだけど……)

 

 美穂子のポンした牌は一萬と九索だ。役満清老頭、安くてもホンロートイトイが見える。しかもドラは一萬。仮にただのトイトイとしても親の満貫が確定していた。見えないだけで役牌もあると考慮すると最低跳満。優希の稼ぎの大半がぶっ飛んでしまう。

 

 ここで意地を張り、最悪のケースである清老頭に振り込みでもしたら……。あまりに恐ろしい事態に優希はテンパイをとることをやめ、美穂子の捨て牌を見て、安牌を選んだ。

 

「ロンだ。5200」

 

「!?」

 

「悪いな」

 

 オリた優希に待っていたのは純からの直撃だった。

 

 点棒を渡す優希は半分混乱した様子で美穂子と純の捨て牌、顔を見る。

 

(どういうことだじぇ。何でお姉さんじゃなくてノッポがあがったの? だって明らかに……)

 

 この局では純があからさまに美穂子をサポートしていた。なので美穂子が和了を決めるのが普通だ。優希もその通りであったのならこんな風に混乱はしなかった。

 

(こんなのははじめてみたいだな。悪いけど貯めた点棒出してもらうぜ)

 

(かわいそうな気もするけど、これも優勝のため。ごめんね)

 

 蛇に睨まれた蛙のように優希は萎縮してしまった。

 

 

 

 

 

 前半戦が終了した。

 

 優希は控え室へと走る。わけのわからない状況に混乱して南場はまともに打てなかった。頼りになる仲間たちから助言をもらって状況を打破しないとならない。

 

「アドバイスお願いします!」

 

「見事にやられたのう」

 

「優希、あなたの思った通り龍門渕は風越をサポートしていたのよ。逆の時もそう」

 

「で、でもあがったのは」

 

「じゃけえ、あれはお前さんを狙ってたんじゃ。ああしてどっちがあがるかわからなくして、勢いのあったお前さんを止めたんじゃ」

 

「あれは面倒だけれど、あなたなら大丈夫よ。自信を持ちなさい」

 

「わかったじぇ……」

 

 よほど堪えているのか返事に元気がない。そんな優希を照は励ます。

 

「優希、そんなんじゃだめ。大丈夫。優希なら勝てるから」

 

「宮永先輩……」

 

「私は優希を信じてる」

 

 大好きな先輩にそこまでの言われては優希も元気を出さなくてはいけない。両の頬を手で強く叩き、タコスを食べて対局室に戻る。その顔は自信に満ちていた。

 

(後半戦はマイナススタート。前半の東場での稼ぎもあって98600だけど、南場だけで30000近くも削られてるじぇ)

 

「リーチだじぇ!」

 

(ふぅん。元気になってんのか)

 

(あらあら)

 

(あんなにやられてまだ元気なのか)

 

(高めで倍満だじょ!)

 

(あのタコスほんと出だしはいいな)

 

(高そうね。羨ましいわ)

 

「ツモ! 8000オールだじぇ!」

 

『おーっと、ここで清澄が親の倍満和了です。これで前半戦の悪い流れを断てるのか』

 

『これで一応トップだな。とはいえ、龍門渕と風越が黙ってないだろうな』

 

(ここからだじぇ。多分ノッポとお姉さんがやってくる)

 

(あら。強気ね……。じゃあ、そろそろ)

 

 美穂子の閉じていた目が開かれた。理牌、癖、状況、それらを元に彼女は他家を上手く使い、最終的にトップとなる。

 

(じょ?)

 

(確かにあなたは驚異だけれど、それは東場だけ。しかも親が終わり、南場に近づくにつれて少しずつ落ちていく。じゃあ最初の親を終わらせればいい)

 

 美穂子はここで鶴賀のサポートに走った。睦月も前半戦での優希を見ていたので、安手でもあがるつもりでいたし、あがらせないつもりでいた。

 

「うぐ」

 

 美穂子が睦月のサポートをする。それはつまり優希のツモが飛ばされることに繋がる。いくら優希が東場は強いとはいえ、ツモができなければ手は進まないし、テンパイもできない。

 

 二回も飛ばされた。たった二回なのにやけに久しぶりに思えた。ツモ牌で手が進む。

 

(さて、お前が一回ツモする間にこっちは二回もしたんだ。この差は大きいぞ)

 

(風越のサポートもあったが、イーシャンテンか)

 

 今度は鳴きもなく、優希はツモ牌で手を進めて、いらない牌を捨てた。

 

「ロン。平和のみ。1000点です」

 

「うう」

 

(さてと、みんなのために稼がないと)

 

「ロン。3900」

 

「ツモ」

 

(このお姉さん……)

 

(こいつ)

 

(やはり福路美穂子は強い……)

 

 

 

 

 

 

『前半戦終了! 清澄が二度トップをとりましたが、終わってみれば風越が圧倒的トップ!』

 

『四位は鶴賀だな。トップとの差は大きいし、次鋒で何とかしたいところだな』

 

「お疲れさまでした」

 

「お疲れさまだじぇ」

 

「お疲れさまでした」

 

「お疲れ」

 

 挨拶が終わると、それぞれ控え室へと戻る。

 

「ただいまだじぇ……」

 

「お帰りなさい。頑張ったわね、優希」

 

「部長……でもマイナスで……」

 

「でも少ないじゃない。むしろ風越と龍門渕を相手にしてこれは威張っていい方よ。だから落ち込まないの。後は私たちに任せなさい」

 

「うん。みんなに任せるじぇ……」

 

(出た方が……いえ、優希は泣こうとはしてませんね)

 

 泣きそうな雰囲気の優希だが、和がいるから我慢しているようには見えない。悔しくて、申し訳なくて、どうしようもない気持ちに負けていなかった。

 

(ここで出ていくのは……逆に失礼ですね)

 

 先鋒戦は敗北したが、まだ続きがある。久の言う通り、ここから巻き返せばいいだけだ。




前書きを見て、気づく。過去話とか絡むし、全国決勝とか一話ですまないし(無理にやろうとしたら更新が凄い遅れる)。頑張ります。
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